実験体

実験体

「逃げたぞ、追え
千載一遇のチャンスを逃すな」
男たちは女を追いかけていた
「徹底的に探しだせ
見つけた次第蹂躙してやる
いや、蹂躙では生ぬるい
死より辛い苦痛を与えながら、奴隷としてこき下ろしてやるのだ」
なぜ男たちはこんなにも必死なのか
それはこの男たちが女の検体であり、日々実験人体実験を繰り返されているからだ
実験は言葉にするのもためらわれるような悲惨なもの
この月に一度この鬼ごっこにまさしく全てを賭けていた
「必ず見つけ出し日々の鬱憤を晴らすのだ
殴って、蹴って、レイプして
その先は浮かばん
とにかくメチャメチャにしてやるのだ
女は鍵のかかった部屋からその様子を見る
「まあまあ走れるようになったわね
それにしても奴ら気づいてないのかしら
私がやっていることは治療よ
死にかけているあなた達に走り回れるようにした恩を忘れているんじゃないかしら
確かに危ない実験もしたわ
でもそれも逆恨みというやつじゃないかしら」
女はひと呼吸おき、うっとりしながら続ける
「それにしても我ながらいい案だわ
その月、最も使えなかったやつをこの鬼ごっこのターゲットにする
みんな血眼になって働いてくれるわ
捕まったら、殴られ、蹴られ、レイプされて瀕死の重体となる
そして今度は自らが検体になるのよ
今時検体はレアだからね
高い給料でバカを釣って、難解な契約書にサインさせる
読みさえすれば、誰だってやばいことに気づくのに
日頃から契約書はきちんと読む癖をつけないとね」