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第3章 カストポルクス、真の敵。
第116話 決戦。-黒き大龍の眷族-
しおりを挟む俺達と腐ったドラゴンの戦いが始まった。
強烈な腐臭、刺激臭に耐えながらの戦闘だ。
俺達は、基本的には空中から腐ったドラゴンにヒット&アウェイで攻撃をする。
「ユウト! この臭い、何とかならんのか! 堪ったもんではないぞ?」
「なんとも出来ない! 耐えるしかないって! せめて口は塞いでおくしかないな」
なんせドラゴンが動く度、俺達が攻撃をする度に腐った飛沫が飛ぶので、その被弾は避けられない。
臭いを通しにくい風系統の防護膜だと、ほとんどモヤに対抗できないから、臭いは我慢して《ライトフィルム》で戦うしかない。
流石に俺のライトフィルムも強度が上がっているが、ここのモヤの量も相当なので、俺を含む5人の掛け直しの頻度たるや凄い事になっている。
しかもドラゴンだけでなく、エベレストダンジョンでのリッチ戦のように、裂け目のモヤが触手のように俺達に伸びてくる。
「ピルムに《ライトフィルム》! ドラゴンに《ピュリフィケーション》! ミケに《ライトフィルム》! アニカもか!」
アニカもさっきピルムに放った魔法で魔力が減ったので、攻撃組に参加していて、俺が全ての光属性魔法を受け持っている。
[皆様! いきますよ!]
「「おう!」」「「うんっ!」」
ミケは、雷をドラゴンの身体が露出するまで温存しているので、範囲攻撃はピルムの【大地の棘】がメインとなる。
アニタはほぼ近接スキルしか無いし、アニカは中距離のスキルだ。俺も魔法連発の隙をついて突っ込むしかない。
「アニタ! 俺に《フィジカルブースト》をくれ!」
「うん!」
「ちっ! アニタに《ライトフィルム》!」
アニタに全員のブーストを頼んでいるが、そろそろ魔力の限界だろう。
巨体のドラゴンが相手という事で、ミケも途中からピルム程の大きな白狐の姿になった。
「ほう? それがハウラケアノスの見た獣か……。貴様からも微かに神の気配がするな」
「ふん! 自ら戦わずに、眷族に戦わせておいて何を言う。おお、貴様は封印されておって戦えんのじゃったな? 姿すら現わせんとは哀れよのう」
ミケもドラゴンと戦いながら煽るなぁ。
「面白い獣だ。ワレの眷族にしてやってもよいぞ?」
「こーんな何もないところで、自分で姿も現せられぬ奴の眷族とやらになって何が面白いのじゃ? 我は既に面白く暮らしておるというに……。ぺっぺっ! 汚ない汁が口に入るわ、じゃべらせるでない! ぺっ!」
「口だけは達者なようだな」
「口だけは貴様じゃろうが! いや、声だけじゃの~お?」
「その強がりもいつまで持つかな? 試してやろう」
黒き大龍の言葉の後で、地面が微かに揺れて、裂け目を満たすモヤが活発化し次々に襲いかかってくるようになった。
「くっ! 《ピュリフィケーション》! ミケに《ライトフィルム》!」
く~~! モヤの浄化と防護膜の張り直しで手いっぱいになりつつある。
起死回生には大魔法だが……、俺の魔力も心許ない。スマホを使う!
“みんな聞いてくれ! このままじゃジリ貧だ。打つ手が無くなる前に、腐ったドラゴンのモヤを消したい! 数秒間援護をやめる! 耐えてくれよ?”
“うむ!”“““はいっ!”””
“大穴は空けられないかもしれないが、モヤの消えた所にミケの雷を解禁してくれ! アニカとアニタは貫通力のある技! ピルムも思いっきり殴れ!”
““““了解!””””
とりあえずみんなの防護膜を確認してから、ドラゴンの真上に転移する。
ミケとピルムが意を決してドラゴンに取り付いて、動きを止めた。
強烈な臭いに耐えてよくやってくれた。
ミケとピルムに報いるべく、スマホで魔法を連発する。
《ピュリフィケーション》 《ピュリフィケーション》 《エクソシスム》
腐ったドラゴンの頭頂部に狙いを定め浄化を放ち、頭から肩口・背中にかけて出来る限りのモヤを取り除いた。
その後のエクソシスムで、黒き大龍の言う“呪い”の影響・支配を妨げる。
ミケとピルムはタイミングを合わせ、そこを離脱。
“今だぁ!” ドシャーーーン!
俺の言葉が届くか届かないかのうちにミケの雷がドラゴンの頭を捉え、骨を伝ってバチバチと全身に雷が周った。
ピルムも、離れ際に大地の棘を発動していたので、ドラゴンはその場に固定された形になっている。
「貫通撃っ!」
「スクリュ~しょっとぉ!」
[このー! ぶっ飛べぇっ!]
アニカ達の攻撃を受けて、ドラゴンの首が大きくグラついて、ミチミチと胴体から離れて首から先が地面に落ちた。
ドオーンッ!
「よしっ! 首を落としたぞユウト!」
このまま胴体にも同じ流れで! と考えていたら、落ちたドラゴンが声を発した。
[こ……殺してくれ……ヒト族らよ……殺してくれ……オレを……サリムドランの……も、と、へ……]
コイツも言葉を話せるドラゴンだったのか!
「お前はギルガンドか?」
[そ……う、だ]
「安心しろ! お前もサリムドランのところへ還してやる! あいつもお前の名を呼んでいたぞ!」
[ぁああ……サリ、ム……ド、ラ、ん……]
地面に転がる頭部が骨を残してドロっと崩れた。
倒せたのか?
「ほほう? ワが眷族がやられた?」
大龍の声が響き、俺達は裂け目に周囲を向ける。
「それにしても、ワレに仕えている間も微かとは言え意識を保っておったとは、強き眷族であった。余さず使わせてもらうぞ?」
「何っ!?」
一番高い位置にいた俺は、裂け目の異常に気付いた!
「――みんな飛べ! 急げ!」
大龍の言葉の直後、裂け目のモヤが、大波が岩にぶつかって出来る波しぶきのように、ギルガンドの胴体に襲いかかる。
ミケ達は何とか逃れられたようだ。
「危なかったのじゃ……」
ギルガンドの胴体を覆ったモヤが、ブヨブヨとその身体を這い回っている。
ギルガンドにはドクドクとモヤが供給され続け、這い回って身体を補完していく。
そして、先の龍人やサリムドランのようにミシミシミチミチと、元の身体よりも大きな身体が形作られていった。
首の無いまま。
ブァガガガガガガアアアアー!
ギルガンドの首元から叫びとも呻きとも取れる音が発せられた。
「何なんだこれは!」
「こ、怖いです」
「こわいよ~」
[あ、あれはもうドラゴンではありません!]
ギルガンドの身体のバケモノ。その異様さと威圧感にアニカやアニタは圧倒されてしまった。
「四の五の言うとる場合ではないぞ! あの巨体! 竦んでおったらやられるぞ!」
「くっくっく! ワが力を注いだ言わばワが分体ぞ? 恐怖に塗れて死ぬがいい! くっくっく」
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