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033 手伝いなさいよ
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「ああ疲れた……まさかフライパンをあんなに振るとは。俺さぁ、ポレポレットマシュー何皿作ったっけ?」
ザックは猫足のバスタブに肩までゆっくりとつかり、後ろから私を抱きしめた。実はザックは料理が上手だった。意外な事が発覚する。
「お、お疲れさま」
フワフワの泡がバスタブの水面ぎっしり浮かんでいる。
私は昨晩に引き続きザックと2度目の夜を迎えようとしている。昨晩泊まった部屋とはまた違う時間泊の部屋でだ。
「ナツミも疲れただろ? ずーっと食事やビールを運んでばかりでさ」
「うん。でも一週間やり続けて結構慣れたって言うか、あっ!」
ザックの低い声が耳元をくすぐった。
更に後ろから回された腕が私のお腹の前で組まれているのだが、その場所でじっとしていてくれない。腰の横に指を這わすと、マッサージするみたいに脇の下に向かって動かす。
「あっ」
気持ちが良い。料理や重いビールをもった腕がもみほぐされていく。
「何だよ、エロい声上げて」
「だって」
「まだまだ、これからなのに」
そう呟くと耳の縁をなぞる様に舌が滑っていった。
「っ」
思わず息を詰めてしまう。肌が一瞬にして粟立ったのが分かる。
「ナツミ、こっち向いて」
掠れたザックの声が合図だった。
最初は触れるだけのキス。わざと音を立てて何度か啄む様にして唇をあわせる。嬉しそうにザックの顔が微笑むのが分かる。ペロッと舌で唇を舐められて、思わず口が開くとその隙間を狙って肉厚な舌が入り込んでくる。息も出来ないほど苦しいキスが突然はじまった。
あれから、過呼吸になったノアが涙や口元を拭ってようやく落ち着いた。しかし、王子様スマイルは何処へ。整った顔立ちが見事に涙でグシャグシャになり台無しだ。
その間、頭を抱えるザックだった。何だか申し訳ない気持ちになる私だった。
ノアはザックと視線が合う度に笑い転げるので、ザックもいい加減諦めていた。
「ああ……溺れた事を笑ったら、倍返しされるとは」
「そうやって、馬鹿にするからだよ」
私が笑いながら言うとザックが口を尖らせて私を怨めしそうに見た。
「だって、三分切ったのはナツミが……」
ザックが何か言いかけて言葉を飲み込む。視線だけジーッと見つめられる。
つまり、私のせいだと言いたいのか。
そこへ、人差し指を立てたネロさんが、餃子の様な目をして笑う。酷く嫌らしい顔つきだ。
「分かりましたよザック! いやぁ、人は見かけによりませんね。ナツミさんは凄く良い具合の名、ゴフッ!」
ザックはネロさんの顔面に向かって、空になった樽形のジョッキを投げつけた。
それは、見事にヒットしてネロさんはベッドの上に仰向けになって倒れた。
「きゃーっ! ザック。乱暴すぎるよ!」
私は驚いて抗議の声を上げるが、ザックはそっぽを向いてしまった。
「ああっ。ネロ隊長、それは余計なひと言なんじゃ」
シンがネロさんの介抱をしながら、チラッと私を見てから少し顔を赤らめる。
何なのだ一体。私は首を傾げるばかりだった。
それから再び事件が起こる。
落ち着いたノアを見届けてから、ジルさんがとんでもない事を言い出した。
「さてファルの町で名が通った色男のお二人さん」
ジルさんは言いながら、腰紐にさしていたキセルを取り出し火をつけ煙を吐いた。
「何だよ、その笑い方……」
「……嫌な予感しかしない」
色男のお二人さんで自分の事だと思うノアとザックに苦笑いをしてしまう。自覚があるのか。
「二人の秘密をファルの町全員にバラされたくなければ、当面私に従ってもらうわよ。そうねぇ『オーガの店』とアルの件が片付くまでっていうのはどう? 早速、今晩は祭りもある事だし。ウチの店で手伝ってもらおうかしら?」
「「何っ?」」
ノアもザックもゴムまり人形の様に立ち上がると、悠々と座るジルさんを上から見つめる。
「何で俺が!」
「人手不足に軍人を使うなよ!」
ノアとザックが次々と文句を言う。流石に同意出来ない様だ。
「別に手伝ってもらうぐらいなら軍人だろうと関係ないでしょ。確かそんな規定別にないわよねぇ? 時間泊の部屋は当面無料にしてあげるし」
ジルさんは何処吹く風だ。
「馬鹿な事を言うなよ。俺達は暇じゃないんだぞ」
ノアが怒りを抑えながら、ジルさんに反論する。
「それに、俺達だからこんな軽口でいられるんだ。本来、軍人相手にそんな態度を取っているとジル自身が牢屋にぶち込まれる事だってあるんだぜ、なぁ? ノア」
ザックがグリーンの瞳を吊り上げジルさんを挑発する。
「ああ、そうだな。だから、ジルこの話は──」
鼻で笑ったノアがザックと同じ様にジルさんを見つめる。
そうか。ノアとザック、シンはとても仲良く接してくれるけれども、本来軍人だったらこんな軽口叩ける間柄ではないはず。
酒場に飲みに来るのはプライベートだけれど、粗相があればどんな目にあわされるか分からない。
うわぁ。ウエイターじゃなかった。ウエイトレス業務の時に気をつけよっと。私は一人震え上がった。
ジルさんは赤い唇を歪ませてニタリと笑う。
「ふーん。軍学校時代はよく手伝ってくれたのにねぇ? 軍学校時代は、まだお金もないから、外でヤッたり悪目立ちで目に余るから、店を手伝う代わりに食事と時間泊の部屋をタダ」
「「うわーっ!!!」」
ザックとノアが慌ててジルさんの前に立ちはだかり、肩をそれぞれが掴む。
「え? 何?」
あまりにも慌てる二人に私は驚いた。
ん? ジルさんのセリフを反芻してみる。
女性絡みのロクな話ではないのだろう……
私は、ザックに対して「ふーん」とひと言発すると、軽蔑の眼差しを向けた。
時間泊の部屋を無料提供されるのは昨日の話ではないのね。もう。そういう事ばかり!
ノアとザックって、よくここまで女の人に刺されずに生きて来られたなぁ。
私の様子を見る為に、ザックがジルさんの肩を掴んだままそっと後ろを振り向く。私の様子を確認してから、パッと目を逸らした。大きな背中が小さく丸くなる。
「ジ、ジル! ほら、俺達も訳ありな十代だったしな!」
ノアが笑いながら、冷や汗をかきはじめる。
「色々あった昔話なんてのは。な? 分かるだろ」
ザックも何故だか必死だ。相当何かをやらかしているのだろう。
色男のお二人さんは、ずいぶんヤンチャをしていた様子だ。
「ジルさん。その話は……」
ある程度事情を知っているのか、マリンは苦笑いで口元を押さえる。隣でミラも苦笑していた。シンも口笛を吹きながらニヤリと笑っている。多分シンもノアやザックと同罪と見た。
そうなると知りたい様な、知りたくない様な。
ジルさんが悪戯っぽく笑いキセルを口にくわえたまま、祈る様に両手を胸の前で組むと演技たっぷりでセリフを言う。
「そうね。昔話したってしょうがないものね。でも、ほらナツミとかネロとか知らない話もあるかもしれないし。泳げなくったって、三分もたなかったって、この目の前にいる軍人二人が、どんなに素晴らしい軍人になったかを」
「分かった、分かったから。ジル!」
「店を手伝うから。昔の話も今の秘密も黙っててくれ!」
「「だから、頼むからもう止めてくれ!」」
最後は跪いてお願いする色男お二人さんになっていた。
格好いいのか格好悪いのか。
それともジルさんに全く歯が立たないのか、分からないノアとザックだった。
ザックと私の息づかいだけが聞こえるお風呂場で、ポチャンとシャワー口から水滴が落ちる。白い泡が水面で揺れていて、二人の体を隠してくれる。
「はっザック」
キスの合間に言葉を発しても、すぐに口を塞がれる。
ザックのキスは最初は優しいのに、段々と強く深くなっていく。舌を絡ませて、吸いあげられ追いかけると逃げていく。だから慌てて追いかけると今度はザックの口内に誘い込まれて、逃れなくなり息が続かなくなってくる。
ザックの頬が私の低いはずの鼻の入り口付近もわざと塞ぐ。苦しくて口を開ける羽目になるが、その瞬間お腹や脇腹、太股などを撫でる様に触れていく。お陰で、高い声がコントロール出来なくなった息と共に吐き出さされる。
「まだ足りないから……」
ザックも、うっとりしながら呟く。
キスをこんなにする事は普段の俺ならない。確かに女性を陥落させる為にキスから進めて、とろける様な顔を見るのは好きだけれど。ナツミとのキスは別の様だ。甘いものの様な、ずっとこのままでいたくなる。時々上がる声も魅力的で、体の内側が熱くなって興奮してくる。
「だけど、私このままだと」
体が疼いて仕方ない。キスだけで思わず両膝をこすりつけてモジモジしてしまう。
「このままだと、何?」
私の様子が分かっているのか、ザックが意地悪に笑う。両手で脇腹から脇の下までゆっくりと指の腹を這わせる。
「色々と」
もっと触れて欲しくて、我慢が出来なくなる。そう言いたいけれど、まだ私は恥ずかしくて口にする事が出来ない。
ザックの触れる手にあわせて、ビクビクと体を震わせる。
「良い反応だな、よっと」
「きゃぁ!」
ザックは笑うと私を軽々抱き上げると、猫足のバスタブの外に出る。
私は突然の事に驚いて、ザックの首に両手を回す。見上げると、長めの金髪がおでこに張り付いて優しく私を見つめていた。何だか恥ずかしくて目を逸らす。
ザックは軽く笑って猫足バスタブの縁に私を抱いたまま腰掛けた。
「あれ?」
そのまま、横抱きだったのにヒョイと脇をもって抱き上げられると、ザックに背を向けて彼の両足をまたぐ様に座らされた。結構大きく股を開く事になって、私は慌てて閉じようとしたが、ザックが内太股をスッと撫でて阻止する。
「は、恥ずかしい! こんな、こんな」
股を開いたままでなんて。私はギュッと目をつぶる。そして、臀部にはザックの熱い杭を感じる。わざと押しつける様にして、私をしっかり抱きしめる。
「さてナツミはもっと俺に身をあずけていいんだけどな」
顎を私の左肩に乗せて、耳元で囁く。
「そんな事言われても。十分私は」
私は改めて昨日の自分の状態を思い出して言葉が繋げなくなる。
確かザックは三回ぐらい私の中で上り詰めていた。私と言えば、ザックなんか比にならないぐらい何度も何度も上り詰めて泣き叫んだ訳だし。
「「十分私は」の続きは?」
ザックは低く呟くと、壁に備え付けになっているシャワーのコックを捻った。
体の右方向から温かいシャワーが降り注ぎ、体についた泡を洗い流していく。
だけれど泡は体に滑りを残していているので、触れる指先の滑りがとても良い。
「は、恥ずかしくて、言えない。あっ!」
俯いて告げると、ザックが後ろから私の胸をすくい上げて、大きな手で優しく揉みはじめた。滑りがザックの指の動きを助けて更に快感を生み出す。
「昨日は焦ってさ、あんまり試せなかったんだが」
「アレで焦ってたの?!」
「そうなの。入れたくて入れたくて焦ってたの」
ザックはふざけた様な声を上げ、私の両胸の頂を軽く人差し指で押さえると、滑りを利用してゆっくりと擦りはじめた。
「あっ! それは駄目って昨日も」
胸の尖りは、激しく弄られると痛みを伴う事が多い。が、しかしザックはゆっくり触れるか触れないか分からないぐらいの触り方をする。
ざわざわと首の後ろが逆毛が立つ様な感覚がする。
胸を突き出す様に背中をそると、ザックの熱い杭をお尻で更に押さえつける事になる。そそり立ったいるしっかりとした太くて固いものがピクリと動く。
「多分、ここは感じやすいんだ。なぁ、もっと俺に心と体を開いて欲しい。こういう事は凄く恥ずかしいと思っているだろ?」
「だって」
そうなのだ。別に胸がどうこうではないのだが。
こういう行為って気持ちが良いけれど恥ずかしさが先に立ってしまう。
「なぁ……今からゆっくり触れていくから、どれが気持ちいいか教えてくれよ?」
ザックが耳元でそう囁くと小さくキスを耳元でした。
「え?」
「いいか? お前が俺に詳しく説明してくれるまでだぞ?」
「ど、どういう、あっ!」
「じゃぁ先ずはこんなのは?」
ザックの楽しそうな声が耳元で響いた。
その瞬間私は喉を逸らして悶絶するしかなくなった。
*ポレポレットマシュー=鶏肉の香草焼き
ザックは猫足のバスタブに肩までゆっくりとつかり、後ろから私を抱きしめた。実はザックは料理が上手だった。意外な事が発覚する。
「お、お疲れさま」
フワフワの泡がバスタブの水面ぎっしり浮かんでいる。
私は昨晩に引き続きザックと2度目の夜を迎えようとしている。昨晩泊まった部屋とはまた違う時間泊の部屋でだ。
「ナツミも疲れただろ? ずーっと食事やビールを運んでばかりでさ」
「うん。でも一週間やり続けて結構慣れたって言うか、あっ!」
ザックの低い声が耳元をくすぐった。
更に後ろから回された腕が私のお腹の前で組まれているのだが、その場所でじっとしていてくれない。腰の横に指を這わすと、マッサージするみたいに脇の下に向かって動かす。
「あっ」
気持ちが良い。料理や重いビールをもった腕がもみほぐされていく。
「何だよ、エロい声上げて」
「だって」
「まだまだ、これからなのに」
そう呟くと耳の縁をなぞる様に舌が滑っていった。
「っ」
思わず息を詰めてしまう。肌が一瞬にして粟立ったのが分かる。
「ナツミ、こっち向いて」
掠れたザックの声が合図だった。
最初は触れるだけのキス。わざと音を立てて何度か啄む様にして唇をあわせる。嬉しそうにザックの顔が微笑むのが分かる。ペロッと舌で唇を舐められて、思わず口が開くとその隙間を狙って肉厚な舌が入り込んでくる。息も出来ないほど苦しいキスが突然はじまった。
あれから、過呼吸になったノアが涙や口元を拭ってようやく落ち着いた。しかし、王子様スマイルは何処へ。整った顔立ちが見事に涙でグシャグシャになり台無しだ。
その間、頭を抱えるザックだった。何だか申し訳ない気持ちになる私だった。
ノアはザックと視線が合う度に笑い転げるので、ザックもいい加減諦めていた。
「ああ……溺れた事を笑ったら、倍返しされるとは」
「そうやって、馬鹿にするからだよ」
私が笑いながら言うとザックが口を尖らせて私を怨めしそうに見た。
「だって、三分切ったのはナツミが……」
ザックが何か言いかけて言葉を飲み込む。視線だけジーッと見つめられる。
つまり、私のせいだと言いたいのか。
そこへ、人差し指を立てたネロさんが、餃子の様な目をして笑う。酷く嫌らしい顔つきだ。
「分かりましたよザック! いやぁ、人は見かけによりませんね。ナツミさんは凄く良い具合の名、ゴフッ!」
ザックはネロさんの顔面に向かって、空になった樽形のジョッキを投げつけた。
それは、見事にヒットしてネロさんはベッドの上に仰向けになって倒れた。
「きゃーっ! ザック。乱暴すぎるよ!」
私は驚いて抗議の声を上げるが、ザックはそっぽを向いてしまった。
「ああっ。ネロ隊長、それは余計なひと言なんじゃ」
シンがネロさんの介抱をしながら、チラッと私を見てから少し顔を赤らめる。
何なのだ一体。私は首を傾げるばかりだった。
それから再び事件が起こる。
落ち着いたノアを見届けてから、ジルさんがとんでもない事を言い出した。
「さてファルの町で名が通った色男のお二人さん」
ジルさんは言いながら、腰紐にさしていたキセルを取り出し火をつけ煙を吐いた。
「何だよ、その笑い方……」
「……嫌な予感しかしない」
色男のお二人さんで自分の事だと思うノアとザックに苦笑いをしてしまう。自覚があるのか。
「二人の秘密をファルの町全員にバラされたくなければ、当面私に従ってもらうわよ。そうねぇ『オーガの店』とアルの件が片付くまでっていうのはどう? 早速、今晩は祭りもある事だし。ウチの店で手伝ってもらおうかしら?」
「「何っ?」」
ノアもザックもゴムまり人形の様に立ち上がると、悠々と座るジルさんを上から見つめる。
「何で俺が!」
「人手不足に軍人を使うなよ!」
ノアとザックが次々と文句を言う。流石に同意出来ない様だ。
「別に手伝ってもらうぐらいなら軍人だろうと関係ないでしょ。確かそんな規定別にないわよねぇ? 時間泊の部屋は当面無料にしてあげるし」
ジルさんは何処吹く風だ。
「馬鹿な事を言うなよ。俺達は暇じゃないんだぞ」
ノアが怒りを抑えながら、ジルさんに反論する。
「それに、俺達だからこんな軽口でいられるんだ。本来、軍人相手にそんな態度を取っているとジル自身が牢屋にぶち込まれる事だってあるんだぜ、なぁ? ノア」
ザックがグリーンの瞳を吊り上げジルさんを挑発する。
「ああ、そうだな。だから、ジルこの話は──」
鼻で笑ったノアがザックと同じ様にジルさんを見つめる。
そうか。ノアとザック、シンはとても仲良く接してくれるけれども、本来軍人だったらこんな軽口叩ける間柄ではないはず。
酒場に飲みに来るのはプライベートだけれど、粗相があればどんな目にあわされるか分からない。
うわぁ。ウエイターじゃなかった。ウエイトレス業務の時に気をつけよっと。私は一人震え上がった。
ジルさんは赤い唇を歪ませてニタリと笑う。
「ふーん。軍学校時代はよく手伝ってくれたのにねぇ? 軍学校時代は、まだお金もないから、外でヤッたり悪目立ちで目に余るから、店を手伝う代わりに食事と時間泊の部屋をタダ」
「「うわーっ!!!」」
ザックとノアが慌ててジルさんの前に立ちはだかり、肩をそれぞれが掴む。
「え? 何?」
あまりにも慌てる二人に私は驚いた。
ん? ジルさんのセリフを反芻してみる。
女性絡みのロクな話ではないのだろう……
私は、ザックに対して「ふーん」とひと言発すると、軽蔑の眼差しを向けた。
時間泊の部屋を無料提供されるのは昨日の話ではないのね。もう。そういう事ばかり!
ノアとザックって、よくここまで女の人に刺されずに生きて来られたなぁ。
私の様子を見る為に、ザックがジルさんの肩を掴んだままそっと後ろを振り向く。私の様子を確認してから、パッと目を逸らした。大きな背中が小さく丸くなる。
「ジ、ジル! ほら、俺達も訳ありな十代だったしな!」
ノアが笑いながら、冷や汗をかきはじめる。
「色々あった昔話なんてのは。な? 分かるだろ」
ザックも何故だか必死だ。相当何かをやらかしているのだろう。
色男のお二人さんは、ずいぶんヤンチャをしていた様子だ。
「ジルさん。その話は……」
ある程度事情を知っているのか、マリンは苦笑いで口元を押さえる。隣でミラも苦笑していた。シンも口笛を吹きながらニヤリと笑っている。多分シンもノアやザックと同罪と見た。
そうなると知りたい様な、知りたくない様な。
ジルさんが悪戯っぽく笑いキセルを口にくわえたまま、祈る様に両手を胸の前で組むと演技たっぷりでセリフを言う。
「そうね。昔話したってしょうがないものね。でも、ほらナツミとかネロとか知らない話もあるかもしれないし。泳げなくったって、三分もたなかったって、この目の前にいる軍人二人が、どんなに素晴らしい軍人になったかを」
「分かった、分かったから。ジル!」
「店を手伝うから。昔の話も今の秘密も黙っててくれ!」
「「だから、頼むからもう止めてくれ!」」
最後は跪いてお願いする色男お二人さんになっていた。
格好いいのか格好悪いのか。
それともジルさんに全く歯が立たないのか、分からないノアとザックだった。
ザックと私の息づかいだけが聞こえるお風呂場で、ポチャンとシャワー口から水滴が落ちる。白い泡が水面で揺れていて、二人の体を隠してくれる。
「はっザック」
キスの合間に言葉を発しても、すぐに口を塞がれる。
ザックのキスは最初は優しいのに、段々と強く深くなっていく。舌を絡ませて、吸いあげられ追いかけると逃げていく。だから慌てて追いかけると今度はザックの口内に誘い込まれて、逃れなくなり息が続かなくなってくる。
ザックの頬が私の低いはずの鼻の入り口付近もわざと塞ぐ。苦しくて口を開ける羽目になるが、その瞬間お腹や脇腹、太股などを撫でる様に触れていく。お陰で、高い声がコントロール出来なくなった息と共に吐き出さされる。
「まだ足りないから……」
ザックも、うっとりしながら呟く。
キスをこんなにする事は普段の俺ならない。確かに女性を陥落させる為にキスから進めて、とろける様な顔を見るのは好きだけれど。ナツミとのキスは別の様だ。甘いものの様な、ずっとこのままでいたくなる。時々上がる声も魅力的で、体の内側が熱くなって興奮してくる。
「だけど、私このままだと」
体が疼いて仕方ない。キスだけで思わず両膝をこすりつけてモジモジしてしまう。
「このままだと、何?」
私の様子が分かっているのか、ザックが意地悪に笑う。両手で脇腹から脇の下までゆっくりと指の腹を這わせる。
「色々と」
もっと触れて欲しくて、我慢が出来なくなる。そう言いたいけれど、まだ私は恥ずかしくて口にする事が出来ない。
ザックの触れる手にあわせて、ビクビクと体を震わせる。
「良い反応だな、よっと」
「きゃぁ!」
ザックは笑うと私を軽々抱き上げると、猫足のバスタブの外に出る。
私は突然の事に驚いて、ザックの首に両手を回す。見上げると、長めの金髪がおでこに張り付いて優しく私を見つめていた。何だか恥ずかしくて目を逸らす。
ザックは軽く笑って猫足バスタブの縁に私を抱いたまま腰掛けた。
「あれ?」
そのまま、横抱きだったのにヒョイと脇をもって抱き上げられると、ザックに背を向けて彼の両足をまたぐ様に座らされた。結構大きく股を開く事になって、私は慌てて閉じようとしたが、ザックが内太股をスッと撫でて阻止する。
「は、恥ずかしい! こんな、こんな」
股を開いたままでなんて。私はギュッと目をつぶる。そして、臀部にはザックの熱い杭を感じる。わざと押しつける様にして、私をしっかり抱きしめる。
「さてナツミはもっと俺に身をあずけていいんだけどな」
顎を私の左肩に乗せて、耳元で囁く。
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私は改めて昨日の自分の状態を思い出して言葉が繋げなくなる。
確かザックは三回ぐらい私の中で上り詰めていた。私と言えば、ザックなんか比にならないぐらい何度も何度も上り詰めて泣き叫んだ訳だし。
「「十分私は」の続きは?」
ザックは低く呟くと、壁に備え付けになっているシャワーのコックを捻った。
体の右方向から温かいシャワーが降り注ぎ、体についた泡を洗い流していく。
だけれど泡は体に滑りを残していているので、触れる指先の滑りがとても良い。
「は、恥ずかしくて、言えない。あっ!」
俯いて告げると、ザックが後ろから私の胸をすくい上げて、大きな手で優しく揉みはじめた。滑りがザックの指の動きを助けて更に快感を生み出す。
「昨日は焦ってさ、あんまり試せなかったんだが」
「アレで焦ってたの?!」
「そうなの。入れたくて入れたくて焦ってたの」
ザックはふざけた様な声を上げ、私の両胸の頂を軽く人差し指で押さえると、滑りを利用してゆっくりと擦りはじめた。
「あっ! それは駄目って昨日も」
胸の尖りは、激しく弄られると痛みを伴う事が多い。が、しかしザックはゆっくり触れるか触れないか分からないぐらいの触り方をする。
ざわざわと首の後ろが逆毛が立つ様な感覚がする。
胸を突き出す様に背中をそると、ザックの熱い杭をお尻で更に押さえつける事になる。そそり立ったいるしっかりとした太くて固いものがピクリと動く。
「多分、ここは感じやすいんだ。なぁ、もっと俺に心と体を開いて欲しい。こういう事は凄く恥ずかしいと思っているだろ?」
「だって」
そうなのだ。別に胸がどうこうではないのだが。
こういう行為って気持ちが良いけれど恥ずかしさが先に立ってしまう。
「なぁ……今からゆっくり触れていくから、どれが気持ちいいか教えてくれよ?」
ザックが耳元でそう囁くと小さくキスを耳元でした。
「え?」
「いいか? お前が俺に詳しく説明してくれるまでだぞ?」
「ど、どういう、あっ!」
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