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第一章
第24話 酒に飲まれることも時には必要だ
しおりを挟むキャンプの仕上げは宴だ、みんな思いっきり転んだため、身だしなみに気を使っている学生は一人もいない。それどころかお互いを見て笑っている。
二泊三日のキャンプでの最後の夜。翌朝は撤収のみであるためハメをはずしてもいいのだ。
昼間は戦場だったが今はパーティー会場である。お疲れ様会といった感じかな。
バンデル先生はお疲れの様子だった。俺は先生の召喚魔法ユニソルに興味津々だったので質問をしたかったが、シルビアさんの目が怖かったので自嘲した。
浮気疑惑を持たれてはたまらない。それに宴は始まっている。バーベキューだ、午前中に先生方が食材を調達してきてくれたのだ。
もちろんこの森は学院の私有地なので狩猟禁止だ。町で買ってきたそうだ。
俺はここで狩猟をしようとしてた一日前を思い出し恥ずかしくて真っ赤になった。
アンネさんとローゼさんは俺をみて思い出したのかクスクス笑ってた。このやろー、二人に抱き着く。二人にくすぐり攻撃を仕掛ける。
なぜかシルビアさんも参戦した。
シルビアさんは俺たちの仲がうまくいっていないと心配していたので。逆に仲良しすぎる光景をみて感極まって飛びついてきたのだ。
俺たちはキャッキャキャッキャと周りにうるさかったのだろう。
仲良し四人組は周りの空気も変える。お疲れムードだった周りも活気を取り戻した。
そうだ、宴はこれからだ、盛り上がっていこうじゃないか。
一通り食べて周りも落ち着いたのか少し静かになった。
俺はシルビアさんと二人きりで会話をした。
シルビアさんは真面目だった。
ユニソルとはなにか、あそこまで何もできずに敗北したのが悔しかったのだろう。
シルビアさんもやはり柔道技ですってんころりんしてリタイアしたくちだ。
俺だって悔しいがあの体術を前にして俺達では無理だといえる。
シルビアさんは魔法使いでも体術を身に着けるべきよといった。
同感だけど、それは……みんなついてけるだろうか。
インドア系のサークルが急に運動しようとしても無理じゃないかな。周りの反感を買うだけだよ。魔法使いの仕事じゃないってね。
いや、でもドルフ君とか近接戦闘が得意な例外の魔法使いもいるし案外いけるかもしれないか。
そう話していると大きなキャンプファイヤーが中央の広場で灯る。おお、これだ、前世ではなかった青春の光だ。
その光の中で男女一組でダンスをするグループがあった。なるほど、ローゼさんは両親からこの話をされていたのだ。
とても悔しそうな顔をしている。自分もこのリア充の輪に入ることを夢見ていたのだろう。
さすがにカール氏はどうだろうか……やつは最底辺だ、隅っこで男同士で有効を深めている。
おいおい、それはどうだろう、男に走るのか君は。それも一つの道であるか……。
しかし、どうやらそれは俺の思い過ごしであった。
カール氏は飲み物を二人の男子に渡しながら、とても低姿勢、最初はあやまっているように見えたが次第に打ち解け談笑をしている。
彼のチームメイトのハンス君とドルフ君だ。
そうか、あの貴族主義のカール氏も平民に頭をさげることができるようになったのか、このキャンプはほんとうによくできている
俺はバンデル先生を見た、バンデル先生は燃え盛るキャンプファイヤーを見つめながら、手に持ったスキットルをあおっていた。
かっこいい、男の中の男だ、いぶし銀の男をそこにみた。俺はキラキラしながらバンデル先生をみていた。
「ひょっひょ、アールふぁん、まらヴぁんだむふぇんふぇいを見れいらの?」
だれだ! いやシルビアさんだ、酔っ払いの……。
16才が飲酒をしている、飲ませたのはだれだ? ローゼさんお前か!
……いや、全員よっぱらっているのか。
このキャンプは魔法学院での一年生の為の成人の儀式であった。この国では16才は成人である。
貴族は全員16才であるのでそれぞれが家で儀式は受けているだろう、しかし平民はこうした成人の儀式などはない、だからこの際みんなで祝ってしまおうということだ。
ドルフ君などはそうだ、今年で18才らしい、どうりで肉体が出来ているとおもった。
まあ、それも建前で、大人の仲間になる儀式を終えたのでみなさん馬鹿みたいに酒をのんで次の日に後悔しなさいよという大人の教育の一環である。
だから教師たちは何も言わない、いや急性アルコール中毒とか心配すべきなのだが、ここはファンタジーの世界か、ヤバくなったら吐かせて解毒魔法である。
おや? 日本の大学よりもよっぽど健全でないか? 日本は未成年者の飲酒は違法だろ? この国は合法で、しかも教育の一環だと言う。
日本ディスをするつもりはないがお酒も大人になるための勉強なのだ。
そう、特に君のような子の為にこの教育は必須なんだよ、シルビアさん……
「わあふしアールさんのエッヒな棒ならいつれもよろひふてよ~」
シルビアさんは酷い、これでは誤解が誤解を呼ぶ、隣にローゼさんがいる。たすけてくれ。
「おいぃ、ごうかんまぁぁ、わらひがさけをのんれもおまえにわらひをろうこう……」
ローゼさんお前もか、まあ飲み過ぎだ、いくら甘いからといってワインはごくごく飲んではいけない。
よかったな、これが社交界でなくて、そうか、この教育はとても理にかなっている。いくら恥をかこうとみんなはもう戦友なのだ。
やはりバンデル先生はかっこいい。彼のキャンプのプランは完璧だ、もちろんバンデル先生が一人で企画したわけでもないだろうが。
そしたらシルビアさんは抱きついてきた。おいおい、そこまでやきもちを焼かれてもこまるぜ。
彼女をやさしく抱き返す、彼女は耳元でささやいた。
「……きもひわるい」
おう、ここでは吐くなよ。
俺たちは人ごみをはなれて茂みに入っていった。ロマンチックではないが、とても楽しいキャンプの二日目は終わった。
翌日は地獄の撤収となった。デスマーチというのだろうか、皆さん敗戦でもしたかのように顔を青ざめている。二日酔いだ。
もちろんそうでもない人間もいる。彼らは最後まで戦友を介抱して学院へ帰還した。
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