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129 ナツミとネロ その8
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「はぁ。スッキリしましたぁ。リンダさんにも満足頂けた様だし、何よりゴッツさんがかなり食いついていましたねぇ『上手く行けば商売になると』ふふふ……ジルさんには怒られるかもしれませんね。商売敵相手に何しているんだって。早速僕の作った特製香油についても興味を示してくれましたし。エッバまでもが作り方を教えて欲しいと言ってましたし。今頃台所で教えたレシピ通り皆で作っている事でしょう。さてどうでした? ナツミさん、僕のを覗いた感想は」
ネロさんはシャワーを浴び、チュニックの下に穿いていたズボン一枚でベッドサイド側の椅子に座っている。濡れた髪の毛をガシガシ拭きながらやたら早口で笑いながら私に尋ねる。
「どうって……言われても」
うっ答えにくい事を聞いてくれる。凄く扇情的だったけれどもそれはどんな顔で話せばいいのだろう。
微笑みながら? 笑いながら? 恥じらいながら? ああ~分からないよっ。
私は返答に困りネロさんとリンダが乱れたベッドのシーツを取り替えていた。
もちろん『ゴッツの店』なので私が時間泊(つまりラブホテルの様なもの)の部屋を掃除し片付ける必要はない。しかし、突然押しかけておきながら、おにぎりの試食をお願いし、話の流れとは言えネロさんとリンダさんのベッドシーンを見る事になってしまった。
いたたまれなくなり室内の清掃をゴッツさんに申し出たのだ。このまま何もしないで帰るわけには行かない。
「そんな事は気にしなくていい。ウチも内輪もめを解決してもらった様なものだし、更に新しい商売の考えももらったしな。こっちがお礼をしないといけないぐらいだ。だがナツミの顔は何だ。分かった、分かったから好きな様に掃除をしていけ」
私の必死な困り顔を見たゴッツさんが苦笑いをして掃除道具を差し出してくれた。
やたらスッキリして何もかも吹っ切れたリンダは、ソフトSM体験を興奮してゴッツさんとトニ、エッバ、ソルに語っていた。目覚めてしまったのだろうか。
最後に私とネロさんの両手を握りしめキラキラした瞳でお礼を言われた。
「ありがとう。ナツミ、そしてネロさん。ナツミには大感謝よ。私の不調に気がついてくれなければ、はっきり言ってくれなければ、私は踊れなくなっていたかもしれないわ。二人の思いきった提案があったから私は元気になれたのだと思う」
「あ、う、うん……とにかくリンダが元気になって私も嬉しいよ」
色々曲がりくねって解釈されているのだが、全てがいい方に転んだと言う事でヨシとしよう。うん。
そして、リンダ達は途中で使用してた、ローションの(香油と呼ばれていたが)作り方をネロさんから聞き出すと皆が台所で作りはじめる為に部屋から出て行ってしまった。
私はネロさんとリンダの情事の残る部屋を掃除していた。ネロさんと二人部屋に残されたが、暢気な事にネロさんはシャワーまで使ってしまった。
もう! 掃除の範囲を広げないで欲しいのに。
そんな風に私が掃除にいそしんでいるところ、答えに窮する質問をしてくるネロさんだった。いつまで経っても答えようとしない私に、ネロさんは苦笑いになってションボリしてしまった。
「そりゃぁ確かに、ザックとナツミさんの二人に比べたら僕のは凄く劣りますけれどもね」
「だから比べるものじゃないですってば! もう! 凄くネロさんって責め立てるのが上手いって言うか」
突然落ち込むものだから私は慌てて声を上げてしまった。
するとニヤリと笑ってネロさんが嬉しそうに笑う。
「えっ。僕の責め具合上手かったですか?」
答えにくい事を聞かないで欲しい。
「~~そ、それは、その~す、凄く見てられないぐらいエッチだったって言うか」
言葉が足りないと、単なる恥ずかしい感想でしかない。
私は顔を真っ赤にして必死にシーツの角を何度も伸ばした。
「そうですかそうですか。それは嬉しい言葉です。是非ザックにも報告を──」
「しなくていいですから!」
私は慌ててネロさんの言葉を遮る。
ネロさんとリンダの情事をひょんな事とは言え、覗いた事をどうザックに報告すればいいのだろう。先日ノアとマリンの情事を覗こうとしたのを必死に拒絶したのにも関わらずこんな事になってしまって。
何しているんだって怒るだろうなぁ。それとも、何で俺を呼ばないのだ、とか言う出すかな。断然、後者の様な気がしてきた。
私は溜め息をついて立ち上がりベッドの上のかけ布団をセットし直した。
「ふふふ。ナツミさんはいちいち反応が可愛いですねぇ」
感想を聞けて満足したネロさんは軽く笑いながら、まだ乾かない髪の毛を一つに束ねようとしていた。
「もう。ネロさん、ちゃんと乾かしてからじゃないと絡まりますよ?」
私は小走りにネロさんに近づくと、彼の肩にかかったままのタオルを手に取り、ネロさんの濡れた髪の毛を再びガシガシと拭いた。
「ああ~毛が抜ける~」
すると首をぐらぐらしながらタオルの下で情けない声を上げたのはネロさんだった。
「毛が抜けるほど強くしてませんよ。ふざけて言わないでください。もう、さっきからノロノロしていると思ったらまだ濡れてるじゃないですか。折角綺麗な髪の毛なんだから」
私が拭きながら言うとネロさんがピクリと肩を動かして呟いた。
「綺麗な髪の毛……」
「そうですよ。ちゃんと手入れしたらもっと綺麗になりますよ。ほら水滴が取れた」
水滴を拭き終わりタオルを外す。
見事なプラチナブロンドだがとても細い毛なので手入れを怠ると痛みそうだ。
いい加減な手入れを続けているのかネロさんの毛はところどころ痛んでいる様に見えた。確かめる為に手ぐしで整える。
ネロさんは目を閉じて私にされるままになっていた。何だか子供みたい。
よく観察すると、ネロさんはいつも一緒にいるザックやノアとはタイプが全く違う。体つきも痩せ型で筋肉はついていない。白い肌が際立っている。猫背を治して黙っていれば品のいい男性なのに。
そう感じた時、ネロさんは突然ポツリと呟いた。
「昔、同じ事をノアの母上に言われた事があります」
「え?」
突然の呟きに私は手を止めて座っているネロさんの顔を見下ろす。ネロさんの白い頬に長く伸びた前髪が一房落ちた。
「今のナツミさんと同じ様にタオルで拭いて手ぐしで整えてくれながら『折角綺麗な髪の毛なんだから。でも、傷みやすいから気をつけてね。少しだけ手入れをするだけでいいのよ』ってね」
ネロさんの表情は無表情で淡々と話す。
「……そうだったんですか」
懐かしく語る様子がないので、私は少しためらいながら呟く。
何だか違和感がある。髪の毛を拭いてくれるほど、ノアのお母さんとそんなに距離が近かったのか。しかし、そこに登場するのであればそれはネロさんのお母さんにならないだろうか。
アルさんとネロさんのお母さんは?
先日、海でザックに尋ねたアルさんの容姿を尋ねた時に出た、アルさんとネロさんのお母さんの話。お母さんはファルの町の出身者だとか。
私は反射的にネロさんに尋ねた。
「ネロさんのお母さんはどんな人だったんですか?」
「……」
するとネロさんは口を閉じてしまった。
既に亡くなっているとはいえネロさんがどう思っているかなんて分からないのに、立ち入った事を聞いてしまった。
「ごめんなさい。立ち入った事を聞いてしまって。この間、アルさんの容姿についてザックに聞いたらお母さんはファルの町出身の女性だって聞いたので。思わず尋ねてしまいました」
私は何を言っているのだろう。私は謝ってクルリとネロさんに背を向けた。
するとネロさんが私の背中で小さく笑ったのが聞こえた。
「いいんですよ。気を遣わないでください。ただ、ナツミさんから早々に聞かれると思っていなかったので、少し驚いてしまって。僕こそ変な反応をして済みません」
そう言っていつもより低い声で話してくれた。
私はゆっくり振り返ってネロさんを見つめる。その姿を見てからネロさんは話し出す。
「そうですね。アルと僕の母はファルの町出身の女性でね。裏町にある食堂で働いていたそうです。早くから両親を亡くしていましたが、頑張って生きていました。容姿も美しくてね。妙齢になった頃には元気で明るく人気者だったそうですよ」
ネロさんは足を大きく広げその上に自分の両肘をつけ前屈みになって懐かしそうに話す。
しかし、その最後の言葉に違和感がある。
「だったそうですよって?」
何故、伝聞なのだろう。
私は首を傾げる。するとネロさんはゆっくりと顔を上げて苦笑いをした。
「僕はそんな片鱗があった事すら知らないのです。僕が覚えている母は、精神的におかしくなっていて、僕を自分の子供だと認識していなかった」
「え──」
衝撃的な言葉に私は驚いて口を開けたまま目を見開いた。そんな私の顔を見てネロさんは小さく肩を上げた。
「僕を生んだ頃から少しずつ精神がおかしくなってしまってね。最後は自ら命を絶ってしまった」
自殺って──
だって領主と大恋愛の末結婚したのに。
シンデレラストーリーだったのに。
やはり領主の浮気が関係しているのだろうか。
「どうしてそうなったか、聞いてもいいですか?」
私が尋ねると、ネロさんは小さく頷いた。
「ええもちろん。かまいません。だってそのつもりで僕はナツミさんについてきたんですよ?」
そう言いながらネロさんは優しく笑った。
「え、そのつもりだったって?」
もしかして、最初からそのつもりでおにぎりの試食についてきたと言うのだろうか?
ネロさんの考えている事が分からず私は唾を飲み込んだ。
ネロさんはそんな私をよそに、床に視線を移し淡々と話しはじめた。
私はネロさんの話をじっくり聞く為、近くの椅子を持ってきて彼と向かい合って座る。
「兄のアルと僕の父は、若くして『ファルの町』の領主になりました。当時二十歳を過ぎたばかりだったそうです。北の国で地位のある家で育った父は、出世争いに興味がなかったので早々に地方勤務を希望したそうです。そこで『ファルの町』で生まれ育った母と大恋愛の末結婚した」
ネロさんは私を見ずに床に向かって話す。
その様子から、視線を合わせない方が楽なのかもしれないと感じた。
私は淡々としているネロさんの言葉が途切れたところで、出来るだけ感情的にならずに静かに尋ねる。
「大恋愛なら、めでたしめでたしじゃないですか。物語になりそうなぐらいですよね」
誰もが羨むシンデレラストーリーだ。
「そうですね。誰もが羨む大恋愛です。でも結婚したからと言っても物語は──人生は終わらない。人気者と言っても所詮裏町の娘です。領主の生活や貴族の世界なんて知りもしない」
「……」
そうか。
お母さんはいきなり違う世界に放り込まれても戸惑うばかりだったのだろう。
それにこの世界は心のない差別をする人がいる。
「使用人ですら北の国の出身者ですから。更に教育係までも母を寄ってたかっていじめて、蔑み、馬鹿にした。そんな生活が待っているとは恋愛をしている時には思いもしなかったでしょうね母も父も。いじめは父のいない時に繰り返されたそうです」
「アルマさんという素晴らしいメイド頭がいるのに?」
私は不意に別荘で出会った竹箒を振り回すアルマさんを思い出した。
非常に素晴らしい使用人だったのに。そんないじめなんて。
「アルマはノアの母上についてきた使用人なんだ。確か、兄のアルが四、五歳で、僕が三歳ぐらいの時に来たんだ」
「じゃぁ──それまでは」
「うん。酷い、いじめだった様だよ。酷さについて語るのはよそう。気分が悪くなるだけだ。と言っても、僕も見てはないんだ。これはその後アルマと一緒に働く使用人に聞いただけだけれどもね」
溜め息をついてようやくネロさんは視線を上げ私と真っすぐに向き合う。猫背のまま椅子の背もたれに体重をかける。
「そんな中まず長男のアルが生まれてさ、領主──父はとても喜んだ。そりゃそうだ二人の大切な子供なのだから。だけどアルは母の血を濃く引いてしまった。プラチナブロンドですが、浅黒い肌に赤い瞳の長男の誕生だよ」
ザックも言っていた。アルさんはプラチナブロンドだが肌はファルの町特有の浅黒い肌と赤い瞳だったと。
「父は全く気にしていなかったけれども、周りはそうじゃなかった。父の容姿、北の国の人種とは駆け離れた子供だったから更にいじめは激化する。なのに唯一の助けである父は一切気がつかない。母は無理して気丈な振りをしていたのでしょう。そしてとうとう僕が生まれた頃に、母は心を病んでしまった。だから僕は直ぐに隔離された。幸か不幸か僕はほら北の国風だしね。しかも病弱だから期待はされなかったし」
ネロさんは小さく肩を上げて溜め息をついた。
「隔離されて三年経った頃には、僕は産みの母に認識してもらえない存在となっていた。生んだ事すら忘れてしまったんだよね──そして、赤ん坊のノアを連れた美しい女が城にやって来たんだ」
「──」
私は言葉を失ってしまった。瞬きも忘れてネロさんを見つめる。
「父が連れて来たそうだ。領主が正妻以外を側室や妾を囲うのは別に珍しい事じゃない。血を重視するのが北の国だからね。城の使用人は『こうなって当然だ』と言わんばかりにノアの母上を迎えいれた。ノアの母親は元々正妻に求められる様な教育が行き届いた女性だったし、何より北の国出身者だ」
「そんな──」
自分も味わった感情だから分かる。何と領主は残酷な事をするのだろう。
大恋愛の末結婚したのじゃないの?
周りもそんな態度をとり続けたのなら、どうして領主は助けなかったの?
疑問だらけだが悲惨な結末までの道はまだ終わらない。
「ノアの母上と赤ん坊のノアを見て、とうとう母は発狂してしまった。ノアの母上に辛く当たる様になってしまった。周りがそうさせてしまったのにね。そこでようやく父が気がついたが、何もかも手遅れさ。母のいじめに加担した使用人は解雇され、北の国に強制送還。その後どうなったのかはこれも怖い話だから聞かない方がいい。そして、三歳になった僕は、生まれたばかりのノアとノアの母親と共に別荘に置かれたのさ」
ネロさんの顔は無表情だった。いつもと違うのはあのフワフワしたしゃべり方ではない。はっきりと聞こえる低い声だった。
「ちょ、長男のアルさんは?」
ようやく出た私の声はひっくり返っていた。
喉が渇いて張り付くってこういう事を言うのだろうか。
「兄のアルは母の側に置いておかないと、母が発狂するんだ。いじめられた二人は離ればなれを恐れたのだろうね。だけど、僕が十歳を過ぎて少しした頃かな。母は自ら命を絶ってしまった。アルの悲しみようと言ったらなかったさ。……アルの攻撃的な性格はそんな風にして育てられたのさ。アルも被害者だよね」
淡々と話すネロさん。
感情を込めずに話すのは、もしかしてネロさんがこの事実を受け入れているからなのだろうか。それとも自分の心のバランスをとる為に淡々と話しているのだろうか。
「そんな事があったからアルさんはしつこくノアに対して殺そうとする様な事をするんですね」
一つの問題は何となく理解できた。私は小さく溜め息をついて次の疑問を口にする。
水泳教室をはじめて開催する為に訪れた別荘で、確かアルマさんはノアにこう言っていた。酔っ払って意識が飛んでいく前にこう言っていた。
『ノア坊ちゃん。アル坊ちゃんとどうか一度話をしてください。アル坊ちゃんも昔から苦労して……』
苦労ってそういう事だったんだ。今はじめて理解した。
だけれど即座にノアは苦労なんてしていないと否定をした。もしアルさんの受けた苦痛を知っていれば、否定する必要もないと思うのに。
私は震える声で恐る恐るネロさんに聞いてみた。
「その話って……ノアは知っているんですか?」
ネロさんは静かに左右に首を振った。
「知らないよ。アルの母親が自ら命を絶った事も、どうして僕やノアとノアの母上が隔離されていたかも。きっと妾の子供だって事で処理されているはずさ。この話は僕と領主の父、アルマと別荘にいた一部の使用人ぐらいしか知らない」
ノアが知らなければ当然ザックも知るはずがない。
「どうして……」
私は顔を青くしてこの言葉を口にする他なかった。
大恋愛をして結婚したのならどうして妾なんて作ったのか。
どうして自ら命を絶つまで追いつめて、皆が気がつかなかったのか。
疑問が次々に生まれる。
そして──ネロさんはそんな重要な話をノアやザックをすっ飛ばして、何故私にするのか。
今まで無表情だったネロさんはようやく微笑んでいつもの様に私の心の中を覗いた様に呟いた。
「どうして妾なんて作ったのかって? 他にも疑問がある様だけれども……」
「は、はい。領主の気持ちが変わってしまったとか、北の国の濃い血を残したいと言うか……そういう事なのでしょうけれども。とても残酷です」
「そうだね残酷だ。だけどね、もっと残酷な事に、ノアの母上は僕の父の妾じゃないんだ。つまりアルと僕とノアは異母兄弟でもない」
ネロさんは首を傾げて乾いてしまった髪の毛で顔を半分隠してしまった。
「え」
ネロさんの言葉を聞いた途端、私はキーンと耳鳴りがした。
ノアの母は妾ではないって──
血が逆流する様な、手足から血の気が引く様な状態になり、私は驚いて椅子から勢いよく立ち上がる。座っていた椅子は勢いよく倒れて大きな音を立てた。
「妾でも何でもないって……」
それなら、ノアは、ノアは──
私が息を一つ飲み込んだ時、ゆっくりと部屋のドアが開いた。
スローモーションの様にゆっくりと私とネロさんはドアに顔を向ける。
そこに立つ人物に私達は心臓が止まるかと思った。
「ノア……来てしまったのか」
ネロさんは諦めた様に微笑んだ。
そこには『ゴッツの店』にいるはずのない人物。ノア、ザック、マリンが立っていた。
「あ……」
どうしてここにいるのか。混乱した私はただ立ち尽くすしかない。
ノアは白い頬をこわばらせてゆっくり部屋に入る。その後からザック、マリンが入って来て扉の鍵をガチャリと閉めた。
ノアは意を決した様に大きく溜め息をついた。鍛えられた肩が上下に動いた。
それから真っすぐとアイスブルーの瞳をネロに向ける。
「──ネロ。それなら俺はどこの誰なんだ?」
そうゆっくりとノアは呟いた。
ネロさんはシャワーを浴び、チュニックの下に穿いていたズボン一枚でベッドサイド側の椅子に座っている。濡れた髪の毛をガシガシ拭きながらやたら早口で笑いながら私に尋ねる。
「どうって……言われても」
うっ答えにくい事を聞いてくれる。凄く扇情的だったけれどもそれはどんな顔で話せばいいのだろう。
微笑みながら? 笑いながら? 恥じらいながら? ああ~分からないよっ。
私は返答に困りネロさんとリンダが乱れたベッドのシーツを取り替えていた。
もちろん『ゴッツの店』なので私が時間泊(つまりラブホテルの様なもの)の部屋を掃除し片付ける必要はない。しかし、突然押しかけておきながら、おにぎりの試食をお願いし、話の流れとは言えネロさんとリンダさんのベッドシーンを見る事になってしまった。
いたたまれなくなり室内の清掃をゴッツさんに申し出たのだ。このまま何もしないで帰るわけには行かない。
「そんな事は気にしなくていい。ウチも内輪もめを解決してもらった様なものだし、更に新しい商売の考えももらったしな。こっちがお礼をしないといけないぐらいだ。だがナツミの顔は何だ。分かった、分かったから好きな様に掃除をしていけ」
私の必死な困り顔を見たゴッツさんが苦笑いをして掃除道具を差し出してくれた。
やたらスッキリして何もかも吹っ切れたリンダは、ソフトSM体験を興奮してゴッツさんとトニ、エッバ、ソルに語っていた。目覚めてしまったのだろうか。
最後に私とネロさんの両手を握りしめキラキラした瞳でお礼を言われた。
「ありがとう。ナツミ、そしてネロさん。ナツミには大感謝よ。私の不調に気がついてくれなければ、はっきり言ってくれなければ、私は踊れなくなっていたかもしれないわ。二人の思いきった提案があったから私は元気になれたのだと思う」
「あ、う、うん……とにかくリンダが元気になって私も嬉しいよ」
色々曲がりくねって解釈されているのだが、全てがいい方に転んだと言う事でヨシとしよう。うん。
そして、リンダ達は途中で使用してた、ローションの(香油と呼ばれていたが)作り方をネロさんから聞き出すと皆が台所で作りはじめる為に部屋から出て行ってしまった。
私はネロさんとリンダの情事の残る部屋を掃除していた。ネロさんと二人部屋に残されたが、暢気な事にネロさんはシャワーまで使ってしまった。
もう! 掃除の範囲を広げないで欲しいのに。
そんな風に私が掃除にいそしんでいるところ、答えに窮する質問をしてくるネロさんだった。いつまで経っても答えようとしない私に、ネロさんは苦笑いになってションボリしてしまった。
「そりゃぁ確かに、ザックとナツミさんの二人に比べたら僕のは凄く劣りますけれどもね」
「だから比べるものじゃないですってば! もう! 凄くネロさんって責め立てるのが上手いって言うか」
突然落ち込むものだから私は慌てて声を上げてしまった。
するとニヤリと笑ってネロさんが嬉しそうに笑う。
「えっ。僕の責め具合上手かったですか?」
答えにくい事を聞かないで欲しい。
「~~そ、それは、その~す、凄く見てられないぐらいエッチだったって言うか」
言葉が足りないと、単なる恥ずかしい感想でしかない。
私は顔を真っ赤にして必死にシーツの角を何度も伸ばした。
「そうですかそうですか。それは嬉しい言葉です。是非ザックにも報告を──」
「しなくていいですから!」
私は慌ててネロさんの言葉を遮る。
ネロさんとリンダの情事をひょんな事とは言え、覗いた事をどうザックに報告すればいいのだろう。先日ノアとマリンの情事を覗こうとしたのを必死に拒絶したのにも関わらずこんな事になってしまって。
何しているんだって怒るだろうなぁ。それとも、何で俺を呼ばないのだ、とか言う出すかな。断然、後者の様な気がしてきた。
私は溜め息をついて立ち上がりベッドの上のかけ布団をセットし直した。
「ふふふ。ナツミさんはいちいち反応が可愛いですねぇ」
感想を聞けて満足したネロさんは軽く笑いながら、まだ乾かない髪の毛を一つに束ねようとしていた。
「もう。ネロさん、ちゃんと乾かしてからじゃないと絡まりますよ?」
私は小走りにネロさんに近づくと、彼の肩にかかったままのタオルを手に取り、ネロさんの濡れた髪の毛を再びガシガシと拭いた。
「ああ~毛が抜ける~」
すると首をぐらぐらしながらタオルの下で情けない声を上げたのはネロさんだった。
「毛が抜けるほど強くしてませんよ。ふざけて言わないでください。もう、さっきからノロノロしていると思ったらまだ濡れてるじゃないですか。折角綺麗な髪の毛なんだから」
私が拭きながら言うとネロさんがピクリと肩を動かして呟いた。
「綺麗な髪の毛……」
「そうですよ。ちゃんと手入れしたらもっと綺麗になりますよ。ほら水滴が取れた」
水滴を拭き終わりタオルを外す。
見事なプラチナブロンドだがとても細い毛なので手入れを怠ると痛みそうだ。
いい加減な手入れを続けているのかネロさんの毛はところどころ痛んでいる様に見えた。確かめる為に手ぐしで整える。
ネロさんは目を閉じて私にされるままになっていた。何だか子供みたい。
よく観察すると、ネロさんはいつも一緒にいるザックやノアとはタイプが全く違う。体つきも痩せ型で筋肉はついていない。白い肌が際立っている。猫背を治して黙っていれば品のいい男性なのに。
そう感じた時、ネロさんは突然ポツリと呟いた。
「昔、同じ事をノアの母上に言われた事があります」
「え?」
突然の呟きに私は手を止めて座っているネロさんの顔を見下ろす。ネロさんの白い頬に長く伸びた前髪が一房落ちた。
「今のナツミさんと同じ様にタオルで拭いて手ぐしで整えてくれながら『折角綺麗な髪の毛なんだから。でも、傷みやすいから気をつけてね。少しだけ手入れをするだけでいいのよ』ってね」
ネロさんの表情は無表情で淡々と話す。
「……そうだったんですか」
懐かしく語る様子がないので、私は少しためらいながら呟く。
何だか違和感がある。髪の毛を拭いてくれるほど、ノアのお母さんとそんなに距離が近かったのか。しかし、そこに登場するのであればそれはネロさんのお母さんにならないだろうか。
アルさんとネロさんのお母さんは?
先日、海でザックに尋ねたアルさんの容姿を尋ねた時に出た、アルさんとネロさんのお母さんの話。お母さんはファルの町の出身者だとか。
私は反射的にネロさんに尋ねた。
「ネロさんのお母さんはどんな人だったんですか?」
「……」
するとネロさんは口を閉じてしまった。
既に亡くなっているとはいえネロさんがどう思っているかなんて分からないのに、立ち入った事を聞いてしまった。
「ごめんなさい。立ち入った事を聞いてしまって。この間、アルさんの容姿についてザックに聞いたらお母さんはファルの町出身の女性だって聞いたので。思わず尋ねてしまいました」
私は何を言っているのだろう。私は謝ってクルリとネロさんに背を向けた。
するとネロさんが私の背中で小さく笑ったのが聞こえた。
「いいんですよ。気を遣わないでください。ただ、ナツミさんから早々に聞かれると思っていなかったので、少し驚いてしまって。僕こそ変な反応をして済みません」
そう言っていつもより低い声で話してくれた。
私はゆっくり振り返ってネロさんを見つめる。その姿を見てからネロさんは話し出す。
「そうですね。アルと僕の母はファルの町出身の女性でね。裏町にある食堂で働いていたそうです。早くから両親を亡くしていましたが、頑張って生きていました。容姿も美しくてね。妙齢になった頃には元気で明るく人気者だったそうですよ」
ネロさんは足を大きく広げその上に自分の両肘をつけ前屈みになって懐かしそうに話す。
しかし、その最後の言葉に違和感がある。
「だったそうですよって?」
何故、伝聞なのだろう。
私は首を傾げる。するとネロさんはゆっくりと顔を上げて苦笑いをした。
「僕はそんな片鱗があった事すら知らないのです。僕が覚えている母は、精神的におかしくなっていて、僕を自分の子供だと認識していなかった」
「え──」
衝撃的な言葉に私は驚いて口を開けたまま目を見開いた。そんな私の顔を見てネロさんは小さく肩を上げた。
「僕を生んだ頃から少しずつ精神がおかしくなってしまってね。最後は自ら命を絶ってしまった」
自殺って──
だって領主と大恋愛の末結婚したのに。
シンデレラストーリーだったのに。
やはり領主の浮気が関係しているのだろうか。
「どうしてそうなったか、聞いてもいいですか?」
私が尋ねると、ネロさんは小さく頷いた。
「ええもちろん。かまいません。だってそのつもりで僕はナツミさんについてきたんですよ?」
そう言いながらネロさんは優しく笑った。
「え、そのつもりだったって?」
もしかして、最初からそのつもりでおにぎりの試食についてきたと言うのだろうか?
ネロさんの考えている事が分からず私は唾を飲み込んだ。
ネロさんはそんな私をよそに、床に視線を移し淡々と話しはじめた。
私はネロさんの話をじっくり聞く為、近くの椅子を持ってきて彼と向かい合って座る。
「兄のアルと僕の父は、若くして『ファルの町』の領主になりました。当時二十歳を過ぎたばかりだったそうです。北の国で地位のある家で育った父は、出世争いに興味がなかったので早々に地方勤務を希望したそうです。そこで『ファルの町』で生まれ育った母と大恋愛の末結婚した」
ネロさんは私を見ずに床に向かって話す。
その様子から、視線を合わせない方が楽なのかもしれないと感じた。
私は淡々としているネロさんの言葉が途切れたところで、出来るだけ感情的にならずに静かに尋ねる。
「大恋愛なら、めでたしめでたしじゃないですか。物語になりそうなぐらいですよね」
誰もが羨むシンデレラストーリーだ。
「そうですね。誰もが羨む大恋愛です。でも結婚したからと言っても物語は──人生は終わらない。人気者と言っても所詮裏町の娘です。領主の生活や貴族の世界なんて知りもしない」
「……」
そうか。
お母さんはいきなり違う世界に放り込まれても戸惑うばかりだったのだろう。
それにこの世界は心のない差別をする人がいる。
「使用人ですら北の国の出身者ですから。更に教育係までも母を寄ってたかっていじめて、蔑み、馬鹿にした。そんな生活が待っているとは恋愛をしている時には思いもしなかったでしょうね母も父も。いじめは父のいない時に繰り返されたそうです」
「アルマさんという素晴らしいメイド頭がいるのに?」
私は不意に別荘で出会った竹箒を振り回すアルマさんを思い出した。
非常に素晴らしい使用人だったのに。そんないじめなんて。
「アルマはノアの母上についてきた使用人なんだ。確か、兄のアルが四、五歳で、僕が三歳ぐらいの時に来たんだ」
「じゃぁ──それまでは」
「うん。酷い、いじめだった様だよ。酷さについて語るのはよそう。気分が悪くなるだけだ。と言っても、僕も見てはないんだ。これはその後アルマと一緒に働く使用人に聞いただけだけれどもね」
溜め息をついてようやくネロさんは視線を上げ私と真っすぐに向き合う。猫背のまま椅子の背もたれに体重をかける。
「そんな中まず長男のアルが生まれてさ、領主──父はとても喜んだ。そりゃそうだ二人の大切な子供なのだから。だけどアルは母の血を濃く引いてしまった。プラチナブロンドですが、浅黒い肌に赤い瞳の長男の誕生だよ」
ザックも言っていた。アルさんはプラチナブロンドだが肌はファルの町特有の浅黒い肌と赤い瞳だったと。
「父は全く気にしていなかったけれども、周りはそうじゃなかった。父の容姿、北の国の人種とは駆け離れた子供だったから更にいじめは激化する。なのに唯一の助けである父は一切気がつかない。母は無理して気丈な振りをしていたのでしょう。そしてとうとう僕が生まれた頃に、母は心を病んでしまった。だから僕は直ぐに隔離された。幸か不幸か僕はほら北の国風だしね。しかも病弱だから期待はされなかったし」
ネロさんは小さく肩を上げて溜め息をついた。
「隔離されて三年経った頃には、僕は産みの母に認識してもらえない存在となっていた。生んだ事すら忘れてしまったんだよね──そして、赤ん坊のノアを連れた美しい女が城にやって来たんだ」
「──」
私は言葉を失ってしまった。瞬きも忘れてネロさんを見つめる。
「父が連れて来たそうだ。領主が正妻以外を側室や妾を囲うのは別に珍しい事じゃない。血を重視するのが北の国だからね。城の使用人は『こうなって当然だ』と言わんばかりにノアの母上を迎えいれた。ノアの母親は元々正妻に求められる様な教育が行き届いた女性だったし、何より北の国出身者だ」
「そんな──」
自分も味わった感情だから分かる。何と領主は残酷な事をするのだろう。
大恋愛の末結婚したのじゃないの?
周りもそんな態度をとり続けたのなら、どうして領主は助けなかったの?
疑問だらけだが悲惨な結末までの道はまだ終わらない。
「ノアの母上と赤ん坊のノアを見て、とうとう母は発狂してしまった。ノアの母上に辛く当たる様になってしまった。周りがそうさせてしまったのにね。そこでようやく父が気がついたが、何もかも手遅れさ。母のいじめに加担した使用人は解雇され、北の国に強制送還。その後どうなったのかはこれも怖い話だから聞かない方がいい。そして、三歳になった僕は、生まれたばかりのノアとノアの母親と共に別荘に置かれたのさ」
ネロさんの顔は無表情だった。いつもと違うのはあのフワフワしたしゃべり方ではない。はっきりと聞こえる低い声だった。
「ちょ、長男のアルさんは?」
ようやく出た私の声はひっくり返っていた。
喉が渇いて張り付くってこういう事を言うのだろうか。
「兄のアルは母の側に置いておかないと、母が発狂するんだ。いじめられた二人は離ればなれを恐れたのだろうね。だけど、僕が十歳を過ぎて少しした頃かな。母は自ら命を絶ってしまった。アルの悲しみようと言ったらなかったさ。……アルの攻撃的な性格はそんな風にして育てられたのさ。アルも被害者だよね」
淡々と話すネロさん。
感情を込めずに話すのは、もしかしてネロさんがこの事実を受け入れているからなのだろうか。それとも自分の心のバランスをとる為に淡々と話しているのだろうか。
「そんな事があったからアルさんはしつこくノアに対して殺そうとする様な事をするんですね」
一つの問題は何となく理解できた。私は小さく溜め息をついて次の疑問を口にする。
水泳教室をはじめて開催する為に訪れた別荘で、確かアルマさんはノアにこう言っていた。酔っ払って意識が飛んでいく前にこう言っていた。
『ノア坊ちゃん。アル坊ちゃんとどうか一度話をしてください。アル坊ちゃんも昔から苦労して……』
苦労ってそういう事だったんだ。今はじめて理解した。
だけれど即座にノアは苦労なんてしていないと否定をした。もしアルさんの受けた苦痛を知っていれば、否定する必要もないと思うのに。
私は震える声で恐る恐るネロさんに聞いてみた。
「その話って……ノアは知っているんですか?」
ネロさんは静かに左右に首を振った。
「知らないよ。アルの母親が自ら命を絶った事も、どうして僕やノアとノアの母上が隔離されていたかも。きっと妾の子供だって事で処理されているはずさ。この話は僕と領主の父、アルマと別荘にいた一部の使用人ぐらいしか知らない」
ノアが知らなければ当然ザックも知るはずがない。
「どうして……」
私は顔を青くしてこの言葉を口にする他なかった。
大恋愛をして結婚したのならどうして妾なんて作ったのか。
どうして自ら命を絶つまで追いつめて、皆が気がつかなかったのか。
疑問が次々に生まれる。
そして──ネロさんはそんな重要な話をノアやザックをすっ飛ばして、何故私にするのか。
今まで無表情だったネロさんはようやく微笑んでいつもの様に私の心の中を覗いた様に呟いた。
「どうして妾なんて作ったのかって? 他にも疑問がある様だけれども……」
「は、はい。領主の気持ちが変わってしまったとか、北の国の濃い血を残したいと言うか……そういう事なのでしょうけれども。とても残酷です」
「そうだね残酷だ。だけどね、もっと残酷な事に、ノアの母上は僕の父の妾じゃないんだ。つまりアルと僕とノアは異母兄弟でもない」
ネロさんは首を傾げて乾いてしまった髪の毛で顔を半分隠してしまった。
「え」
ネロさんの言葉を聞いた途端、私はキーンと耳鳴りがした。
ノアの母は妾ではないって──
血が逆流する様な、手足から血の気が引く様な状態になり、私は驚いて椅子から勢いよく立ち上がる。座っていた椅子は勢いよく倒れて大きな音を立てた。
「妾でも何でもないって……」
それなら、ノアは、ノアは──
私が息を一つ飲み込んだ時、ゆっくりと部屋のドアが開いた。
スローモーションの様にゆっくりと私とネロさんはドアに顔を向ける。
そこに立つ人物に私達は心臓が止まるかと思った。
「ノア……来てしまったのか」
ネロさんは諦めた様に微笑んだ。
そこには『ゴッツの店』にいるはずのない人物。ノア、ザック、マリンが立っていた。
「あ……」
どうしてここにいるのか。混乱した私はただ立ち尽くすしかない。
ノアは白い頬をこわばらせてゆっくり部屋に入る。その後からザック、マリンが入って来て扉の鍵をガチャリと閉めた。
ノアは意を決した様に大きく溜め息をついた。鍛えられた肩が上下に動いた。
それから真っすぐとアイスブルーの瞳をネロに向ける。
「──ネロ。それなら俺はどこの誰なんだ?」
そうゆっくりとノアは呟いた。
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