剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
457 / 589
第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編

理想の魔法少女?

しおりを挟む



「いや~、やっぱりキューちゃんたちは華やかで可愛かったなぁ~」
『ケロ』

 さっきまで訪れていたシクロ湿原の光景を思い出し、一人その余韻に浸る。

 広大な水面に咲き乱れる、色とりどりの花々。
 近づくとその花がパッと開き、私たちと連れてきたキューちゃんを歓迎してくれた。
 そして仲間を湿原に戻すと、喜びを表すかのように、更に華やかに咲いた。

 桃ちゃんも頭から飛び降りて、その輪の中に入って行った。
 もう帰って来ないのかと心配したけど、今はまた頭の上に戻ってきてくれた。

 桃ちゃんはお別れをみんなに伝えたんだと思う。
 そうは言っても、10日も滞在するからまた明日にでも来るんだけど。


「ん、澄香は相変わらずキュートード好き。なんで?」

 次の目的地のノトリの街に向かう道中。
 メヤが桃ちゃんを撫でながら、そんな当たり前の事を聞いてくる。

「可愛いから」
「ん」
「…………それだけ? もっと聞きたい事ないの? いくらでも出て来るよ?」
「ん、マヤも可愛いに同意。だから大丈夫」
「………………」

 なんか会話が続かない。
 別にギスギスしてるわけではないんだけど、弾まない。

「あ、そうだ。ちょっと聞きたい事あるんだけどいい?」
「ん、覚えてる事なら答える」
「あのさ、キュートードに美味しい日があるって知ってる?」

 ルーギルの依頼にあった『味が乗ってて一番美味しい日』について聞いてみる。

「ん、ない」
「ない?」
「キュートードはいつでも美味しい」
「あれ? そうなんだ……」

 あの情報はもしかしてデマなのかな?
 なんかそんな気がする。

「ん、誰に聞いた?」
「コムケの街のギルド長に聞いたんだよ。今日から10日後にそんな日があるって」
「ん、マヤ知らない。でも一応街に着いたら聞く。その方が間違いないから」
「あ、そうだよね? その方が確実っぽいや」

 マヤメの返答を聞いて、そうする事に決めた。
 そもそもそんな日があったならば、料理人さんが知らないわけないし。


「ん、でも澄香。キュートード好きなのに食べるの平気なの?」

 私と桃ちゃんを見比べて、またもや当然のことを聞いてくる。

「平気だよ。もの凄く美味しいし」
「ん、それも納得」
「…………それだけ? もっとないの? 愛玩動物を食べて残酷だとか」
「ん、だって可愛いけど魔物。だからおかしくない」
「………………」

 まぁ、言ってる事は間違ってない。
 けど、なんか感情が希薄って言うか全体的に反応が鈍い。


「あ、でも倒しちゃうのは嫌だよ? 目の前でされるのも一緒。鳥や動物も可愛いけど、さすがに愛嬌があるのは倒したくないなぁ? 調理済で食卓に出るのとはわけが違うしね?」

 桃ちゃんを抱いて、マヤメにはそう説明する。

「ん? 澄香は変わってる…… まるでマスターみた――――」
「おっ! そろそろ街が見えて来たよ。ここから先は歩いていくから準備して」
「ん」

 遠目に、キュートードの料理で有名なノトリの街が見えてきた。
 
 一応ここがルーギルの依頼の目的地。
 後は10日後に美味しくなるとされるキュートードのフルコースを買うだけだ。

 マヤメと桃ちゃんと3人で、ノトリの街へ入る為に正門に並ぶ。

「うわ、結構人いるんだね?」
「ん」

 私たちの前には20人ぐらいの人たちが並んでいた。
 そこでは門兵らしき2人の男性が入街者をさばいていた。

「お、やっと中に入れるよ」
「ん」
『ケロロ~』

 数十分後、ようやく順番が回ってきたけど、

「お? 旅の物か?…… って、なんで嬢ちゃんは頭にっ!」
「あっ! あんたはカエルの英雄さまっ!」 

 前回いなかった、若い男性は私の頭の上を見ながら驚き、
 もう一人の中年男性は、指を差しおかしなことを叫んでいた。
 その門兵さんは数回会っているいつもの人だった。


「いや、それはもういいから。私たちは街に入っていいんでしょ? 桃ちゃんは従魔の腕輪してるし、マヤメは冒険者だから。マヤメも見せて?」

「ん」

 いつもの門兵さんじゃなくて、若い門兵さんに声を掛ける。
 どうやら私の事知らないみたいだし。
 もう一人の方に騒ぎ立てられて、また注目されるのも嫌だし。


「そ、そうでしたか、あなたが英雄さまなんですねっ! もちろん街へは無条件で入っていいですよっ! なんなら街の中までご一緒しますよっ!」

「いや、もう何回も来てるから気を使わなくていいよ。後ろも並んでいるし」

 背後を気にしながら、門兵さんの好意をやんわりと断る。
 まだ10数人は並んでいるし、あまり時間を掛けたくないから。


「なら街のみんなに伝えてきますねっ! カエルの英雄さまがその名の通りに、キュートードを連れて来訪して下さったってっ!」

「へ? ちょっと待っ――――」

「おうっ! ここは俺に任せておけっ!」
「はいっ! それじゃ先輩行ってきますっ!」

「いや、だから――――」

「みんな――――っ! この街の英雄さまの凱旋だっ! キュートードと俺たちを救ってくれた、カエルの英雄さまが来てくれたぞ――――っ!」 

 私の制止の言葉も聞かずに、若い門兵さんは叫びながら街の中へと消えて行ってしまった。


「く~っ! せっかく羽根休みも兼ねて来たのにっ! これじゃ台無しだよっ!」
「ん、蝶だけに羽根休み。クス」
「そこうるさいっ!」

 そんなこんなで騒がしくも、依頼の目的地の街の中へと入って行った。


――――


 ちょうどその頃。
 街へ一足先に着いていた、フーナとその仲間のメドは……


「ん~、お腹も一杯になったし、そろそろ宿に帰ってお昼寝しようか? その後はわたしと一緒にお風呂に入ろうね? たまにはわたしが洗ってあげるからさ。 こう、お互いに泡を塗りあって、体と体を密着させて――――」

「ん、フーナさま。あそこ見て? 人だかりが出来てる」

 ベンチの上でくねくねと泡々タイムの説明をしていると、メドが何かを見付けて指さす。
 その方向には街の人たち、特にお店を経営している人たちが多かった。
 私が並んだたくさんのお店の人たちも集まっている。


「え? 本当だ。誰か有名人でも来たのかな?」
「ん、そうかも」

 よく見ると、誰かの周りに集まってワイワイと騒いでいる。
 節々に、歓喜やお礼の言葉が漏れてきたからわかる。


「ん、何か気になる」
「あ、見に行くの?」

 メドはベンチから立ち上がり、人だかりの後ろから宙に浮き、中を覗き込む。
 私もその後に続き、下でメドが降りてくるのを待つ。

 スタッ

「ん…………」
「で、どうだったの? やっぱり有名人でもいたの? わたし的には少女がいいんだけど。魔法少女の衣装が似合いそうな美少女だと嬉しいかも」

 地面にゆっくりと降りてきたメドに尋ねる。
 
「ん、美少女に分類される少女が二人いた」
「え? マジっ!?」
「ん、まじ。でも――――」
「わたしも見るっ!」

 メドの手を繋ぎ、フライの魔法で浮いて、二人で中を覗き込む。


「うわっ! 本当だっ! 二人とも美少女だっ! しかも一人はメドにそっくりの美少女だよっ! で、もう一人の黒のゴスロリ衣装の方は……」

 最初に目に入ったのは、メドに似た美少女だった。
 銀色の髪に白い肌、彫刻のような整った顔立ち。
 まるで大人の年齢まで変身したメドを見ているみたいだ。

 それともう一人の少女もヤバい。

 長く黒い漆黒の髪と、少し切れ長な黒曜石のような瞳。
 まるで処女雪のような触れるのも躊躇う真っ白の肌。
 全体的に幼くも見えるが、どこか小悪魔的で妖艶な雰囲気を醸し出している。
 
 間違いなくメドの言う通りの美少女だった。
 しかも『超』が付く程の極上の少女たちであった。

 夢にまで見た理想の魔法少女にぴったりだ。
 これで衣装を着れば間違いなく最高の物になる。
 黒の少女の方はある意味そのままでもいける。

「ん、フーナさま、よく見て。あの黒ドレスの方の背中」
「うへへ~、じゅるる。え? わ、わかった」

 自然と流れ出た涎を拭き、メドの言う通りに見てみる。

 そこには――――


「羽根生えてるっ! しかも…… 蝶の羽根じゃんっ!?」

 人混みと黒髪に隠れて見えずらいが、時折ヒョコと黒い羽根が見える。

「ん、多分あの人が蝶の人。少女たちを仲間にして、小さい子たちを無理やり働かせてる悪い人間。フーナさまの嫌いな人種」

 真摯な表情になり、幾分目つきが変わったメド。
 ジト目でわかりずらいけど、ちょとだけ鋭く見える。

「マ、マジかっ!」
「ん、恐らくそう。あんな服装の人見た事ない。それと少女も連れている」
「よ、よしっ! ならわたしがコテンパンに――――」
「ん、今はダメ」
「なんでっ!」

 腕まくりをし、早速退治に向かう私を止めるメド。
 因みに萌え袖のせいで腕は見えない。

「あの人たち、街の人たちに慕われている。だから街の中はダメ」
「あ、わたしが悪者になるから?」
「ん、そう。だから街の外に出てからがいい」
「わ、わかった…… ちょっと色々と悔しいけど」
「ん」
 
 こうして私とメドは、二人の少女が街の外に出るのを待つことにした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...