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燈坂 もと

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ワンコ🐶

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「……あれ。その噛み跡……なに。」

後ろからそんな声が聞こえて自分の事じゃないと思っていたから返事もせずにぼーっと黒板を見てた。

次の授業は担当教師の都合で自習。
みんな思い思いに自由に過ごしていい時間にこの学校の自由さが伺える。

昨日は遅くまで夜更かしして今やってるRPGをキリのいいところまで、と思って進めていたら気付いたら朝で。

眠さはピークで頭が回らない。
自習は眠ろうと心に誓った。
昨夜はそれに加えて3か月前に我が家の家族になったワンコがご機嫌斜めだったせいで暴れまわってるのを相手していた。

ワンコの名前は裕次郎。

父ちゃんの推しで昔人気だった俳優さんから取って付けたんだけど何と裕次郎は女の子なのだ。かわいそうに。
市役所に裕次郎で登録してから我が家に来ちゃったもんだから名前の変更もめんどくさいとなり3か月経った今じゃ『裕ちゃん』の愛称で我が家のアイドルである。

裕次郎は俺が大のお気に入りだ。俺以外は敵扱い。
俺にだけ懐いていて正直すごく可愛い。
基本俺の部屋の俺のベッドで俺の横でしか安眠出来ないテリトリーの狭さのため毎日俺と寝ている。
そんな裕次郎の事を思い浮かべてぼーっとしていた俺。
突然、後ろからグイッ、と襟元を引っ張られて。

吃驚して思わず声が出た。

「う、わっ!」
「何、無視?……ぼーっとしてるの、朝まで大盛り上がりだった、とか?」

俺の襟を引っ張ったのは幼馴染で仲のいい攻。
そんな攻は苦虫を嚙み潰したような表情をしている。お腹でも痛いのだろうか。

突然の言動によく回ってない頭も加わって訳が分からず質問する。

「え、と……急に、なに?何の、はなし……?」
「首のところ。噛み跡、丸見え。受に……そんな相手いるなんて……聞いてない、けど」
「へ……?あ、……!うわ、こんなとこ、やられてたなんて……全然気付かなかった……後で裕次郎に叱っとかないと」
「……へえ?相手は裕次郎、って言うの……ねえ、受……?いつから?いつからソイツとそんな関係になったの?」
「え、と……3か月前、かな。そこから俺の部屋でずっと一緒に過ごしてるけど……」
「な、同棲、しているのか?!おばさんも、おじさんも、公認……!?」

同棲……?まあ毎日俺の部屋にいるから同棲、みたいなモンか。

合ってるわ。合ってるのか?

眠くて頭がイマイチ回っていなくて正解か不正解かも判断できない状態に自習時間は保健室で寝ようと決意した。

しかし……何故か質問に答える度に攻のオーラが禍々しくなっていく。

そういや裕次郎の事、攻に言ってなかったんだっけ……?
確か攻にワンコが家に来たよと言おうとしてたんだけど一度言うタイミングを逃して……。
そこからすっかり言うのを忘れていた。言ってないわ。

「ごめん、紹介してなかった、な。写真見せる。めっちゃかわい」

ごそごそとスマホを取り出そうとした俺の手を攻が制止した。
え、なに、どうした???

「……やめて、くれ。見たくない。お前の、相手……なんて。」
「え、そう、なん?ま、いいけど。……ふぁ。ごめん。俺ちょっと眠さがヤバいから……保健室行くわ。今日まみちゃん(保健の先生)休みだったよな……利用名簿書けばいいんだっけ……」
「そんなになるまで……ソイツと……!っ。受、俺もお前と保健室へ、行く。一緒に寝たい。」
「へ?そうなん?攻も眠かったんか。おし、行こう。次1時間自習で助かった~……マジで、無理。眠すぎ。」
「……そうだな。自習で、先生も休みで本当によかったよ。1時間じゃ全然足りないけど……お前に、俺を……分かってもらえる。」

最後の攻の台詞は眠くてイマイチ聞き取れなくて&理解が出来なかったけど。
まあいいやと保健室へ向かった。

保健室に到着して1時間。
攻にこれでもかというくらいに攻の気持ちを思い知らされて。
その後、へろへろの俺を横抱きにした攻は保健室から内線で職員室に早退連絡。
攻のひとり暮らしの部屋で寝かせてもらえず散々気持ちを打ち付けられて俺もあまりの気持ち良さに全てを許してしまった。

事後、裕次郎の事をちゃんと説明した。
真っ赤になって謝罪してきた攻は裕次郎を遥かに上回る可愛さだったから許しました。



<終>

ワンコってかわいい。そんな話でした。(え?)


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