自分をドラゴンロードの生まれ変わりと信じて止まない一般少女

神谷モロ

文字の大きさ
52 / 151
第四章 学園編1

第52話 選択必修科目

しおりを挟む
「アイスニードル! アイスニードル! まだまだいっくよー! アイスニードル!」

 連続して的に向かって魔法を放つルーシー。

 ここは先日使用した訓練場である。

 的からの距離は20メートル。今のところ10発中1発の命中率である。

 今はそれでいい、今までは魔法の発動すらできなかったのだから。
 同級生達は誰も止めない。皆はルーシーの気持ちはよくわかるのだ。

 初めて魔法が使えたあの日は、魔力が無くなるまで全力で放ったものだと。

「さーて、ルーシーちゃんの課題はコントロールね、さてと、皆はこれをどうすれば改善できるか知ってる?」

 イレーナはルーシーを題材に魔法の制御についての授業を始める。

 生徒たちは各々の改善案を提示する。

 ここでも活躍したのはリリアナであった。

 ソフィアは元々、魔法の命中率は百発百中であるため、どう改善したらいいか分からなかったのである。
 本当なら自分がルーシーに改善案を提示したかった。
 少し悔しかったがそれはそれとして受け止める。

 それにルーシーとはルームメイトであるのだ。共に過ごす時間は他の生徒に比べて圧倒的に多い。余裕の態度であった。

 ルーシーは様々な改善案を聞きながら魔法を放つ。
 およそ100発近いアイスニードルを撃ったが、元気いっぱいだった。

「ルーシーさん、実はとんでもない大物かもしれないな」

 アイザックが言うと、皆頷く。魔力の総量は計り知れないのだ。
 ルーシーはそれを聞くと、皆の前に振り返り、両手を腰に当て胸を張って言った。

「ふふーん、ただグプタで遊んでたわけではないのよ。ちゃーんと修行してたんだから。あれ? そういえば今日はあいつが居ない。せっかく私が遊び人でないという事を証明してやろうと思ったのに……」

 そう、今日はグプタ出身で遊び人と言っていた張本人であるニコラスは居なかった。

 イレーナが答える。

「うーん、ニコラス殿下は今日は欠席なのかしら、家の事情で何かあったのかもしれないわね。さすがに理由なくサボる方ではないし……そういえば、アベル君もゴードン君も欠席だし。やっぱお家の事情かしらね」

「ねえ、ソフィアさん。アベル君とゴードン君って?」

「もう、ルーシーさんったら。ほら、いたでしょ? いつもニコラス殿下の隣にいる取り巻きの男の子達よ。当然、高い身分の貴族の家柄ですから、取り巻きなんて絶対に言っては駄目よ?」

 もちろんだと、ルーシーは大きく頷く。
 彼らもクラスメートであり、友達になりたいのだ。そんな失礼なことは言わない。

 ◇◇◇

 午後は選択必修科目である。

 選択必修とは、いくつかある体系の魔法から自分の習得したい魔法をより専門的に学ぶの為の科目である。

 学生はどれでもいいが一つは必ず履修する必要があり、これは卒業に必要な科目である。

「ルーシーさんはどれにします? 私これがいいですわ」

 授業計画の書かれた冊子・シラバスのとあるページを開くとソフィアはルーシーに見せる。

「ふむ、どれどれ? ……闇の魔法に対する防衛術? なんか地味じゃない? 防衛術って……闇の魔法そのものならまだしも……」

「ルーシーさん。そこよ! だからこの学科は人気がないの。ふふふ、でもね、私は知ってる。
 実はね、防衛術ってのは建前で、闇の魔法そのものを習う授業なのよ。体裁が悪いから防衛術なんだって。 つまりは学園の外で使ったら捕まっちゃう魔法を学園内で合法的に学べるのよ。素敵でしょ?」

 ルーシーとしては願ったりかなったりだった。闇の魔法を学ぶことが出来るのだ。
 少し忘れかけていたが、ハインド君がおかしくなったという闇の魔法。それを学ぶことが学園に入学する切っ掛けだったのだ。ルーシーは大きな声でソフィアに答える。

「ならばよし! 私もそれにする! アイザック君とリリアナさんはどうする?」

「うーん、ごめん。俺達は魔法機械学入門にするって決めてるんだ。本格的なのは諦めたけど、それでも憧れはあるしな」

「そっか、ならしょうがないね、じゃあ、また明日」

 昼食を終えるとルーシーとソフィアは選択必修の教室へ向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...