一刻センリの時案内記

田沼あげたか

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アプローチ

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 次の日、電車の都合上そこそこの早朝登校となる俺は4階までの階段をやっとの思いで登りホームルーム教室の扉を開けるところだった。朝の静かな学校に扉を開けるガラガラという音だけが響いた。意外にも教室にはすでに3人の生徒がいた。眼鏡をかけた男子、自己紹介が印象的だった高遠、そして一刻センリだった。俺は静かに席についた。しばらくそうしていたのだが、ずっと時計を見てるもんだから思ったように時間が潰れずしびれを切らした俺はこの機会に友好関係を気づくのも悪くないと思い、すぐ後ろの一刻に話しかけてみた。
「なぁ」
「みんな来ないしちょっと暇つぶしに話さないか?」
 一刻は少し驚いた顔をした。しばらく時計をながめてボケっとしていたやつが急に話しかけてきたのだから無理もない。
「そ、そうだね。みんなも結構早く来るかなと思ったけど、私ちょっと来るの早かったかな。」
「そうだな俺より早く来てたしな。俺は電車の関係でこの時間なんだ。一刻も結構遠いところから来てるのか?」
「いや私は歩いて来れる距離だよ。早く着いてゆっくりするのが好きだけなの。でもさすがに今日は早く来過ぎたかも。」
 話すときの雰囲気や喋り方は思っていた通りでおとなしい感じだった。案外話題もあり、話は続いたので授業が始まるまで、聞いてどうするんだ、というようなお互いの身の上話を続けていた。
「あ、先生来たね。」
 一刻がそんな報告をしたのとほぼ同時にチャイムがなった。話は盛り上がりを見せていたがここで中断らしい。喋っていると時間はあっという間にすぎたが、真に時間の流れが遅いとはこれからだと気づき小さくため息をついて前に向き直り、俺はなぜこの学校にはオリエンテーションや部活紹介といった概念がないのか、と脳内で文句を言いつつ、しぶしぶ数学の授業を聞き始めた。 
 そうそれは1時間だが3時間以上のように感じる退屈な授業のはずだった。なにかおかしい。そう自分でも驚くほど早く終ったのだ。別に授業自体が面白かったわけではない。数学の教師は今日が初日だというのに初っ端から問題を説かせてきたし、俺の授業に対しての思いもマイナスであったことに疑いの余地はない。だが一瞬だったように思う。属に言う体感10分とかそいったやつである。きっと気のせいだ。1日目なんて早く終わるもんだ。と自分を納得させその日が終わった。

 それから3日がたった。学校生活に支障はない。後の席の一刻センリとも休み時間に話すくらいには打ち解けたし、男の話し相手もできた。しかしたった一つ喜ばしくも奇妙なことがある。授業が一瞬で終わるのである。体感10分というようなやつが3日間続いているのである。むしろ座学より体育の方が長く感じる。こんなこと一般的な高校生にあるだろうか。いや少なくとも過去の経験上俺はそういうタイプではない。とうとう俺も勉強が楽しくて時間をも忘れるという人類の希少種にでもなったのだろうか。うーん、その線は薄いな。この三日間確かに体感では早く過ぎ去ったような気がする。しかし、その間も教科書を見れば嫌気がさしたし、学校以外で使ったことがないザラ紙のプリントに言い知れぬ嫌悪感を抱いていた。いったいどういうことだ。もしかして脳か?脳からくるやつか?それはまずそうだな。高校3日目の帰り道俺はそんな事を考えながら学校を後にし駅に向かっていた。
「ねぇねぇ!ちょっといいかな?私同じクラスの高遠っていうんだけどわかる?」
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