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第二章
第55話 盗賊団現る
しおりを挟む「盗賊がでたぞー!」
む? これは穏やかではない。この辺境の街はそういう輩がでるのか。
ユーギは、なにやら考え込んでいた。……珍しく。
「おい、ユーギどうしたんだ?」
「あはは、ちょっと前にハンス君と一緒にね、新しい馬の練習で遠出しただろ? その時に遊牧民の統領さんに出会ったんだよ。
ちょっと会話が弾んでね。あはは……あれ? また僕なんかやっちゃいましたか?」
こいつ、明らかに何かやらかしている。
「どういうことだ? こいつに聞いても埒が明かない。ハンス君説明を!」
ハンス君は説明が上手い。彼は解説者として定評がある、彼に聞くのがベストだ。
「僕とユーギさんは途中で遊牧民と思われる集団にあったんだ。でもあれが盗賊団だったなんて、僕達つけられてたんだね。
彼らは各地を転々と暮らしていると言ってたから、てっきり遊牧民かと思ったんだ。それでユーギさんが目的地がどことか話しちゃったんだ」
なるほど、今回はユーギは悪くないか……ん? ハンス君、なにか言い足りないのか微妙な表情だ。
「ハンス君、なんか隠してないかい?」
「え? ……あ、そうだね、ほらアールさんなら分かるでしょ? その統領さんに対して例の煽り口調というか、相手を怒らせる話し方をしてたから……。
僕は、流石にマズいと思ってユーギさんを止めて引き返したけど……多分あれで統領さんに火をつけてしまったんだ」
「おや、ハンス君、煽り口調とは失礼な、あれは有名な論破王の話術だよ。それに正論しかいってないよ。
彼らは身の丈に合わない装飾品とかつけてたしね。あれはきっと奪い取った物だ。
僕は長年の感で一発で察したのだ、あははは」
なんだと? なら今回の標的はユーギ、つまりは俺達かもしれないってことか? なんてことをしてくれたんだ。
俺たちは今回の危機を救うべく、というか責任をとるべく、この街の領主さんに会いに行った。
魔法学院の二年生でAクラスの所属だというのが効いたのか、すぐに面会を許された。
なるほど学生とはいえ魔法使いはかなりの権力があるんだな、今回の場合は戦力を期待されてのことだと思うが。
領主さんは頭を抱えたまま。独白ともいえる叫びを初対面の俺たちに聞かせた。
「ああ、なんてことだ……彼らとは不戦協定を結んでいたんだ。領地に手を出さない代わりに、金品を支払うことで平和を維持していたんだ、どうしてこうなった!」
おっと、いきなりそんなこと暴露してもいいのか? よくないだろう、お隣の秘書みたいなおじさんは顔を青ざめている。
俺たちは詳しく事情を聞いた。どうやら不戦協定のおかげで、兵力は治安維持のみの必要最小限しか持っていないそうだ。
しかし、そういうことか、ユーギがそれを煽ったんだろうな。たぶん盗賊のくせに金持ちの犬になっているとか言ったんだろうか。あの自称論破王の口調で……。
これは完全に俺達のせいだ。フォローというか責任を取らないとな。
「領主様、今回、私たちがここに来たのも何かの縁です。彼らの対処はお任せください」
「おお、流石は魔法学院の学生さんだ、それにそのバッジはAクラスの証。これ以上ない申し出に感謝します」
やけに話が早いと思ったら、領主さんは魔法学院の卒業生らしい。
BクラスとCクラスをいったり来たりの成績だったそうだが、経営の才能があったのか卒業後はこの辺境の地でドラゴン事業を起こして、観光地化した手腕をもっている。
その功績で、若くして家督を継いだ、あるいみベンチャーの鑑みたいな人だ。
まあ、軍事費をおろそかにして金で平和を買ってるのは……悪い事じゃないけど、こういう事態を予測してないのはだめだろう。
だが、今回は俺たちが悪い。というかユーギが悪い。
さてと、盗賊団は街の外で勢ぞろいしていた。千人くらいはいる。驚いた。こんな規模の盗賊はもはやちょっとした軍隊だ。
あ、そうか安定収入があるし、あるいみ自警団? いやヤクザ的な役割をしていたのでそれなりの組織に膨れ上がったのだろう。
「おい、ユーギ、今回は全面的にお前が悪いぞ!」
「あはは、そーだね、で、どうしよっか。おや? 親分さんが一人でこっちに近づいてきた、捕まえよっか?」
「馬鹿、それは卑怯だ、……いや? それはありかもしれない」
「だめだよ、ユーギさんにアールさん、そんなことしたら、1000人の盗賊たちが無秩序に暴れて被害が大きくなるだけだ」
ハンス君、たしかにな、頭をつぶせば何とかなると思ったけど、それは正規軍ならの話で彼らはもともと小規模の盗賊団の寄せ集めだろう。
そんな話をしている間に親分さんは俺たちの前に一人で現れた、なるほど度胸はあるな。その世紀末ファッションといい気合が入っている。この街で売ってるドラゴンローブのアレンジだろうか。わざわざ袖をちぎってギザギザノースリーブにしている。
こいつは……ぶふっ! 本物だな。ユーギじゃなくてもからかいたくなる。
「おい! そこのお前、この前はよくも俺様を侮辱してくれたな!」
親分さんはユーギを指さして叫ぶ。
「あはは、ごめんごめん、謝るからさ、また領主さんにお金貰って平和な盗賊に戻っておくれよ、平和な盗賊……盗賊が平和とか、……、ぶふっ、あははは!」
言い方! まずい、スキンヘッドの親分さんが真っ赤になってる。
「なんだとー! 我慢ならねーな、まずはお前をズタズタに、ん! お前、女だな、この間は分からなかったが、なるほどお前、なかなかいい女じゃないか、どうだ――」
「おっと、その先は言わないでおくれよ、きっとあれだろ? 身体にいうことを聞かせてくれるんだよね? ぐへへって感じ? まあ僕は美しいからしかたないね」
また始まった、これはまずい、ユーギがいると何もないところにガソリンをぶちまける。俺はタコのように真っ赤になった親分さんに交渉をする。
「親分さん、こいつの話に付き合うと疲れるだけだから、で、要件はなにかな?」
「……ちっ、まあいい、こっちのメスガキはまだ話がわかりそうだしな。それにお前もなかなか見た目がいいじゃないか。おやおや、よく見たらどいつもこいつも美人ぞろいだ。
男三人は見せしめに殺して女は俺たちが大事にあつかってやる、どうだ? 死人は三人で済むぜ? その条件でこの街への襲撃は手加減してやる」
なるほど、三人殺しても、街への襲撃は手加減だけでやるんだ。俺をメスガキといったのは許すとして。女性に不埒なことをする輩は許せん。
交渉決裂だ。
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