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第四章 学園編1
第42話 自己紹介
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オリビア学園、魔法学科の最初の授業が始まる。
ソフィアから聞いた話では、魔法学科一年生の担当教諭は新任らしい。
今や世界は魔法機械の時代だというので、魔法学科は下火で教員不足らしいのだ。
他人事であったので感心は無かったが、いざ自分が魔法学科の生徒になると、すこし残念に思った。
ルーシーとて魔法機械に興味が無いわけではないが、そもそも基礎となる魔法を軽視して魔法機械はありえない。
そんな事を思っていると、教室の扉が開く。一人の女性が教室に入ってきた。そして教壇の前に立つと彼女は言った。
「やー! 新入生諸君。 私が魔法学科一年担当のイレーナであーる。
新任とはいえ冒険者としてはベテランであーる。こほん……一応、魔法使いとしてはマスター級だから教員としての資格はばっちりです、よろしくねっ!」
明らかにルーシーに向けてウインクをする新任の先生。
「イレーナさん。なぜ……」
いや、ルーシーは聞いていた。イレーナさんは確かにベラサグンを拠点にして仕事をすると言っていた。
だが、教員になるとは聞いていなかった。それでも入学式の時に顔を見たはずだ。
しかしルーシーは学園長の長話ですっかり眠っていたのだ。もしかしたらイレーナの挨拶があったのかもしれない。
そういえばイレーナは送り迎えだというのに、ドレスを着ていたのを今思い出した。
ルーシーは思う。今は他人の振りをするべきか。
でもそれはどうか、どの道、いずれクラスの皆にはバレるのだ。
身内の人が先生……いや、身内ではない。イレーナさんとは移動の時にお世話になっただけだ。
とてもお世話になった。……それだけ、他人と言えば通じるだろう。と思い込むことにした。
「さてと、じゃあ。さっそくですけど。魔法学科の皆さん、自己紹介をしましょう。ある程度の魔法を使ってアピールすることも許可しますけど、火の魔法は禁止ですよ? 教室を燃やしたら退学ですからねっ!」
◇◇◇
自己紹介は淡々とすすむ。
「――ですので。僕は魔法を皆様と一緒に研鑽していきたいと思っています! ありがとうございました」
ぺこりと一礼をする男子生徒。ぱちぱちと拍手が起こる。
ルーシーは彼の名前すら一つも頭に入らない。
自分の事で精一杯だ。順番が最初なら、もっとちゃんと聞けるのに。と思いながら自分の番を待つ。
そしてソフィアの番がきた。これはルーシーも他人事ではない。
昨日の挨拶の手直し……というか、全面的に変更した内容をすぐに喋れるだろうか。
ソフィアは席をたち教壇の前に立つと深呼吸をする。
「私は、ソフィア・レーヴァテインと申します。最近できた伯爵家ですので知らない方のほうが多いと思います。
レーヴァテイン家のルーツは旧エフタル王国にあり、祖父の代で断絶していました。
しかし先代の皇帝陛下の計らいで、他国の貴族家であるにも関わらず伯爵家を復興してくださり。ここより北方のタラスという街に居を構えています。
レーヴァテインという家名は母方にルーツがありますが父は婿養子ではありません、えっと、なんと説明しましょうか……」
昨日の打合せ通り。まずは自分の出自の話から始まった。
ルーシーとしては一安心だ。しかし、これはこれで少し退屈だなと思った。インパクトは昨日の方が圧倒的に上だったのだ。
「――というわけで、皆さまこれからよろしくお願いします。魔法は母からある程度教わっておりますので。この学園ではぜひ、魔法の闇、その深淵を覗きたいと思っております」
ソフィアは少し強引ではあったが。闇と深淵というワードを残し挨拶を終えた。
魔法の披露は無かった。これも昨日打合せしておいてよかった。
彼女は攻撃魔法が得意であったため壁の一つも吹き飛ばせば、誰からも尊敬されると思い込んでいたのだ。そんなことすれば退学である。
いよいよルーシーの番だ。
ソフィアとすれ違う。頑張ってと、ソフィアの目はそう言っていた気がした。
深呼吸をする。練習はばっちりだ、堂々と挨拶するのみ。
「私は、ルーシー・バンデル。出身は東グプタです。父はグプタ警備隊長をしています。母は専業主婦ですが、昔はエフタル共和国で政治の仕事をしていたそうです。
母が魔法使いなので私には少しだけ魔力があります。なぜ遠いグプタから来たかというと、2年ほど前、グプタの豪華客船で呪いの魔法を使った盗難事件がありました。
私は呪いの魔法に対抗するためにもっと勉強したいと思い、この学園に入学を決意しました。
私はまだ魔法は使えません、ですが少しだけ精霊召喚ができますので披露させていただきます」
ルーシーは手をかざすと、そこにモヤモヤと黒い煙が出てぼんやりとした人型をつくる。
「ハインド君という闇の精霊の様なものです。簡単な攻撃魔法が使えます」
クラスの生徒たちはガヤガヤとする。
「あれって何の魔法なのかしら?」
「闇の精霊って知ってるか?」
余程珍しかったのだろう。当然だがルーシーにしか使えな魔法なので知る人はいないのだ。
「はいはい、皆さん静かに。これはルーシーちゃんのオリジナル魔法です。皆さんもこういう固有の魔法を作るのは勉強になるでしょう。もちろん先生もお手伝いします。では次の方――」
こうして無事に自己紹介は終わった。
ソフィアから聞いた話では、魔法学科一年生の担当教諭は新任らしい。
今や世界は魔法機械の時代だというので、魔法学科は下火で教員不足らしいのだ。
他人事であったので感心は無かったが、いざ自分が魔法学科の生徒になると、すこし残念に思った。
ルーシーとて魔法機械に興味が無いわけではないが、そもそも基礎となる魔法を軽視して魔法機械はありえない。
そんな事を思っていると、教室の扉が開く。一人の女性が教室に入ってきた。そして教壇の前に立つと彼女は言った。
「やー! 新入生諸君。 私が魔法学科一年担当のイレーナであーる。
新任とはいえ冒険者としてはベテランであーる。こほん……一応、魔法使いとしてはマスター級だから教員としての資格はばっちりです、よろしくねっ!」
明らかにルーシーに向けてウインクをする新任の先生。
「イレーナさん。なぜ……」
いや、ルーシーは聞いていた。イレーナさんは確かにベラサグンを拠点にして仕事をすると言っていた。
だが、教員になるとは聞いていなかった。それでも入学式の時に顔を見たはずだ。
しかしルーシーは学園長の長話ですっかり眠っていたのだ。もしかしたらイレーナの挨拶があったのかもしれない。
そういえばイレーナは送り迎えだというのに、ドレスを着ていたのを今思い出した。
ルーシーは思う。今は他人の振りをするべきか。
でもそれはどうか、どの道、いずれクラスの皆にはバレるのだ。
身内の人が先生……いや、身内ではない。イレーナさんとは移動の時にお世話になっただけだ。
とてもお世話になった。……それだけ、他人と言えば通じるだろう。と思い込むことにした。
「さてと、じゃあ。さっそくですけど。魔法学科の皆さん、自己紹介をしましょう。ある程度の魔法を使ってアピールすることも許可しますけど、火の魔法は禁止ですよ? 教室を燃やしたら退学ですからねっ!」
◇◇◇
自己紹介は淡々とすすむ。
「――ですので。僕は魔法を皆様と一緒に研鑽していきたいと思っています! ありがとうございました」
ぺこりと一礼をする男子生徒。ぱちぱちと拍手が起こる。
ルーシーは彼の名前すら一つも頭に入らない。
自分の事で精一杯だ。順番が最初なら、もっとちゃんと聞けるのに。と思いながら自分の番を待つ。
そしてソフィアの番がきた。これはルーシーも他人事ではない。
昨日の挨拶の手直し……というか、全面的に変更した内容をすぐに喋れるだろうか。
ソフィアは席をたち教壇の前に立つと深呼吸をする。
「私は、ソフィア・レーヴァテインと申します。最近できた伯爵家ですので知らない方のほうが多いと思います。
レーヴァテイン家のルーツは旧エフタル王国にあり、祖父の代で断絶していました。
しかし先代の皇帝陛下の計らいで、他国の貴族家であるにも関わらず伯爵家を復興してくださり。ここより北方のタラスという街に居を構えています。
レーヴァテインという家名は母方にルーツがありますが父は婿養子ではありません、えっと、なんと説明しましょうか……」
昨日の打合せ通り。まずは自分の出自の話から始まった。
ルーシーとしては一安心だ。しかし、これはこれで少し退屈だなと思った。インパクトは昨日の方が圧倒的に上だったのだ。
「――というわけで、皆さまこれからよろしくお願いします。魔法は母からある程度教わっておりますので。この学園ではぜひ、魔法の闇、その深淵を覗きたいと思っております」
ソフィアは少し強引ではあったが。闇と深淵というワードを残し挨拶を終えた。
魔法の披露は無かった。これも昨日打合せしておいてよかった。
彼女は攻撃魔法が得意であったため壁の一つも吹き飛ばせば、誰からも尊敬されると思い込んでいたのだ。そんなことすれば退学である。
いよいよルーシーの番だ。
ソフィアとすれ違う。頑張ってと、ソフィアの目はそう言っていた気がした。
深呼吸をする。練習はばっちりだ、堂々と挨拶するのみ。
「私は、ルーシー・バンデル。出身は東グプタです。父はグプタ警備隊長をしています。母は専業主婦ですが、昔はエフタル共和国で政治の仕事をしていたそうです。
母が魔法使いなので私には少しだけ魔力があります。なぜ遠いグプタから来たかというと、2年ほど前、グプタの豪華客船で呪いの魔法を使った盗難事件がありました。
私は呪いの魔法に対抗するためにもっと勉強したいと思い、この学園に入学を決意しました。
私はまだ魔法は使えません、ですが少しだけ精霊召喚ができますので披露させていただきます」
ルーシーは手をかざすと、そこにモヤモヤと黒い煙が出てぼんやりとした人型をつくる。
「ハインド君という闇の精霊の様なものです。簡単な攻撃魔法が使えます」
クラスの生徒たちはガヤガヤとする。
「あれって何の魔法なのかしら?」
「闇の精霊って知ってるか?」
余程珍しかったのだろう。当然だがルーシーにしか使えな魔法なので知る人はいないのだ。
「はいはい、皆さん静かに。これはルーシーちゃんのオリジナル魔法です。皆さんもこういう固有の魔法を作るのは勉強になるでしょう。もちろん先生もお手伝いします。では次の方――」
こうして無事に自己紹介は終わった。
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