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第四章 学園編1
第43話 的当て①
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「じゃあ、今日は初日だし、いきなり座学ってのも面白くないかな。皆もそう思うよね? まあ、これからの成績には一切関係ないから楽しんでね」
イレーナ先生は。学園内の訓練場に生徒たちを案内する。
「ここは、騎士学科も使うから剣とかもあるよ。ちなみに先生は魔法戦士だから、剣だって少しは出来ます。諸君も魔法だけでなく剣も知りたければ遠慮なく行ってきなさい? あとは、たまに他学科との交流試合もあるから楽しみにしててね」
学園の中庭にある訓練場。そこは高い石の壁に囲まれていた。足元も整然と並べられた大きな石畳が広がっている。
訓練場の一角には魔法使いが訓練するための魔法の的があった。攻撃魔法を精密に放つための施設だ。
「まあ、皆はいきなり的当てって思うでしょ? 魔法学校ってこれしかないのかって思うじゃん。
でもこれはこれで面白いのよ。思いっきり魔法をぶっ放すってのはストレス発散にもってこいってね。
入学式からさっきの自己紹介、緊張しっぱなしだったでしょ? そろそろ身体を動かさないとねっ!」
イレーナ先生はさっそく、的に向かって魔法を放つ。
「アイスニードル!」
初級魔法、アイスニードル。こぶし大の小さな氷が遠くにある的の中央に命中する。
カーン、と乾いた音が訓練場に響く。
「どう! 面白いでしょ? 魔法は面白くなくっちゃ。じゃあ順番に的当てゲームをしましょう!」
◇◇◇
ルーシーは楽しくない。
攻撃魔法は何一つ使えないからだ。
イレーナ先生にはアイスニードルを先に教えてほしかった。
ルーシーは訓練場の隅っこのベンチに座り、同級生たちを眺めていた。
彼らはぎこちないながらも魔法を的に向かって放っていた。
小さな火の玉、氷に石つぶて等。
やはり魔法学科に入学する生徒はいずれも初級魔法の一つは使えるのだろう。
中にはイレーナ先生のように的に命中させる生徒も何人かいた。
やはり自分は一人ぼっちになってしまうんだろうか……。
不安に思うルーシーの隣にいつの間にやらソフィアが座っていた。
「あら、奇遇ですわね、ルーシーさんも的当がくだらないと思ってる派閥で安心したわ」
「ソフィアさんは魔法が得意じゃなかったんですか?」
「うふふ、私はイレーナ先生に追い出されてしまいました。くだらないから的ごと吹き飛ばそうと思って、アイスジャベリンを使おうとしたのがバレてしまいまして。
しかし、イレーナ先生は本物ですね。アイスニードルを放つふりをしてたのですが、微妙な魔力の変化を感じたのでしょう」
ソフィアは笑う。なぜそんなことをしたのか分からなかった。ただ……
「ソフィアさん。私に気を使ったの? 魔法が使えない私を気遣って、わざと」
「うふふ、もちろんわざとですわ。的当てって本当にくだらない。よくあるのよ。これの成績がよかったから偉いとか。
イレーナ先生はただのストレス解消っていってたけど、これまでの魔法学園の慣習では実際にこれで魔法使いのランクは決まる。具体的にはクラスでの順位ってところかしら。スクールカーストってやつ?
定期試験でやるならまだしも、入学初日にやるにしては愚かなことだわ。これから勉強する生徒に失礼よ。だからイレーナ先生は初日の授業を遊びとして扱ってるんだと思うんだけど……」
ソフィアは熱く語る。
的当て試験は魔法使いにとっては重要なのは正しい。
精密に魔法を的に当てるのは実戦においては必須だからだ。
それでも入学初日にそれでランク分けをするという制度自体が馬鹿げている。
高ランクの者は増長し。下位であったものは劣等感を持ってしまうからだ。
イレーナ先生もあくまでストレス発散とは言っていたが、学園の教員であるので当然これで生徒をランク付けせざるを得ないだろう。
「あ、ごめんなさい。お母様が私の入学が決まってから毎日私に言い聞かせてたことだからつい語ってしまったわね……」
ソフィアの母は魔法教育については厳しいようだが正しく立派な考えを持っている。
いつかソフィアの母に会ってみたいと思わせるくらいに素敵な方だとルーシーは思った。
「だったら余計にソフィアさんは的当てをしなくて良かったんですか? スクールカーストの上位って大事なんじゃ?」
「いいのよ、イレーナ先生が言ってたじゃない。ただのストレス解消だって。私はストレスは今のところないし、ルーシーさんとお話してる方がよっぽど楽しい。
せっかくですし、ルーシーさんの魔法、ハインド君をもっと見せてくれると嬉しいわ」
イレーナ先生は。学園内の訓練場に生徒たちを案内する。
「ここは、騎士学科も使うから剣とかもあるよ。ちなみに先生は魔法戦士だから、剣だって少しは出来ます。諸君も魔法だけでなく剣も知りたければ遠慮なく行ってきなさい? あとは、たまに他学科との交流試合もあるから楽しみにしててね」
学園の中庭にある訓練場。そこは高い石の壁に囲まれていた。足元も整然と並べられた大きな石畳が広がっている。
訓練場の一角には魔法使いが訓練するための魔法の的があった。攻撃魔法を精密に放つための施設だ。
「まあ、皆はいきなり的当てって思うでしょ? 魔法学校ってこれしかないのかって思うじゃん。
でもこれはこれで面白いのよ。思いっきり魔法をぶっ放すってのはストレス発散にもってこいってね。
入学式からさっきの自己紹介、緊張しっぱなしだったでしょ? そろそろ身体を動かさないとねっ!」
イレーナ先生はさっそく、的に向かって魔法を放つ。
「アイスニードル!」
初級魔法、アイスニードル。こぶし大の小さな氷が遠くにある的の中央に命中する。
カーン、と乾いた音が訓練場に響く。
「どう! 面白いでしょ? 魔法は面白くなくっちゃ。じゃあ順番に的当てゲームをしましょう!」
◇◇◇
ルーシーは楽しくない。
攻撃魔法は何一つ使えないからだ。
イレーナ先生にはアイスニードルを先に教えてほしかった。
ルーシーは訓練場の隅っこのベンチに座り、同級生たちを眺めていた。
彼らはぎこちないながらも魔法を的に向かって放っていた。
小さな火の玉、氷に石つぶて等。
やはり魔法学科に入学する生徒はいずれも初級魔法の一つは使えるのだろう。
中にはイレーナ先生のように的に命中させる生徒も何人かいた。
やはり自分は一人ぼっちになってしまうんだろうか……。
不安に思うルーシーの隣にいつの間にやらソフィアが座っていた。
「あら、奇遇ですわね、ルーシーさんも的当がくだらないと思ってる派閥で安心したわ」
「ソフィアさんは魔法が得意じゃなかったんですか?」
「うふふ、私はイレーナ先生に追い出されてしまいました。くだらないから的ごと吹き飛ばそうと思って、アイスジャベリンを使おうとしたのがバレてしまいまして。
しかし、イレーナ先生は本物ですね。アイスニードルを放つふりをしてたのですが、微妙な魔力の変化を感じたのでしょう」
ソフィアは笑う。なぜそんなことをしたのか分からなかった。ただ……
「ソフィアさん。私に気を使ったの? 魔法が使えない私を気遣って、わざと」
「うふふ、もちろんわざとですわ。的当てって本当にくだらない。よくあるのよ。これの成績がよかったから偉いとか。
イレーナ先生はただのストレス解消っていってたけど、これまでの魔法学園の慣習では実際にこれで魔法使いのランクは決まる。具体的にはクラスでの順位ってところかしら。スクールカーストってやつ?
定期試験でやるならまだしも、入学初日にやるにしては愚かなことだわ。これから勉強する生徒に失礼よ。だからイレーナ先生は初日の授業を遊びとして扱ってるんだと思うんだけど……」
ソフィアは熱く語る。
的当て試験は魔法使いにとっては重要なのは正しい。
精密に魔法を的に当てるのは実戦においては必須だからだ。
それでも入学初日にそれでランク分けをするという制度自体が馬鹿げている。
高ランクの者は増長し。下位であったものは劣等感を持ってしまうからだ。
イレーナ先生もあくまでストレス発散とは言っていたが、学園の教員であるので当然これで生徒をランク付けせざるを得ないだろう。
「あ、ごめんなさい。お母様が私の入学が決まってから毎日私に言い聞かせてたことだからつい語ってしまったわね……」
ソフィアの母は魔法教育については厳しいようだが正しく立派な考えを持っている。
いつかソフィアの母に会ってみたいと思わせるくらいに素敵な方だとルーシーは思った。
「だったら余計にソフィアさんは的当てをしなくて良かったんですか? スクールカーストの上位って大事なんじゃ?」
「いいのよ、イレーナ先生が言ってたじゃない。ただのストレス解消だって。私はストレスは今のところないし、ルーシーさんとお話してる方がよっぽど楽しい。
せっかくですし、ルーシーさんの魔法、ハインド君をもっと見せてくれると嬉しいわ」
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