なぜなに魔法学校~先日教師になりまして~

第一章

第十二話 杖

生身の人間（？）に引かれた翌日だが、本日も普通に出勤である。　
あの後フラワーには病院に行くよう言われたが、あいにくそんな金も無いため普通に帰ることにした。
本当に大丈夫かと聞かれたが、死にかけたことは割とあるから大丈夫だろう。
流石に地獄に行ったのは初めてだったが。
と、そんな事を考えているとフラワーに話し掛けられた。
「先生。」
「なんだ？」
「先生は『杖』って持ってないんですか？」
「杖？あー杖って言ったらあれか、よく魔法使いとかと一緒に出てくるやつ。」
そこまで言ってふと思い出した。
「あれ？でもフラワーとか香とかが使ってるの見たこと無いような…」
「あぁ、私は杖よりも素手の方が使いやすいので。他の子とかも自分が使いやすいものを使って魔法を使ってるんですよ。でもヒトが魔法を使う時にはやっぱり杖を使うことが多いですね。」
「人がってことは種族とかによっても違うのか？」
「はい。種族によってチカラの『強さ』や『質』も変わってくるんですよ。それに合わせて道具とかも変えるので…」
「…中々にややこしいんだな、魔法。」
「でも慣れれば意外と簡単ですよ？まぁ、それについては置いといて、今は先生の杖の話です。その反応からみて『杖』は持ってなさそうですし…」
少し考え込むようにしてからフラワーは言った。
「久し振りに行って見ますか…」
「行くって…どこに？」
と問うと
「先生に必要なものを見つけに。」
そう言って笑った。
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「へぇ、中々上手くやれてるじゃん。」
黒い髪に黒い瞳、黒い半袖に長ズボン。
それなのに袖から覗く腕や、少々髪に隠された顔は一般的といえば一般で有りながらも、透き通る様に感じられる程白かった。
そんな姿をした青年は窓から見える教師と女生徒のやり取りを、愉しそうに見ていた。
青年の顔立ちは、その愉しげな表情がその年頃としては歪んでいると見て取れるのに、そんな表情をしていても美しいと感じられる程整っていた。
そして、鏡から写し取った様にその顔立ち似た者が、何処か近くにいた様な気がした。