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第二章
第69話 修行
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シルビアとワンドの二人はエルフの森の中の大きな湖のほとりにいた。
エルフの森はかつて氷結の魔女がこの地に滞在した際に作られた森である。
「さてと、シルビアちゃん、いや弟子よ。これからはワタクシがあなたの魔法の先生なのだわ、ビシバシしごくから覚悟なさいなのかしら」
「あの、師匠……」
「なにかしら、不満でもおありかしら、あなたが望んだことなのだわさ」
「いいえ、その話じゃなくて。その師匠のキャラがさっきから安定してないので……」
「…………。いいのよ。まだ模索中なんだから。久しぶりに外の人と会話してるんだから、それくらい大目に見なさいな」
「あ、はい、それでは師匠、よろしくお願いします」
「よろしい、それではまずあなたの魔法を見せてごらんなさい。的は用意したから」
的には魔導人形が置かれている。
外見的にはワンドにうり二つである。
「あの……師匠にそっくりなんですけど、本当に撃ってもいいんですか?」
「気にしない、古くなったから処分するつもりだったし、それに魔法防御力は無駄に高いから的に最適なのよ」
確かに外見はそっくりだが、所々に経年劣化がみられる。しかし今にも動き出しそうな精巧な人形に魔法を当てるのは複雑な気分だった。
こういうのはもう少し、デフォルメされた人形を使用するものだが、しかし本人が良いというのでシルビアは割り切ることにした。
「そういうことなら、では遠慮なくいきます!」
シルビアは手を前に突き出し、人差し指を的に向ける。
「ファイアーボール!」
ビー玉くらいの大きさの青白い火の玉が魔導人形に向かって放たれた。
しかし魔導人形の胸部に当たった火の玉はその瞬間かき消えた。
「うそ、かき消えるなんて、どういう素材で出来てるの?」
「ふーん、それが本気かしら? まあ、そんなところかしら、あれを貫けるのは二重魔法レベルが最低条件よ、でも、いい線いってるんじゃないかしら」
魔導人形の胸元には若干焦げた跡が残っていた。
「あなたのそれは既にファイアーボールのレベルではないわね、圧縮した炎の魔力が弾丸のように相手に貫く。
そもそも一定の範囲に爆炎をまき散らすファイアーボールとはまったく別の魔法といってもいいんじゃないかしら」
「はい、実はアールの持ってた拳銃から発想を得て自分なりに研究してたんです、以前、高位のアンデッド相手にファイアーボールを使用したのですが倒せなくて反撃されたことがありまして」
「ふむふむ、偉いわね、それに魔力の制御があなたは得意なようだし、センスも悪くないわ、欠点といえば魔力の総量が足りない事かしら、まあその辺はどうしようもないけどね」
「やはりダメでしょうか、私も気づいてはいたんですけど、大規模な魔法が苦手で」
「もちろんそれは致命的な弱点だけど、ダメってわけじゃないわよ、むしろそっちは諦めて、あなたはこのファイアーボールを極めればいいのよ。
もっと魔力を研ぎ澄ましていけば、あれくらいの的は貫けるようになるはずだから、
ちなみに魔力総量を抑えても威力を上げる方法はいろいろあるから自分にあった方法を模索するのもいいかもね、例えばこんなのとか」
ワンドは指先を的に向けると、瞬間に魔導人形の胸部に穴が開いて、その後に倒れた。魔法を放ったはずだがシルビアには速過ぎて光の線にしか見えなかった。
「どうかしら、放出速度を上げればそれだけで威力は上がるのよ、ちなみに放ったのはただの石ころよ」
「すごい、……って、師匠は無詠唱魔法の使い手だったんですか?」
「当たり前じゃない、私は天才なのよ、……まあ私の知り合いにも無詠唱魔法の使い手は数名いるけど、それにしても現代の魔法レベルは随分と落ちてしまったようね、あなたは首席なんでしょ?」
「返す言葉もありません、でも、私の出来ることで強くなればいい、ですよね?」
「その通り! さあ、まずは魔力制御の向上を目指すとしましょう。魔力総量も新しい知識を得ることでレベルアップするわ、ちなみにあなたはテレポートが使えるかしら?」
「いいえ、その、恥ずかしながらできません」
テレポートの魔法は上位の魔法の中でも難易度は別格に高い。学生に使えるものはいない。
「ふふふ、なら好都合、私の得意分野だから、今回はこれを使えるようになってもらいましょうか」
エルフの森はかつて氷結の魔女がこの地に滞在した際に作られた森である。
「さてと、シルビアちゃん、いや弟子よ。これからはワタクシがあなたの魔法の先生なのだわ、ビシバシしごくから覚悟なさいなのかしら」
「あの、師匠……」
「なにかしら、不満でもおありかしら、あなたが望んだことなのだわさ」
「いいえ、その話じゃなくて。その師匠のキャラがさっきから安定してないので……」
「…………。いいのよ。まだ模索中なんだから。久しぶりに外の人と会話してるんだから、それくらい大目に見なさいな」
「あ、はい、それでは師匠、よろしくお願いします」
「よろしい、それではまずあなたの魔法を見せてごらんなさい。的は用意したから」
的には魔導人形が置かれている。
外見的にはワンドにうり二つである。
「あの……師匠にそっくりなんですけど、本当に撃ってもいいんですか?」
「気にしない、古くなったから処分するつもりだったし、それに魔法防御力は無駄に高いから的に最適なのよ」
確かに外見はそっくりだが、所々に経年劣化がみられる。しかし今にも動き出しそうな精巧な人形に魔法を当てるのは複雑な気分だった。
こういうのはもう少し、デフォルメされた人形を使用するものだが、しかし本人が良いというのでシルビアは割り切ることにした。
「そういうことなら、では遠慮なくいきます!」
シルビアは手を前に突き出し、人差し指を的に向ける。
「ファイアーボール!」
ビー玉くらいの大きさの青白い火の玉が魔導人形に向かって放たれた。
しかし魔導人形の胸部に当たった火の玉はその瞬間かき消えた。
「うそ、かき消えるなんて、どういう素材で出来てるの?」
「ふーん、それが本気かしら? まあ、そんなところかしら、あれを貫けるのは二重魔法レベルが最低条件よ、でも、いい線いってるんじゃないかしら」
魔導人形の胸元には若干焦げた跡が残っていた。
「あなたのそれは既にファイアーボールのレベルではないわね、圧縮した炎の魔力が弾丸のように相手に貫く。
そもそも一定の範囲に爆炎をまき散らすファイアーボールとはまったく別の魔法といってもいいんじゃないかしら」
「はい、実はアールの持ってた拳銃から発想を得て自分なりに研究してたんです、以前、高位のアンデッド相手にファイアーボールを使用したのですが倒せなくて反撃されたことがありまして」
「ふむふむ、偉いわね、それに魔力の制御があなたは得意なようだし、センスも悪くないわ、欠点といえば魔力の総量が足りない事かしら、まあその辺はどうしようもないけどね」
「やはりダメでしょうか、私も気づいてはいたんですけど、大規模な魔法が苦手で」
「もちろんそれは致命的な弱点だけど、ダメってわけじゃないわよ、むしろそっちは諦めて、あなたはこのファイアーボールを極めればいいのよ。
もっと魔力を研ぎ澄ましていけば、あれくらいの的は貫けるようになるはずだから、
ちなみに魔力総量を抑えても威力を上げる方法はいろいろあるから自分にあった方法を模索するのもいいかもね、例えばこんなのとか」
ワンドは指先を的に向けると、瞬間に魔導人形の胸部に穴が開いて、その後に倒れた。魔法を放ったはずだがシルビアには速過ぎて光の線にしか見えなかった。
「どうかしら、放出速度を上げればそれだけで威力は上がるのよ、ちなみに放ったのはただの石ころよ」
「すごい、……って、師匠は無詠唱魔法の使い手だったんですか?」
「当たり前じゃない、私は天才なのよ、……まあ私の知り合いにも無詠唱魔法の使い手は数名いるけど、それにしても現代の魔法レベルは随分と落ちてしまったようね、あなたは首席なんでしょ?」
「返す言葉もありません、でも、私の出来ることで強くなればいい、ですよね?」
「その通り! さあ、まずは魔力制御の向上を目指すとしましょう。魔力総量も新しい知識を得ることでレベルアップするわ、ちなみにあなたはテレポートが使えるかしら?」
「いいえ、その、恥ずかしながらできません」
テレポートの魔法は上位の魔法の中でも難易度は別格に高い。学生に使えるものはいない。
「ふふふ、なら好都合、私の得意分野だから、今回はこれを使えるようになってもらいましょうか」
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