陰陽戦記

破壊神

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第壱話 陰陽

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 電車内には一日の仕事を終えて、疲れきった人々が乗っている。
 後籐ユミもそんな人々の一人だ。
 もっとも彼女は普通の人とは違う理由だが。
 彼女の職業は小説家、と入ってもまだまだ駆け出しで全く売れていないが。
 ユミはカバンの中からノートを取り出してめくってみる。
 そこには小説のアイデアがたくさん書かれていた。
 とはいえ、そのアイデアもやっとの事で絞り出してもなかなか文章にはできないようなものばかりだった。
 「ほうほう、それは…。何か呪いのようなものですか?」
 ふいに隣に座っていた男が声をかけてきた。
 年齢は20代くらいだろうか。
 紫がかった髪に細身の体をしている。
 「ちょ、何見てんですか?」
 ユミはとっさにノートを隠した。
 「待て待て、俺は別に何かしたわけではなかろう。そんなムキにならんでも…」
 「あんまりしつこいようだと訴えますよ!」
 周りの目線が彼の元に集まってきた。
 「おう…。悪いことは何もしてないんだが…」
 あぁもうどうしてこんな奴に絡まれたんだろうとユミは思った。
 第1私の作品のアイデアを呪い呼ばわりするなんて許せない。
 そう思いながらユミは眠ってしまったらしい。
 
 気がつくと最寄り駅を五つほどすぎたところだった。
 「いっけない!なんでよりにも寄ってこんなところまで!厄日かなんか?今日って」
 左を見るとまだあの男もいた。
 「次で降りて乗り換えなくちゃあ…」
 「次で降りるんですか?奇遇だな。俺もなんです」
 またしても隣の男が話しかけてきた。
 「何ですか?今度はストーカーかなんかですか?」
 「そんな失礼な…。俺は元々そこで降りるだけで…」
 「そんな嘘通じないし。第一次の駅なんて普通は地元民しか使わないからね!もっとマシな嘘ないの?」
 「いやこれはマジで。付いてくれば分かりますよ。まぁあんま来ないことを勧めますが…」
 男は言った。
 もうこうなったら正体を突き止めて通報してやるとユミは思った。
 「次はー、国府台ー、国府台ー」
 車内放送が流れる。
 いよいよ、決行の時だ。
 
 ユミは男に続いて電車を降りると、あとをつけて行った。
 やがて駅構内から出ると男は立ち止まってこっちを見て言った。
 「本当についてきたんだな。まさかくるとは思わなかった。あれだけ言ったのに…。まぁいい、来たいんなら来い」
 こいつには気づかれたくなかったのにバレた…。ユミはそう思った。
 やがて二人は並んで歩き始める。
 「あなたは一体何者なんですか?」
 ユミは訊く。
 「それは、すぐに分かる」
 男は答えた。
 「そういう君は何者なんだい?」
 「私はタダの駆け出しの作家です」
 すると男は言った。
 「なるほど、少し読んでみたいものだな。君が書いた話というのも」
 「変なお世辞はやめてください」
 ユミは言う。
 「いや別にお世辞でも何でもないぞ。これはまじに思ったことだ」
 
 やがて二人は公園のような所に着いた。
 「ここだ…」
 男は言う。
 「ここに…?何が?」
 「悪い気が溜まっている…」
 「悪い気?」
 「あぁ、悪い気だ」
 その時、何か黒い獣のようなものが襲いかかってきた。
 「危ない!」
 男がユミを突き飛ばす。
 「うあっ、あれは…」
 「邪魅…。悪い気の塊のような妖怪だ」
 その瞬間、男の周りに旋風が巻き起こった。
 そして彼は一瞬にして狩衣の姿になる。
 「まさか…、あなたの職業って…」
 すると彼は答える。
 「そうだ。俺の名は上須川レオン。職業は流浪の陰陽師…」
 「がるるるるるる」
 邪魅がレオンに襲いかかってくる。
 しかしレオンの方が上手だった。
 式神と呼ばれる人型の紙を出すとそれを邪魅に投げつけた。
 式神は閃光を放ち邪魅に命中する。
 その瞬間、邪魅は消滅した。
  「とまぁこんな感じだ」
 レオンはユミの方を見ると言う。
 「凄い…、小説のアイデアにしていいですか!?」
 ユミは訊いた。
 「まぁ、フィクションとして出してくれるぶんには構わないかな。そして…」
 「そして?」
 「まだお前の名を聞いてなかった」
 「私は後籐ユミといいます!よろしくお願いします!」
 「よろしくお願いしますって…。まさか取材するわけじゃあないだろうなぁ?」
 「え?だめ?」
 「ちっ、しゃあねぇ。いいだろう」
 
 こうして、行く手に待ち構えるのは幸か不幸か、陰陽師上須川レオンと小説家後籐ユミの冒険は始まった。
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