3024年宇宙のスズキ

神谷モロ

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エピソード2

カニパーティー3/8

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 アマテラス貨物搬入デッキにて。

 俺達はトラック一台分の巨大コンテナーを開封する。
 さすがの大きさに猫の手も借りたいくらいだ。

 いや、ここは蜘蛛の八本脚ってところか。
 ちょうど搬入デッキを掃除中のサンバが目に入った。

「おーい、サンバ君よ、少し手伝ってくれ」

「アイアイサーっす。船長さん、いったい何を買ったっすか? ぐへへ、ついに実用ドールっすか?」

「おいおい、女性がいるんだぞ。っていうか、サンバ君よ。その口癖はもうデフォルトなのかい?」

 てっきり俺は、ゲーム内のキャラづくりのつもりかと思っていたがリアルにまで持ち込むとは。
 まあ、本人が気に入ってるなら尊重しようとは思う。
 ……それにサンバなりにミシェルさんの緊張を和らげる為かとも思うのだ。

「ふっふっふ。オリジナリティってやつっす。ミシェルンには美味しいところを持ってかれてばかりっすから。
 お! コジマ粒子の香りっすね。ということはコジマ重工製品っすね」

 俺にはコジマ粒子とやらの香りはよく分からないが、確かに新品の電化製品を開けたときの何とも言えない香りはした。

 サンバは空になったコンテナを器用に分解しながら片づけを始めている。後で業者に回収してもらうためだ。 


 さてと、納品仕様書にはこう書いてある。 
 
『コジマ重工製海洋調査ロボット、シースパイダー』

 巨大なカニの様なロボットだ。
 これで海底を這いながら調査するのだろう。

 外殻にはハイパータングステン相転移装甲。
 主機にはアドバンスド核融合エンジン。 
 ハイドロジェット推進……?

 とのことだ、どういう性能なのかはよく分からないが多分凄いのだろう。

「コホン、メカ音痴の船長さんに説明するっす。
 我がコジマ重工の多脚ロボットシリーズは多岐に渡るっす。
 ちなみにこのシースパイダーもそのひとつっすね。

 民間用ロボットではシェアナンバーワンのコジマ重工ではあるっすが。
 残念ながら学術の分野ではまだまだっす。
 このシースパイダーは3024年の産業用ロボット品評会、海洋調査部門でナンバー2の烙印を押されてしまったっす。
 性能は最高なんっすが、いかんせんデザインとコスパが悪いという評価を下されてしまったっす」

 なるほど。たしかにゴテゴテとした外観に八本脚。

 ちなみに同時に搬入された、もう一つのコンテナには様々なオプションパーツが入っているらしい。
 装備の換装により、様々な状況に対応できるというのが売りなのだろう。

 だが、その拡張性の良さの反面、コストが高いのだろう。 

「サンバ君、コスパで負けてるだけってなら、逆を言えば俺達が使う分にはむしろ最適解じゃないか。
 それに、有名な言葉がある。『二位ではダメなんですか?』ってな」

「キー! 二位で良い訳ないっす。科学技術の分野で二位は屈辱なんっす。誰っすかそんな失礼なことを言ったのは。
 そんな侮蔑と嘲笑のような言葉初めて聞いたっす」

「お、おう。なんかすまん」

 ……そうか、さすがに千年後の未来までは伝わってなかったか。
 俺はてっきり当たり前に使われてる故事成語になってるかと思ったのだが。

 まあ、今はそんなことはどうでもいい。

 性能ならナンバーワンなのだ。
 つまり安心して乗ることが出来るってものだ。

 ちなみに、アーススリーで使用するのは初めてらしい。
 あとでレポートを提出すればコジマ重工からキックバックをもらえるという話だ。

 クリステルさんは相変わらずやり手だ。
 

「よし、ではとりあえず試運転といこうか」

「はいマスター。本格的な調査の前に簡単にこの辺の海底の散歩と行きましょうか」

「うむ、ならば行くとしよう。海賊王に俺はなる!」

「あ、イチローさん。それ有名な漫画のセリフ。入院中に全巻読んで勇気をもらいました。特にラストが最高でしたね、確か……」

「まて! それは言わないでくれ! 俺はまだ未読なんだ」

 …………。

 俺とアイちゃん、そしてミシェルさんはシースパイダーのコクピットに乗り込む。

 ちなみにシースパイダーは四人乗り仕様となっている。

 やや広めな操縦室には各種様々なモニターや計器類がついており、まさしく海洋調査ロボットといった趣だ。

「おや、マスター。ハンドルを握ったまま固まってますけど、忘れ物ですか?」

「……いや、改めて思ったんだけど。
 これって免許とかいらないのかな……というか動かし方が分からない」

「……マスター。なら最初から言ってくださいよ。
 ちょっと待って下さい。操縦マニュアルをダウンロードしますので、私が代わりましょう」

「あの、私、操縦できます。オンライン講習を受けてますので……」

「お、そいつはいいや、ならミシェルさんにお願いしよう」

「ふふ、なら私はクロスロード様のサポートをさせていただきましょう。
 マスターは後の席に移ってください」

「ふっ、任せたぜ。ちなみに後で俺にも教えてくれよな。俺だって時間を無駄にしたくないし。
 クルマの免許だってこの前取ったんだ。この時代の住人として色んな資格に挑戦したいところだしな」

「それは良い事です。私としてはあのままゲームの世界に籠ってしまうかと心配してたものです。
 ほら、ミイラ取りがなんとかって」

「おいおい、アイちゃん。ミシェルさんが居るのにデリカシーの欠片もないのか?
 ごめん、ミシェルさん、アイちゃんはたまに毒舌になるんだ、悪気はないはず……だよな?」

「さあ、どうでしょう。マスターはこんなに若いお嬢さんと一つ屋根の下ですからね。嫉妬してしまいます」

 またいつものからかいだ。
 ミシェルさんは18歳。それに上司と部下の関係だ、手を出したら犯罪だぞ? 
 というか、そもそも俺にそんな度胸は無い。

「あははは! お二人はほんと仲がいいんですね、ゲームにいたときと同じで本当に夫婦みたい。最初はイチローさん以外全部AIだったって聞かされた時は驚きましたけど。
 ほんと、それ以外は演技でもなんでもなかったんですね。あはははは」

 久しぶりに、というか現実世界で彼女は初めて大きな声で笑ったのではないだろうか。

「では、さっそく海底にいきましょう。この辺の水深は200メートルくらいですか。エンジン始動!」

 ミシェルさんはハンドルを握るとゆっくりとアクセルを踏む。
 カニ型の海洋調査ロボットはゆっくりと歩き、貨物搬入デッキから海に飛び込む。

 瞬間。エレベーターに乗ったような何とも言えない浮遊感を感じる。


「……凄い、このシースパイダー。推進2万メートルまで潜れるようですね。ちょっと海溝チャレンジしてみます?」
 
 …………。

「マスター、クロスロードさんが質問してますよ? まさか、海が怖いのですか?」

「い、いや。ちょっと……ね」

 そう、久しぶりの自由落下の感覚に少し驚いただけだ。
 それにしても、たった200メートル潜っただけなのに外は真っ暗になるんだな。

 もし、俺一人だったら、恐怖でおかしくなるだろう。
 それに宇宙と違って、未発見の恐ろしい海洋生物がいるかもしれないのだ。

 実は宇宙よりも海の方が謎が多くて恐ろしい場所なのかもしれないと改めて思った。
 
「よ、よーし。ではこのまま水深1000メートル付近まで挑戦してみよう。
 何事も慎重にだ。
 ブラックロッククラブが生息するのもその付近だろ?
 海溝チャレンジはもう少し慣れてからにしようじゃないか。はっはっは」
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