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◆綺堂 薊 side
壁の隙間から滲み出すように出現する『ブラッド・スライム』を、塩無双で順調に突き進む。
ここに来るまでに、真上の天井にいたスライムに塩を掛けたら、スライムごと降ってきた塩の塊が目に入り悶絶する事件があったが攻略は順調である。順調と言ったら順調なのだ。
「クソ痛ぇ」
そうして、赤くなった目を擦りながら煮干しモドキを量産していると行き止まりに辿り着いた。
一時間ほどだろうか。ゲームでは入口からここまで十分ほどで着いていたので多く見積もっても三十分だなと思ってたが甘かったようだ。
タイムを計測した時計は道具屋で買った品である。塩や油と一緒に買ったのだ。
「まぁ、そこまで急いでる訳でもないし別にいいか」
そう呟きながら、行き止まりの壁を調べ始める。後から襲われたらたまったものではないので警戒は怠らないようにしながら。
なぜ、こんな事をするかと言うと先へ進むためである。現在地は行き止まりではあっても最奥ではなく、然るべき手順を踏めば先へと進めるのだ。
「おっ、あった」
ゴツゴツした岩肌を、下から掬い上げていくと一つだけ捲れる箇所がある。そこを剥がすと小さなスイッチがあった。
ようやく見つけたソレを、岩を撫で続けたせいで痛くなった指で押す。
そうすれば───
「また壁?」
ゆっくりと開いていく岩壁の先に出てきた壁を見て俺は首を傾げた。おかしい、ゲームならボスが出てくる筈なんだが。
しかし、観察すればするほど新しい壁は不自然だ。今までの岩肌とは明らかに違い、ツルッとした滑らかな赤黒い壁だ。
そう、ちょうど道中で倒してきた『ブラッド・スライム』のような……
「っ!」
ここまで考えてハッとする。違う、コイツは壁なんかじゃない。どうして俺は、こんな定番に思い至らなかったんだ。
コイツは───
「ギュアアアァァァァァッ」
モンスターだ。
俺がいると思っていた『血封の迷宮』のボス、『ブラッド・スライム・キング』。
ステータスは『ブラッド・スライム』を、そのまま強化したようなボスで手持ちの『清めの塩:下』で充分倒せる予定だった敵。
きちんと出ると分かっていた敵なのに、なぜ俺が発見出来ずいたかと言えば。
「サイズが違い過ぎるだろ……」
この一言に尽きる。
ゲームだと通常の『ブラッド・スライム』の五倍程度の大きさだから油断してた。実物は数十倍あるなんて完全に想定外だったのだ。
それに、先程の咆哮で耳が痛い、咆哮攻撃手段はゲームでは無かった。クソッ、口なんてどこにも付いてないのに何処からあんな大声を出してやがる。
こいつ一体に、これだけ想定外が重なるとゲーム知識を元にしたステータス情報もどこまで信じていいか不安になる。
ゲーム時代と比較し、体積差が数十倍あるのならステータスもそれだけ上がってる可能性があるのだ。仮にそうなら俺の手に負えない。
幸いにも、俺はまだボス部屋に侵入してない。何日かレベル上げしてからリベンジしよう。
そう思って後ろに踏み出そうとした時、足が動かない。恐る恐る、目線を足へ向ければ赤黒い触手が巻き付いていた。
「……くっそ」
自覚した途端に足が焼けるように痛み、思わず呻いた。
当然だが、ゲームではボス部屋に入るまでは手出ししてこないため無意識にこうなる可能性を排除していた。
思ってたよりゲーム知識は当てにならねぇな。俺の幸福への道はただでさえ高い難易度が、さらに跳ね上がったようだ。
辛うじて塩を掴んだ所で、俺はボス部屋へ引き摺り込まれた。
壁の隙間から滲み出すように出現する『ブラッド・スライム』を、塩無双で順調に突き進む。
ここに来るまでに、真上の天井にいたスライムに塩を掛けたら、スライムごと降ってきた塩の塊が目に入り悶絶する事件があったが攻略は順調である。順調と言ったら順調なのだ。
「クソ痛ぇ」
そうして、赤くなった目を擦りながら煮干しモドキを量産していると行き止まりに辿り着いた。
一時間ほどだろうか。ゲームでは入口からここまで十分ほどで着いていたので多く見積もっても三十分だなと思ってたが甘かったようだ。
タイムを計測した時計は道具屋で買った品である。塩や油と一緒に買ったのだ。
「まぁ、そこまで急いでる訳でもないし別にいいか」
そう呟きながら、行き止まりの壁を調べ始める。後から襲われたらたまったものではないので警戒は怠らないようにしながら。
なぜ、こんな事をするかと言うと先へ進むためである。現在地は行き止まりではあっても最奥ではなく、然るべき手順を踏めば先へと進めるのだ。
「おっ、あった」
ゴツゴツした岩肌を、下から掬い上げていくと一つだけ捲れる箇所がある。そこを剥がすと小さなスイッチがあった。
ようやく見つけたソレを、岩を撫で続けたせいで痛くなった指で押す。
そうすれば───
「また壁?」
ゆっくりと開いていく岩壁の先に出てきた壁を見て俺は首を傾げた。おかしい、ゲームならボスが出てくる筈なんだが。
しかし、観察すればするほど新しい壁は不自然だ。今までの岩肌とは明らかに違い、ツルッとした滑らかな赤黒い壁だ。
そう、ちょうど道中で倒してきた『ブラッド・スライム』のような……
「っ!」
ここまで考えてハッとする。違う、コイツは壁なんかじゃない。どうして俺は、こんな定番に思い至らなかったんだ。
コイツは───
「ギュアアアァァァァァッ」
モンスターだ。
俺がいると思っていた『血封の迷宮』のボス、『ブラッド・スライム・キング』。
ステータスは『ブラッド・スライム』を、そのまま強化したようなボスで手持ちの『清めの塩:下』で充分倒せる予定だった敵。
きちんと出ると分かっていた敵なのに、なぜ俺が発見出来ずいたかと言えば。
「サイズが違い過ぎるだろ……」
この一言に尽きる。
ゲームだと通常の『ブラッド・スライム』の五倍程度の大きさだから油断してた。実物は数十倍あるなんて完全に想定外だったのだ。
それに、先程の咆哮で耳が痛い、咆哮攻撃手段はゲームでは無かった。クソッ、口なんてどこにも付いてないのに何処からあんな大声を出してやがる。
こいつ一体に、これだけ想定外が重なるとゲーム知識を元にしたステータス情報もどこまで信じていいか不安になる。
ゲーム時代と比較し、体積差が数十倍あるのならステータスもそれだけ上がってる可能性があるのだ。仮にそうなら俺の手に負えない。
幸いにも、俺はまだボス部屋に侵入してない。何日かレベル上げしてからリベンジしよう。
そう思って後ろに踏み出そうとした時、足が動かない。恐る恐る、目線を足へ向ければ赤黒い触手が巻き付いていた。
「……くっそ」
自覚した途端に足が焼けるように痛み、思わず呻いた。
当然だが、ゲームではボス部屋に入るまでは手出ししてこないため無意識にこうなる可能性を排除していた。
思ってたよりゲーム知識は当てにならねぇな。俺の幸福への道はただでさえ高い難易度が、さらに跳ね上がったようだ。
辛うじて塩を掴んだ所で、俺はボス部屋へ引き摺り込まれた。
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