遺品の思い出探します 鑑定士紅柄

碧井夢夏

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思い出話

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 朝比町の小さな居酒屋『銀ちゃん』で、紅柄耀べんがらよう深山晃みやまあきらは隣り合ってカウンター席に座っている。

「みーやん、この間の合コンはどうだったの?」
「それ聞く? ベンちゃんに吉報送らなかった時点で分かるだろ……」
「そうかあ。でも、みーやんって性格は良いからモテそうなのになあ――」
「そう言ってくれんのは、残念ながら男ばっかなんだよなあ……」

 晃の言葉に、何故か耀も落ち込む。その様子をカウンターの中から見ていた店主の銀次が、2人に声を掛けた。

「で、飲みもんは?」
「あ、僕レモンサワー」
「俺はハイボール」

 店主の銀次は、定年まで街の寿司屋で働いていた職人だった。
 勤め人を辞め、実家のある朝比町に戻り、老後の趣味として『銀ちゃん』をオープンさせる。そんなわけで、この店は寿司が売りだ。

「はい、レモンサワーに、ハイボール。で、お通しね」

 銀次がドリンクとお通しのポテトサラダを2人に運ぶと、耀と晃は乾杯をしてポテトサラダをつまみにチビチビと飲み始めた。

「みーやん、中学の時に2個上にいた『羽田先輩』って覚えてる? 元生徒会長の女の人」
「あー……いたねえ。頭良さそうな……」
「依頼人がね、羽田先輩なの。今度みーやんに家電引き取りに来てもらう、あの仕事」
「へえ。楽しみにしとこ。美人?」
「多分、美人、なんじゃないかなあ……」

 考え込む耀を見て、晃の中に疑問が浮かぶ。

「で? 羽田先輩がどうした?」
「なんか、不思議なことが多いんだよね――」

 耀が頭を抱えている間に、隣の晃はカウンターに向かって刺身を注文した。

「ベンちゃんが悩んでるのは、また、思い出関連?」
「いや、今回はさ、羽田先輩自体なんだよ」
「印象が変わってたとか?」
「うん、変わってたね」
「中学んときの印象なんてアテになんないだろ。ベンちゃんだって、俺のこと嫌いだったんじゃなかった?」
「みーやんは、外見で損するタイプ」

 耀は、賞状を捨てた早紀が言った言葉や、これまでの早紀の態度などをひと通り話した。
 中学時代の自信に満ち溢れた早紀とは、まるで違う早紀になっていたことなどを聞きながら、晃は大きく頷いている。

「羽田先輩って、中学までばあちゃんちに居たわけだろ? その後は、親と暮らしてた?」
「多分、そうなんじゃないかな?」
「で、ばあちゃんのことを親って言ってるってことは、両親と反りが合わなかったとか?」
「うーん、そうかもしれないけどさ、それって、今の先輩の豹変と関係ある?」

 耀はそう言うと、目の前に置かれたマグロの刺身をつまみ始める。

「それにね、先輩のおばあさん側の思い出もさ……ちょっと不思議なんだ。自分の子どもの思い出とか、旦那さんの思い出に関わるものが全然ないんだよ。でも、孫である先輩関連のものは沢山あるんだ」
「へえ、まるで共依存だな」
「……共依存か……」

 晃の言ったように、早紀の心の拠り所が祖母だけだったとして、祖母も早紀だけを特別扱いしていたのであれば、祖母が亡くなったことで早紀は拠り所を失ったことになる。

「家族って、難しいねえ、みーやん」
「うん、難しいな」
「それでも、奥さんが欲しいの?」
「うん、何より欲しい」
「僕ら、まだ25歳だよ? 早くない?」
「早くない」

 刺身をつまみながら、耀は晃が合コンでうまく行かないのは、恐らくこの辺のこだわりが理解されないからなのだろうと思う。

「羽田先輩、彼氏いるって?」
「知らないよ」
「いなかったら連絡先聞いても良い?」
「……好きにすれば?」

 晃は嬉しそうな顔で耀の肩を叩く。

「俺、自分に自信がない女の人を口説くのが、結構好きなんだよ」
「やっぱり、みーやんに先輩会わせちゃダメかも……」

 耀が呆れて晃をジロリと見ると、晃は「そう言うなよ! どうせ家電の引き取りがあるんだから」と、ニコニコ笑っていた。
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