翼の民

天秤座

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めぐり会い

182 花売りの少女

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 カーソンとクリスは、最後にティコの髪を洗う。

 頭から湯をかけられ、ティコは意識して瞑っていた左目を無意識に開ける。

「あっ!?」
「ん? どした?」
「目が……左目が……見えました」
「おっ? 目も治ったか。良かったな?」
「潰れてただけだったんだね? いや、潰れてたのもおかしいけど」
「わっ、わっ……くらくらします」
「今までずっと右目だけで見てたんだ、視界が変わって頭が混乱してるんだろ」
「すぐに慣れるよきっと」
「は、はい。わぁ……見える……」

 ティコはヒーリングの効果により、歪んだ脚以外は元通りに回復した。

 2人には分からなかった、内蔵の損傷まで治癒していた。



 3人は浴槽をまたぎ、ヒーリングがかかったままの湯へ一緒に入った。

 血色が幾分良くなったティコを見ながら、カーソンは話す。

「すっかり良くなったな? ティコ」
「あ、あのご主人様? わたしの怪我、どうして治ったんでしょうか?」
「カーソンの魔法よ? 良かったね、ティコ」
「ご主人様の……魔法……ですか?」
「死んでたり、欠損さえしてなけりゃ大抵の怪我は治せるぞ?」
「病気は何故か、治せるものと治せなかったりするのがあるけどね?」
「ティコは病気になりやすいのか?」
「わたしは……風邪をひきやすいです」
「そんなヒョロヒョロじゃ、体力なさそうだもんね」
「なぁに、食って体力つければいいさ」
「うそみたい……治して下さり、ありがとうございます。ご主人様」

 ティコは身体を隅々までさすり、完治している自分の身体に驚いていた。

 カーソンは湯の中でティコの右足を撫でながら話す。

「おっ? 脚が真っ直ぐになってきてるぞ」
「えっ? 本当ですか?」
「クリス、左足触ってみろ」
「うん、どれどれ……おーっ、ゴキゴキって音してるね」
「骨が頑張って、元に戻ろうとしてるな」
「あ、脚まで……あぅっ!? 今、ゴキンって……」
「痛いか?」
「い、いえ……痛くないです」
「もう少し浸かってれば、脚も元通りになりそうだね?」
「ご主人様の魔法……凄いです」

 ティコは脚の骨が軋む感触を味わいながら、カーソンの股間へ手を伸ばし始めた。

「ご主人様。感謝を込めて、お仕事させて頂きます」
「ん? おい、ちんちん触るなよ。くすぐったいぞ」
「おいこらっ! そいつのおちんちんに触るなっ!」
「わたし、クリス様の後になるのですか?」
「? 何の事だ?」
「沢山の男の人達から何度も挿入れられた事はあるのですが……女の人と一緒にというのは初めてです」
挿入れるとか言ってんじゃねぇっ!」
「クリス様と存分にお愉しみ頂いた後で、わたしにもお仕事をさせーー」
「はい脚治ったっ! お風呂おしまいっ! あらよっとぉ!」
「きゃんっ!?」
「ぶわっ! ぷうっ……おいおい、乱暴すぎないか?」
「うっさい! ティコっ! そんな破廉恥な真似すんのやめなさいっ!」
「は、はい……?」

 クリスはティコを後ろから羽交い締めにし、無理矢理浴槽から出す。

 カーソンは巻き添えを喰らい、頭から湯をかぶる。

 ティコはクリスから説教をされ、首をかしげていた。



 3人は風呂場から、脱衣所へと戻る。

 カーソンとクリスは服に着替えた。

 ティコは素っ裸のまま、着ていたローブをキョロキョロと探す。

「あれ……わたしの服が……無い……です……」
「ん? 服が無くなったのか?」
「これじゃないの? かごに入ってるよ?」

 クリスが脱衣カゴの中に服を見つけ、ティコに渡した。

「あ、あの……わたし、これを着てもいいのでしょうか?」
「いいんじゃないか? きっと女将が用意してくれたと思うぞ?」
「女将さん合鍵持ってるんだし、ローブが無くなってそれがあるって事はさ、それを着てもいいんだよきっと」
「わぁっ、下着もあります……嬉しいです」
「女将さんに会ったら、お礼しとくんだぞ?」
「はいっ」

 数年ぶりに下着を着けたティコは、喜びながら服の袖へ腕を通した。



 着替えた3人は、宿屋のフロントへやってくる。

 女将はティコを見て、微笑みながら話す。

「ちょっと大きそうに見えるけど、似合ってるよ? 娘のお古だけど、取っといて良かったよ」
「やっぱり女将さんが用意してくれてたのね? ありがとう」
「流石は宿屋の女将さん! 気遣いが行き届いてるね!」
「よしとくれよ。あたしだって鬼じゃないんだ。ちゃんと宿代貰ったお客さんだしね」
「あ、ありがとうございます。この服、大切にします」
「どういたしまして。夕食まではまだ少しあります。お部屋で休んでて下さいな」

 女将に言われ、カーソンとクリスはティコを連れて部屋へと戻った。

 イザベラ達は時間をずらし、現在は風呂へ入っていた。


 2階へ上がったカーソンは、クリスへ話す。

「それじゃ、部屋で時間潰すか。じゃあクリス、また後でな」
「じゃ、また後で……って、ティコ! 何でカーソンに付いてくのよ!」
「え……わたし今晩、ご主人様に買われましたので……」
「買ったとか何言ってんのよ! あたしの部屋に来なさいよ!」
「いえ、あの……娼婦は買って下さった時間、ご主人様のお側を離れちゃいけないんです」
「そうか。じゃあティコ、俺と一緒に待つか?」
「はい、ご主人様」

 カーソンとティコは部屋に入り、扉を閉めた。

 クリスはこめかみに青筋をたてながら呟く

「あ……あの馬鹿! ティコ買ったって意味、分かってんの!?
 そもそも娼婦って、何言ってんのよあの子はっ!
 あんなガキんちょなんかに……ふざけんじゃないわよっ!」

 クリスはカーソンの部屋の扉を蹴破ろうとする。

 一瞬躊躇い、思い止まったクリスは扉に耳を当て、探りを入れた。 



 カーソンは部屋に入ると椅子に座り、くつろぐ。

 ティコはベッドの前で服を脱ぎ、素っ裸になりながら脱いだ服を丁寧に折り畳む。

 そしてそのままベッドの上に正座し、カーソンの事を待った。


 いつまでたっても無反応なカーソンにしびれをきらし、ティコはカーソンへ話しかける。

「ご主人様。不束者ですが、よろしくお願い致します」
「ん? どうしたんだ裸になって? 風邪ひくぞ?」
「……あの、ご主人様?」
「どうした? 夕飯はまだだぞ?」
「いえ……あの……その……どうぞ、こちらへ……」
「何だ? 俺もベッドに行けばいいのか?」
「はい……」

 ベッドまで来たカーソンは、ティコの横に座る。

 裸のままのティコは、カーソンに抱きつきながら話す。

「どうぞわたしを、お好きなようにして下さいませ。ご主人様」
「何言ってるんだティコ? 早く服を着ろ、風邪ひくぞ?」
「あっ、ご主人様は服を来たままがいいのですね。申し訳ございません」
「ティコは裸のほうが好きなのか?」
「ご主人様のご趣味に合わせます」
「趣味とかお前、何言ってんだ?」

 ティコは服を着ると、再びカーソンに抱きついた。


 クリスはカーソンの部屋の扉に耳を当て、聞き耳を立てながら呟く。

「あいつ、まかり間違ってティコに変なコトしないでしょうね?」
「大丈夫よ。私の魔力はあんな子供なんぞに破られるハズが無いわ」
「それは分かりませんわよ? あの子には若さという武器がありますわ」
「あいつは子供が好きなのだろう? よもやの事が起きるかも知れんぞ?」

 いつの間にか扉の前には、4人が聞き耳を立てていた。

 クリスは小声でイザベラ達へ話す。

「ちょっ!? イザベラさん達まで、何してるんですか!?」
「あら、気になるのはあなただけじゃ無いのよ?」
「お部屋の中では、どんな事をしているのでしょうね?」
「…………何も聞こえんな」

 イザベラ達は扉を押し倒すような勢いで、中の物音に集中していた。


 宿屋の女将が叫ぶ。

「お客さーん、夕食の準備、出来ましたよー!」
「おっ! 夕飯出来たらしいぞ。行くか、ティコ」
「わ、わたしはここでご主人様をお待ちしています。どうぞ……」
「何言ってるんだ、お前も腹減ってるだろ? ほら、行くぞ」
「いえ、本当にわたしは……あっ……」

 カーソンはティコの手を引っ張り、扉へと向かった。

「やばっ! こっち来るっ! みんな離れてっ!」
「え? 何が来るの?」
「カーソンが来ますわお姉様っ」
「いかん、これは間に合わーー」

 ガチャッ

 ドドドッ
 
 カーソンが部屋の扉を開けると、クリス達が転がり込んできた。

「……みんな、何やってるの?」
「あ、あはは……ティコ、元気かなぁって思って。あはは……」
「お、おほんっ。あなた、ティコって名前なのね?」
「あ、あらっ……随分と幼そうですわね?」
「ふ、ふむ……まだ子供ではないか」

 クリス達は、しどろもどろになって弁解した。



 ティコを連れたカーソン達は、食事の席につく。

「おーっ、旨そう。いただきまーす」
「結構豪華ね。いただきます」
「うんうん、美味しそうね」
「ええ、お姉様」
「さて、頂くとしよう」

 全員が食事を楽しむ中、ティコだけは料理を目の前にしても食べようとはしなかった。

 うつむいてぐっと堪えているティコへ、カーソンは話す。

「どうしたティコ? お前の分までお金払ってるんだ。食べてもいいんだぞ」
「で、でも……わたし……その……食べるわけにはいきませーー」

 ググゥゥ キュルルルルゥ ググゥゥゥ

 目の前の料理にティコの腹は耐えられず、空腹音を盛大に鳴らした。

 周りに音を聞かれ、顔を真っ赤にしながらうつむき続けるティコ。


 カーソンはパンをちぎり、ティコの口元へ運びながら話す。

「いいから食べろ。ほら、口開けて」
「いえ、わたしは本当にゴハンは……あむっ」
「ほれほれ、食え食え」
「もぐっ……もぐもぐもぐ……ごくん」

 カーソンはティコの口にパンを押し込んだ。

 ティコはパンを口の中で咀嚼する。

 パンを飲み込むと、止まらなくなったのかパンを両手に掴み、食べ始めた。


 一気にガツガツと食べたティコは喉を詰まらせ、胸をドンドンと叩いている。

「むぐっ!? んぐぐっ……」
「あーほら、急いで食べるから……スープ飲め、スープ」
「ずずずっ……ごくっ、ごくっ……ぷはっ」
「女将さん、スープのおかわりある? この子にお願いします」
「はいよっ、ちょいとお待ちを」

 女将はスープの追加分を、ティコの前に置いた。



 ティコはパンを食べ、スープを飲み、並べられている料理を食べた。

 味わう事もせず、ただ一心不乱に、自らの血肉とする為に食べる。

 ひたすらガツガツと食べ続けるティコ。

 イザベラ達は食事の手を休め、微笑みながら見つめた。


 カーソンは女将へ追加の注文を手配する。

「女将さん、もうひとりぶん追加してもいい?」
「はいよっ。大盛りにしたほうがいいかい?」
「ありがとう。宿代に足して下おいて下さい」
「100ゴールド、毎度ありぃ!」
「宿代よりおかわりのほうが高いのっ!?」
「あはははは! 冗談冗談っ! サービスしたげるよっ!」

 女将は追加分の料理を、カーソンとティコの間へと置いた。



 夢中で食べ続けていたティコの目から、涙がポロリとこぼれ落ちる。

 やがてパンを食べながら、ティコは泣き出した。

「ぅっ……ぅっ……ふぇぇ……ん。うぇぇぇーん……」
「おいおいティコ、泣くなよ。好きなだけ食べろ」
「泣くか食べるか、どっちかにしなさいよ」
「泣きながら食べるなんて、あなたも器用な子ね?」
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい……ふぇぇぇ……ん」
「あなたを叱ったわけではありませんからね?」
「泣きながらでもいいから、ゆっくり、腹いっぱい食べるのだぞ?」
「ありがとうございます……ありがとうございます……皆様」

 ティコは夕飯を、満腹となるまで食べ続けた。



 食後、部屋へと戻ってきたカーソンとティコは、再びベッドへ一緒に座る。

 ティコはカーソンに抱きつきながら懇願する。

「ご主人様。どうぞわたしを、お好きなようにして下さいませ」
「好きなようにって、後は寝るだけだろ?」
「はい。お気の召すままに、どうかわたしをお使い下さいませ」
「使うって、何言ってんだ?」
「……失礼致します、ご主人様」
「いやだから、ちんちん触るなってば」
「ご主人様のは……大きいのですね」
「うん、他の人よりもおっきいらしいな」
「大丈夫です。わたし、頑張りますね?」
「寝るのに頑張るとか……おわっ!?」
「ご主人様……」

 ティコはカーソンの股間を揉みしだきながら、ゆっくりとカーソンを寝かせる。

 尚も執拗に股間を揉み続けるティコに、カーソンは困惑しながら聞いた。

「ティコは、いま何歳だ?」
「……17歳です。ご主人様」
「17歳なのか!? 俺はてっきり10歳くらいかと思ってたぞ」
「小さくってごめんなさい」
「いや、ちゃんと食えてなかったんだ。大きくなれなくてもしょうがないさ」
「小さくても、身体は大人です。お望みの事をさせて下さいませ、ご主人様」
「そのご主人様って言われるの、なんか嫌だな。カーソンでいいよ」
「はい、分かりました。カーソン様」
「そうか、ティコは17歳か。俺は26歳だ、お前とは9歳違いだな」
「あの……カーソン様?」
「何だ? もう眠いのか?」
「いえ……その……あの……」
「そうか。それじゃあ、もう寝るか?」
「はい、よろしくお願い致します。カーソン様」
「寝るのによろしくって、変わった奴だな、お前って」
「……では、参ります」
「おい、何すんだよ。ズボン脱がすなって」
「おしゃぶりを……させて頂きます」
「おわっ、やめっ! くすぐったいっ! あひゃひゃ!」
「んっ……んむっ……むっ……むっ……」
「くすぐったいっ! やめてくれっ!」
「お、おっひふへ……ふぁいりひれまふぇん……」
「お、お前はちんちんしゃぶらないと寝れないのか?」
「んむっ……ふぅっ……ぺろぺろ……あむっ」
「俺がおっぱい吸いながら寝るようなもんか……」
「なふぁなふぁ……おっひふなりまふぇんね……」
「こうしないと寝れないなんて、変わった奴だなお前って?」

 カーソンはこそばゆさを我慢しながら、ティコに自分のシンボルをしゃぶらせ続けた。 

 クリスは小声で呟く。

「変わってるのは、あんたのほうよっ!」
「ふふふ。ティコ、苦戦しているようね?」
「クスクス……クリスの時のようにはイケなさそうですわね?」
「まさかティコも、一緒に寝るだけだと思うまい」
「……って、何でみんなまた聞き耳立ててるんですかっ!?」
「あら、あなたもおんなじ事してるのに、人の事言えるの?」
「女として気になってしまいますもの」
「………これは無理そうか?」

 4人は再び、カーソンの部屋に聞き耳を立てていた。

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