男狼(おとこおおかみ)

MERORE(メロル)

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秘密

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突如聞こえた不思議な声は、

とても美しく、綺麗だった。

『男狼はもう“もとの世界には”いません』

その声の主は続ける。

『男狼は、この世界にいます』

その時、咆哮が響いた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん」

憐は焦る。

「や、やべぇ、逃げなきゃ!」

『そこの扉を通れば、男狼は追ってこれませんよ』

その言葉が真実である確証はなかった。

でも、憐は扉に手をかけた。

ドアノブさえも赤い。

「「まてぇ!!!!!

ぜったイ、逃ガさなイ!!!」」

その時、憐はそっと扉から手を離した。

「何なんだ?この扉」

憐が謎の声に聞く。

憐には、疑問があった。

『…………?出口ですよ』

意味が分からないとでも言うように謎の声は答える。

「そんなことは分かってる。
何だよ、この色。…………いや、この血は」


血。


扉はもともとは赤くなかった。

血によって赤くなったのだ。

『驚いた。気づいたのですか。

安心してください。これは人間の血ではありません。
男狼の、血です』

「ちゃんと、話してくれ」

声の主は少し迷い、そして、話はじめた。

『時間がないので、速やかに言います。

………………この町では、たくさんの大神がいました。
ですが、ある日を境にして大神は消えました。
いえ、大神の力を失いました。

力を失った者達は、男狼になりました。
その男狼達の復活のため、男狼の儀式ができました。

ですが、男狼が暴れる危険性が多々あったため、
男狼の記憶を一部封印したうえで、
最後の対策として、この空間を作ったのです』

憐はただ、驚くばかりだった。

まだまだ謎はある。

だが、聞いただけでは、この町でできたみたいだ。

「「あト、10回殺セバ………………!!」」

男狼は、もうすぐそばまで来ている。

ただ、ひどく苦しそうだ。

おそらく、この空間自体が男狼にとって害なのだろうと憐は推測する。

憐はまだ赤い扉を通らない。

『さあ、扉に!速く!!』

謎の声が急かす。

だが、憐は動かない。

『何を、しているのです……?』

謎の声に、憐は答える。

「俺は、俺のしたいようにする」

そう言って憐は、レンの方向へと走る。

「「…………ヴ……………………?」」

レンの目の前で、憐は立ち止まる。

「さあ、俺を殺せ」

レンは意味が分からないというような様子だ。

「戻してやるよ、大神に」

「「なゼ…………ダ?」」

「知らねぇよ。
ただ、自分と同じ姿のやつに、死なれたくないだけだ」

「「………………あリガとウ」」



そして憐は殺された。

計10回。

10回目の死と共に、レンの姿は変わった。

白髪の、綺麗な顔立ちをした少年。

それがレンの本当の姿だった。

「それが、本当の姿……か?」

憐が聞く。

そしてレンは、ゆっくりと頷いた。

「君は…………何の神だ?」

「「…………秘密、だよ」」

レンはいたずらっぽく笑う。

だが憐にはある程度の予想がついていた。

「鏡、かい?」

レンは驚く。

「「正解……だ。
驚いたよ。まさか当てるとは」」

憐がなぜその予想がつけいたか、

レンの姿が関係していた。

憐と全く同じ姿。

男狼についての本にも、なぜその姿なのかは記されていなかった。

ただ、男の姿で現れるとしか、記されていなかった。

レンの姿は、特別なのかもしれない。

そこから憐は推測したのだ。

結果、鏡の大神ではないかという、予想がたてられた。

レンが、その事について、詳しく話す。

「「僕はある日を境にして、魂が進化した。
それには、鏡が関係している。

考えてごらん?
かがみから、が(我)を抜くと、神が残る。

鏡は人の心を写し出す。
僕は、自分のことがどうでも良くなるくらい、
守りたいと願った人がいた。

まぁ、その人も、大神になったんだけどね。
僕はそれで大神になったんだ。

でも……………………
もういいだろ?さあ、行きなよ」」

レンが急かす。

レンの‘でも’の続き。

憐にはその予想がついていた。

謎の声の話していた、

大神達が男狼へと変わってしまった、

‘ある日’のことだろう。

「待てよ!

…………1つだけ、教えてくれ」

「「なんだい?」」

「…………その、‘でも’の続き。

‘ある日’に、何があったんだ?」

レンは少し驚く。

「「君、なかなかしつこいんだね。

全ては教えられないよ。
でも、1つだけ教えられることがある」」

「……何だ?」

「「“大神殺しの大神”。
そいつによって、全てのバランスが崩れた。
僕が言えることは、それだけだよ」」

大神殺し。

憐はその奇妙な名に、何故か嫌悪感を感じた。

その名を持つものに、自分が関連する時がくると直感で、感じとったからだ。

謎を少しでも解明しようとしたが、

逆に謎が深まるばかりだった。

突如、考え込む憐を、勢いよくレンが押した。

「……なっ!?」

憐の後ろには、いつの間にか開いていた赤い扉が。

「「さよならだ、憐」」

その言葉と、レンの表情で、憐は勘づいた。

「お前…………まさか」

「「僕はもう、レンじゃないよ。

僕の本当の名は、キョウって言うんだ」」

そう言ってキョウは笑みを浮かべる。

だが、そのキョウの顔は、ひきつっていた。

無理矢理作った笑みだと、すぐに分かる。

キョウは確かに大神に戻った。

でも、赤い扉を通ってしまえば、それも全て水の泡。

キョウは消滅する。

この空間には、出口は1つしかない。

赤い扉しかないのだ。

「「っっっっっっ!!!

待てよ!おいっ!キョウ!!!!
待て!待て!逃げんなよ!!!」」

「「生きるんだ。生きて、幸せになれ、憐」」

扉が閉まる。




「「バイバイ♪」」

赤い扉は、また赤く染まった。




テレビのニュース番組が騒がしい。

「臨時ニュースです!

昨晩、真明高校にて、4人の生徒が、
1人の生徒によって、殺害される事件が起こりました!

また、その死体がとても奇妙なそうです。
科学的に、説明できるものではないものもあり、容疑者の少年は、頑丈な警備のなか、刑務所へと、送られるそうです!

また、容疑者の少年は、犯行を否定しているとのことです」




それから、真明高校の教室の4つの机の上には、花が添えられた。

そして、1つの机は、処分された。

処分の時、机に貼られた名前プレートが見える。

そこに書かれた名前は、




大里 憐
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