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サンサの指導
魔女見習いは王女の復讐の依頼を受けた
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サンサとマリルが住む家は、キッチンとダイニングルームが一緒になった部屋の隣にリビングルームがある。あとはサンサの寝室と魔法道具を収める部屋があるだけで、小屋と言っても差し支えないほどの小さな木の家だ。
押しかけ弟子のマリルは、リビングのソファーで寝起きをしている。勉学はもっぱらダイニングで行われていた。
サンサの指導は、マリルが女の子だからといって甘やかしたりせず、基本の基から叩きこむ厳しいもので、最初のうちはマリルも、ぶつぶつと文句を言ったりした。
「お師匠様、この白魔術入門編は、学校で習いました」
「ならば暗唱してみよ。細かい文章まで覚えていなくてもいいから、魔力の感じ方、どう集め、どう形にして放出するかを教科書通りに実演してもいい」
「そんなこと言われても……意識しなくても、できてしまったから、先生も他の勉強してていいよって言って下さったのです。だからこの辺は読み飛ばしちゃったの」
「そうだろうな。私もあやつもそうだった。説明されなくても常に身体の中にパワーを感じられたから、なぜこんな簡単なことをやらなくちゃいけないのかと、授業に退屈したこともある」
大魔導師と尊敬されるサンサが、マリルと同じ気持ちを抱いたこともあると聞いて、マリルは常に抱いていたほんの少しの罪悪感が消えていくように感じ、勢い込んで頷いた。
「そうなんです。さすがお師匠様。分かってもらえて嬉しいです。他の人をバカにしているわけじゃないけれど、魔力に集中してどんな形にして出すかということを、授業時間をいっぱいいっぱい使って何度もやり直ししている人がいると、早く次のレベルを学びたくてしかたがありませんでした」
「白魔術は本来、自然に満ちる力や、精霊、妖精などの力を借りて、人のために役立てるもので、悪しき心根の者に精霊は力を貸さぬ。本当の魔術師になるためには、己自身の精神も磨かねばならない。年端の行かぬものが魔力を集めて具現化するのに手こずるのは当たり前なのだ」
「そうなんですね。それで魔法学校の生徒は、何度もやり直したり、魔法をかけるのに時間がかかっていたんですね。そんな大切な白魔術の基本が書かれていたのに、私が精霊や妖精の力を借りなくて済んだから、大事だと思わずに読み飛ばしちゃったんだ。それなのに授業の進み具合にイライラしたなんて、私は勘違いのおバカさんですね。文句を言ってごめんなさい。読み直します」
サンサはマリルの頭に手を置き、いい子だと言いながら優しく撫でた。
「稀に私たちのように、初めから体内に魔力を宿している者が生まれるらしい。今回は人より突出している能力を持つ者が、マリル一人だったから間違いが起こらなかったのかもしれない。恥ずべきことに、私とあやつはお互いどちらが優れているかを競いあってしまった。ほんの僅かに私の方が魔力が上回っていたために、あやつを歪めてしまったのかもしれない。あやつは負けず嫌いで、強いパワーを誇示して、人々に畏怖されることを楽しんでいた。精霊の加護で成せる魔法なら、とっくに使えなくなっているはずなのに、無条件に使えるパワーは人を驕らせる。自分が神にでもなったように勘違いして傲慢になり、誰にも負けぬように力をもっともっとと欲していく」
マリルはその先が想像できて、ぶるっと身体を震わせた。
「精霊の加護のお陰で、本当なら魔術師に悪しき者は近づけないはずなのに、加護のないあやつは悪しき者に唆され、私が気づいたときには、既に闇に落ちていた。マリル、私はお前のことが心配で堪らない。どうか、正しい白魔術を理解して、強い心を保っておくれ」
「はい。お師匠さま。私はサンサさまをがっかりはさせません。正しい魔法を使う強い大魔導師になるつもりですから、安心してください」
「よし、いい子だ。今日の講義はここまでだ。自分で指南書を読んで、あとで私に理解したことを伝えるように。じゃあ、今度は魔法を使わずに薪割りをしなさい」
「え~っ! 何でそんな力のいることを子供にやらせるんですか? ひどいです。魔法でちゃっちゃっと片付ければいいじゃないですか」
頬を膨らませてプリプリ怒るマリルを見て、サンサは目を細めてこう言った。
「健康な身体に、正しい精神が宿るというのを聞いたことはないか? 魔法に頼り切っては、身体がなまる。ほれ、行け。薪を割ってこい。そしたら、おやつにお前の好きなケーキを焼いてやる」
風船から空気が抜けるように、マリルのほっぺが元に戻った。
「ケーキ? ケーキ! やった~」
小躍りしながらドアを出て行くマリルの後ろ姿に、サンサは思わず噴き出したが、心の中にふと疑問が湧いた。
いざというときに逃げられるよう、マリルの足腰を鍛えるのは大事だが、それより先にあの疑うことを知らない単純さをなんとかしてやらなければならないのではないかと。
正しい心で魔術を使うのは大切だが、相手の言い分を鵜呑みにしてはならない。知らぬうちに謀計を手助けすることになりかねないからだ。
今のままでマリルが魔術師になったなら、やっかいな依頼に巻き込まれるのが目に見えている。
サンサは可愛い弟子のために、あれこれと方法を頭に描いていった。
押しかけ弟子のマリルは、リビングのソファーで寝起きをしている。勉学はもっぱらダイニングで行われていた。
サンサの指導は、マリルが女の子だからといって甘やかしたりせず、基本の基から叩きこむ厳しいもので、最初のうちはマリルも、ぶつぶつと文句を言ったりした。
「お師匠様、この白魔術入門編は、学校で習いました」
「ならば暗唱してみよ。細かい文章まで覚えていなくてもいいから、魔力の感じ方、どう集め、どう形にして放出するかを教科書通りに実演してもいい」
「そんなこと言われても……意識しなくても、できてしまったから、先生も他の勉強してていいよって言って下さったのです。だからこの辺は読み飛ばしちゃったの」
「そうだろうな。私もあやつもそうだった。説明されなくても常に身体の中にパワーを感じられたから、なぜこんな簡単なことをやらなくちゃいけないのかと、授業に退屈したこともある」
大魔導師と尊敬されるサンサが、マリルと同じ気持ちを抱いたこともあると聞いて、マリルは常に抱いていたほんの少しの罪悪感が消えていくように感じ、勢い込んで頷いた。
「そうなんです。さすがお師匠様。分かってもらえて嬉しいです。他の人をバカにしているわけじゃないけれど、魔力に集中してどんな形にして出すかということを、授業時間をいっぱいいっぱい使って何度もやり直ししている人がいると、早く次のレベルを学びたくてしかたがありませんでした」
「白魔術は本来、自然に満ちる力や、精霊、妖精などの力を借りて、人のために役立てるもので、悪しき心根の者に精霊は力を貸さぬ。本当の魔術師になるためには、己自身の精神も磨かねばならない。年端の行かぬものが魔力を集めて具現化するのに手こずるのは当たり前なのだ」
「そうなんですね。それで魔法学校の生徒は、何度もやり直したり、魔法をかけるのに時間がかかっていたんですね。そんな大切な白魔術の基本が書かれていたのに、私が精霊や妖精の力を借りなくて済んだから、大事だと思わずに読み飛ばしちゃったんだ。それなのに授業の進み具合にイライラしたなんて、私は勘違いのおバカさんですね。文句を言ってごめんなさい。読み直します」
サンサはマリルの頭に手を置き、いい子だと言いながら優しく撫でた。
「稀に私たちのように、初めから体内に魔力を宿している者が生まれるらしい。今回は人より突出している能力を持つ者が、マリル一人だったから間違いが起こらなかったのかもしれない。恥ずべきことに、私とあやつはお互いどちらが優れているかを競いあってしまった。ほんの僅かに私の方が魔力が上回っていたために、あやつを歪めてしまったのかもしれない。あやつは負けず嫌いで、強いパワーを誇示して、人々に畏怖されることを楽しんでいた。精霊の加護で成せる魔法なら、とっくに使えなくなっているはずなのに、無条件に使えるパワーは人を驕らせる。自分が神にでもなったように勘違いして傲慢になり、誰にも負けぬように力をもっともっとと欲していく」
マリルはその先が想像できて、ぶるっと身体を震わせた。
「精霊の加護のお陰で、本当なら魔術師に悪しき者は近づけないはずなのに、加護のないあやつは悪しき者に唆され、私が気づいたときには、既に闇に落ちていた。マリル、私はお前のことが心配で堪らない。どうか、正しい白魔術を理解して、強い心を保っておくれ」
「はい。お師匠さま。私はサンサさまをがっかりはさせません。正しい魔法を使う強い大魔導師になるつもりですから、安心してください」
「よし、いい子だ。今日の講義はここまでだ。自分で指南書を読んで、あとで私に理解したことを伝えるように。じゃあ、今度は魔法を使わずに薪割りをしなさい」
「え~っ! 何でそんな力のいることを子供にやらせるんですか? ひどいです。魔法でちゃっちゃっと片付ければいいじゃないですか」
頬を膨らませてプリプリ怒るマリルを見て、サンサは目を細めてこう言った。
「健康な身体に、正しい精神が宿るというのを聞いたことはないか? 魔法に頼り切っては、身体がなまる。ほれ、行け。薪を割ってこい。そしたら、おやつにお前の好きなケーキを焼いてやる」
風船から空気が抜けるように、マリルのほっぺが元に戻った。
「ケーキ? ケーキ! やった~」
小躍りしながらドアを出て行くマリルの後ろ姿に、サンサは思わず噴き出したが、心の中にふと疑問が湧いた。
いざというときに逃げられるよう、マリルの足腰を鍛えるのは大事だが、それより先にあの疑うことを知らない単純さをなんとかしてやらなければならないのではないかと。
正しい心で魔術を使うのは大切だが、相手の言い分を鵜呑みにしてはならない。知らぬうちに謀計を手助けすることになりかねないからだ。
今のままでマリルが魔術師になったなら、やっかいな依頼に巻き込まれるのが目に見えている。
サンサは可愛い弟子のために、あれこれと方法を頭に描いていった。
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