一刻センリの時案内記

田沼あげたか

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アピール

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 「それじゃあね、出席番号1番の人から自己紹介してもらおうかな。」
 いよいよこの時がやってきた。入学式後のホームルーム、担任は美術担当の吉田というおばさん先生だった。先生は自分の経歴と美術の素晴らしさについて大いに語ってくれ、さて次は俺達の番というわけだ。
 こういう時に出席番号が早いのは少し困る。クラスに慣れてしばらく経つと、割といい事ずくめなのだが最初のうちは少し頂けない。いかにも日本人的なことを言うが、何かあった時に前の人達の立ち振る舞いをじっくり見てから行動出来ないのは同調圧力国家日本に住む者としてなかなかの不利益だと言えるだろう。まあ1番じゃないだけましか。なんて考えているうちに自分の番となり、ここ10年くらい変わっていないんじゃないかと思われる無難な自己紹介をパパっと終わらせた。
 とりあえず問題なく終わり、俺は半分振り向いた状態で自分の後ろのやつの自己紹介を聞くことにした。自分のことにしか気が回っていなくて気がつかなかったが後ろは女子だった。
 「一刻いっこくセンリです。よろしくお願いします。」
 無表情ではないけれど満面の笑みという言葉が似合わなそうな少しおとなしい少女。そんなかんじ。それにしても地味な自己紹介だな女子高生らしくねぇ、さあ次のやつは…と再度クラスメイトの自己紹介に注意力を戻す。
 「ん?」 
 俺は思わず小さく声を出した。なぜなら、俺はたった今一刻センリさんとやらの自己紹介を聞き終わったばかりのはずなのだが、現在進行形で自己紹介をしているのは彼女から10人ほど後の2列目の最後の奴だ。まぁ余計な事を考えていると時は早くたつもんだが、10人も聞き逃すとはな。これがよく噂に聞く「高校生なんてあっという間だよ」というやつだろうか。それはちょっと意味が違うだろと心の中で軽くノリツッコミをいれ特に気にすることもなく自己紹介の続きを聞くことにした。
高遠こうえんレイです!部活はまだ決めてないけどスポーツをするのが好きです。これから一年よろしくお願いします!」
 ボーイッシュなショートヘアにいかにも明るくて活発そうなこのスタイル!いやぁ第一印象ってのはすごいもんだなぁ。あらゆる学園モノの自己紹介シーンが物語の重要なキーになるのもよく分かるってもんだ。
 彼女は自己紹介を終え自分の席に座った。その一瞬の間にこちらに向きウィンクをしてきた気がした。当然自分に向かってではないだろうと思ったが、周りにその子と目を合わせている人はいないように見えた。もしかして高校生活に心躍らせるあまり幻覚でも見てしまったんだろうか。いくら彼女が俺のタイプだからといって幻覚まで見てしまうようではまずい。とそんなアホなことを一生懸命考えていると、皆の自己紹介はあっという間に終わっていた。
 しばらくすると先生から解散の号令があり俺は家路についた。あのウィンクは一体なんだったんだ。その事ばかりを家までずっと考えていた。まぁいい高校生活初日は無事に終わった。あとはあのウィンクが俺に向けてのものだったのなら俺の高校生活はポールポジションでスタートだ。
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