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第11章 歴史を変える
城内にて 1
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ブラッドは先王の元で働いていた侍女を呼んだ。
「すまないが、この女性にドレスを用意してもらおう。客間にでも連れて行って整えて欲しい」
レナに着替えさせるためだと分かると、途端にカイが焦る。
「ちょっと待て、勝手に連れて行くな」
「……信用がないな。ハウザー殿も付いていけばいいだろう」
ブラッドがうんざりした顔をしていると、「俺も行く」とロキまでもが付いていこうとする。
「なんでそんなにぞろぞろと女性の着替えに付いていくんだ」
ブラッドが声をかけて止めようとしたが、ロキは「この城を信用していないだけです」と堂々と返してカイの後についていった。
「さて……妙なメンバーが残ったな」
ブラッドは兵士の控室でレオナルドとシン、そしてリブニケ人兵士たちを見渡す。
「レオナルドの狙いは?」
ブラッドは、一番気になっていた同僚の企みを探ることにした。
「ルイス様の目を覚まさせようと思って」
「言いたいことは分かるが、これはやり方が残酷すぎる」
ブラッドは、レオナルドが感情的な部分で配慮が足りない人間であることはよく知っている。
レオナルドによって揺さぶられるルイスを見たくはなかった。
「ルイス様には、自覚を持ってもらわないと。この先は、自分の感情を優先して生きていくことは諦めてもらいます。この国を終わらせるなんて、犠牲が多すぎる」
レオナルドが言い切ると、ブラッドは黙って頷いている。
その様子を横で見ていたシンは、レオナルドの「国のため」の行動に驚いた。
「愛国心があるんですね」
シンがレオナルドとブラッドを眺めてしみじみと言う。
「ブリステ人は、ないんですか? そういうの」
レオナルドに尋ねられてシンは首を傾げる。心当たりがない。
「大切な人が全員ブリステにいるだけの話で、別に国に対してどうこうって気持ちはないかなと思います」
「なるほどな」
「まあ、僕たちは国に雇われているってこともあるのかもしれませんね。ブリステ公国の騎士はもう少しビジネスライクなんでしょう」
シンは、改めて自分のことを思い返してみる。
アロイス陛下に対して誓った忠誠は、家族や友人がいるブリステ公国を守るためのものだ。国のためなら死ねるなどと思ったこともない。
「国なんていつどうなるか分からないものに、忠誠なんて誓えないですよ。俺は自分の考え方、健全だと思うけど」
シンが話している間、リブニケ人兵士たちは部屋の隅で何やら盛り上がって話をしているようだった。
漏れ聞こえて来る会話から、国に帰る方法があるらしいという朗報に沸いているようだ。
「どうせ可愛い奥さんがいる男の余裕だろうよ」
「どうも新婚らしいじゃないですか。はいはい、幸せそうですね」
ブラッドとレオナルドの冷たい視線を浴びながら、シンはようやく思い出す。そうだ、この2人は女性関係になると途端に嫉妬で人間性が揺らぐのだと。
「奥さんは毎日可愛いですよ。自分は幸せ者ですね」
「……くそ」
「そんなの、どうせ最初だけです。他人との生活っていうのは、時間が経つごとにどんどん息苦しくなるものなんですよ」
思った以上に効くんだな、とシンは目の前の2人の悔しそうな顔に悪い気がしない。
「不思議なんですけど、日に日に可愛くなるんですよ、奥さんって生き物は」
「んなわけねえだろうよ。適当言って自慢しやがって」
「惚気とか求めてませんから!」
本気で怒り狂うブラッドとレオナルドを見て、シンは笑いをこらえて震えが止まらなくなった。
騎士団本部でリリスと一緒にいる姿に文句を言う部下はいるが、ここまで酷くはない。
「……いっ……いい人が見つかると、いいですねっ……」
必死に笑いをこらえながらシンが2人にかろうじて見舞いの言葉をかけると、激しい殺気がその場に充満する。
シンは思わず噴き出し、声を上げて笑った。
「すまないが、この女性にドレスを用意してもらおう。客間にでも連れて行って整えて欲しい」
レナに着替えさせるためだと分かると、途端にカイが焦る。
「ちょっと待て、勝手に連れて行くな」
「……信用がないな。ハウザー殿も付いていけばいいだろう」
ブラッドがうんざりした顔をしていると、「俺も行く」とロキまでもが付いていこうとする。
「なんでそんなにぞろぞろと女性の着替えに付いていくんだ」
ブラッドが声をかけて止めようとしたが、ロキは「この城を信用していないだけです」と堂々と返してカイの後についていった。
「さて……妙なメンバーが残ったな」
ブラッドは兵士の控室でレオナルドとシン、そしてリブニケ人兵士たちを見渡す。
「レオナルドの狙いは?」
ブラッドは、一番気になっていた同僚の企みを探ることにした。
「ルイス様の目を覚まさせようと思って」
「言いたいことは分かるが、これはやり方が残酷すぎる」
ブラッドは、レオナルドが感情的な部分で配慮が足りない人間であることはよく知っている。
レオナルドによって揺さぶられるルイスを見たくはなかった。
「ルイス様には、自覚を持ってもらわないと。この先は、自分の感情を優先して生きていくことは諦めてもらいます。この国を終わらせるなんて、犠牲が多すぎる」
レオナルドが言い切ると、ブラッドは黙って頷いている。
その様子を横で見ていたシンは、レオナルドの「国のため」の行動に驚いた。
「愛国心があるんですね」
シンがレオナルドとブラッドを眺めてしみじみと言う。
「ブリステ人は、ないんですか? そういうの」
レオナルドに尋ねられてシンは首を傾げる。心当たりがない。
「大切な人が全員ブリステにいるだけの話で、別に国に対してどうこうって気持ちはないかなと思います」
「なるほどな」
「まあ、僕たちは国に雇われているってこともあるのかもしれませんね。ブリステ公国の騎士はもう少しビジネスライクなんでしょう」
シンは、改めて自分のことを思い返してみる。
アロイス陛下に対して誓った忠誠は、家族や友人がいるブリステ公国を守るためのものだ。国のためなら死ねるなどと思ったこともない。
「国なんていつどうなるか分からないものに、忠誠なんて誓えないですよ。俺は自分の考え方、健全だと思うけど」
シンが話している間、リブニケ人兵士たちは部屋の隅で何やら盛り上がって話をしているようだった。
漏れ聞こえて来る会話から、国に帰る方法があるらしいという朗報に沸いているようだ。
「どうせ可愛い奥さんがいる男の余裕だろうよ」
「どうも新婚らしいじゃないですか。はいはい、幸せそうですね」
ブラッドとレオナルドの冷たい視線を浴びながら、シンはようやく思い出す。そうだ、この2人は女性関係になると途端に嫉妬で人間性が揺らぐのだと。
「奥さんは毎日可愛いですよ。自分は幸せ者ですね」
「……くそ」
「そんなの、どうせ最初だけです。他人との生活っていうのは、時間が経つごとにどんどん息苦しくなるものなんですよ」
思った以上に効くんだな、とシンは目の前の2人の悔しそうな顔に悪い気がしない。
「不思議なんですけど、日に日に可愛くなるんですよ、奥さんって生き物は」
「んなわけねえだろうよ。適当言って自慢しやがって」
「惚気とか求めてませんから!」
本気で怒り狂うブラッドとレオナルドを見て、シンは笑いをこらえて震えが止まらなくなった。
騎士団本部でリリスと一緒にいる姿に文句を言う部下はいるが、ここまで酷くはない。
「……いっ……いい人が見つかると、いいですねっ……」
必死に笑いをこらえながらシンが2人にかろうじて見舞いの言葉をかけると、激しい殺気がその場に充満する。
シンは思わず噴き出し、声を上げて笑った。
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