3×歳(アラフォー)、奔放。

まる

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本編

開戦4。

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「やっぱり落とせないよね」
「ンフフ。随分と強いのを造ったデスネ」
「少し張り切りすぎたかな?加減が難しいね」

屋敷のバルコニーから南方を眺め、紫庵は楽しそうに手すりに頬杖をつく。
陽が昇り、厚い雲間から光が差していた。倒された獣たちの煙も遠く臨める。

「でも敵は強い方が成長にも繋がるよね。獣相手じゃもう、緩かっただろうし」
「そうデスネ。また乗り越えていくデスネ」

アルフォンスは欠伸を噛み殺し頷く。
常に高い所から見下ろす立ち位置の紫庵は、中枢の僅かに上を狙い調節しがちだった。その中でも今回はあまりにも圧倒的な存在を四ヶ所にも。
長い付き合いになるが、その思惑は相変わらず読めなかった。

「もう終わらせるつもりデスカ。確かに、目的は果たせそうにないデスガ」
「うん。中々厳しいね」
「また次デス。気長にやるしかないデスネ」
「参ったなあ。早く解放されたいものだね」

言葉とは裏腹に、困った様子もなく紫庵は深く笑む。
何千年と繰り返しても変わらない。移ろいゆくものも、永劫の中では微々たるものだった。
いつになったら、と焦れる気持ちはすでに薄れていた。いつかそのうち、と高を括り巡る日々。
退屈なそこに刺激をと、画策する彼を誰が止められるのだろうか。

「今回はイレギュラーもあったデスガ、変化には富まなかったデスネ」
「うん。結局はいつも通りさ」
「ユキチャンもデス。記憶はこのままデスカ」
「フフ。望まないならこのままだよ。何の問題もないでしょ?」
「ウゥン…板挟みで苦しむよりは良いデスガ」
「そういう事さ。ユキちゃんには楽しく過ごしてもらわないとだからね」

説明しても理解に及ばないだろうと、詳細は話さずにいた。巻き込む側としては悩む所ではあるが、混乱を招くよりは良いのかもしれない。
アルフォンスの吐き出した紫煙が冷たい風に流れる。
薫る煙を横目に紫庵も微笑んだ。

「次は先に僕が見つけるからね」
「オヤ、最初からだとつまらないとシアンサン、いつも言うデス」
「たまには最初から慕われたいよ。どうせ取られるんだしさ」
「ンフフ。それもまた常デスネ」
「配役まで弄れないしなあ。正反対の位置にでも落ちてくれたら、御し易いのに」

緩やかな髪を弄りながら紫庵は嘆息を漏らす。
出会った頃と少しも変わらない華奢な美貌へと、アルフォンスは垂れ目を細めてみせた。

「縁というモノは面白いデスネ。違う極同士のように引かれ合うデス」
「寄せなければとは思うけど、巡り逢うまでが縁なのかな?」
「恐らく、そういうモノだと思うデスネ。裏側に居たとしても、いずれは寄ってしまうデス」
「成る程ね。厄介だね」
「そちらを邪魔してもシアンサン、何も生まれないデスネ。それより、やるべき事はいくらでもあるデスヨ」
「あはは。僕の楽しみのひとつなのに?探し物より余程こっちの方が、生きがいになってそうだよ」
「オヤ、困ったお人デスネ」

苦笑しアルフォンスは携帯灰皿に吸い殻を押しつける。
早朝からの進軍は一旦落ち着いたようだった。このまま大人しく戻るのか、それともまだ続けるのか。いずれにせよ、あちらからすれば芳しくはない状況に見えた。

「ヒカリサンも苦しい時期デスネ。早まらないと良いのデスガ」

中枢の儚くも凛々しい君主を思う。
あの高貴な存在もまた、この巡りの世界の寵児であった。
紫庵が陰であれば、光の君が陽である。
均衡を保つ為にと説くまでもなく、静謐な美丈夫は真っ直ぐに君臨していた。

「半世紀も生きていないのに、僕と並ぼうだなんて笑っちゃうけどね」
「ンフフ。短いからこそ、輝くモノもあるデスヨ」
「へえ?まあ、お手並み拝見かな」

圧倒的な力からか、紫庵はいつも余裕があった。様々なものを長い道のりへと置き去ってきた彼もまた、哀れだとアルフォンスは思う。
思うがままの創造主は救いを求めていた。しかし、差し伸べられる手は無下にも払う。悠久の時はほぼその繰り返しだったのだ。

「シアンサンも素直じゃないデス」

捻くれてしまった男の不敵な笑みを隣に、もう一本取り出そうとしてアルフォンスはシガーケースをポケットになおした。
ふわりと現れたのは幼い美貌の主と、続いて銀糸の髪をした青年。
照れ笑いとも苦笑とも取れる表情を湛えて、蒼念はぺこりと頭を下げた。

「やあ、おかえり蒼念君」
「すいません、やっぱり戻ってきました」
「うん。良いよ、賢い選択だ」

紫庵は満足そうに頷き振り返った。
駒とはいえ、手塩にかけた可愛い子供でもある。出ていった当時のままの姿に、優しく笑みが向けられた。

「君をどこに置こうか考えてた所なんだけれど、どうしたい?」
「…え?」
「智恩君たちにぶつけた方がドラマチックかな?かつての仲間たちとの戦いだなんて、さぞかし心震えるものだろうね」

陽に煌めく銀糸の髪を、紫庵は目を細めて見遣る。
ヤレヤレと肩を竦めるアルフォンスを押しのけて、伽羅は輝く双眸で紫庵を見上げた。

「紫庵様、先に伽羅だよ。少しだけど刻んできたよ」
「ああ、祐の所だっけ?頭から先にと教えたはずだよ?」
「うう、ごめんなさい。サナダは強かったんだ」
「フフ。まあ良いさ。あの辺は勝永が出ないと敵わないだろうしね」

パールホワイトの頭を軽く撫でて、紫庵はにこりと微笑む。

「もう少し頑張らないと、僕には届かないと分かってもらえたかな」
「紫庵先生、砦を四方に置いたんですね。あれは獣人に?」
「うん。敵に回すと怖いけど、手元にあると心強いよ。勝永は」
「え、守ノ内中佐もこちら側に?」
「そうせざるを得ない状況なのかな?思惑通りって、つまらないけれど気持ちが良いよね」

晴れやかな顔が厚い雲の空を仰いだ。
戸惑う蒼念が見上げてくる。アルフォンスは苦笑を返して肩を竦めてみせた。

「ミナサン戻ったら、一度ワタシも中枢へ行くデスヨ。スザクサンの首、調べたいようデス」
「うん。精々発破をかけてきてよ」
「承知デス。ユキチャンを頼むデスヨ」
「勿論さ。僕らの大事な聖女様だものね」
「無茶はしないデスヨ」

改めてシガーケースを取り出し火をつけた。冷たい空気と共に瘴気も肺を満たす。これも取り除かないとフェアではないな、とアルフォンスは雲を見上げた。

「次が待ち遠しいね。良い区切りになりそうだ」

空色の髪が流れる下を紫庵は微笑み眺めていた。自由に動き、大いにかき乱してもらいたいと願う。

中枢にまだ動きは見られなかった。
蒼念を改めて招き入れて、お茶にしようと紫庵は無邪気にも両手を広げてみせた。


***


西の砦は青龍を模した獣人が守っていた。その周りを厚く獣たちが囲う。
中将が攻め込むと踏み、足止めも兼ねての配置は意味をなさなかった。
それは予想外の強襲で、彼らは対峙する暇もなかったのかもしれない。

「やっぱり、来てましたか」

意図せず冷ややかな呟きが漏れた。
半壊した砦の中、青い鱗を持つ腕をその男は引きちぎり手にしていた。床に重油のような黒い溜まりが広がっていた。

「…来たか、カツ」

佇む縦長い背から低く声が紡がれる。
守ノ内は雪妃を床に下ろし、不可解な義父を嘆息混じりに見遣った。

「何の用です?様子見の出撃に王様の元を離れるなんて」
「迎えだ。すぐ戻ると、錦之介に任せて出ている」
「要らぬ世話だと、何度言わせるんです」

黒い血溜まりに伏せ荒い呼吸を漏らす青龍を、雪妃は愕然と眺める。
宝石のように煌めく鱗を纏う彼は、先刻から不安を煽るような警鐘を鳴らしていた。
伽羅といい、彼らは緊急時の知らせを自分に送る術を持たされているのか。聞いていない事ばかりだと、雪妃は拳を握りしめた。

「セイリューちゃん…!」
「聖女様…無様な姿をお許しください。よもや人間がここまでとは」
「許すも何も、今助けるからね」

弱々しくも呟く青龍のちぎられた腕から、蔦のように組織が伸びていた。
心臓を潰されなければ、と紫庵に落とされた首が各々再生する様は先日見せつけられていた。しかしそれよりもずっと遅く、力なくも見えた。

「助ける必要はないぞ、嫁よ。獣人は捕獲し戻る。おまえも、カツもだ」
「待って待って、一旦落ち着こう」
「一度は見逃した。次はない」

フレディの振る刀に首が飛ぶ。
目を見張る雪妃は、唇を噛みしめ辺りに転がるいくつもの龍の頭と手足を認めた。
緩慢な蔓の動きだった。心臓がある限りとはいえ、永遠に再生を繰り返せる訳ではないのかもしれない。

「不老不死とはまた違うのか」
「やめてよ、もう斬らなくても良いでしょ」
「獣に哀れみは無用だ、ユキ。これは人類の敵だ」

青龍の四肢を落とし、立ち尽くすふたりをフレディは見遣った。その圧倒的な力を見せつける元帥は、返り血のひとつも浴びていない、真白な姿をしていた。

「あと三匹か。全て持ち帰り、皆で戻ろう」
「戻りませんよ、あなたとは」
「何故だ。おまえたちの帰りを皆が待ちわびているというのに」
「今はその時ではないんです。分からない人ですね」
「では、いつだ」
「いずれです。もう構わないで」

身を震わせる雪妃の肩を抱え、守ノ内はぐっと眉根を寄せた。
斬るべきは獣であり獣人である。
しかし、今は少し違った。
雪妃のように情を持った訳ではないが、斬るなと言われ気持ちは動かない。フレディを前にそれは尚強く、守ノ内にも僅かながら嫌悪を抱かせた。

「戻ってください。転がってる首でも持って帰って」
「いや、持つのは本体だ」
「そうですか。仕方がありませんね」

守ノ内はひとつ、長い息を吐く。
青龍が呼んでいると雪妃に言われ、ここに来た。嫌な気配は彼であると察知し、足取りも重たくなった。
助ける義理もないが、雪妃が飛び込む前に。守ノ内は腰元へと手を落とした。

「お嬢さんは動かないで」
「でも、勝永」
「大概あれにはうんざりしてたんです。もう構うなと、これで終わりにしましょう」

ぴりと痺れるように、空気が震えた。
雪妃は言葉を飲み込み一歩下がる。いつも穏やかな男の、義父を前にする時の雰囲気は剣呑さに満ちていた。

「ダメだよ、パパなんでしょ」
「名ばかりのです。不必要に干渉される謂れはありませんよ」
「そうだ、パパだぞ。戻れないというならば、私が戻してやろう。家族は共にあってこそだぞ」

ちぎった腕を踏み潰し、フレディはうねるブロンドの髪を揺らした。
迫力のある細身から、まるで熱でも発せられるかのようだった。それは冷ややかにも纏う守ノ内の空気とぶつかった。

「正しくあれよ、カツ」
「知りませんよ。あなたの正義なんて」

鬩ぎ合うふたつの白刃が火花を散らした。
似ても似つかぬ親子の剣筋は、どちらも滑らかだった。一閃で全てを斬り落とすふたつの刃が、すでに崩れている砦の壁を更に削り崩していく。

「ああもう。何かヤバそう」

動くなと言われたが、雪妃は動こうにも動けなかった。交差する刀の生み出す風によろめいて、辛うじて床を踏みしめる。

「セイリューちゃん、無事なの?こっちに来れる?」

転がる目に光はなかった。
まだ再生しない首の方、四肢も落とされた身が小さく反応する。首元からするりと伸びてくる植物のような多くの筋が、雪妃の伸ばした手に巻きついた。
うお、と若干頬を引きつらせながらも、生温い感触に手を重ねた。

「無事なんだね。良かった」
「聖女様、少し頂戴できますか」
「ん?」

目の前が急に暗くなった。
腕に絡まる筋から、急激に吸引されるのは何だろうか。目眩を覚えて雪妃はその場に座り込んだ。

「お嬢さん」

守ノ内がフレディの刀を弾き、跳ぶ。
プチプチと引きちぎられ、青龍の蹴り飛ばされた長い体が再び床に倒れた。

「何をしてるんです、斬りますよ」
「大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから」

黒い裾を掴み、雪妃は慌てて守ノ内を止めた。少し泳いだ後のような気怠さが身を襲っていた。
呼ばれたら行ってあげてと、紫庵が微笑み言っていた意味を、雪妃はここで漸く察した。

「有難く頂戴しました、感謝を」

ゆらりと立ち上がる青龍の瞳孔の細い双眸が光を灯す。斬り落とされた跡もなく、立ち塞がるようにフレディと対峙した。

「しぶといな、獣人は」
「我らは聖女様がある限り、朽ちない」
「そ、そうなのか。吾輩シワシワにならない?」

吸われたのは生命力的なものではなかろうかと、雪妃は肌を摩り顔を強張らせる。折角の若い姿を台無しにされては、皆を助けられるとしても快諾はできなかった。

「吸っても良いけど、程々に頼む…」
「ご安心を、聖女様の蓄えを少し頂戴するまで」
「う、うむ。蓄えか、元気なだけが取り柄だもんな」
「聞いてませんよ、勝手な真似はしないでください」

ぴとりと額に、首筋に温かい手が触れた。雪妃は頭を振って、守ノ内に曖昧な笑みを浮かべてみせた。

「大丈夫だって。それよりどうしよう、パパ今回は見逃してくれないよね?」
「ええ。でも追い返しますよ」
「穏便に、話し合おう」
「話の通じない人なんです。斬るしかありません」
「そりゃ困ったね。そこを何とか」

守ノ内の腕を借り立ち上がると、雪妃はやたらと迫力のある細身を見上げた。
青龍をじっと睨めつけるフレディが刀を振る。床に亀裂を走らせ、フッと消える姿は常人にはとても目に追えなかった。

「キリがないならそのまま連れ行く。カツ、ユキをそれから離せ」

脳天からフレディの刀が青龍を両断する。駆け出そうとする雪妃の肩を押さえて、守ノ内は撒き散らされる黒い体液から身を避けた。

「こら、助けないと」
「いえ、あれは差し出しましょう」
「馬鹿者、助けるの。何とかして」

ぐらりと分かたれた身が、接合しようと組織を伸ばす。それも断ち、細長い脚は容赦なく青龍の頭を踏み潰した。
ぐしゃりと散るそれから目を逸らして、雪妃はもどかしくも守ノ内を見上げた。
この男でも苦戦を強いられる事は素人目にも感じていたし、何より親子で斬り合っては欲しくない。しかしどうしたらいいのか、皆目見当もつかなかった。

「ユキ、困ってる?」

不意に軽やかな声が届く。
空間を割り現れた幼い美貌に助けを求めていいものなのか、雪妃は確かに困った顔で伽羅を見遣った。

「今ね、強いのが城を空けてるから、中枢で少し遊んできて良いって紫庵様に言われたの。ユキも行かない?」
「え、中枢に?」
「うん。一番偉いのを刻めたら、ご褒美があるんだって。そんなに強くないらしいよ」

ごうと駆け巡る覇気に、伽羅は無邪気にも笑って宙を回転した。
フレディの横薙ぎの一閃で首が刎ねられるも、ぱしりと掴む小さな手に何事もなかったかのように元の位置に収められた。ギョッとしつつも雪妃は後ずさった。

「おわ、キャラちゃん何それ」
「へへ、先に蒼念兄様が皆と行ってるし、この人刻んでからにする?」
「いやいや、刻むのはダメだけど。蒼ちゃんも戻ってるの?みんなも?」
「ううん。蒼念兄様だけだよ」
「そうなのか、中枢に」

ひらひらと躱しながら伽羅は器用にも伝えてくる。
ちらと守ノ内を窺うと返ってくる苦笑に、雪妃は眉を寄せた。
中枢の君主には恩義があると言っていた。流石に戻らなければマズいのではないかと、雪妃は崩れ落ちる青龍と守ノ内とを見比べた。

「早く行きんしゃい、守らないとなんでしょ」
「そうなんですが、お嬢さんを置いては行けません」
「馬鹿者、こっちは安全。あっちは危険なんだから」
「でもね、私は」
「分かった、一緒に行こう。すぐ戻れるよね?」
「え…?それは、お嬢さんが戻りたいのであれば、そうしますけど」
「承知の助。パパもだよ、中枢の王様がピンチなんだって。はよ戻りんしゃい」

剣戟が止むのを見計らい、雪妃は青龍の元へと滑り込んだ。弱々しくも伸びてくる蔦を掴むと、要領を得ずとも取り敢えず握りしめておいた。

「感謝を、聖女様」
「いーのいーの。大丈夫なんだよね?」
「あの者を滅するには力及ばず、しかしこちらも易く滅しは致しませぬ」
「うむうむ。兎に角パパは強いんだな」

紫庵の計らいなのか、この場は切り抜けられそうだった。
逡巡間もなくフレディは一閃を残して砦を去った。緊迫感が薄れて、急に肩も軽くなるようだった。

「嫌だなあの人。綺麗に斬るのに凄く、くっつけにくい」

頬を膨らませ伽羅は首を摩った。
どう返したら良いのか分からず、雪妃は薄く笑ってパールホワイトの髪を撫でておいた。

「確か斬れないと言ってましたが、あなたもそうなんです?」
「何の話?伽羅は難しい事は分からないよ」

雪妃に擦り寄る華奢な身を剥がしつつ、守ノ内は肩を竦めた。大陸は厄介なものばかりだと改めて感じさせられた。中枢の軍の頭の煩わしさもまた、実感させられていた。

「あれ?行くのは良いけど、中枢の王さまを守るなら勝永、キャラちゃんたちとやりあうの?」
「ええ。危害を加えるなら、そうなりますけど」
「うへえ、どうすんだ」
「ふふ。斬りますよ、でも追い返すだけにしましょうか」
「そうしよう。お互いね、平和に」
「えー?カツナガ狡いし、伽羅はやるよ?」
「おや、私もあなたには正直、容赦なくいきたいんです」
「おいおい、落ち着いて。仲良く」

にこやかに微笑み合うふたりの合間に入り、雪妃は嘆息を漏らした。
因縁の強国の争いに、いつまでも甘い事は言っていられないとは思う。大陸側に加担する形となっているが、紫庵を抑える宝剣の事も忘れてはいなかった。

(紫庵さまを大人しくさせて、後は話し合いで平穏に終えて欲しいんだけど)

光の君とやらがどんな人物なのか知らないままでの強行は、良くないとも思っていた。
話が出来るのであれば、それで解決しないものかと緩い思考ながらに画策はしている。
頼みの綱のアルフォンスとは話も出来ないままとはいえ、守ノ内には了承を得ていた。戻ったら蒼念とも話を、と雪妃は歪む空間に誘われながら目を伏せた。
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