剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編

蝶になりたいマヤメ

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「で、マヤメはどうやってウトヤの森まで来たの? コムケの街を出たのは昨日だったんでしょう? 見たところ馬とかいなかったし」

「ん?」

 今私は、澄香の魔法壁に乗せてもらい、シクロ湿原を目指し空を移動している。
 そしてその真下には、保護色の水槽に入ったキュートードも着いてきている。


『ん、本当に凄い。澄香の魔法…… 一体どうやって浮いてるの? なぜここまで安定しているの? それと色や形や大きさをこんなに自在に変化できなんて。そしてもの凄く頑丈』

 しゃがみ込んで力を入れてナイフで刺してみる。

 ガキィ!

『んっ! ダメ。全く傷がつかない。本当に凄い魔法』

 どんなに固い鉱物だって、破壊できないだけで少しは傷がつく。
 それが魔法だからと言っても、そこに存在するのならばそれが道理だ。

『ん? もしかして、すぐさま修復してる?』

 だったら納得がいく。
 傷がついた瞬間に、高速で直しているのであれば。

『なら今度は全力でっ!』

 ククリナイフを両手で持ち、大きく振りかぶり魔法壁に突き降ろす。

 ブンッ!
 ムギュ

「んっ? 柔らかい? きゃっ!」

 ところが、突き刺した瞬間にナイフがめり込み、体ごと跳ね返され、尻餅をつく。


「ん、痛いっ! なんで?」

「あのさ、さっきから何やってるの?」

 座り込み驚く私を、澄香が不思議そうに覗き込んでいる。

「ん、ちょっとした実験」

 何事もなかったようにスッと立ち上がり澄香に答える。

「……まぁ、色んな事に興味を持つのは良い事だけど。あまり物騒な事は――――」
「ん、なんで急に柔らかくなった? さっき硬かった」

 澄香の言葉を遮って聞いてみる。
 あれ? 少しだけ呆れてる?


「ああそれは。マヤメが攻撃をしたところだけ、物を反発する効果に切り替えたんだよ」
「ん? 反発?」
「そう。その言葉の通り実態があるなら跳ね返せる魔法だよ」
「ん? だって魔法の見た目もそんな素振りもなかったっ!」

 自分がナイフを刺した箇所と周辺を見る。
 何の変化も違和感も見付けられない。
 一面桃色の同じ足場にしか見えない。


「そりゃそうだよ。そんな簡単に見破られたら、魔法としても能力としても致命的だもん。私にしか見えないし、操作も私だけだよ」

「ん…………」

 凄い。
 本当に凄い。 

 平然と澄香は説明しているけど、魔法としての常識を逸脱している。
 見た事も聞いた事もない魔法を、完全に自分の物にしている。


『これが英雄? これが澄香』

 この人が強いのは、今まで得た情報で知っている。
 だが目の当たりにすると、その驚異的な力に更に思い知らされる。


『マヤがいた組織でも強いのはたくさんいた。けど、実行部隊のナンバー持ちシスターズよりは強い。もしかしたら一桁ナンバーよりも……』 

 相性の問題もあるが、同等かそれ以上だと感じる。
 一桁台のシスターズとも互角以上に渡り合えると。

『ん、ただ、ゼロナンバーのタチアカと3姉妹は厳しい。澄香の全てを見た訳じゃないけど、あの4人は組織でも一級品の特殊なアイテムを装備していると聞いた。でも――――』

 それでも信じたい。
 蝶の英雄さまが、この世界の英雄さまになるんだと。
 みんなを導く道標に足りえる存在なんだと。

 あのタチアカには無いものを感じてるし、そう信じてる。
 だからあの人の周りには大勢が集まってくるんだと。

 まるで野原に咲く花に集まる蝶のように、その魅力に吸い寄せられるんだと。
 澄香と言う、不思議で眩しい存在に惹かれるんだと。
  

『ん、だからマヤもその魅力に惹き付けられた蝶かも。蝶は澄香なのに、クス』

 なんて一人勝手に悩み、笑みを浮かべていると、

 く~ きゅるる。

「ん?」

 空腹を知らせる可愛い音で我に返る。


「あ、あれれ? マヤメお腹減ったの?」

 その音は明らかに隣から聞こえてきたが、当の本人は誤魔化すように私を見る。
 どうやらお腹が鳴ったのを知られたくないみたいだ。


「ん、そうかも」
「あ、ああ、そうなんだね。マヤメは食べ物持ってきてる? なければ……」
「持ってる。おにぎり」
 
 昨日おばちゃんに貰った残りを取り出して見せる。

「って、それ何処から出したの?」
「ん? パンツの中。保存がきく」
「ま、まぁ、いいや。なら私のもわけてあげるからお昼にしようか?」
「ん」

 テーブルを取り出し、いそいそと準備をする。
 見る間に湯気の立つ、美味しそうな料理が並べられていく。


「それじゃマヤメはそっちに座って、好きなだけ食べていいからね? お腹なるほど減ってるんだもんね? お替りもあるから遠慮しないでね?」

「ん、ありがとう」

 最後まで私のせいにして、素知らぬ顔で準備を終える澄香。
 だから私も知らない振りして席に着く。
 
 こんな普通の人が英雄さま。
 でも多くの人に慕われている人間。

 パク

「ん、あたたかくて美味しい」

 暖かい。
 口の中だけではなく、何かこう……

「そう? まだまだあるから気にしないで食べて。一昨日かなり買い込んできたから」
「ん、これも美味しい………… あたたかい」

 体の中から暖かくなる。
 ポカポカと心の中まで満たされる。

「まぁ、出来たてを買ってきたからね? 後こっちは飲み物ね」
「ん、ありがとう」

 なんだろう?

 澄香の傍にいると安心する。気持ちが楽になる。
 自分好みの温度に合わせてくれる。

 きっとそれが理由。

 あそこ組織になかった物を与えてくれる不思議な存在。
 忘れかけていた温もりを思い出させてくれる貴重な存在。

 だから私も蝶になろう。

 いつ終わるとも知れない不安定な命だけど、それまでは澄香の周りを飛び回ると決めた。


――――


 一方その頃、
 スミカたちより先にノトリの街に着いている、フーナとメドの二人は。


「ああ~、さすがにお腹一杯だね~っ! ふぅっ!」

 膨らんだお腹をポンポン叩き、一息吐く。

 そんな私とメドは、あらかた屋台や露店を回り、しこたまお土産を買い込み、お腹が破裂しそうな程食べ歩き、今は広場の脇のベンチに座って寛いでいる。

 あ、お腹がヤバいのは私だけで、メドは美味しそうに食べる私を見ていただけだった。
 それでも目を細めて、頬が緩んでいる様子を見ると、メドなりに楽しんでいたようだ。

 あの憎き幼女の敵の『蝶』の存在を忘れるぐらいに。

 
「ん、そう言えばフーナさま気付いた?」
「な~に? けぷ」

 メドの整った横顔に見蕩れてると、ふとそんな事を聞かれる。 
 その目は屋台が多く並ぶ、広場に向けられていた。

「ん、フーナさま行儀悪い」
「あ、ごめんごめんっ! で、何の話?」

 小さくゲップが出たのを怒られながら、話の先を促す。

「ん、看板や暖簾のマークが変わってる」
「マーク?」

 メドの視線の先を追いながら、あちこちに立っている看板を見てみる。

「そうかな? いつものカエルの絵だよね? この街の特産品の」
「ん、もっとよく見て」
「うん、わかった………… あれ? ちょっと違う?」

 確かに前に来た時とは、書かれている絵の形が変わっている。
 いや、変わったと言うか、元々の絵に付け足された感じだ。


「ん、前はキュートードを模した影の絵だった。けど今は」 
「何あれ? なんでカエルの背中に羽根が生えてるの?」

 カエルのシルエットの両脇に、どこかで見たような羽根が足されている。 

「へ~、あんな魔物もいるんだ。新種のカエルかなぁ?」

 若干、気持ち悪いなと思いながら、繁々と眺める。

「ん、そんな魔物見た事ない。それにあの羽根は蝶にそっくり」
「えっ? そう、だね…… 何かカエルと関係あるのかな」
「ん、もしかしたら蝶の冒険者と関係ある。かも?」
「へっ!?」
「そして意外と近くにいる。かも?」
「えっ!?」
「なんて冗談。そんな偶然あるわけない」

 驚く私の手を握ってニコと微笑む。

「あはは、そうだよね~っ! そんな偶然あるわけないもんね~っ! でももし出会ったらわたしが成敗してあげるからねっ! メドやこの世界の幼女たちの為にっ!」  

「ん、フーナさまなら出来る」

 コクと頷いて、励ましてくれるメドだったけど、その目はあの看板を見続けていた。
  
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