13 / 151
第一章 我こそが
第13話 千年牢獄②
しおりを挟む
再び静寂に包まれた牢獄の中で。
ベアトリクスに対する怒りはあるが。本人が目の前にいないので次第に冷静になっていった。
とりあえずは一人ぼっちではない。何とかなるだろう。
それにしてもハインドという牢獄の同居人、意外にもそんなに悪い奴じゃないのかも。
お墓で話をしたときにも思ったが、彼は嫉妬を拗らせていただけで基本的にエリートなのだ、宮廷魔法使いの中でも王様が直轄する特務部隊、執行官だと言っていたのを思い出す。殺しが仕事のだけで別に好きでやっていたわけではないのだろう。
いや、実際は自分に死に至る闇の魔法を掛けたらしいが。まったく無傷だったから別に気にしていない。それに少し煽りすぎた自分も悪かったと反省する。
今となってはベアトリクスの方が絶対に悪い奴だ。
やはり海のドラゴンロードは敵なのだ。
そして敵の敵は味方。ここは協力して立ち回ろうとルーシーはハインドに声を掛ける。
「ところで、ハインド君。千年牢獄ってどんな魔法なのだ? 随分と詳しいみたいだけど」
ハインドも冷静だった。なんとか現状を打開するために骨の手を顎に当てながら考えているポーズを取る。
ルーシーは不覚にもハインドがカッコいいと思ってしまった。
彼女が物語の本で得た知識ではスケルトンは知能が無い雑魚モンスターとしてしか扱われていなかった。それに対し目の前の彼は黒いローブを着た外見と相まって、その知的な姿とのギャップが余計にそう思わせたのだ。
「うむ、よく知っている。極大呪術『千年牢獄』とは対象の魂を時空間の牢獄に閉じ込める拷問の為の魔法。一度魔法に掛けられてしまったら術者の許可なく出ることはできない。刑期は名の通り千年だ。
だが、現実の時間経過は数分にも満たないし肉体的なダメージは一切ない」
「うそ、私、千年もこんな牢獄に閉じ込められるってこと? 最低じゃない! 退屈で死んじゃうわ、それに御飯とか御手洗とかどうしよう……」
「いや、そういう問題ではないのだが……。それに今の我々の身体はイメージに過ぎないから食事や睡眠などは必要ない」
「むう、なら退屈なのが問題ね。暇つぶしの方法を考えないと」
「いやいや、だから、君も言っただろう。退屈で死ぬと……つまり魂が死んだ廃人になってしまうというのだ。だから私はこれを死よりも罪深い非人道的な魔法だと言ったのだ」
「なるほど、ベアトリクスの奴、いよいよ化けの皮が剥がれたな、何が女神様だ」
「うん? 君の場合は言えばいいだけじゃないのか? 私は無理だが君は助かるだろう「大好きベアトリクス様」と言えば」
「――っ! それだけは絶対に嫌! ……それに私だけ助かってもハインド君はどうなるの?」
「ふっ、まったく……。殺そうとした相手のことを心配するとは。君は変わった娘だな。ところで先程から随分と態度が違うな。普段の大げさな振る舞いは無理してたのかな? 私としては今の方が良いと思うが」
いつのまにか普段の口調でしゃべっていた。
ルーシーは努力してドラゴンロードの口調をしているので語彙が少ないのだ。だから日常会話となると普段の口調に戻ってしまう。
それに今は緊急事態である為それどころではなかった。
だが指摘されると急に恥ずかしくなる。
「う、うるさいぞ! 我は奴の言いなりになるのが嫌なだけじゃ! こんな牢獄など我が力で――」
ルーシーは照れ隠しに鉄格子の扉を押す。当然鍵が掛けられており開くはずがない。
ゴキン!
金属が断裂する音が牢獄全体に響く。
鉄格子の扉はそのまま外側にゆっくりと開いていった。
「あれ? 私なんかやっちゃった? 錆びてたのかな? でもラッキー!」
ハインドは有り得ない光景に無いはずの骸骨の目を見開いて今起きた現象を考える。
(ありえない。ここは精神の世界で現実ではないのだ。鍵が錆びているとか絶対にありえない。
だが、ルーシーという娘は特に何かしたわけでもない。それに『千年牢獄』を破るには術者以上の魔法使いでなければ不可能だ。この娘はいったい何者なのだ……)
バキン!
今度は鉄格子が折れた。
「なーんだ、これおもちゃじゃない。何で出来てるのかな。飴かしら? でも断面はキラキラしてて金属っぽいけど……」
ルーシーは折れた鉄の棒を振り回すが持った部分から粉々になって崩れていった。
「うーん、ベアトリクスにまんまと騙されたのか。おのれー、どうやって仕返しをしてやろう」
ハインドはルーシーによって破壊された鉄格子の破片を拾う。
(間違いなく鉄だ。生身の力、いや精神世界での私の力では決して壊すことはできないだろう)
「ねぇハインド君。さっきからずっと黙ってるけど、ほら、扉が開いたじゃない。これで私達外に出られるわ」
「あ、ああ。そのようだ。だが、本当に外に出ていいものか。私はお前を殺そうとしたのだぞ?」
「お前じゃない。ルーシーよ。私は……いや。ゴホン。我は呪いのドラゴンロード、ルーシーである! ハインドよ、お主を我が眷属に迎えよう。だから一緒に外の世界へ行こうではないか!」
差し出したルーシーの手を取るハインド。
手をつないだ少女と骸骨は、光が漏れる外への扉に向かって歩いて行った。
ベアトリクスに対する怒りはあるが。本人が目の前にいないので次第に冷静になっていった。
とりあえずは一人ぼっちではない。何とかなるだろう。
それにしてもハインドという牢獄の同居人、意外にもそんなに悪い奴じゃないのかも。
お墓で話をしたときにも思ったが、彼は嫉妬を拗らせていただけで基本的にエリートなのだ、宮廷魔法使いの中でも王様が直轄する特務部隊、執行官だと言っていたのを思い出す。殺しが仕事のだけで別に好きでやっていたわけではないのだろう。
いや、実際は自分に死に至る闇の魔法を掛けたらしいが。まったく無傷だったから別に気にしていない。それに少し煽りすぎた自分も悪かったと反省する。
今となってはベアトリクスの方が絶対に悪い奴だ。
やはり海のドラゴンロードは敵なのだ。
そして敵の敵は味方。ここは協力して立ち回ろうとルーシーはハインドに声を掛ける。
「ところで、ハインド君。千年牢獄ってどんな魔法なのだ? 随分と詳しいみたいだけど」
ハインドも冷静だった。なんとか現状を打開するために骨の手を顎に当てながら考えているポーズを取る。
ルーシーは不覚にもハインドがカッコいいと思ってしまった。
彼女が物語の本で得た知識ではスケルトンは知能が無い雑魚モンスターとしてしか扱われていなかった。それに対し目の前の彼は黒いローブを着た外見と相まって、その知的な姿とのギャップが余計にそう思わせたのだ。
「うむ、よく知っている。極大呪術『千年牢獄』とは対象の魂を時空間の牢獄に閉じ込める拷問の為の魔法。一度魔法に掛けられてしまったら術者の許可なく出ることはできない。刑期は名の通り千年だ。
だが、現実の時間経過は数分にも満たないし肉体的なダメージは一切ない」
「うそ、私、千年もこんな牢獄に閉じ込められるってこと? 最低じゃない! 退屈で死んじゃうわ、それに御飯とか御手洗とかどうしよう……」
「いや、そういう問題ではないのだが……。それに今の我々の身体はイメージに過ぎないから食事や睡眠などは必要ない」
「むう、なら退屈なのが問題ね。暇つぶしの方法を考えないと」
「いやいや、だから、君も言っただろう。退屈で死ぬと……つまり魂が死んだ廃人になってしまうというのだ。だから私はこれを死よりも罪深い非人道的な魔法だと言ったのだ」
「なるほど、ベアトリクスの奴、いよいよ化けの皮が剥がれたな、何が女神様だ」
「うん? 君の場合は言えばいいだけじゃないのか? 私は無理だが君は助かるだろう「大好きベアトリクス様」と言えば」
「――っ! それだけは絶対に嫌! ……それに私だけ助かってもハインド君はどうなるの?」
「ふっ、まったく……。殺そうとした相手のことを心配するとは。君は変わった娘だな。ところで先程から随分と態度が違うな。普段の大げさな振る舞いは無理してたのかな? 私としては今の方が良いと思うが」
いつのまにか普段の口調でしゃべっていた。
ルーシーは努力してドラゴンロードの口調をしているので語彙が少ないのだ。だから日常会話となると普段の口調に戻ってしまう。
それに今は緊急事態である為それどころではなかった。
だが指摘されると急に恥ずかしくなる。
「う、うるさいぞ! 我は奴の言いなりになるのが嫌なだけじゃ! こんな牢獄など我が力で――」
ルーシーは照れ隠しに鉄格子の扉を押す。当然鍵が掛けられており開くはずがない。
ゴキン!
金属が断裂する音が牢獄全体に響く。
鉄格子の扉はそのまま外側にゆっくりと開いていった。
「あれ? 私なんかやっちゃった? 錆びてたのかな? でもラッキー!」
ハインドは有り得ない光景に無いはずの骸骨の目を見開いて今起きた現象を考える。
(ありえない。ここは精神の世界で現実ではないのだ。鍵が錆びているとか絶対にありえない。
だが、ルーシーという娘は特に何かしたわけでもない。それに『千年牢獄』を破るには術者以上の魔法使いでなければ不可能だ。この娘はいったい何者なのだ……)
バキン!
今度は鉄格子が折れた。
「なーんだ、これおもちゃじゃない。何で出来てるのかな。飴かしら? でも断面はキラキラしてて金属っぽいけど……」
ルーシーは折れた鉄の棒を振り回すが持った部分から粉々になって崩れていった。
「うーん、ベアトリクスにまんまと騙されたのか。おのれー、どうやって仕返しをしてやろう」
ハインドはルーシーによって破壊された鉄格子の破片を拾う。
(間違いなく鉄だ。生身の力、いや精神世界での私の力では決して壊すことはできないだろう)
「ねぇハインド君。さっきからずっと黙ってるけど、ほら、扉が開いたじゃない。これで私達外に出られるわ」
「あ、ああ。そのようだ。だが、本当に外に出ていいものか。私はお前を殺そうとしたのだぞ?」
「お前じゃない。ルーシーよ。私は……いや。ゴホン。我は呪いのドラゴンロード、ルーシーである! ハインドよ、お主を我が眷属に迎えよう。だから一緒に外の世界へ行こうではないか!」
差し出したルーシーの手を取るハインド。
手をつないだ少女と骸骨は、光が漏れる外への扉に向かって歩いて行った。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
【完結】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。
猫都299
青春
坂上明には小学校から高校二年になった現在まで密かに片想いしていた人がいる。幼馴染の岸谷聡だ。親友の内巻晴菜とはそんな事も話せるくらい仲がよかった。そう思っていた。
ある日知った聡と晴菜の関係。
これは明が過去に募らせてしまった愚かなる純愛へ一矢報いる為、協力者と裏切り返す復讐(イチャイチャ)の物語である。
※2024年8月10日に完結しました! 応援ありがとうございました!(2024.8.10追記)
※小説家になろう、カクヨム、Nolaノベルにも投稿しています。
※主人公は常識的によくない事をしようとしていますので気になる方は読まずにブラウザバックをお願い致します。
※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。関連した人物も、たまに登場します。(2024.12.2追記)
※番外編追加中・更新は不定期です。(2025.1.30追記)←番外編も完結しました!(2025.9.11追記)
※【修正版】をベリーズカフェに投稿しています。Nolaノベルでは全話限定公開・修正中です。(2025.10.29追記)
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
なお、シリーズ第二作目が、現在なろう様、カクヨム様で連載しています。
2月13日完結予定。
その後、アルファポリス様にも投稿する予定でいます。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる