【完結】カイルとシャルロットの冒険 ~ドラゴンと魔剣~

神谷モロ

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第一章 プロローグ

第4話 図書館①

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 図書館に着く頃には日が沈み、月が顔を見せていた。

 夜の図書館は、薄暗く普段と違い僅かな明かりが灯っているだけだった。

 かろうじで本のタイトルが分かる程度の明かりが普段以上に図書館を不気味にさせた。

 むしろ廊下の外から差しこむ月明かりの方が明るい。
 気が付かなかったけど今日は満月だったっけ。

 おっちゃん達はいまごろ宴会だろうな、どんちゃん騒ぎの音がここまで聞こえてきそうだ。

 それにあの旅芸人の女性、名前は聞いてなかった、姫様って呼ばれてたっけ。
 旅芸人の姫か、おっちゃんが鼻の下を伸ばすのも理解できる。すごい美人だったな。 

 いやいや、俺は今日は勉強をすると決めたのだ。

 さてと、本を探すか。
 俺は学生証を司書さんに見せると何も言わずに頷いただけだった。

「あの、美術品とかそういう教養の本をさがしてるんですけど」

 そう言うと司書さんはすっと奥の本棚に向かって指さす。
 やはり喋らない。
 この司書さん、本当に無口だ。人間なんだろうか。
 夜になるとその無表情さで少し薄気味悪さすらある。

 教養コーナーにいくとずらっと並んだ本、俺はその中で『武器と近代美術史 ――フリードリヒ・レーヴァテイン著』と背表紙に書かれた本を手に取る。

 興味を引くタイトルだ。
 俺は迷うことなくそれを取り出すと、図書館中央にあるテーブルに移動しさっそく本を開く。

 どれどれ。

 ――まだ魔法が成熟する前の古代において、人類は皆武器を手にして戦っていた。
 武器、剣を代表として槍、弓など多岐にわたる。
 現代でも魔力を持たない者たちにとってこれらの武器は現役で使われているのは諸君らも承知の事実だろう。
 だが、我々貴族にとっても武器とは別の価値を見出しながらも進化し存続しているのだ。――
 
 ふむ、最初の章は武器の進化の歴史がざっくりと書かれているな。これはもう習ってるから飛ばそう。
 次の章だ。   

 ――魔剣の登場。
 魔法文明が成熟した近代において、貴族は武器を捨て、魔法の杖を持つようになった。
 様々な魔法を学びそしてそれを後世に伝える、血統を重んじる魔法使いの誕生だ。
 魔法使いと呼ばれる特別な存在は貴族の社会をより強く豊かにした。

 だがそこに大きな事件が起きた。 

 戦いにおいては同じ魔法使い以外では負けることなどない、と思われていた魔法使いだったが。 
 致命的な弱点が露呈したのだ。
 一人の傲慢な魔法使いが平民との決闘で敗北した。
 これは貴族社会を大きく揺るがした。

 当初はその傲慢な魔法使い一人の問題で、大半の貴族たちは敗北した個人を軽蔑するにとどめたが。
 その事実が平民を奮い立たせ。
 魔法使いへの対策方法が研究されるようになった。

 やがて時が経ち、高名な戦士にとっては魔法使いは無防備であるとまで言われるようになった。

 最初に敗北した傲慢な魔法使いは、魔法の撃ちすぎによる魔力枯渇をおこし、無防備のまま殺された。 
 魔力の無い魔法使いなど平民以下である。
 身体強化の魔法が切れた魔法使いはまるで老人のように愚鈍な動きとなり。
 腕力でも劣り攻撃を受け止めることもできずに切り殺されてしまったのだ。

 魔法使いは無防備である。
 高名な戦士のその言葉は、後輩たちの希望となり、技術は磨かれていった。
 現代では騎士の剣術や盗賊の暗殺スキルなど様々な戦闘スキルとして細分化していった。

 魔法使いとしては当然対策を講じなければならない。

 そこで魔剣の登場である。

 当然ではあるが、魔剣に到達するまでには紆余曲折があった。
 最初は杖の先に剣を装着することから始まった。
 魔力切れの際に槍として使うためだ。

 だが、魔法使いには接近戦をこなせる技量は無いし腕力もない。

 ただ杖に重りを乗せただけで解決になっていない。美的センスの欠片もない愚か者の行為だと一蹴された。
 筆者も同感である。

 魔法使いにも戦士として教育を施してはどうかと一部の貴族が主張するも、当然そんなことは貴族のプライドに反するとして、やはり受け入れられるものではなかった。 

 そんな最中、魔法理論に変革が起きた。
 魔法使いの武器といえば杖だ、その種類は多岐にわたるが大半は木製であり軽く、魔法使いの身動きの制限にならないものが良いとされていた。

 だが、杖でなければならないという固定概念を改め、剣自体に杖としての能力を付与すればよいのではと。

 しかし長年の伝統から魔法使いの杖の形を否定する動きに、保守的な貴族たちは反対した。
 曰く、無骨な剣は平民を思わせるため論外であると。

 そこで、妥協案として、華美な装飾をほどこした美しい細身の剣が作られた。
 木製の杖と重さも同等で、接近戦ではほぼ役に立たないであろう魔法剣。

 貴族たちはミスリルをベースに贅沢に魔石をはめ込んだ新しくも美しい芸術作品に夢中になった。

 剣の形を残しつつも芸術性を持たせたそれは近代美術に革命をもたらした。
 そして、その魔法剣はさらなる進化を迎えるのだ。
 
 私はこの時代に生まれたことは幸運だった。
 同時代を生きるルカ・レスレクシオンという天才魔法使いが、この魔法剣を改良し。新たな時代が始まったのだ。

 ルカ・レスレクシオン卿、個人に関しては、別途その半生をまとめた本を執筆したいほどの偉人である。

 さて、彼女の功績は多岐にわたる。魔法機械、我らの生活水準を引き上げた彼女の功績はキッチンカーを代表とする生活用魔法機械の発明なのは周知の事実であるが。
 彼女の学生時代の研究はこの魔法剣の改良、改善だったのは諸君らにとっては初耳であろう。――


 ふう、そういえばキッチンカーって家にあったよな。
 あれは動力となる魔石の維持費が大変で結局は倉庫にしまったままの。

 平民でも使える魔法機械をうたってた道具屋に騙されておっちゃんが買ったやつ。
 魔石なんてぽんぽん買えるのは貴族様だけだというのに。

 無駄な買い物するものだと呆れたっけ。
 でも意外だな、ルカ・レスレクシオンは金の亡者だと思ってたけど、魔剣開発の方が先だったのか。
 しかも俺よりも若いころから始めている。

 なるほどな、偉人になる人は皆、俺くらいの年齢で何かを成し遂げているのか。
 シャルロットもきっとそうなるだろうな。現に俺よりも6歳も年下で同学年なんだから。
 
 おっと、続きを読もう。
 月がてっぺんに昇るまでは勉強をする。
 俺だって努力しないと。
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