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◆ヘンゼル side
「……あんた、何しに来たんだい?」
それは僕達のセリフだ。
終始蚊帳の外だったヘンゼルとグレーテルは顔を見合わせる。展開についていけず二人して傍観していたが、化け物が魔女師弟と組まずに討伐されたのは不幸中の幸いだ。
欲を言えば、どちらか片方を道連れにして欲しかったが、贅沢は言えまい。
「うふふっ。これで、ずっと一緒にいられるね」
自分で殺した相手に寄り添い、うっとりするような女とカニバリズムを嗜む魔女のコンビ相手なのだ。
あの化け物と言えど一人では無理があったのだ。
「お兄さん無様だね。僕に酷い事するから、そうなるんだよ」
ヘンゼルは今すぐにでも、薊を嘲笑し、愚かな死に様を肴に笑い転がりたい気分だった。
しかし、そんなことで敵の気が逸れてる時を逃すのは勿体ないなさすぎる。
ヘンゼルは素早く周囲の状況を見渡し、不意打ちをする相手と方法を考え出す。
狙いは先程、憎き相手を殺してくれた相手だ。
敵の敵は味方だなんて聞いたことはあるが、そんな訳もなく、仮にそうだとしても共通の敵が消えた今は敵である。
おまけに彼女は妹のグレーテルに重症を負わせただけでなく、自分に石化部位の切断までさせたのだ。とても許せる相手ではない。
都合がいいことに、来紅からヘンゼルは見えにくい位置となっている。後衛職な上、戦闘慣れしてない彼女の不意打ちは容易いだろう。
「待って、お兄様! お兄さんの様子が……」
駆け出す直前、グレーテルの声が聞こえた気がしたが、もう止まれない。前回は逃亡に用いた無音走法を今回は奇襲に使うのだ。
ニィィ、とヘンゼル自身も気づかぬ内に頬をが吊り上がった。
誰もが硬直して動けない中、自分が最初に動き出し場を動かすのは、何とも言えないない優越感がある。まるで、この場の誰よりも自分が優れているように思えた。
───バイバイ、お姉さん。
内心、殺せることを確信しながら剣を振り被る。
そのまま脳天へと剣を叩き付けようとした時、来紅の陰から何かが飛び出してヘンゼルの顔面を鷲掴みにし、後方へと押しやる。
「ぐっ。なんだよ、いきなりっ!」
ヘンゼルは想定外の事態に狼狽た。感触的に自分の顔を掴んでいるのは人間の手のように思われる。しかし、部屋の人間の位置は把握していた。誰にやられているのか分からない。
だが、そんなことよりも先ずは現状を脱するのを優先するべきだ。
しかし、手を外そうと藻掻くが外れる様子は無い。ちくしょう、掴まれた時に剣を落とさなければ、かなりマシだったのに。と後悔するが後の祭りだ。
ついさっきまで、自分が狩る側だと信じて疑わなかった彼は油断していたのだ。
「お兄様を離しなさい、化け物!」
「まだ生きてたのかい。化け物ってのも、あながち間違いじゃぁないのか」
周りの誰かが何か言ってる気もするが、何を言ってるか分からないし、聞こうとする余裕もない。
顔を掴む相手はヘンゼルの問に答えることなく首筋に噛み付き血を啜る。
「あっ、ずるい」
ここまでされて、ようやく誰が自分にアイアンクローをしているのか理解した。
しかし何故? と、同時に思う。
確かにヤツは桁違いの回復力を持っていた。しかし、その回復力以上のダメージで全身を石にされ粉々なって死んでいた筈なのに。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!」
最後の力を振り絞り爪を立てるも、敵には何の変化もない。
血を吸われる強烈な不快感と命が失われていく恐怖の中、全身を青白い枯れ木のようにされたヘンゼルは死んだ。
最後まで、何も分からないまま。
「……あんた、何しに来たんだい?」
それは僕達のセリフだ。
終始蚊帳の外だったヘンゼルとグレーテルは顔を見合わせる。展開についていけず二人して傍観していたが、化け物が魔女師弟と組まずに討伐されたのは不幸中の幸いだ。
欲を言えば、どちらか片方を道連れにして欲しかったが、贅沢は言えまい。
「うふふっ。これで、ずっと一緒にいられるね」
自分で殺した相手に寄り添い、うっとりするような女とカニバリズムを嗜む魔女のコンビ相手なのだ。
あの化け物と言えど一人では無理があったのだ。
「お兄さん無様だね。僕に酷い事するから、そうなるんだよ」
ヘンゼルは今すぐにでも、薊を嘲笑し、愚かな死に様を肴に笑い転がりたい気分だった。
しかし、そんなことで敵の気が逸れてる時を逃すのは勿体ないなさすぎる。
ヘンゼルは素早く周囲の状況を見渡し、不意打ちをする相手と方法を考え出す。
狙いは先程、憎き相手を殺してくれた相手だ。
敵の敵は味方だなんて聞いたことはあるが、そんな訳もなく、仮にそうだとしても共通の敵が消えた今は敵である。
おまけに彼女は妹のグレーテルに重症を負わせただけでなく、自分に石化部位の切断までさせたのだ。とても許せる相手ではない。
都合がいいことに、来紅からヘンゼルは見えにくい位置となっている。後衛職な上、戦闘慣れしてない彼女の不意打ちは容易いだろう。
「待って、お兄様! お兄さんの様子が……」
駆け出す直前、グレーテルの声が聞こえた気がしたが、もう止まれない。前回は逃亡に用いた無音走法を今回は奇襲に使うのだ。
ニィィ、とヘンゼル自身も気づかぬ内に頬をが吊り上がった。
誰もが硬直して動けない中、自分が最初に動き出し場を動かすのは、何とも言えないない優越感がある。まるで、この場の誰よりも自分が優れているように思えた。
───バイバイ、お姉さん。
内心、殺せることを確信しながら剣を振り被る。
そのまま脳天へと剣を叩き付けようとした時、来紅の陰から何かが飛び出してヘンゼルの顔面を鷲掴みにし、後方へと押しやる。
「ぐっ。なんだよ、いきなりっ!」
ヘンゼルは想定外の事態に狼狽た。感触的に自分の顔を掴んでいるのは人間の手のように思われる。しかし、部屋の人間の位置は把握していた。誰にやられているのか分からない。
だが、そんなことよりも先ずは現状を脱するのを優先するべきだ。
しかし、手を外そうと藻掻くが外れる様子は無い。ちくしょう、掴まれた時に剣を落とさなければ、かなりマシだったのに。と後悔するが後の祭りだ。
ついさっきまで、自分が狩る側だと信じて疑わなかった彼は油断していたのだ。
「お兄様を離しなさい、化け物!」
「まだ生きてたのかい。化け物ってのも、あながち間違いじゃぁないのか」
周りの誰かが何か言ってる気もするが、何を言ってるか分からないし、聞こうとする余裕もない。
顔を掴む相手はヘンゼルの問に答えることなく首筋に噛み付き血を啜る。
「あっ、ずるい」
ここまでされて、ようやく誰が自分にアイアンクローをしているのか理解した。
しかし何故? と、同時に思う。
確かにヤツは桁違いの回復力を持っていた。しかし、その回復力以上のダメージで全身を石にされ粉々なって死んでいた筈なのに。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!」
最後の力を振り絞り爪を立てるも、敵には何の変化もない。
血を吸われる強烈な不快感と命が失われていく恐怖の中、全身を青白い枯れ木のようにされたヘンゼルは死んだ。
最後まで、何も分からないまま。
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