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30 声
……嘘だ。
嘘だ、こんなの。
隊長が……ルイス隊長が…………
胸を、刺された。
倒れたまま、動かない。
血が、真っ赤な鮮血が、どんどん広がってゆく。
どうして、こうなった?
どうして、隊長が、みんなが……
……私のせいだ。
私のせいで、大切な人たちが、みんな……
死……
「……いやぁぁぁぁああああああああっ!!」
──カッ!!
叫ぶのと同時に。
何かが、光ったような気がした。
「な、なんだ?!」
ジェイドの声に、閉じていた瞼を開ける。
すると、真夜中だというのに、目の前が眩いほどの光に溢れていた。
そしてその光は、私の身体から放たれていて……
これは……一体、なに……?
「まずい、"精霊の暴走"だ! この女、制御できないのか?!」
そう言ってジェイドは、私の身体を突き飛ばす。
地面に転がされ、白いワンピースの裾が裂けた。
起き上がりながら、ゆっくりと自分の手のひらを──白い光を放つ身体を眺めるが……
自分の身に、何起きているのかまったくわからなかった。
………………いや、わからなくていいか。
ええと、なんだっけ。
あぁ、そうだ。
消さなきゃ。
どこもかしこも、血、血、血。
私の大嫌いな、赤い色だらけだ。
みんな、みんな、みんな。
綺麗にしなきゃ。
悲しみ。
苦しみ。
怒り。
それも全部。
真っ赤な血と共に、消してしまわなくちゃ。
「──精霊ヨ……」
自然と、口が動く。
自分の身体が、自分のものじゃないような、不思議な感覚に襲われる。
そして、光を放っている右手で……
私は静かに、宙に『署名』をした。
「──消セ」
──刹那。
森中を覆い尽くすほどの光が、私の手から放たれた。
直視すれば失明してしまいそうなほどの、強烈な光──
それに、隊長やみんなが包まれ、ジェイドたちが絶叫する。
目では見えないのに、手に取るようにわかる。
みんなが、まだ生きていること。
その傷が、みるみる癒されていくことが……
どうやら、私の治癒魔法の能力が、最大限に発揮されているらしい。
「よかった……」
なんだ……やればできるじゃん、私。
このまま、みんなの傷を癒して、助けよう。
そんなことを、ぼんやりとした意識の隅で思う。
……しかし。
光の中のジェイドと術師は……
苦しげな声で叫んでいて。
「ぐぁぁああああああっ!!」
「焼ける……皮膚が……あ、あぁ……!」
光を介し、ジェイドたちの状態が伝わってくる。
あの二人は、ほとんど傷を負っていない。
だから、私の治癒魔法を浴びても、何も起こらないはずなのに。
彼らの細胞が、組織が、再生と破壊とを繰り返し……
……死んでいくのが、わかる。
これは……どういうこと?
それじゃあ、このまま再生を進めれば、隊長たちも……
彼らと、同じ目に遭うの……?
「いや……待って……!」
草が、樹が、花が。
森中の生き物たちが。
「だめ……そんな、私……」
光に包まれたすべての生物が、死に向かっていくのがわかる。
「お願い、止まって! このままじゃ、みんなを……!」
そう叫び、自分の身体をぎゅっと抱き締める。
けれど、身体から放たれる光は、ちっとも止まってくれなくて。
なんで……どうして?
嫌……このままじゃ、私…………
「みんなを…………殺しちゃう……っ」
──ふと。
光の中で、誰かが、泣いている私を後ろから抱き締めた。
そして、私の右手に自分のを重ねると……
耳元で優しく、囁いた。
「──君、やっぱり下手だね。
貸してごらん?
あとは僕がやってあげる」
それは、もう二度と聞けないはずの……
大好きなで、意地悪な、あの声だった。
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