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第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
混ざり合う感情とアマジの家族
しおりを挟む今回のお話は、
※前半 澄香とアマジの最終戦のお話。
後半 アマジの過去のお話。となっています。
※※※
「これからが本番だ。だからその圧倒的な力を見せてみろっ」
と両手を広げ私を睨むアマジ。
『本番、ね。確かにこれからが本番かもね?色々な意味でも』
私はさっきまでとは雰囲気の変わったアマジを見てそう思う。
そこには今までとは明らかに、纏う空気も目つきも変化したアマジがいた。
そして何より顔つきがまるで違う。
仏頂面で私を睨む鋭い視線は相変わらずだったが、
その目はまるで――――
『……あらゆる感情が溢れているみたいに見える。かな? ただ憎しみも悩みも悲しみもごちゃ混ぜになって正直恐い。何かどれかでも欠ければ、そこから決壊しそうな危うい雰囲気があるね……』
憎悪も苦悩も慟哭も
何となくだけど感じる事が出来る。
それと家族がどうこう言っていた意味は?
それでも私と近い感情は読み取れる。
油断なく私を捉えてる視線の中に、ある感情が垣間見える。
『これって……? いいや、考えても仕方ない。なら私も切り替えよう。今までのお遊びじゃなくて、本当の意味でのこれからの戦いの意義を』
私は両手のスキルを解除する。
ここからは相手に合わせる戦いじゃなくて私との戦いになるからだ。
「どうした。もう得意の真似事は止めたのか?」
と、非武装になった私を見てアマジが声を掛けてくる。
「いいや、違うよ。あなたも本気っぽいから、私も付き合おうと思って。でもそれも真似事って言えばそうかもしれないけどね」
「……だったら武器はどうした?お前は今まで俺が戦った奴らよりも、圧倒的な強さを見せてくれるんだろう。なら武装を解く意味はないはずだが」
「だから付き合うって言ってるじゃない。私もあなたみたいに何かの決意を持って戦うつもりだから。だから普通にかかってきなよ。魔法はその都度使うから」
「……決意?それはお前を跪かせ――――」
「それは違うね。っていうか途中から変わったって感じかな? 多分私と戦って思い違いを正して、それで当初と目的を変えたって感じだね。多分だけど」
「思い違いだと?それと目的とはなんだ」
「あのさ、さすがにあなたの考えが全て分かるわけじゃないよ。だけど思い違いの方は私の強さだね。目的ってのは私を利用して自分を高めるとか、踏み台にするとかそんな感じ、かな?」
私は雰囲気の変わったアマジを見てそう告げる。
これも予想だけど、この男は私と同じように相手の強さを目の当たりにして、何かの切っ掛けにするか、それとも利用するかを考えている。
それは今の私と同じように
似た目をしていると思うから。
だから私はアマジにそう告げた。
遠からず、近からずって感じだとは思うけど。
でもそういった何かを決意をしている目なのは確かだ。
「……お前はいったい何者なのだ?俺は冒険者が憎い。そしてこの国にも必要ないと思っている。だがお前は俺の知っている冒険者とは違う。そこの名ばかりの元冒険者の領主とも違う」
と広場脇のナジメを鋭い視線で睨みつける。
そこには強い負の感情が読み取れる。
「うん、それでどう違うの?私は」
「言動も行動も、お前は何処か今までの冒険者とは違う。言葉と行動の節々に確固たる自信や責任を感じる。不思議な何かをお前は持っている。俺の勝手な推測だがな」
「それって、単純に色んな冒険者を見てきてないからじゃない?あなたのお父さんやゴマチは冒険者が好きなんだし」
多分この男は今までの何かを切っ掛けに、
それが全てだと決めつけているんだろう。
見てるようで見てなかった。
知ってるようで、その先を知ろうともしなかった。
そんな自惚れが視野や思考を狭めてきたのだろう。
まるでさっきまでの私のように。
「そうかもしれぬ。だがそれでも俺は冒険者を憎み続ける。そして俺は証明する。Aランクを倒すお前を倒して強さと名声を手に入れる。その為の人柱になってもらう」
アマジはそう言って腰を落とす。
そろそろおしゃべりも終いの頃合いだろうと。
「ほら、やっぱりそうじゃない。私を利用するってのは気にくわないけど、それで冒険者への憎しみとゴマチへの愛情が戻ればいいよ。だったら私を利用しても構わない――」
「………………」
私もそれに合わせて意識を切り替え臨戦態勢を取る。
そして最後の一言をアマジに向けて告げる。
「――構わない。けど、あなたの思う通りにはいかない。だってこの戦いの主導権は最初から私の物だから。だから私が思い通りにしてみせるっ!」
「それこそお前の思う通りにさせるわけにはいかんっ!俺にはあらゆる冒険者を憎む権利があるからだっ!!」
◆◆◆◆
※ここからはアマジの過去のお話になります。
本編の約10年前のお話です。
「どうだ?ゴマチの容体は」
俺は馬車に揺られる妻のイータの腕で眠る愛娘のゴマチを見る。
「ごほ、まだ熱はあるけど、この子は強いからきっと街まで大丈夫よ」
と、ゴマチの額に触れてから微笑み、軽くその髪を撫でる。
一人娘のゴマチ見るイータからは母性と愛しさが溢れていた。
そんな妻とゴマチを俺も優しく撫でる。
二人とも俺の大切な宝物だからだ。
「そうか。夕刻までに次の街に着く予定だ。そうそればお前も休めるしゴマチの薬も手に入る。それまでの辛抱だ」
俺は一人娘を抱くイータと腕の中のゴマチを見てそう告げる。
ただゴマチを抱き撫でるイータの手足は、1歳のゴマチと比べてもそれ程変わらないように見える。
それぐらい細々としていて色艶もなかった。
その一人娘のゴマチを生んでからは特にその進行が早かった。
生まれつきの小さて病弱な体。
それを酷使して生まれた子供がゴマチだった。
その一人娘もイータに似て体調を崩すことが多かった。
「………………」
「ごほごほ、ねぇあなた。ここの街道はまだ安全なんでしょ?」
「ああ、確実ではないが、ここら辺りは魔物が逃げてきたとの情報はない。それでも森近くを走るから油断はできないがな」
と、咳き込むイータの背中を撫でてそう答える。
今俺たちは冒険者4名を護衛に付けて東の街コムケを目指している。
妻のイータの言う安全とは、俺たちが住んでいた街にある情報が入ってきた事から始まっている。
「ごほ、それにしても、ドラゴンを退治するからって辺り構わず焼き払う冒険者ってあり得ないわね?」
「ああ、その通りだ。いくらドラゴンを討伐するからって、無差別に自然を破壊すれば魔物が逃げるのも当然だ」
それは10日前ほどの事。
俺たちの住む小さな町にドラゴン討伐の情報が入ってきた。
それはドラゴン討伐の影響で、魔物の潜む森や山が派手に荒らされ、その結果魔物がここらの地域に散って居場所を探して多数出没しているとのこと。
その襲来を恐れて俺たち家族は、今は腕利きの冒険者を雇って、親父の住む街に避難する道中の馬車の中だった。
何でもドラゴンを討伐したのは小さな女の魔法使いとの話だったが。
正直それを聞いて、
『………………』
そんな中途半端な強さのせいで被害を広げるなとも思った。
そのせいで俺たちだけでなく、町の人々も止む無く避難せざるを得ない状況に陥ったのだから。
※
そうして護衛を引き連れて馬車に揺られること数刻。
それは突然やってきた。
忘れもしないあの悪夢の出来事が。
「く、数が多すぎるっ!回りこまれるな!」
「お、おうっ!だが何だってここまで来てるんだっ?」
「あ、ぐあっ!足を射抜かれたっ!奴ら槍のほかに弓もっ!」
「ダ、ダメだこれ以上は俺たちがっ!ぐふっ!?」
『『グギャギャッ!』』
「う、御者がやられた、に、逃げろっ!」
「うわぁ――――――っ!!!!」
『『グギャギャッ!』』
『『グギャギャッ!』』
ゴガンッ!
ゴガンッ!
外から護衛の冒険者の怒号と悲鳴が聞こえてくる。
それと馬車の外側から何かを叩きつける音も。
そして、
「あ、あなたっ!馬車がっ!!」
馬車が大きく揺れ猛スピードで走り出す。
「あ、ああっ!馬が恐怖で走り出したんだっ!俺は馬を静めてくるっ!だからしっかり捕まっているんだっ!」
俺は激しく揺れ動く中、御者台に向かうため腰を上げる。
この揺れ具合だと街道を外れて走っている。
ガゴンッ
グラッ
「っ!?」
「きゃあっ!!」
ズガガガガガッ――――
そうして俺たち家族を乗せた馬車は
街に到着する前に魔物に襲われたのだった。
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