一刻センリの時案内記

田沼あげたか

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序章・春

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 「こりゃあ流石に早過ぎたか」
 改札に定期券をかざしながら、俺はそんな独り言を呟いた。正直1本後でも間に合ったとは思うが、今日という日は万全を期さなければならない。そう、なぜなら今日は、高校生活始まりの日にして最重要の日、入学式当日だからだ。
 学校までは一本道で、昭和な雰囲気が漂う商店街を抜ければ、すぐに校舎が見えてくる。10分もかからない程度の距離だ。俺は駅を出てから、少し余裕を持った足取りで学校へと向かった。
 ふと腕時計に目を落とす。それは7時58分を指していた。それが早いのか遅いのかと聞かれたら圧倒的に早すぎる。9時15分までに掲示された自教室に着席なのだが、そもそも開門は30分前の8時45分だ。このままゆっくりと歩いたとしても学校の門の前で30分は待たされることになる。といっても、なんだかんだ商店街には時間を潰せそうな店があると思っていたが、少し来るのが早すぎたらしい。というか、よく見てみると佇まいは歴史のある商店街に見えるが、出店している店はチェーンの飲食店やスーパーマーケットなどが目立つ。平日は電車通学の高校生がそこそこお金を落としているだろうし、 そもそも駅を利用する者の7割弱はここを通っていると思うのだが今となってはどの商店街も時代の波には逆らえないらしい。
 そんなことを考えながら歩いていると、そこはもう商店街の出口だった。ちょうどその角にイートインコーナーのあるコンビニを見つけ、眠気ざましにアイスコーヒーを買い、席にどっかりと座り込んだ。そこでコーヒーをすすりながら商店街の人の往来を眺める。そこは案外居心地がよく、近所の小学生が10円ガムだけで5時間くらい居座っているのがなんとなく想像できた。
 そのまましばらくボーッとしていると、今から入学式に向かわんとする同志達がちらほら見えてきたので俺は残りのコーヒーを一気に飲み干し、空き缶をゴミ箱にダンクすると、少し上機嫌なステップを踏んで学校へのわずかな道のりを歩き出した。
 そして俺はコーヒーのおかげもあり冴え渡った頭で入学式を迎え、無事高校生になり、一刻センリと出会った。
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