13 / 43
第8話の1 ねこねここねこ
しおりを挟む
ギィ、ギィ
さあ始まるよ。
見世物小屋が始まるよ。
かわいい動物はお好きかい?
お代は見てのお帰り
喝采、喝采
「おやおや?」
仮面の男が素っ頓狂な声をあげた。
川べりを荷馬車で移動している時のことであった。
広く、その上流れのはやい川の真ん中あたりに小さな岩があった。
そこにかろうじてひっかかる程度に姿が見えている子猫が必死に鳴いていたのであった。
「これは大変」
仮面の男はさっと立ち上がると、ひょいっと飛んだ。
一度も地面に足をつくことなく、その岩へ飛び乗ると、手を差し伸べ子猫を拾い上げた。
子猫はずぶぬれになっており、寒さのためかぶるぶると震えていた。
仮面の男は懐に入れてやり、きた時と同じようにひょいっと飛んで荷馬車の上に戻った。
それからほどなく一行は小さな村の入り口にたどり着いた。
「やあやあすみません、食べ物を売っているお店はありますか」
平かごに野菜を載せて運んでいた女性に仮面の男が声をかけると、懐から子猫が「ニイ」と鳴いた。
「食べ物ならここをまっすぐに…って兄さん、その猫」
「知ってる猫ですか?」
「いや飼ってるわけじゃないんだけどね、ここらに住み着いてる猫でみんなにかわいがられてるのさ。どうしたね」
「たまたま川でおぼれそうになってましてね。助けたのも何かの縁てことで」
「あんたそりゃいいことをしたね。よっしゃ、任せときな」
女性はかごをそこにおろし、「おおいみんな」と声をあげた。
たちまちそこから数人の男女が集まってきた。
みな日焼けして健康そうな顔つきをしているものばかりであった。
「この旦那がね、猫を助けてくれたんだとさ」
「そりゃあよかった」
「ありがたいことだねえ」
その声に他の村人も集まってくる。
皆は仮面の男の事情を聴くとにこにこと笑顔になり、「さあさこっちへおいで」と仮面の男を手招きした。子猫も足元に降り立ち、てんてんとついてくる。
最初に声をかけられた女性が村にしてはやや大きめな食堂らしき店の扉をあけて入っていき、顔を出すと仮面の男を手招きした。
中はそこそこ食事をする者でいっぱいの状況だったが、何人かに声をかけて壁際のテーブルから人が移動するところであった。
「ここに座りなよ」
女性が手招きする。
仮面の男はどうも、どうもと挨拶しながら中へ入っていった。
子猫も続き、テーブルにすたっと乗った。
ここでは慣れていることなのか、猫がテーブルに乗っても文句を言う人間はいなかった。
「あんただね、この猫を助けてくれたってのは」
「いやあ、私はただおぼれてたのを見つけて助けただけで」
「上々!お礼をしなきゃね」
あっという間にテーブルにいくつもの食べ物が並べられた。
子猫には温かいミルクが提供された。
「大きな荷馬車できたみたいだけど向こうにも何か食べ物を届けたほうがいいかい?何人できたんだい?」
「ええと…」
仮面の男は少し考えこむようにして「はい、10人ほどですね。適当に見繕っていただければ。お世話になります。お代は払いますよ」といったが「何言ってんだい、若い人がそんなこと気にしちゃだめだよ!」と店員は豪快に笑うばかりであった。
店の中は必ずしも村人ばかりではなく、旅人も多かった。
皆物珍しそうに仮面の男のもとへきては、どこから旅をしてきたのか、ここでショーを開催する予定はあるのかなど聞いた。
仮面の男が食事を終え、話を聞きたがる一同から解放されたのは、それから一時間程度してであった。子猫はいつの間にかテーブルの上ですうすうと眠りについていた。
仮面の男は店へ丁寧にお礼をいい、食料を追加注文した。店員が固辞するのへやや強引に金を支払ってから店を出た。
「いいところですねえ」
にこにこと仮面の男は空を見上げた。
さあ始まるよ。
見世物小屋が始まるよ。
かわいい動物はお好きかい?
お代は見てのお帰り
喝采、喝采
「おやおや?」
仮面の男が素っ頓狂な声をあげた。
川べりを荷馬車で移動している時のことであった。
広く、その上流れのはやい川の真ん中あたりに小さな岩があった。
そこにかろうじてひっかかる程度に姿が見えている子猫が必死に鳴いていたのであった。
「これは大変」
仮面の男はさっと立ち上がると、ひょいっと飛んだ。
一度も地面に足をつくことなく、その岩へ飛び乗ると、手を差し伸べ子猫を拾い上げた。
子猫はずぶぬれになっており、寒さのためかぶるぶると震えていた。
仮面の男は懐に入れてやり、きた時と同じようにひょいっと飛んで荷馬車の上に戻った。
それからほどなく一行は小さな村の入り口にたどり着いた。
「やあやあすみません、食べ物を売っているお店はありますか」
平かごに野菜を載せて運んでいた女性に仮面の男が声をかけると、懐から子猫が「ニイ」と鳴いた。
「食べ物ならここをまっすぐに…って兄さん、その猫」
「知ってる猫ですか?」
「いや飼ってるわけじゃないんだけどね、ここらに住み着いてる猫でみんなにかわいがられてるのさ。どうしたね」
「たまたま川でおぼれそうになってましてね。助けたのも何かの縁てことで」
「あんたそりゃいいことをしたね。よっしゃ、任せときな」
女性はかごをそこにおろし、「おおいみんな」と声をあげた。
たちまちそこから数人の男女が集まってきた。
みな日焼けして健康そうな顔つきをしているものばかりであった。
「この旦那がね、猫を助けてくれたんだとさ」
「そりゃあよかった」
「ありがたいことだねえ」
その声に他の村人も集まってくる。
皆は仮面の男の事情を聴くとにこにこと笑顔になり、「さあさこっちへおいで」と仮面の男を手招きした。子猫も足元に降り立ち、てんてんとついてくる。
最初に声をかけられた女性が村にしてはやや大きめな食堂らしき店の扉をあけて入っていき、顔を出すと仮面の男を手招きした。
中はそこそこ食事をする者でいっぱいの状況だったが、何人かに声をかけて壁際のテーブルから人が移動するところであった。
「ここに座りなよ」
女性が手招きする。
仮面の男はどうも、どうもと挨拶しながら中へ入っていった。
子猫も続き、テーブルにすたっと乗った。
ここでは慣れていることなのか、猫がテーブルに乗っても文句を言う人間はいなかった。
「あんただね、この猫を助けてくれたってのは」
「いやあ、私はただおぼれてたのを見つけて助けただけで」
「上々!お礼をしなきゃね」
あっという間にテーブルにいくつもの食べ物が並べられた。
子猫には温かいミルクが提供された。
「大きな荷馬車できたみたいだけど向こうにも何か食べ物を届けたほうがいいかい?何人できたんだい?」
「ええと…」
仮面の男は少し考えこむようにして「はい、10人ほどですね。適当に見繕っていただければ。お世話になります。お代は払いますよ」といったが「何言ってんだい、若い人がそんなこと気にしちゃだめだよ!」と店員は豪快に笑うばかりであった。
店の中は必ずしも村人ばかりではなく、旅人も多かった。
皆物珍しそうに仮面の男のもとへきては、どこから旅をしてきたのか、ここでショーを開催する予定はあるのかなど聞いた。
仮面の男が食事を終え、話を聞きたがる一同から解放されたのは、それから一時間程度してであった。子猫はいつの間にかテーブルの上ですうすうと眠りについていた。
仮面の男は店へ丁寧にお礼をいい、食料を追加注文した。店員が固辞するのへやや強引に金を支払ってから店を出た。
「いいところですねえ」
にこにこと仮面の男は空を見上げた。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる