灰色の第四王女

神谷モロ

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第7話 第四王女の騎士

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 目を覚ます。

 視界がぼんやりしているし、音もうまく聞こえない。
 まるで水の中にいるような感覚だ。

 それに随分眠っていたのだろうか。
 体が思うように動かない。

 だが居心地は悪くなかった。
 何か暖かい物に優しく包まれているようだった。
 きっと母に抱かれる赤子とはこういう気分なのだろうか。
 
 徐々に記憶が蘇る。

 俺はたしか王国の騎士だった。
 平民出身だったが、腕を見込まれて騎士学校に通った。

 だが、俺はそのことを後悔した。
 騎士学校とはナイフやフォークの使い方を学ぶための学校だったのだ。

 騎士の半数は下位の貴族の次男や三男。
 残り半数は俺みたいな平民だった。

 騎士は最下位であるが一応貴族として認められている。
 剣の腕は関係ない。社交界で頑張れば出世は望めるというのが騎士学校の教育方針だった。

 俺はそれが嫌になって荒れたものだ。
 周りの言う事を無視してひたすら剣を振るった。
 冒険者に交じって魔物の討伐にも参加した。

 一応卒業まではいるつもりだが、今すぐ冒険者になったほうがましではないかと思った。

 あるとき、一人の貴族の爺さんが俺に声を掛けてきた。
「随分と剣の腕が達者ですな。それに手入れもしっかりしている。武器の手入れは基本ですからな」

 最初は怪しい爺さんだと思って追い返そうとした。
 だが、この爺さんの目を見て分かった。この人は実戦を知っている。

 話だけでも聞いておくのは悪くないと思った。  

 まさか、レーヴァテイン伯爵とは思わなかった。
 俺のような平民でも名前くらいは知っている。
 唯一、良識のある貴族として知られており。
 大規模な魔物討伐作戦には何度も司令官として活躍した御仁だ。

 伯爵はあるお方の護衛騎士を探しているという。

 俺は断った。ナイフやフォークは得意ではありませんし、今後も習いたくないです。とはっきり言ってやった。
 そしたら。伯爵は笑った。この学校も相変わらずですなと、そして溜息をつくと、真顔になって答えた。

「なら、魔剣はいかがですかな? ナイフやフォークよりも難しいですが、楽しいと思うのですが?」

 魔剣と聞いたら話は別だ。
 俺が誰の騎士になるかは関係なかった。
 魔剣、今のままでは一生手に入らないだろう。
 剣士が魔法使いに勝つためには必要だと思っていたし、単純に子供のころからの憧れだった。

 俺はすぐに騎士学校を中退した。
 いや、後で聞いたが伯爵の厚意で俺は卒業扱いにしてもらったようだ。
 一応、慣習として騎士学校を卒業しないと騎士としては認められないそうだ。

 何から何まで伯爵には感謝しかない。

 だが、だまされた。

 俺の目の前に現れた俺のご主人様はガキだった。
 第四王女? 初めて知った。この国には第三王女までしかいないと思ってた。

 やはり断ってしまおうか。伯爵には悪いがガキのお守は俺には向かない。

 このガキは俺に言った。
 なんて言ったっけ、俺じゃ力不足だと。
 ふん、初対面だというのに上からの態度。

 これだから貴族は。いったい俺のどこが力不足なんだと。

 まあ、魔剣の為だ。しばらくこのガキに付き合って。

 そういえば、このガキの名前は……。

 いや違う。この方はただの貴族ではない。

 思い出せない。
 思い出せ! 大事な記憶のはずだ!

 俺の、大事な、そう、俺の大事な姫様。

 思い出した。
 
「クリスティーナ!」

「おはよう、クロード。よかった。無事で……あなた本当にクロード?」

 記憶に混乱はある。
 だが全て思い出した。
  
 たしか、俺は突然現れたドラゴンに殺されて。
 俺は死んだ。はずだったが……どういうことだ。

 ただ、俺の目の前の女性は間違いなく、俺の姫様だった。

 そして間違いなく俺は俺のはず……。
「俺……だと思います。クリスティーナ様、ここはどこですか?」
「はい、私の膝の上です。ですので、もうしばらく動かずに安静にしていてくれると嬉しいです」

 そんな無礼なことを、俺は身体を持ち上げようとしたが。
 まだ体力が戻ってないのか思うように動かない。

 そもそも俺は死んだはずで、考えることは色々ある。
 しかし、この安らかな時間は悪くないと思った。
 そう、今だけはこの優しいゆりかごに居たいと思ったのだ。
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