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18.魔当主様の名前と感情
しおりを挟む爺ちゃんには、部屋を出てすぐ、会いに行った。
コテンパンに怒られて、泣かれて、抱きしめられて。
爺ちゃんの愛情をたくさん、たくさん感じたのだった。
僕の中にあった闇の魔力を全て吸ったオウミは、一晩で、人間から当時の魔王とほぼ変わらない見た目に変わっていて。
その姿をみた爺ちゃんは、突然、土下座をして昨夜のお礼と、100年前の謝罪と、115年前に魔王城に招いてくれた感謝を述べた。
ずっと……大きいと思っていた爺ちゃんの背中は、何だか小さくて。
少し、寂しいような、切ないような、不思議な気分だ。
オウミは、そんな爺ちゃんに近付いて「モルドレッド卿、顔を上げてくれ」と声をかけた。
「……貴方が、リオの事を教えてくれたから、何もなかった俺の世界が色鮮やかになった。感謝こそすれ、憤りなど感じていない。寧ろ、謝りたいのはこちらの方だ。俺のせいで、リオを犯罪者にしてしまった。……すまなかった、モルドレッド卿。」
「……っ、いえ……!儂が、もっとお主の事を信じておれば……あの時の聖職者は、真実が暴かれ死罪になり申した。本来ならば、貴方を討伐など、おかしな話なのに……っ!……100年前、リオを救ってくださり、誠にありがとう、ございました……!」
「……モルドレッド卿。その事の感謝なら、俺だけではなく、レオニスにも。お願いして、いいだろうか……?」
突然の振りに、爺ちゃんは「レオ坊に……なぜ……?」とポカンとしている。
オウミが、レオニスも魔王の魂から錬成された転生者だと告げると「なんとぉぉぉ」と慄いた爺ちゃんはひっくり返ってしまった。
えっ腰大丈夫なの?!すごい音鳴ったけど……!
事の経緯を爺ちゃんにオウミが説明している間、レオニスが僕の耳元で「モルドレッド様は私のリオへの想いをずっと案じられておられたから……この結果が報告出来て、嬉しいよ。愛してる、リオ」と囁いてリップ音を立てる。
ちょ、国王陛下……あ、甘すぎませんか……!?
魔王の光の魔力と僕への甘さが全振りしているレオニスに頬を赤く染められてしまった。
説明の終わったオウミが、僕たちの雰囲気に気付いて「ちょっと、くっつき過ぎだから。リオ、いくらレオニスが俺だといっても、許せない事もあるからな。いちゃつくのは今はダメだぞ。」と割って入ってきて、可愛さにくすくす笑う僕を見て、爺ちゃんはますますポカンとしていた。
「何と……エリオスが……笑って、おる……、っ!名前……!エリオス……!エリオス、じゃな……!っ。すまなんだ……ずっと……お主に、辛い思いばかりさせておって……出来そこないの祖父で……ほんとにすまん……!」
「そんなこと、ない。爺ちゃんがいてくれたから……僕はここにいる。ここにいれたから……こうして魔王に……ふたりに逢えた。……ありがと、爺ちゃん。」
普段泣かない爺ちゃんが、干からびちゃうんじゃないかっていうくらい泣いて。
僕は目が腫れないように、爺ちゃんの目元に水魔法をかけたのだった。
アヤメは、予想通り聖女判定を受けた。
それにしても。アヤメとカイル様との雰囲気……というか距離感が、何だか不思議で。
レオニスに問いかけると「少し、微妙な距離だから、そっとしてあげてほしい」と言われた僕は、「あれ?オウミの事は気のせいだったのかな?」と頭が混乱した。
そんな僕に、オウミは耳元で「リオの考えている事は分かっている。色々あるんだ。人間って複雑で面白い生き物だよなあ」と囁かれ、そんなオウミを見ると魔王とほぼ同じ顔つきでフッと、僕を見て微笑む。
その微笑み方に魔王が重なって……そして、魔王がよく言ってた言葉に愛しさが募って……胸がキュぅっとなった。
(ごめん、魔王が好きすぎて魔王の面影を感じると他の事はどうでもよくなってしまうダメ人間すぎて、申し訳ない。)
そんな僕に、むっとしたレオニスが、ちゅ、と口唇を落とす。そして吃驚して固まってしまった僕の耳元で「余所見ばっかりしたら、今夜は大変なことになるぞ……?」と囁かれて爆散した。
レオ……っ!レオニス……っ!かっこよすぎる……っ!!!
見た目は完全にオウミの方が魔王に近い。けど、雰囲気は断然レオニスで。
僕の心臓が、いくつあっても足りない……っ!
「……そうだ。アヤメ様の聖女教育とオウミの魔術教育は、午後からの予定だ。今から魔国へ、行かないか。オウミに会わせたい人物が、いる。」
「……?構わないが……魔国に俺が会う必要がある者なんて……、……!ま、さか」
「その、まさか、だよ。今朝、オウミから過去の記憶を共有してもらった時に、知っている人物が現れて驚いていたんだ。彼には、連絡を取る必要があると思ってね。彼は、魔国とアステルフォード王国との国交に尽力してくれた、唯一の魔族。先程、貴方の話を伝令にて飛ばしたら、ぜひ今から会いたいと。……リオも、ぜひ。同席してほしい。彼は……私たちの、家族なんだ。」
魔王の、家族。
そう言われて、ひとりの魔族が思い浮かぶ。
魔王の話によく出てきていた、あの……!
「参謀的な……魔族……!」
「ふふ。そうだ。……将来、伴侶になるリオの事も紹介したい。」
伴侶、と言われて固まった。……伴侶。……伴侶?!
「え、えと、レオ、ニス???話が、え、どういう」
「リオ。リオは……俺と、レオニスから逃げられないんだ。……ひとりで、このまま魔塔で暮らす生活はもう、諦めてくれ。レオニスのやつ……今から1週間以内に法律を変える気らしいぞ。……ははっ。行動力のある旦那で……頼もしい、な?」
この国は、ひとりに伴侶がひとり。
勿論、相手は子を授かる事の出来る異性のみ。
そして、生命の錬成は、禁忌だ。
そして、法律を変えるには、多大な根回しと、根拠と、署名が必要で。
最低でも、半年はかかる。それを1週間と言われて耳を疑った。
「レオニスはその全てを覆そうとしている。出来る見通しも、立っていると。……ほんと、俺の片割れは、恐ろしいよ。……全部、お前と一緒になるためなんだと。……愛されているな、リオ。」
「……ッ!」
「私と、オウミが……貴方以外を受け入れるつもりなど毛頭ない事くらい……100年前から知っているだろう?……ああ、もう。……泣かせて、ばかりだな、私たちは。……私は……いや、私たちは。……貴方が笑ってるのが好きだ。リオ、笑って……?」
胸がギュッとなって。とても、苦しい。
僕の瞳から零れ落ちる雫が、パタパタと床を濡らして。
無理矢理、笑顔を作った僕を見て、「愛しすぎる……っ!」と僕の愛しい人たちは、僕を挟み込んで。
僕を優しく、抱きしめたのだった。
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