幼稚な神様、もっともっとスタディ中

神谷モロ

文字の大きさ
4 / 12

ドラゴン女に相談される

しおりを挟む
 全身を綺麗に洗い、川遊びを一通り楽しんだ後、僕はドラゴンの擬人化美女の前に座る。

「ドラゴンさん、お待たせ。では話の続きをどうぞ。ちなみに僕を殺すとかはさすがにやめてね。シャルロッテ君から滞在の許可を得たばかりだからね、せめて十数年は生き延びたいところさ」

「シャルロッテ君って……神の名を軽く言うな。しかも許可を得たと? ……やはり人間じゃないようね。
 いったいあなたは何者?  
 ちなみにさっき異質な臭いといったのは体臭の話ではない、魂の在り方が異質だといったのだ。たしかにきつい体臭ではあったが……
 それに人間の女は白昼堂々と素っ裸で歩いたりはしない」

 ああ、そうか、そうだった。僕は今素っ裸だった。何ていうだっけ、日本人標準の恥じらいのセリフ。アメリカ暮らしが長くて憶えていない。

 ええい、ここは昭和の漫画スタイルで。
 確かこうだった。右腕で胸を隠し、左手で股を隠すポーズを取る。

「いやーん、ドラゴンさんのエッチ……って、あれ? 君はメスのドラゴンでしょ?
 まあ同性同士でも恥じらいはあるし、ジェンダーの定義は最近壊れつつあるようだし、それにしても君は人類の羞恥心に随分とお詳しいようで」

「あなたこそ、神と対等であるかのような言動。いったい何者なの?」

「おっと、そうでした自己紹介がまだだったね。僕は異世界からきたモガミ・ユーギだよ。現在、免停講習中の無害な神様さ」

「へえ、免停講習の意味が分からないけど異世界の神様とは。なるほど、あなたの異質さに納得したわ。私は、ベアトリクス。海のドラゴンロードと呼ばれているわ」

「あはは、ドラゴンロードか。それはすごいや。上位種の上位って感じだね」

「あなたを殺さないとって思ってたんだけど、シャルロッテ様の許可を得たっていうならそうもいかないわね」

「あはは、それはありがたい。せっかくここまで来たんだし、死んだらもったいないからね」

「素直に謝るわ、ごめんなさい。でも、異世界の神様がどうしてここに? 目的はあるのかしら」

「うーん、特にないかな、僕はこの世界に一個の命として平凡に暮らしたいだけだから。
 ところで、ベアトリクスくん、君は海のドラゴンロードと言ってたね。ここは森だけど、なんで海のドラゴンが森にいるのかい?」

「……それがねぇ、いいわ、ちょっと相談に乗って頂戴。人間達がね、私の取り合いで喧嘩しちゃったのよ。それでね、もう面倒くさいからしばらく放っておくことにしたのよ――」

 ベアトリクスはそのまま自分語りをはじめた。

 興味深い話だった。

 ベアトリクスは、港町で人間と共に暮らしていたフレンドリーなドラゴンだったそうだ。

 圧倒的強者の彼女は非力な人間の面倒をよくみていたようだ。
 食料の調達や教育、政治まで司ったそうだ。

 やれやれ、人化を憶えて、弱者である人間を囲って最強ムーブをしていたということか。

 それも最初は上手くいっていたが、街が大きくなるにつれ、全ての人間の相談に乗ることが出来なくなった。
 人間たちはベアトリクスに会うために争った。そして勝った人間のみがベアトリクスへ会うことが出来る。
 ベアトリクスに会える人間は選ばれた人間として下位の人間を支配した。

 あっという間に格差社会が生まれた。それと同時に治安は悪くなる。

 ほんとやれやれだ、僕はこういう展開は飽きるほど見てきた。

「ベアトリクス君、はっきり言っていいかい?」

「別にいいけど……なんでそんな軽蔑の眼差しを向けるのかしら?」

 軽蔑の眼差しではない。
 僕としては真剣そのものだし。意地悪に見えるのは元々の顔の作りが悪いのだ、そう全ては主神様のせいだろう。

 しかし、この子は本当に善意で行ったのだろう。彼女は悪くない……と言いたい。
 では汚れているのは人間の方だろうか。
 いや人間だって心の底から彼女を慕っていたはずなのだ。

 ようはお互いの距離感の問題だろう。

 ……で、あるならば圧倒的強者であるベアトリクスが原因ともいえるな。

 僕は少し厳しい助言を彼女に言う事にした。

「ベアトリクス君よ、はっきり言うよ。君が100パーセント悪い! 間違いない。断言する。あー君が悪い。全ての原因は救世主ムーブをして人間に構い過ぎたのだ」

「じゃあ私は何をすればよかったのよ。強者が弱者を助けるのは当たり前じゃない」

「いいや、ちがーう。それは違うのだよ。君はまだまだ人生経験が足りないようだ。それは大きな間違いなのだ。
 強者が弱者を助けるのは認める。世の中はそうあるべきだからね。でもその言葉は圧倒的な強者は該当していない。せいぜい財産がちょっと多い人とか。あくまで同じ次元の存在が行うべきで。
 圧倒的な力を持つ人外の君がそれをしてはいけないのだ!」 

「知った口を聞くのね、それでも最初は上手くいってたのよ、あなたに何が分かるというの?」

「わかーる、僕にはよく分かる。なぜなら。そのやらかしで何回国を滅ぼしたか、まさに僕の経験から君の行いを完全否定できるのだ、あっはっは。
 …………。
 ふう、まあ、反省してるんだよ、僕もね。だから僕は免停講習中なのだ……」

 そう、男性ルートの僕は何回も破滅エンドを迎えた。女性ルートだって何回かはやらかしたが。
 いつだって破滅をもたらす切っ掛けは圧倒的な力を得た後だった。

「なんか嫌なこと思い出させちゃったかしら。そっか、神様だって失敗するのね。少し安心しちゃった」

 まあ、経験を積んでからは上手くいくようになったのだが。
 そんな僕の経験から彼女にアドバイスするなら。

「ベアトリクスよ。君は人ではない。だから人のすることにいちいち意見してはいけない。例え愚かだろうと思ってもそれは一時的な問題だ。
 絶対的な強者が口出しをすると、その瞬間は旨く行く。だがそれは小さな歪となって、やがて彼らは同族同士で取り返しのつかない過ちを侵してしまうんだ」

「じゃあ、私は何をすればいいの? せっかく人化を覚えたのに。私、人間が好きよ。また海の底で一人で生活しなければならないの?」

「いいや、そこまではしなくていいと思うよ。
 今まで通り、君は人間と一緒に暮らして遊んでればいいんじゃない? そうだな、海のドラゴンだろ? 海で泳ぐ子供たちが溺れないように監視しつつ。
 政治には介入せず。たまに相談に乗るくらいで解決策は提示しない。ま、子供の願い事くらいはかなえてあげればいいんじゃない?」

「……わかったわ。ふう。ありがとう。気が楽になった。貴女にあえてよかった。私、もう一度、人間達と過ごしてみる。ありがとう。えっと異世界の神様のモガミさん」

「ユーギでいいよ。あ、そうか、ここは欧米系ファンタジー世界だった。失礼。僕の名前はユーギ・モガミ。名前がユーギで姓がモガミさ」

 ベアトリクスの顔からは笑みがこぼれていた。

 うむ、いいことをした。
 やはり、人生は笑って過ごすのが一番だ。

 ちなみにベアトリクスはこの森の遥か南にあるグプタという港町からきたそうだ。
 僕達がいるこの森はバシュミル大森林というモンスターの巣窟らしい。

 この森より北には人は住んでいないようだ。
 ならばと、僕はベアトリクスに道案内をたのみ南を目指すことにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...