リッチさんと僕

神谷モロ

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第19話 幕間 ミリオタと僕

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 昔から、ほとんどの男の子が憧れるものがある。

 それは、銃と剣だ。

 しかし、同居人の少年にはそれがない。由々しき事態だ。


 というわけで、今回は実際に作ってみて、そのカッコよさを味わってもらいたい。

 ちなみに剣はこの世界では現役の武器なので遊びにはできない。もちろん個人の感想だ。


 元の世界でも銃社会の国では銃をエンタメにしてはいけないのだ。あれ? むしろ積極的にエンタメやってる大国があったような……。

 うーむ、まあいい。そんな話は政治家が考えればいいのだ。

 ちなみに我が国のエンタメにおいて、メイドさんと銃は相性がいい。それどころかメイドさんは強キャラである。

 
 というわけで俺は銃の製作を始めた。

 まずは拳銃のようなものだ。ようなものとはいったいと思うかもしれないが。俺が作ったのは火薬の代わりに魔石を使ってるからだ。
 忘れてはいけないがここは異世界なのだ。


「いいかい、まず拳銃はホルスターに入れておいて、服の中に隠しておくんだよ。むき出しはよくないからね。
 メイドさんの場合はスカートの中がベストだ。ドキッとするしカッコいい。俺のいた世界ではこれが定番なんだ。
 装弾数は17発で、切り替えレバーで単発と連発に変えられるから覚えておいてね。ちなみに連発はぶれるからおすすめはしない。
 ならなぜそんな機能があるかというとカッコいいからだとしか言いようがない。おっと話が長くなったね」

 そうして、完成した拳銃のようなものを手渡す。 

 ――おっと、忘れるところだった。

「さて、その前に、ロボさんや、銃を持つ前に一つ儀式がある。
 右手を上げて、私は人を殺さないと誓うんだ。これはロボットにとって、とても重要なことなんだよ」
 
「はい、私は人を殺しません」

「ちなみにこれは有名な映画でのエピソードでね、人を殺すために生まれたロボットが、少年を助けながら徐々に人間らしさを獲得していく話でね――」

 ――しまった。ついオタク特有の早口でしゃべってしまった。



 ――少年視点



 異世界さんはとても饒舌に話していた。僕は半分も理解できなかった。映画は異世界さんの世界の娯楽らしい。


 今日は、大物を作ったらしく、僕たちに見せてくれた。ミニガンというらしい。

「大物なのに、ミニ(小さい)なガン(銃)なんですか?」

 あ! しまった。異世界さんの目がキラキラしている。これは長くなりそう。

「いい質問ですね! 実はこれの前にねもっと大きなやつがあったんだよ。それはねもともとはジェット戦闘機に――――。
 ちなみに、そのジェットっていうのは。あ、そうだ今度ジェットエンジンを作ってみるのも楽しそうだ。
 男の子は空にも憧れるんだ。飛行機は最初は――――」

 長いし早い、やっぱり半分も理解できないや。でも異世界さんはとても楽しそうに話しているので、別に嫌な気分にはならなかった。

「――おっと、また話がそれてしまった。で、このミニガンは残念ながら映画では不遇な存在なんだ。
 演出上に問題があるのか、これで勝った話は無いと言ってもいいくらいだ。

 例えば、なぞの宇宙戦士に派手にぶっ放すも、かすり傷程度しか与えられずに返り討ちにあったり、逆に敵側が使った場合はもっと悲惨だ、なぜか一発も当たらない。
 せいぜい、車をハチの巣にするくらいしか見たことがないんだよ」

「なら、なんでそんなの作ったんですか?」

「いや、カッコいいだろ? 音が最高なんだ。……も、もちろんこれは、この家の防衛に使える。これで上空から大量に攻められても平気なはずさ」

 僕は上を見上げた。断崖絶壁の先に僅かな光が見えた。

 ――そんなときが来るのかなぁ。まあ備えがあるのはいいことかな。



 異世界さんはまた銃を作っていた。飽きないなぁっと感心しながらみてると。

「今度は真面目だ、エンタメ要素はない、ちょっぴりはあるが、生活のための銃といってもいい」


 そうして見せてくれたのが。散弾銃と呼ばれる銃だった。

 これは主に、鳥とか猪などの野生動物を狩るために作られたそうだ。

 そのためにいろんな種類の弾があるらしい。魔法ではいまいち効率が悪かった狩りがこれではかどるのだと言った。

 たしかに異世界さんの狩ってきた獲物は半分以上は無くなっているか丸焦げになっていた。


「これで君も楽しいハンターライフを送ってみないか?」

 そう言っていたけど。僕は銃が苦手みたいだ。うまく当たらないし、中をのぞいたらとても怒られてしまった。

 結局は安全性の観点からロボさんが管理することになった。

 ちなみにロボさんはとても上手だった。異世界さんが言うように、やはりメイドさんは銃が得意なんだなと思った。



 そんなこんなで異世界さんはもう満足したのか、次の製作に移っているみたいだ。次は何を作るんだろうか。

 なんだかんだで僕は楽しみに思ったのだった。
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