15 / 26
15 お友達
しおりを挟む……………………目に見えて遠巻きにされたわね。
リグルとの一悶着がありオルセル様の配慮のもとアンデューク一家は早々に退出されたが、殿下の生誕祭は滞りなく続いていた。
退屈ね。
貴族社会において階級の劣る出自の者から上位の家柄の者へ声を掛けることはマナー違反に当たる。でも挨拶なら話は別だ。ゆえに公爵令嬢という魅力的な肩書きを持つ私の周りに自然と人が集まり、目まぐるしい挨拶の嵐に見舞われるのが必然だったのだけど。
まだ正式なデビュタントではないし、様子を窺っているのね。公爵令嬢としてではなく、私個人として交流を深めていって良い人材なのかどうか。
……まぁ失礼な話よね。そう思う気持ちも分からなくもないから気にしない事にするけど。
お父様はお父様で王国魔術師団団長の務めで陛下のもとから離れられないみたいだし。きっとリグルの件も既に耳に入っているのでしょうけど、結果が結果なだけにその場に留まったのでしょうね。
もし、私がリグルから一撃でも受けていれば飛んで駆けつけられたんでしょうが、何事もなく終わってしまい陛下の元から急いで離れるような事態でないと判断したのね。
そういえば一緒に連れてきたフリージアはどうしているかしら。
公爵令嬢の専属メイドとはいえ、このパーティーに参加する身分では無いからと、裏方に回ってるはずだけど。
私としてはずっと連れ添っていたかったのだけど、当の本人が肩身の狭い思いをするのは不本意だもの。
料理はどれも美味しいんだけど残念だわ……お持ち帰りって出来ないかしら?
プラスチックの容器……なんて無いわよね。鍋に入れて蓋をする? 厨房に行ってお願いすれば借りられるでしょうけど……。
「ーーーーーお、お初にお目に掛かります!」
と、令嬢にあるまじき行為に及ぼうとしていた私に声が掛かった。
その声の主に目を向けると、そこには桜を思わせるピンク色の髪に、優しいエメラルドの瞳をした少女が立っていた。
「わたくしはグリフォード伯爵家が三女、キュニー=グリフォードと言います!」
グリフォード……確かヴィドフニル家と同じくらいの歴史を持つ由緒ある家系だったわね。
「初めまして、キュニー=グリフォード様。私はヴィドフニル公爵家のティアラ=ヴィドフニルです。どうぞ気軽にティアラとお呼びください」
「そ、そんな……わたくしなんかが恐れ多いです⁉︎」
貴族間で名を呼ぶというのはその者達の間に信頼や友情があることを示すもの、もしくはこれからそうなりたいと願う期待が込められている。まぁ古臭い習わしではあるけれど、私や彼女のような由緒ある家の者にとっては大事な事なのよね。
フリージア達使用人は伝達の妨げにならないようにと、信頼の意味で名を呼ぶ事が許可されているけれど、格下で名を呼ぶ許可も与えていないリグルが私の名を敬称もなく大声で叫んでいたことこそが暴力沙汰を丸く収めた後に残った一番の問題だったりする。
「構いませんわ。なにせ私はお友達が欲しかったのですが、どなたも私には関心を抱かれなかったようで。私は待っていたのですよ。キュニー様のように良き関係を築けそうなお方を」
私はあえて周りに聞こえるようにそう言った。
気にしないとは言ったものの、だからとて我慢するつもりも毛頭ない。
公爵家との繋がりを断つような行ないを公爵家の令嬢が黙認すれば、その地位が揺らぎかねないし、それになにより私自身が値踏みされている事が不快でしかなかった。
でもそのお陰でこんな可愛らしい子が近づいてきてくれたのなら、少しは感謝しなくちゃね。まぁ、彼女の後に誰が来ても塩対応だけど。
そんな私の思いも知らずに、お友達という言葉に笑みを浮かべ、キュニー様は一所懸命に応えてくれた。
「不束者ですが、どうぞ末永くよろしくお願いいたします!」
「…………結婚しましょうか?」
「え、ええ……⁉︎」
「冗談です。こちらこそお友達として宜しくお願いします。キュニー様」
「はい!」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
ゲームの悪役貴族に転生した俺、断罪されて処刑される未来を回避するため死ぬ気で努力したら、いつの間にか“救国の聖人”と呼ばれてたんだが
夏見ナイ
ファンタジー
過労死した俺が転生したのは、大好きな乙女ゲームの悪役貴族アレン。待つのはヒロインたちからの断罪と処刑エンド!?冗談じゃない!
絶対に生き延びて平穏な老後を送るため、俺はゲーム知識を総動員して破滅フラグ回避に奔走する。領地を改革し、民を救い、来るべき災厄に備えて血の滲むような努力を重ねた。
ただ死にたくない一心だったのに、その行動はなぜか周囲に「深謀遠慮の聖人」と勘違いされ、評価はうなぎ登り。
おまけに、俺を断罪するはずの聖女や王女、天才魔導師といったヒロインたちが「運命の人だわ!」「結婚してください!」と次々に迫ってきて……!?
これは、破滅を回避したいだけの悪役貴族が、いつの間にか国を救う英雄に祭り上げられ、ヒロインたちに溺愛される勘違い救国ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる