【完結】カイルとシャルロットの冒険 ~ドラゴンと魔剣~

神谷モロ

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第三章 港町

第35話 西グプタ①

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 ついに俺達は西グプタに到着した。

 西グプタは東グプタと違い、平地が多いのだろう。
 港沿いの建物は木造や石造りの建物が並ぶ。
 斜面の多い立体的な構造の東グプタとは違い、見上げるとすぐに青い空が広がっていた。

 街自体の面積は西グプタの方が広いそうだ。

 港からは見えなかったが、街の端には高い城壁が建てられており城郭都市となっているらしい。

 街の外はカルルク帝国の領土になる、国土の大半は岩石砂漠になっているようで、魔物が徘徊しているらしい。

 カルルク帝国の各都市はオアシスを囲むよう家々が立ち並んでおり、周辺を城壁に囲まれた城郭都市になっているそうだ。

 だからカルルクの商人は商隊を組んで移動をする。
 とうぜん魔物から商隊を守るために冒険者も同行する。

 俺達はここで冒険者登録をするようにと東グプタの盟主に言われている。

「さて、お二人よ。まずは西グプタの盟主を紹介しようかの」

 そういうと、ベアトリクスは歩き出した。
 後を振り返ると。船長をはじめ船員さん達は大きく手を振っていた。

 この一週間、大きな事故もなく無事に着くことが出来たのも彼らのおかげだろう。
 いろいろな人の仕事で世界は周っているんだと実感したのだった。

 俺達は桟橋を降りると、そのままベアトリクスに案内されるままに港の近くにある一番大きい建物に入った。

 ここが西グプタの盟主の屋敷らしい。

 ベアトリクスは入り口の扉をあける。
 普通は玄関のベルを鳴らすべきところだが、まあベアトリクスはそんなことしなくてもいいだろう。
 俺達が入ると、中から職員らしき、というか執事さんだろうか、そういう格好をした初老の男性が出てきた。

「おう、アドバーグよ、久しぶりだな。今日はミリアムに会いに来た。アミールから頼まれての。少し時間はあるかの? 西グプタの盟主になってから忙しいと聞くが」

「お久しゅうございます。ミリアム様は執務室におられます。おっしゃる通り忙しいとは思いますが、せっかく女神様が訪ねて来たのに、それ以上に優先する仕事はグプタが始まって以来一度もありません。ではご案内いたします」

「お、おう、それはそれで困るのだがな。せめて人命に関わる仕事は除いておくれよ」

 俺達は執事さんに二階に案内された。そこは盟主の執務室になっていた。

「ミリアム様、女神様がいらっしゃいました」

「な! そ、そんな急に。こんなみっともない姿で、どうしましょう。アドバーグさん、鏡を持ってきて!」

 西グプタの盟主ミリアムは慌てて。髪の毛の手入れを始めていた。この人が東グプタの盟主アミールさんの娘さんか。

 たしかまだ20代だと聞いた。若いのに盟主だなんて。いろいろ大変なんだな。

「ミリアムよ、まったく。今さら身だしなみを気にするなら普段からちゃんとせんか、相変わらずお主は変らんのう。どれ私が梳かしてやろう」

「は、はい面目ないです……えへへ」

「あ、あの。ベアトリクスさん、そろそろ俺達に紹介していただけると」

 ミリアムは俺達に気付いたのか、あわてて姿勢をただした。

「あの、女神様このお客人はどなたでしょうか」

「ああ、そうだった。アミールに頼まれての。彼らには冒険者として、ここで仕事をしてもらおうというわけだ。事情はお主ならわかるであろう?」

「あ、はい。そうですね、面目ないです。頼りっぱなしで……まだまだ私は半人前です。なさけない」

「そうだな。まだ半人前なのはあたりまえだろうて。まあその間にいろいろ勉強するのだ。頼れる人には素直に頼るのも盟主としての仕事だぞ?」

 ミリアムは西グプタが抱えている問題を俺達に話してくれた。

 最近、城壁の外の魔物が活発になっているらしく。商人達に被害が出ているようだ。
 そこで俺達に冒険者になってもらい魔物の討伐をしてほしいとのことだった。

 ベアトリクスなら一瞬でかたがつくのではと思ったが。ベアトリクスはそうしない。

 そもそも彼女一人では街の人すべてを救えない。助けた人と助けなかった人に差が生まれると、また争いが生まれるからだという。

 例外として彼女が介入するのは、自身の住処であるグプタの海に犯す魔物や。ドラゴンなどの強力な敵が現れた時だ。

 それ以外は彼女はいるだけだ。もちろん病気の人がいたら助けるし、困ってる人がいたら出来る範囲で手助けをする。それは人の範囲で出来ることに限定される。

 だが一つだけ願いを叶えてくれるらしい。それは子供のお願いに限定される。
 ちなみに、ミリアムのお願いは、大きくなって髪の毛が伸びたら女神さまに髪を梳かしてもらう。だそうだ。

 それはベアトリクスが勝手に決めたことでグプタの住人は知らないし、子供のころの記憶はほとんどないだろう。
 それくらいの距離感が一番いいとベアトリクスは長年の経験から導き出したらしい。

 そんな話をシャルロットの看病をしている時に俺に教えてくれたのを思い出した。
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