透明な君が

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紫音さんの恥ずかしい話

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~紫音の過去~
私は代々世界でもなかなかないくらいお金を持った富豪に仕えている家に生まれた。そこの暮らしは悪くなかった。そういう家に生まれたから礼儀や作法などはみっちりしごかれていたが、それ以上にある程度楽しく暮らせていた。誰かに仕える家系ではあるけど、休みもたくさんあった。といってもあの頃の私には関係なかったが。だけどいつまでもそれが続くわけじゃないし私は自由に生きたかった。誰かに仕えるなんてせず自由に生きたかった。それを親に伝えても「馬鹿なこと言わないで、私達の家系に泥を塗る気?」「そうだぞ?このお家に仕えることができるのは光栄なことだぞ?」といわれてしまう。だからせめてもの反抗として、敬語を使わなかった。
そんなある日
「父さん、私、ちょっと買い物行ってくるから。」
「お前ってやつは…!買い物には行かさん。」
「キャッ!痛い!何するの、父さん。やめて。」
「この期に及んでまだそんな口を利くか!もういい!お前は山に入れる。反省するまで出てくるな。」
そう言われ私は8才という小さな体で一日分の食料だけ渡され山に入れられた。
(こんなことしても治るわけ無いじゃん)
とか思いつつ暇なので歩いた。そこには川が流れていて、一人の少女がいた、少し落ち込んでいるようだった。
「大丈夫?何かあったの?」
「わっ!びっくりした。大丈夫だよ。君はなんでここにいるの?」
「私は親に怒られてここに入れられたんだ。」
「そうなんだ。君の親は厳しいの?すごく疲れた顔してるよ。僕に何でも言って。相談にのるくらいはできると思うから。」
その時知った、自分は疲れた顔をしていること、そして少女だと思ってた子が男の子であるということを。
「うーん、じゃあ相談乗ってくれる?えーっと名前は?私は紫音。」
「僕は蒼。それで何があったの?」
「実は…」
それから私は私の家系のこと、誰にも仕えず自由に生きたいこと、親の教育が厳しいことを打ち明けた。彼は何も言わずしっかり聞いてくれた。その優しさに何回か泣きだしそうになった。
「そうなんだ。大変だったね。うーん…なかなか難しいな。とりあえず高校生になるまで耐えて高校生から家を離れて、自分のしたいことで見返すってのはどうかな?あまり現実的じゃないし、大変だけど、そうすれば少しは理解を得られると思うよ。」
「うーん、でも多分高校も勝手に決められると思う。」
「じゃあ条件付きにするとか、そこより難しいとこ受けてみるとか。20歳になるまで自由にさせてもらって成果が上がらなかったら家に戻るとか。それに約6年も従ってればある程度許してもらえると思うよ。」
「わかったやってみる!ところで君はなんでここにいるの?」
「気晴らしにね。お姉ちゃんと一緒に来てるんだ、お姉ちゃんは山菜採りに行ってる。僕は魚がいたらそれを取ってる。」
「ふーん、さっきは何も無いって言ってたけど、やっぱり何かあったんだ?別に聞きはしないけど」
「うん、まぁ隠すことじゃないし聞いてもらったほうが気が楽になるかな…?実はお母さんがストレスで倒れてそのまま死んじゃったんだ。お父さんもいなかったし、凄く悲しいし、寂しいよ…」
聞くべきじゃなかった。自分の好奇心を呪った。それと同時に自分の悩みの小ささを実感した。
「だから今お姉ちゃんがお金稼いでくれてそれで暮らせてる感じかな。あ、帰ってきた。」
「あれ?蒼~、その子誰?」
「紫音ちゃん、お話してたんだ。」
「そっか、紫音ちゃんはじめまして。これからBBQするけど君も食べる?」
「はい。もらいます。」
それから食事を終え、二人は帰り一日が過ぎた。それから家に帰り、蒼くんのアイディアを使い厳しい教育に耐えた。今思えば、話を聞いてくれていたときから、彼に恋をしていたのかもしれない。そして尊敬もしていたのかもしれない。最近また再開できたのは神様のいたずらだと思う。ただ敬語に慣れてしまっていたから、彼は気づいていないのかもしれない。実にいたずららしい。
~ガールズトーク~
「紫音?何考え込んでるの?」
「初恋を思い出してただけだよ。なんちゃって。」
「お茶入ったよ~。…なんの話ししてるの?」
「ガールズトークってやつだよ、蒼さん。」
「あれ、敬語じゃない。珍しいね、紫音さん。」
「ごめんなさい。少しやってみたくなって。つい。」
「そうなんだ。でも敬語じゃない紫音さんはなんか懐かしさを感じるなぁ。何でだろう?」
「「えっまさか!?」」
「シー!ふたりとも、だめですよ?」
「???」
「蒼さん、気にしないでください。さっ勉強再開しましょ?」
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