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16.魔王の記憶(4)⁂
しおりを挟むあの日から、俺たちが毎日逢う場所は、露店から魔王城の俺の部屋になった。
一緒に過ごす時は、片時も離れず。
常に肌と肌を合わせ、他愛もない話をしながら、どちらからともなく口唇を啄む。
戯れ合うような可愛らしいキスが、次第に深く、卑猥な音に変わると可愛いだけのリオの表情は淫らで妖艶なモノに変わり、滾り聳り立つソコを絡めあいながら、お互いの欲望をぶつけ合う事で、心が満たされていく。
リオと共に過ごす事で、俺が存在している意味を初めて実感できる。
リオが、俺の全てだったのだ。
そんな風に、逢瀬を重ねて。
何か月か経ったある日、リオから思いもよらない話が飛んできた。
「……は……?……婚約、だと……?」
衝撃が、走った。
そんな話が持ち上がるなんて、考えた事もない。
リオが、俺だけのモノじゃ、なくなる……?
そんな事、あって、たまるか。
「ちょ、本気にしないで!婚約なんて、絶対しないからね?爺ちゃんが、そうやって言い出すのは初めてじゃないし、何回も話をしてくるだけで、いつの間にか無くなってるモノばかりだから気にする必要ないよ。そもそも、僕は魔塔から出られないから……婚約者なんて用立ててもうまくいくわけないし……それに、今は。……オウミしか、いらない。放っておけば、自然に無くなるよ。ていうか、ごめん。オウミにする話じゃなかった。聞かなかったことに、し……っんっ!」
無理矢理、彼の口唇を塞いだ。
もやもや、どろどろ、むかむかして、胸が焼ける感覚に、自分を止める事が出来なかった。
今迄した事のない優しさのない繋がり方で、愛しい魔術師に気持ちをぶつけた。
彼の陶器の様な澄んだ白い肌に、赤い跡と噛み跡を全身に付けて。
鳴き続けて、声が枯れた彼に「オウミの気が済むまで、ぐちゃぐちゃに、して……?」と言われて、俺の中の最後の砦が破壊されて……完全に理性が、飛んだ。
リオが、アステルフォード国民が絶対に持ち合わせていない闇の魔力。
身体を繋げて果てた時、リオに移らない様に毎回魔術で制御をしていた。
その魔術を解除して……彼の蕾に魔力ごと打ち付けた。
魔術が解除された俺の凶器は、いつも以上にリオの内壁に密着感を感じて、いつもより激しく感じている彼にますます気持ちが滾った。
闇の魔力を彼に流して、彼の中にその魔力が存在する事によって、気付いたアステルフォード国民に " エリオス・カナライト・ノクティスは、魔王のモノだ " と知らしめたかった。
俺は、リオを独占したくて、しょうがなかったのだ。
すると、初めて闇の魔力を受け入れた愛し子の身体の様子がおかしい。
初めは数えきれない程の吐精を繰り返したせいで、浮ついているのかと思っていたのだが、違う。
まるで、魔力酔いを……起こしているような。
「……リオ……?……意識は、あるか……?少し、ぼーっと、している……?」
「……オ、ウ……ミ……?なんか、へん……ぼく、……どう、なって……?」
「……魔力量が多いから……問題ないと高を括っていた。……すまない……リオ。しんどいだろうが、俺に掴まってくれ。リオの部屋へ、移動する。俺の部屋よりも、水の魔力が多いお前の部屋の方が治りが早い筈だ。」
「……よく、わかん、ないけど……オウミが、ぼくのへや、に……きてくれるの……?……ふふ。うれしい、な」
「……っ!……っはー……。お前は、ほんとに。……どこまでも、可愛い。……クソ。すまなかった。治ったら、絶対に……優しく、甘く……気持ちいい事だけすると、誓う。……いくぞ。」
発熱しているリオは、眠りについて。
俺はリオの部屋で、魔力吸引と魔力注入の陣を編んで、少しの闇の魔力を残しながら、魔力酔いを治したのだった。
すぅすぅと、可愛い寝息を立てて。
キラキラと光輝く水色の髪を、ゆっくりと指で梳く。
俺の乱暴な愛撫にも、嫌な顔ひとつせず受け入れてくれたこの子が、愛しくてしょうがない。
俺の部屋で逢う以外の時間を共に過ごせないのは、しょうがない事だと理解している。
理解はしているが、彼への欲求は日を追うごとに増していく。
こんなにも、欲しくなったモノは、なかった。
眠っているリオのおでこに、ちゅ、と口付けて、詠唱した。
リオの中に少しだけ混ぜ込んだ闇の魔力。そこに俺の声が届くように魔術を掛ける。
まるで、耳元で俺が囁いているかの様な感覚に、最初は驚くだろうが。
その内、俺の声が聞こえなくなるのが寂しくなるくらい、毎日囁こうと心に誓う。
俺自身にも魔術を掛けて、リオの声を響かせることが出来たら……離れていても、近くにいる、そんな感覚で過ごせるだろうと画策をしたのがつい先日。この魔術を編み出すまでに数日かかったが、予想より早くに仕上がってホッとしている。
魔術は陣を指で編むのが基本だ。
しかし、俺の可愛い天才魔術師は、陣を編まずに詠唱するだけで魔術を繰り出すという偉業を成し遂げたのだ。
その方法を教えてもらえたお陰で、この魔術が成り立っている。
きっと陣を編んでいたら成し得なかった。
俺と、リオだけの……特別な、魔術。
その事にゾクゾクして、中心部が硬く、熱く、太く。そんな反応をしてしまう俺は相当な変態だなと可笑しくなった。
毎日、耳元で、俺の低い声を響かせて。
離れていても、興奮させたい。
興奮させて、寂しくさせて……本物の俺を今以上に、もっと。無性に求める様に。
俺と同じで……リオも、俺だけしか求めない様に。
俺に掴まったが、最後。
そのピンク色の柔らかい口唇に舌を這わせた。
「……残念だったな……リオ。……俺はお前を、絶対に逃がさないし、離さない。」
俺の、鳥籠に……いつか必ず囲うと誓った。
それから何か月か経ったある時、リオから声が届いた。
『ね、オウミ……?僕の身体に、闇の魔力があるって……何か、知ってる……?』
あの時。ぐちゃぐちゃに抱き潰した後に魔力酔いを起こしたせいで、リオの記憶は曖昧で。
俺が闇の魔力をリオに残した事をリオは気付いていなかった。
” お前が俺の所有物だと、他人を介してお前に知らしめるために俺が闇の魔力を注入した ” 事を伝えると『……うわ。やば。そんな状況じゃないのに……オウミと今、めちゃくちゃえっちしたい……』とか言われて早く逢いに行きたくて陣を編もうとした俺を制止したのは他でもないリオだった。
なんでも、魔力測定で有り得もしない闇の魔力が見つかり、モルドレッド卿に魔力拘束されて動けないという。
今ひとりなのか、と質問したら『ひとりだから……いつものやつ、したい』と可愛いお願いをされて仕事のために握っていたペンを置いて寝室に向かう。
今朝までそこにいた、リオと触れ合っているベッドで、リオの匂いが残るシーツを鼻に当てながら、既に聳り立って先走りで湿り切っている自分をぐちゅぐちゅと扱く。
リオにはいやらしい水音を聴かせながら、俺の声でリオの動きも誘導して。
お互いに甘い声を耳元で響かせて、興奮が昂る。
「……早く、お前の中に……入りたい……!ん、……あー……好きだ、リオ……!俺の手だけじゃ……満足できない……!お前のその温かい中に入って、お前の中を、俺でぐちゃぐちゃに……っ、ぁ、……リオ……!でる、でるでる……っ!」
『オウミ、オウミ……!逢いたい……っ、……僕も……オウミに、中……ぐちゃぐちゃに、して、ほしい……、っ。……っ!ぁ、や、くる、くるぅ……っ!……い、く……っ!』
そうして、逢えない日が続いて。
リオとは意識下で会話を続けていたのだが、以前から勇者達の猛威が魔国を襲っていて。
とうとう、勇者達が魔王城に、ものすごい勢いで侵攻してきたのだ。
リオを襲おうとした聖職者の内の逃げ出したひとりが、国王に進言をし、魔王討伐パーティが組まれてしまった結果だった。
状況を魔塔から確認しているリオは、心配をしていて。
「俺を誰だと思っている?お前の将来の伴侶だ。死ぬ訳ないだろう?心配するな。」と本音を言えば『今、プロポーズするの……?遅いよ……っ!』と泣かれてしまった。
「俺は、お前が笑ってるのが好きだ。リオ、笑って……?」
『……ッ!……う、ん……ふふ。僕の旦那様は、ほんと、我儘、だな……。……お願い、どうか、生き延びて……僕は、貴方がいないと……いきて』
その言葉の後、リオの声が聞こえなくなって。
参謀から、魔王城の一部が勇者達に破壊されたと伝令が入る。
魔王城は俺の魔力を溜める貯蔵庫があり、そこが、いの一番に壊されたのだ。
そこは、リオへ語り掛けるために必要だった、場所。
「……いくか……待っていろ、リオ。……必ず……迎えに、いく。」
対峙した勇者達一行は、なかなかの腕っぷしで。
勝てるか、負けるかは五分五分だった。
参謀は、俺の背中を守ってくれていた。
「……俺の事なんか放っておいて、よかったのに。……物好きだな、お前は。」
「何を。貴方様がいてくださったから、魔国はここまで新しいものが取り入れられ、繁栄したのです。アステルフォード王国との国交も視野に入れていたのに……この仕打ち……我々は、対象国を履き違えていたのでしょうか……?!」
「……いや、一部の腐りきった人間が、あの国を腐らせている。今の国王は唆されているだけだと信じている。お前に、ひとつ頼みがある。……俺は勿論生き延びるが、お前も、生き延びろ。魔国を、アステルフォード王国と繋げることが出来るのはお前だけだ。」
「……主、様……?!……な、にを……!!!」
俺は、参謀に空間移動の陣を組み敷き飛ばした。
魔国と、アステルフォードの境目である魔の森へ。
俺の陣を防ごうと対抗する陣を編み込もうとしていた彼に胸が暖かくなる。
最期まで、俺に尽くしてくれようとしていた参謀だからこそ……俺の父のような、兄のような存在で、魔術の先生である、そんな彼だからこそ、この魔国の未来は託せる。
こんな風に、思えるようになったのも。
全てリオがいてくれたからだ。
「……さ、どっからでもきたらいい。……俺は、負けたりは、しない」
その時。
ざわ、と動いていなかった愛しい魔力が、動いた事に胸が高鳴る。
「……え……?……嘘、だろ……?魔力を拘束されて……動けない、筈じゃ……」
すごい勢いで。
だんだんと、俺の元へ、近付いてくる。
「……ッ!……リオ……!お前って、奴は……!」
嬉しさで、気付かなかった。聖女が魔術を展開していることに。
瞬間、聖女に拘束魔術をかけられ。
勇者のマスターソードで、心臓を貫かれた。
「……リ、……お……好きだ……お前と、ずっと、いっしょ、に……」
「オ、ウミ……?!」
ずっと直接聞きたかった声が聞こえて。そこに目を向けると、リオが立っていた。
俺が最期に見たのは、リオの……死んだような、顔。
そんな顔、させたかった、わけじゃ、ない。
……俺は、リオにただ、笑ってて、ほしかったのに。
「 ───────── ッ!う、わ、ぁ、あ、ぁ……ッ!!!!」
泣かないで……笑って?
お前にただ、笑っていてほしい。
俺の横で。
ずっと。
永遠に。
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