50 / 229
第5章 追われるルリアーナ元王女
その面影を探して
しおりを挟む
ブライアン・バンクスの仕事を終えて、カイはルリアーナ城の城下町に来ていた。レナが生きていたとすれば、最初に立ち寄ったのは間違いなく城下町だろうと目星を付ける。
レナはお金を持っていなかった可能性があるが、生きるために必要な生活力もない。行くとしたら一体どこなのか見当も付かないが、とりあえず人が集まる場所に行っておこうと店を回った。
城下町は、レナと一緒に歩いた日を思い出す。腕にしがみついて楽しそうにしていた王女が、次にひとりきりで城下町を訪れた時にどんな気持ちになっていたのか、考えるだけで胸が痛んだ。
(生きていたとしたら、どんなに苦労をしているか……)
せめて誰か、彼女の側にいてくれる人が現れていれば、とカイは願った。
レナは、あれだけの器量を持って生まれたのだ。また誰かが彼女を見つけて、支えてくれているかもしれない。レナが心を預けられる誰かが、既に彼女を幸せにしてくれていたら、と漠然と考え始めた。
(ああ、そうか……)
任務中にレナと訪れたバールの前までやって来て、あの日にレナが何を求めていたのか、ようやく理解ができた気がした。
レナはカイの人生や生き方に興味を持っていた。そして、カイと向き合いたいと真剣に言っていた。
(そうやって人と関わることで、孤独から解放されたかったのだな)
カイはレナに寄り添い切れたとは言えなかった。突き放すように、はぐらかした。過去にできなかったことを今更悔やんだところで、戻ることはできない。
(そうだ、もしも今、どこかで生きているのなら……)
絶対に、レナの心は満たされていない。王女として生きて来た人生の全てを封印し、別人格として生きることが、どれだけまたレナの心を孤独にしているのだろう。
(最後の夜、あんなに別れを悲しんでいたのに、結局何もしてやれていない。俺は、確かに再会を約束したんだ)
カイは、自分の奥にある感情に向き合って、ようやく分かった。
「誰か」に頼り、自分の力不足から目を背けるのは止めようと決めた。
この不安定な世界に放り出されているレナがどこかにいるのなら、それは自分が救うべき存在だ。
彼女の生まれを知りながら、彼女の不遇を知りながら、それでも護り支えられる存在。それが自分でなくて誰だというのか。
レナと契約を交わし、主人と従者の関係だった日々は終わった。あの日から、カイはレナの騎士ではなくなった。
(報酬と契約がなんだ)
カイは、迷いのない目で前を向く。バールに入ると、あの日2人で過ごした店内でレナの面影を探した。
レナはお金を持っていなかった可能性があるが、生きるために必要な生活力もない。行くとしたら一体どこなのか見当も付かないが、とりあえず人が集まる場所に行っておこうと店を回った。
城下町は、レナと一緒に歩いた日を思い出す。腕にしがみついて楽しそうにしていた王女が、次にひとりきりで城下町を訪れた時にどんな気持ちになっていたのか、考えるだけで胸が痛んだ。
(生きていたとしたら、どんなに苦労をしているか……)
せめて誰か、彼女の側にいてくれる人が現れていれば、とカイは願った。
レナは、あれだけの器量を持って生まれたのだ。また誰かが彼女を見つけて、支えてくれているかもしれない。レナが心を預けられる誰かが、既に彼女を幸せにしてくれていたら、と漠然と考え始めた。
(ああ、そうか……)
任務中にレナと訪れたバールの前までやって来て、あの日にレナが何を求めていたのか、ようやく理解ができた気がした。
レナはカイの人生や生き方に興味を持っていた。そして、カイと向き合いたいと真剣に言っていた。
(そうやって人と関わることで、孤独から解放されたかったのだな)
カイはレナに寄り添い切れたとは言えなかった。突き放すように、はぐらかした。過去にできなかったことを今更悔やんだところで、戻ることはできない。
(そうだ、もしも今、どこかで生きているのなら……)
絶対に、レナの心は満たされていない。王女として生きて来た人生の全てを封印し、別人格として生きることが、どれだけまたレナの心を孤独にしているのだろう。
(最後の夜、あんなに別れを悲しんでいたのに、結局何もしてやれていない。俺は、確かに再会を約束したんだ)
カイは、自分の奥にある感情に向き合って、ようやく分かった。
「誰か」に頼り、自分の力不足から目を背けるのは止めようと決めた。
この不安定な世界に放り出されているレナがどこかにいるのなら、それは自分が救うべき存在だ。
彼女の生まれを知りながら、彼女の不遇を知りながら、それでも護り支えられる存在。それが自分でなくて誰だというのか。
レナと契約を交わし、主人と従者の関係だった日々は終わった。あの日から、カイはレナの騎士ではなくなった。
(報酬と契約がなんだ)
カイは、迷いのない目で前を向く。バールに入ると、あの日2人で過ごした店内でレナの面影を探した。
0
あなたにおすすめの小説
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる