男狼(おとこおおかみ)

MERORE(メロル)

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4階

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70回目。

あれから憐が、殺された回数。

「「あと10回だけど、何か言いたいことはあるかい?」」

レンが聞く。

「「あ、先に言っておくと、

あと10回なのな僕だけだからね」」

憐がその言葉に反応する。

「「他の大神も、復活させてもらうよ?」」

そう言ったレンの顔を、

憐は、震えながらも、顔をあげて見た。

「っ!!」

レンは、笑っていた。

喜んでいる。

憐はその表情に、今まで感じたことのない恐怖を感じた。

レンは続ける。

「「そーだね。

少なくてもあと、


1億回

は、死んでね?」」

憐が、震えながらも、残る力を振り絞って叫ぼうとする。

「………………も……」

「「も?」」

「もう、止めて…………くれ。

もう…………もう、もう嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

憐が叫び、逃げ惑う。

「「精神が、もたなかったか…………
まあいい」」

そう言ってレンは追いかける。

教室から飛び出した憐は、

すでに少しずつ冷静さを取り戻しつつあった。

左の階段へと向かい、階段を下がる。

「「そうミスミスと逃がさないよ?」」

階段を下がりきった憐は驚く。

一緒なのだ。

景色が。

教室も、全て同じだ。

確かに下がったはずなのに、

まだ3階にいる。

先程飛び出た教室の前には、

楽しそうに笑うレンの姿があった。

「「やあ、おかえり♪」」

「……くっそ!」

憐は次に、階段を上りはじめた。

「下に行けないなら…………上だ……!」

その様子を見たレンは決める。

今、狩ると。

今が最善のタイミングだと。

そう思い、憐を追う。

全速力でだ。

このままではすぐに追い付かれる。

そう思いながら憐は必死で走る。

「………………!!……何で!?」

憐の前には、壁があった。

4階への道がないのだ。

「「残念だったね」」

憐の後ろには、レンが迫ってきていた。

もう、追い付かれる。

「…………っ!!どうにでも……なれっ!!!」

憐はそのまま走り、壁にぶつかる直前で上空へと跳んだ。

「「……?」」

レンにはその行動が理解できない。

壁蹴り。

憐がおもいっきり目の前の壁を蹴った。

「…………っらぁ!!!」

その勢いで憐はレンの背後へと移動することに成功する。

「っ!うわぁ!!」

憐は、着地を失敗し、一気に階段の下へと転び落ちた。

「ぐあ!」

激痛を感じながらも、憐は走る。

今度は、右の階段へと。

左が行けなくなった。

なら、右は行けるようになったのかもしれない。

そう考え、憐は走り続ける。

憐の予想外の行動に動揺したのか、レンとはまだ距離がある。

憐は階段へとたどり着き、かけ上る。

「…………頼むから、開いててくれよ……?」

小声でそう放つ憐の表情は、真剣だ。

当たり前だ。

これは生死を賭けた賭けなのだから。

憐の額を、冷や汗が撫でる。

階段の終わり、憐は驚く。

「……マジかよ」

通れなくなっていたはずの右の階段から繋がる4階への道が、続いていたのだ。

憐はひとまずの賭けに勝つ。

「「ま…………て……!!!」」

レンが追いかけてくる。

「「まてぇ!!!!!大里 憐!!!!」」

その怒鳴り声と共に、

レンの姿が変わってゆく。

身体中から毛がはえ、

指の爪は伸びて鋭くなった。

さらに鼻先がのび、

口内からは鋭い牙が見える。

やがてそれは、よに言う狼男の姿へと、

変貌した。

恐怖に震えながらも、

憐は4階へと走る。

その時、レンが跳んだ。

そして、憐の真後ろへと着地する。

かなりあったように見えた距離は、

一瞬にしてゼロにされた。


バキッ


その嫌な音と共に、階段が崩壊していく。

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!」」

レンが吠える。

「う、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

憐が4階へと飛び込む。


ドサッ


それは、憐の着地の音。

憐は見事に、4階へとたどり着いたのだ。

「………………!?」

突如、憐の視界が歪む。

その歪みがなくなった頃、

憐は白い空間にいた。

どこまで続いているのか、

それすらも分からない、不思議な空間。

ただ、その中で異彩を放つものがある。

それは憐の前にあった。

憐の前には、

ただ、真っ赤な扉が1つ。

その時、どこからか声が聞こえる。

『そこにある扉を使えば、

男狼から解放されます』

その声はおそらく女性だろう。

そしてその声は、

美しく、綺麗だった。  
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