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二章
40 諦めていませんから
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「ーーーーーそれでカヤちゃんは私に何を聞きたいのかな?」
散らかっていた作業部屋を少し整理し、テーブルにお水の入ったコップを人数分並べ、シルバ様はそのように問うのでした。
「魔道具にどのような用途の物があるのか知りたいのです」
「そうだね。色々あると答えるのは簡単だけど、もう少し具体的に教えてほしいかな。例えばカヤちゃんはどんな魔道具があって欲しいのか、とかね」
「、、、、、このような言い回しが正しいのかは分かりません。ですが私は離れた場所へと瞬時に、もしくは移動時間を大幅に短縮できるような魔道具があれば良いなと思っております」
もしそのような魔道具があれば、夏休みの間だけでもリビット村に戻る事が可能なのではないかと。
「移動系の魔道具ねぇ。あるにはあるけど、お手頃なものだと馬車より遅いよ。それにウチで取り扱っている最上級の物でも馬車より少し速いぐらいだし、大幅にってのさえ今の技術じゃ難しいね」
「そうですか、、、」
「でもそれは今の技術ではって話だけどね。あるよ。カヤちゃんの言うような魔道具は実在している」
シルバ様は立ち上がり、積まれた本の山から一冊の本を抜き取りました。
「魔道具はね、とっても昔からあるのよ。それこそこの地に神が住まわれていたとされる神話時代からずっとね」
神話の時代。それは現在より二千年前のお話。その頃に記述されたとされる古い書物に残された伝承のみで伝わる時代。
そしてその頃の書物には神に纏わる記録が多く残されていたそうです。
「神話時代の魔道具。それらは神が創ったとさえ云われるほどの、今の魔学じゃ到底再現も解析も出来ないような代物ばかり。確かその中に転移門と呼ばれる魔道具があったはずよ。それならカヤちゃんの要望に添えると思うけど、神話時代の魔道具ーーーーー通称"神創魔道具はその貴重さと、絶大な効力より古来から王家が管理していると聞くよ。まぁ噂程度に、ですが。それで合っていますか?殿下」
シルバ様はふいっとエーデルトラウト様の方に目を向けます。
それにエーデルトラウト様は渋々頷くような素振りを見せました。
「どこから溢れた噂かは知りませんが、概ねシルバの言う通り、アーティファクトは王家が所有しています。ですがそれは私的利用の為ではありません。あまりにも強大な力を宿す魔道具を王家が管理しているのです。アーティファクトの中にはそれ一つで国を滅ぼしてしまうような兵器もありますし、王家でなければ保管が困難な魔道具もありますから」
「、、、、、そこに転移門はあるのでしょうか?」
「はい。あります」
「でしたらそちらを」
と、私が次の言葉を言い切る前に、エーデルトラウト様がこのように仰るのでした。
「ーーーーーただし、転移門の行き先はこちらで指定出来ませんし、下手をすれば足場のない空中に転移してしまう可能性もあります」
「、、、、、え」
「やはりそうでしたか。そうでなければ転移門のような一見便利な物まで本来秘匿する必要はありませんからね。むしろそれが自由に利用可能であれば他国と共同し利用すればこの国は貿易の要としてもっと発展するでしょうしね」
「がっかりさせてしまい申し訳ございません。乙女様」
「ごめんね、カヤちゃん。期待させちゃったよね」
「い、いえ!!?私こそ少し考えれば分かりそうな事でしたのに、勝手に期待してしまいお恥ずかしいばかりで」
まともに使用が出来るなら、全てを秘匿する必要はないのです。利用可能な物があれば利用しなければ、それこそ宝の持ち腐れというものでしょう。それに転移門が期待する効果を発揮出来たとするなら、それは各国への抑止力どころの話ではありません。なにせ転移門を使用すれば、国の中枢機関へと即座に兵士を送り込ませる事が可能でしょうから。
そのような危険なアーティファクトを持つ国を他国が危険視しないはずがありません。きっと先程エーデルトラウト様が仰っていた国を滅ぼすようなアーティファクトも、どこか欠点が存在するのでしょう。そしてそれらの事実を他国の上層にも伝わっている。だからこその平和なのでしょうね。
確かにランダムとはいえ、遠く離れた場所へと瞬時に移動できる効果を持つ転移門は奇跡のような代物です。
リビット村へ戻れるのはまだまだ先になりそうですね。
手紙でのやり取りもとても趣深く楽しいのですが、やはり家族にはお会いしたくなるものですから。
私はまだ諦めませんよ。
散らかっていた作業部屋を少し整理し、テーブルにお水の入ったコップを人数分並べ、シルバ様はそのように問うのでした。
「魔道具にどのような用途の物があるのか知りたいのです」
「そうだね。色々あると答えるのは簡単だけど、もう少し具体的に教えてほしいかな。例えばカヤちゃんはどんな魔道具があって欲しいのか、とかね」
「、、、、、このような言い回しが正しいのかは分かりません。ですが私は離れた場所へと瞬時に、もしくは移動時間を大幅に短縮できるような魔道具があれば良いなと思っております」
もしそのような魔道具があれば、夏休みの間だけでもリビット村に戻る事が可能なのではないかと。
「移動系の魔道具ねぇ。あるにはあるけど、お手頃なものだと馬車より遅いよ。それにウチで取り扱っている最上級の物でも馬車より少し速いぐらいだし、大幅にってのさえ今の技術じゃ難しいね」
「そうですか、、、」
「でもそれは今の技術ではって話だけどね。あるよ。カヤちゃんの言うような魔道具は実在している」
シルバ様は立ち上がり、積まれた本の山から一冊の本を抜き取りました。
「魔道具はね、とっても昔からあるのよ。それこそこの地に神が住まわれていたとされる神話時代からずっとね」
神話の時代。それは現在より二千年前のお話。その頃に記述されたとされる古い書物に残された伝承のみで伝わる時代。
そしてその頃の書物には神に纏わる記録が多く残されていたそうです。
「神話時代の魔道具。それらは神が創ったとさえ云われるほどの、今の魔学じゃ到底再現も解析も出来ないような代物ばかり。確かその中に転移門と呼ばれる魔道具があったはずよ。それならカヤちゃんの要望に添えると思うけど、神話時代の魔道具ーーーーー通称"神創魔道具はその貴重さと、絶大な効力より古来から王家が管理していると聞くよ。まぁ噂程度に、ですが。それで合っていますか?殿下」
シルバ様はふいっとエーデルトラウト様の方に目を向けます。
それにエーデルトラウト様は渋々頷くような素振りを見せました。
「どこから溢れた噂かは知りませんが、概ねシルバの言う通り、アーティファクトは王家が所有しています。ですがそれは私的利用の為ではありません。あまりにも強大な力を宿す魔道具を王家が管理しているのです。アーティファクトの中にはそれ一つで国を滅ぼしてしまうような兵器もありますし、王家でなければ保管が困難な魔道具もありますから」
「、、、、、そこに転移門はあるのでしょうか?」
「はい。あります」
「でしたらそちらを」
と、私が次の言葉を言い切る前に、エーデルトラウト様がこのように仰るのでした。
「ーーーーーただし、転移門の行き先はこちらで指定出来ませんし、下手をすれば足場のない空中に転移してしまう可能性もあります」
「、、、、、え」
「やはりそうでしたか。そうでなければ転移門のような一見便利な物まで本来秘匿する必要はありませんからね。むしろそれが自由に利用可能であれば他国と共同し利用すればこの国は貿易の要としてもっと発展するでしょうしね」
「がっかりさせてしまい申し訳ございません。乙女様」
「ごめんね、カヤちゃん。期待させちゃったよね」
「い、いえ!!?私こそ少し考えれば分かりそうな事でしたのに、勝手に期待してしまいお恥ずかしいばかりで」
まともに使用が出来るなら、全てを秘匿する必要はないのです。利用可能な物があれば利用しなければ、それこそ宝の持ち腐れというものでしょう。それに転移門が期待する効果を発揮出来たとするなら、それは各国への抑止力どころの話ではありません。なにせ転移門を使用すれば、国の中枢機関へと即座に兵士を送り込ませる事が可能でしょうから。
そのような危険なアーティファクトを持つ国を他国が危険視しないはずがありません。きっと先程エーデルトラウト様が仰っていた国を滅ぼすようなアーティファクトも、どこか欠点が存在するのでしょう。そしてそれらの事実を他国の上層にも伝わっている。だからこその平和なのでしょうね。
確かにランダムとはいえ、遠く離れた場所へと瞬時に移動できる効果を持つ転移門は奇跡のような代物です。
リビット村へ戻れるのはまだまだ先になりそうですね。
手紙でのやり取りもとても趣深く楽しいのですが、やはり家族にはお会いしたくなるものですから。
私はまだ諦めませんよ。
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