剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編

表裏一体と煩悩

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「どれどれ、もっと詳しい詳細をっと」

 レベルアップによって、新たに増えた項目を確認してみる。




 《表裏一体モード》

 表と裏の世界の、両方の理を併せ持つ姿になる。
 そこに存在はするが、第三者には触れることも認識することもできない。
 自身から第三者への接触は可能。

 ※使用中は装備の色が変化し、一定時間ごとに薄くなる。
  解除するには装備が透明になるか、羽根を2秒纏って解除する。
  一度目の前の――――
              | 
              |




「…………ん? 薄くなる? それと透明って?―――― はっ!?」

 怪しげな単語を見付け、恐る恐る透明壁に全身を映す。
 そしてその意味を理解し、一瞬固まる。

 ファサッ!

「って、なんでわざわざ透明になるのっ!?」

 慌ててフーナを確認し、全身を羽根で覆い隠す。
 胸元と足元から薄っすらと、装備が透明になり始めてたから。


『あっぶなぁーっ! 危うくこの変態の前でセミヌードになるところだったよっ!』

 羽根の中に隠れながら、ホッと胸を撫で下ろす。
 フーナがまだ夢の中で助かったと安堵する。

 まさかものの数秒で、表裏一体が消えるとは思っていなかった。


『なんでこんなに時間が短いのさっ! 強力なやつだと期待したのに使いどころが難しいんだよっ! それと装備が透明になるっておかしいよっ!』

 再度メニュー画面を見ながら、心の中で愚痴を吐く。
 使う前にチラ見した時は、かなり期待できるものだと楽しみだったのに……

 仮に、この能力に時間制限がなかったとしたら、あまりにも理不尽過ぎるけどね。
 相手には認識されず、且つ、触れる事も出来ないなんて。


「だから制限があるって事かぁ、こんなの使ったら一方的過ぎて戦いにならないからね。『幻夢』もそうだけど、増えた能力が強力過ぎない? これもフーナの影響? おっ! いつもの衣装に戻った」

 黒アゲハ蝶の装備に戻り、そろそろ目を覚ますはずのフーナを横目で見る。

 恐らくフーナも私と同じ世界の住人だ。
 そんな存在と干渉したことで、強力なチカラが宿ったのだと推測する。

 
「それか、もしかしたら何かの前兆とか? 今までは都合よく私の望みに近い能力が増えていたからね。なら今回もそうだったとしたら? この能力を使う程の、強敵が現れるのだとしたら?」

 決してあり得ない事ではない。

 私やフーナのような存在がいるって事は、他にもいる可能性は高い。 
 現に怪しい魔物とも戦っているし、それらしい痕跡もあった。


「正直、好みの能力じゃないけど、そんな事言っても私自身が似たようなものだしね? ただ極力は…… ん? なんだ説明の続きあるじゃん」

 口ではそう言いながら、せっかく覚えたものだと諦めきれずに、メニュー画面を眺めていると、更に詳細が続いていた事に気付く。


「え~と、なになに? 『一度目の前の相手に、装備の下の装備を晒すことが第一の条件』 って…… 何これ?」

 装備の下の装備ってなに?

「あ、まだ続きがあるんだ。 で、『その晒した時間の分だけ《表裏一体》モードが継続する』」 

 晒した時間?
 そんなことしたっけ?

「ん? 意味が分からないんだけど?」

 何処か要領を得ない説明を読み終わり、無数の疑問符が浮かぶ。


「ん~、ちょっと整理しようか。まず注視しないといけないのは、第一条件の『目の前の相手』に『装備の下の装備』を『晒した時間』が『《表裏一体》』の使用時間って事だよね? え~と――」

 単語ごとに強調して、考えてみる。


 『目の前の相手』

 この場合は言わずもがな『フーナ』の事だろう。
 だからさっきまで使えたのだとわかる。


 『装備の下の装備』

「………………」
 
 これがわからない。だから先に進もう。次は、


 『晒した時間』と『《表裏一体》』
 
 これは簡単。

 晒した時間=《表裏一体》が使える時間なだけだから。


 そうなると『装備の下の装備』って単語が一番重要なものだとわかる。
 これを晒す時間が、そのまま表裏一体モードの制限時間なのだから。


「はぁ~、もう認めよう。このままとぼけてても仕方ないしね……」

 盛大に溜息を吐き、薄目でフーナを睨む。
 こんなおかしな条件になったであろう、その当事者に恨みを込めて。


 『装備の下の装備』

 これはその意味の通り、装備の下に着ているもの。
 要は下着の事で、それを晒している時間がチャージタイムって事だ。
 

 確かにフーナは私の下着を盗み見していた。
 それがチャージタイムと認識されたのだろう。

 だから《表裏一体モード》になった時間が短かったのだ。
 覗かれた時間は恐らく数秒だったから。

 分かってしまえば簡単。
 条件を満たせば、いつでも何処でもモードチェンジが可能だ。

 だけど、それって――――


「な、なに? 敵の目の前で下着を見せながら戦えって言うのっ!? 魔物ならまだしも、対人戦だった時はどうすんのっ!」

 これって絶対フーナのせいだよね?
 こんなとんでもない存在と戦ったおかげで、おかしな条件が付いたのって。


「う~、かなり納得できないけど、それはフーナを起こしてから文句言ってやろう。これはご飯をご馳走だけじゃ足らないな。数週間ノトリの街で働かせようか?」

 そろそろ目を覚ます時間なので、覚醒させるためにフーナに近寄る。
 そんなフーナはだらしない顔で「でゅふふ~っ! 次は――直接~」とか言っていた。 


「あのさ、どんな夢見てたのかは知らないけど、そのだらしない顔は誰にも見せない方がいいよ? フーナが好きな幼女だけじゃなく、大人だって引くからね」

 若干、気持ち悪いなと思いながら、ポンと肩に手を置き、解除する。


「へ?」
「おはよ」

 間抜けな顔のフーナに、軽く手を上げ挨拶する。

「な、なんでお姉さんパンツ履いてんのぉっ!?」
「はあ?」

 まだ寝ぼけているようで、全身を見ながら良くわからない事を叫びだす。

「そりゃ履いてるでしょ? あなたじゃあるまいし」
「だって、さっきわたしが脱がしたもんっ!」
「脱がした? はっ! フーナ、まさかあなたは――――」

 ここでようやく理解する。
 フーナがなんの幻夢を見ていたのか。

 こいつは夢をいいことに、私の下着を脱がして何かをしてたらしい。
 しかも戦闘中だったというのに、勝敗よりも、煩悩が勝ってしまったらしい。

 って、それよりも不可解なことが…… 


『あれ? 幻夢の効果って、その時の深層にある欲を見せるんだよね? なんで私の下着脱がしてんの? 普通は対戦相手をボコボコにするよね?』

 恐らく私でも、強敵を前にしたら、相手を蹂躙する幻夢を見ると思う。
 いや、一般的な思考の持ち主ならそれが当たり前。

 それか本心では、私を倒すことが目的じゃなかった可能性もある。
 が、それでも今の状況で、私を辱めるような幻夢を見たって事は……

 
「うっ」
「?」

 想像しただけで、首筋やら背筋に寒気が走る。
 勝つことよりも、私の体を蹂躙したかったことが、フーナの望みだった事実に。


「あ、あのぉ、お姉さん。もしかしてわたしがさっきした体験って?」

 私の態度と自分の認識に違和感を感じたのだろう。
 恐る恐ると言った様子で声をかけてくる。


「あれは全部まぼろしだよ。私の魔法で見せてた夢だから」
「え? い、いつからっ!」
「ん~、フーナが地面に叩きつけられ後で、私に突っ込んできたあたりだけど」

 顎に人差し指を当て、そう答える。

「ふぁっ! そ、それじゃ、お姉さんのツルツルのお腹やお尻の感触や、この手の平と舌に残るちっぱいの感触や味も、全部夢だったって言うのっ!? ううう……」

 真実を聞かされたフーナは、発狂したように叫び出した後で、下を向いてしまった。

 その様子を見ると、かなりショックだったのはわかる。けど、
 

「そうだよ、たった今そう説明したでしょっ! ってか、あんた、夢の中で私に何してんのっ! 好き勝手にも限度があるでしょっ! 感触もヤバいけど、味ってどういう事っ!?」

 トンデモ発言をしたフーナに詰め寄る。
 いくら夢の中とはいえ、そこまで蹂躙されていたとは思いもよらなかった。


「ねぇっ! 聞いてるの?」
「ううう~」

 下を向いたまま、ブツブツと何かを呟いているフーナに詰問する。 


「うが――――っ! もう許せない――――っ!!」
「なんだよっ! 怒りたいのはこっちだからねっ!」

 バッと顔を上げ、両拳を空に掲げて、更に怒りを露にするフーナ。
 そんなフーナに負けじと、私も拳を握り、怒鳴り返す。


「ううう~、『ひーる』」
「え? ヒールっ!? って回復かっ!」
「そして、『ぶーすとあっぷ』」 
「はっ! ブースト?…… あっ! これはヤバいっ!」

 タンッ!

 すぐさま後ろに飛びのき、透明壁を前面に展開する。
 フーナはダメージを回復させたどころか、身体能力までアップさせたからだ。


「それはズルいってっ! 今更、回復するとか能力を上げるのはっ!」

 最悪だ。
 魔法使いなのだから、それを想定していなければならなかった。

 ただこの世界では魔法自体が稀で、攻撃以外のものは殆ど見た事がなかった。
 それと私の持つフーナのイメージが、回復と補助系の魔法に繋がらなかった。


「ん、澄香。何があったの?」
「あ、マヤメっ!」
 
 そんな状況で、メドと戦っていた筈の、マヤメが合流した。
 
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