52 / 229
第5章 追われるルリアーナ元王女
カイの聞き込み調査
しおりを挟む
ルリアーナ城の城下町で、黒髪の美しい騎士がとある女性を探していた。以前よく知った町だったそこは、リブニケ王国から来た兵士たちの姿が各所に見られるようになっている。
1年近く前は騎士が歩いているだけで目立っていたのが、すっかり状況は変わってしまったようだ。
その騎士、カイ・ハウザーは、昨日から城下町の様々な場所で道行く人に話を聞いていた。聞き込みをすると、何故か呼んでもいない女性がどんどん周りに集まって来る。すぐに人だかりができて、情報収集に都合が良いのか悪いのかよく分からなかった。
普段、カイはあまり見知らぬ人に話しかけたりはしないのだが、実際にやってみるとこんなに人に囲まれるものなのかと焦る。
「ブロンドで小柄な人なんて、沢山いそうだけど……」
「その女性とはどんな関係なんですか?」
「あの、彼女いますか?」
いつの間にか、カイに興味を持った女性たちの質問攻めに遭っている。全く関係ない質問をされるのが何故なのか、カイには理解ができない。
カイはレナの特徴を上手く説明できず、そろそろ解放されたいと思い始めた時、そこを偶然通りかかったイリア・アウグスが、女性を探しているという異国人に胸騒ぎを覚えた。
「すいません、もしかして、エレナ・サントーロの関係者ですか?」
イリアがカイに話しかけた時、カイはその聞き覚えのある名前に目を見開いた。
(エレナ・サントーロだと?)
叫びそうになったのをぐっと堪え、カイはその言葉を発したイリアから詳しいことを聞こうとした。
「そうだ」
「あ……えっ……?」
イリアは遠くから見て何となく異国人だろうと思った程度でカイに話しかけたが、直視された途端、何も言えなくなっていた。
「詳しく、その話を聞かせてくれないか?」
カイが真剣にイリアを見て言ったのを、イリアは見惚れながら細かく何度も頷く。まさか声を掛けた男性が、こんなに美しい男だとは思ってもみなかった。
「エレナは、10ヶ月ほど前に、私の兄の行商に付いて行って、ポテンシアからブリステ公国に入国しようとしていました。そこに、恋人がいると言って……。でも、今は国際情勢が不安定で、エレナはブリステに入国できないんです」
イリアがそう言うと、カイは言葉を失っていた。
「あなたがブリステ人の……エレナの恋人ですか? 彼女を探しているんですか?」
イリアは、これがエレナの恋人なのだろうかと、目の前にいる見たこともない美しい男性の姿に信じられない気持ちでいる。
「……ああ、そうだ」
カイは、イリアの言ったレナの恋人とはロキの事なのだろうと思った。ただ、イリアに説明するには誤解されたままの方が都合は良い。
一方のイリアはカイが認めたことで、エレナがこんな美しい男性と恋仲だったのかと、羨ましくてたまらなかった。
「兄がエレナに好意を持ったことで、2人はうまくいかなくなってしまったみたいで……。ごめんなさい、エレナはブリステとの国境近くにある町に留まることになったんです。どうも、バールに住み込みで働いて歌い手をやっていると聞いていますが」
イリアがカイに話しかけている間も、ギャラリーの女性は増えていくばかりだった。もはやただカイを囲みたいだけの集団になり果てている。
「そうか……国境の町に……」
カイはそう言って、考え込むように遠くを見つめた。これでその『エレナ』の居場所が分かった。
「あ、あの……ごめんなさい、うちの兄が、その……」
イリアは、兄から聞いた話を思い出してカイに謝った。恋人がいると知りながら、ジャンがエレナに好意を持たなければと、申し訳ない気持ちになっている。
「まあ、仕方ないな。彼女は以前から妙に男に言い寄られていたから」
カイがそう言ってイリアを見て少し寂し気に笑った。
(え、な、なにこの人……本当にステキ……)
イリアは瞬きも忘れてカイに見入った。それも、いつの間にか手を顔の前で組んでしまっていた。その他大勢のギャラリーもカイの表情に、それぞれが小さな息を漏らして感嘆した。
1年近く前は騎士が歩いているだけで目立っていたのが、すっかり状況は変わってしまったようだ。
その騎士、カイ・ハウザーは、昨日から城下町の様々な場所で道行く人に話を聞いていた。聞き込みをすると、何故か呼んでもいない女性がどんどん周りに集まって来る。すぐに人だかりができて、情報収集に都合が良いのか悪いのかよく分からなかった。
普段、カイはあまり見知らぬ人に話しかけたりはしないのだが、実際にやってみるとこんなに人に囲まれるものなのかと焦る。
「ブロンドで小柄な人なんて、沢山いそうだけど……」
「その女性とはどんな関係なんですか?」
「あの、彼女いますか?」
いつの間にか、カイに興味を持った女性たちの質問攻めに遭っている。全く関係ない質問をされるのが何故なのか、カイには理解ができない。
カイはレナの特徴を上手く説明できず、そろそろ解放されたいと思い始めた時、そこを偶然通りかかったイリア・アウグスが、女性を探しているという異国人に胸騒ぎを覚えた。
「すいません、もしかして、エレナ・サントーロの関係者ですか?」
イリアがカイに話しかけた時、カイはその聞き覚えのある名前に目を見開いた。
(エレナ・サントーロだと?)
叫びそうになったのをぐっと堪え、カイはその言葉を発したイリアから詳しいことを聞こうとした。
「そうだ」
「あ……えっ……?」
イリアは遠くから見て何となく異国人だろうと思った程度でカイに話しかけたが、直視された途端、何も言えなくなっていた。
「詳しく、その話を聞かせてくれないか?」
カイが真剣にイリアを見て言ったのを、イリアは見惚れながら細かく何度も頷く。まさか声を掛けた男性が、こんなに美しい男だとは思ってもみなかった。
「エレナは、10ヶ月ほど前に、私の兄の行商に付いて行って、ポテンシアからブリステ公国に入国しようとしていました。そこに、恋人がいると言って……。でも、今は国際情勢が不安定で、エレナはブリステに入国できないんです」
イリアがそう言うと、カイは言葉を失っていた。
「あなたがブリステ人の……エレナの恋人ですか? 彼女を探しているんですか?」
イリアは、これがエレナの恋人なのだろうかと、目の前にいる見たこともない美しい男性の姿に信じられない気持ちでいる。
「……ああ、そうだ」
カイは、イリアの言ったレナの恋人とはロキの事なのだろうと思った。ただ、イリアに説明するには誤解されたままの方が都合は良い。
一方のイリアはカイが認めたことで、エレナがこんな美しい男性と恋仲だったのかと、羨ましくてたまらなかった。
「兄がエレナに好意を持ったことで、2人はうまくいかなくなってしまったみたいで……。ごめんなさい、エレナはブリステとの国境近くにある町に留まることになったんです。どうも、バールに住み込みで働いて歌い手をやっていると聞いていますが」
イリアがカイに話しかけている間も、ギャラリーの女性は増えていくばかりだった。もはやただカイを囲みたいだけの集団になり果てている。
「そうか……国境の町に……」
カイはそう言って、考え込むように遠くを見つめた。これでその『エレナ』の居場所が分かった。
「あ、あの……ごめんなさい、うちの兄が、その……」
イリアは、兄から聞いた話を思い出してカイに謝った。恋人がいると知りながら、ジャンがエレナに好意を持たなければと、申し訳ない気持ちになっている。
「まあ、仕方ないな。彼女は以前から妙に男に言い寄られていたから」
カイがそう言ってイリアを見て少し寂し気に笑った。
(え、な、なにこの人……本当にステキ……)
イリアは瞬きも忘れてカイに見入った。それも、いつの間にか手を顔の前で組んでしまっていた。その他大勢のギャラリーもカイの表情に、それぞれが小さな息を漏らして感嘆した。
0
あなたにおすすめの小説
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
5分前契約した没落令嬢は、辺境伯の花嫁暮らしを楽しむうちに大国の皇帝の妻になる
西野歌夏
恋愛
ロザーラ・アリーシャ・エヴルーは、美しい顔と妖艶な体を誇る没落令嬢であった。お家の窮状は深刻だ。そこに半年前に陛下から連絡があってー
私の本当の人生は大陸を横断して、辺境の伯爵家に嫁ぐところから始まる。ただ、その前に最初の契約について語らなければならない。没落令嬢のロザーラには、秘密があった。陛下との契約の背景には、秘密の契約が存在した。やがて、ロザーラは花嫁となりながらも、大国ジークベインリードハルトの皇帝選抜に巻き込まれ、陰謀と暗号にまみれた旅路を駆け抜けることになる。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる