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みずきだいありー
今日のこと
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それは、突然だった。地面が鳴る。ゴーゴーといううめき声にも似た。低い音がして、地が震える。その時私は、まだアルバイト先にいた。しかし私は、これはただの地震ではないと感じた。言葉では表しにくいけど、確かに感じる。強い力どうしがぶつかり合う感覚、そして、お互いの力が同じように否定し合っている。店長たちは先に避難所となっている北ノ峰高校へ避難した。あとは私と同期の子が店内に客が残っていないか確認するだけである。先に出た店長からは、2歳になったばかりの娘さんと無事、合流できたと報告を受けた。
「水季、行くよ」
「うん」
私たちは、駆け出した。すると、1組の親子がいた。どうやら、娘さんらしき女の子が、足を怪我したらしい。
「大丈夫ですか」
「ああ、大丈夫だよ。この子が転んじゃてね」
「あっおじさん。もっと私に感謝しなきゃいけないだからね」
「わかってるさ」
「私がおじさんを引っ張らなかったらこの破片で身体が粉微塵だったんだから」
女の子が、隣の大型看板をバンバン叩く。この看板が頭上から落ちてきたということらしい。
「水季また揺れてる」
「そうだね、あの、立てますか」
「僕がこの子をおぶって行くよ」
「じゃあ、行きますよ」
私たち4人は、学校へ向けて走り出した。
学校まではあと少しのところで、一際眩しく閃光が辺りを包み込む。
「ウッ」
あれは、黒い光だ。
「お姉さんたち、瓦礫がたくさん降ってきました」
背負われている女の子が、空を指差して言う。それに私と、同期の子が見上げると、無数の瓦礫が、ミサイルのように迫りくる。
「きゃあああ」
同期の子が、かがんで叫んでいる。もうおしまいか。と思う私をよそに、男性は、なぜか笑顔だった。
そして、少し強いつむじ風とともに彼は現れた。
「フッ、ハッ。セイッ」
瓦礫は、彼の大剣3振りで塵と化し、私たちは、救われた。
「いやあ、ごめんね」
「全くだ。若田敏彦、ここは危険だ。君は早く安全な場所へ退避することをお勧めしよう」
「うん、ありがとう。君も気をつけてね」
大剣を振るう空飛ぶ騎士と、この若田敏彦という男性は知り合いなのだろうか。聞いてみたい気持ちを抑え。学校へと急いだ。
同期の子は、終始泣きっぱなしであったが、なんとか辿り着き、店長とも合流できた。しかしあの男性は、どこかへ行ってしまい、いろいろと聞きそびれてしまった。にもかかわらず、女の子は残って「何かお手伝いできること探しませんか」と明るく、私をボランティアに誘った。
「いいよ。ちょうど配給のお仕事のお手伝いを探しているらしいから、行きましょ」
「わかりました」
私は、アルバイト先の制服のまま、配給の仕事を始めた。女の子もそのままの格好で、汁物を作り始めた。
「あの、さっき一緒にいた方は」
「んっ、ああ、叔父さんですね。あの人は、私の叔父なんです。私は両親を幼い頃に亡くしてしまって、叔父さんが、養子にしてくれたんです」
私は、少し後悔した。事情が事情だけに、なんと話しを繋げたらいいか切り出せない。
「でも今は、叔父さんにも叔父さんだけの大切な人が出来たみたいなので、私はここに残りました。てへっ」
大切な人か。私の大切な人、お父さんやお母さんはもちろんのこと、学校の友達。そして何より、私に戦う勇気をくれた人
「ヒルデ先輩」
「ヒルデさんをご存知なのですか」
女の子が、聞き返してくる。心の声が口から紡がれてしまったようだ。
その後、私と先輩との出会いや先輩の学校生活はどんななのかとかを、彼女は聞いてくるので、私は、包み隠さずに答えた。よくよく考えてみれば、先輩の姓も「若田」であり。あの男性も若田だった。ならあの3人は、家族なのかもしれないな、と私は思った。
「全然似てない。だけど、心はいつも繋がっている、か」
さあ、私も早くお父さんやお母さん、それからお婆ちゃんに、無事生還したことを伝えに行かねば。そうして、私は体育館の中へと入って行った。今日のことは、忘れられない。忘れちゃいけない1日だったのかもしれない。
「水季、行くよ」
「うん」
私たちは、駆け出した。すると、1組の親子がいた。どうやら、娘さんらしき女の子が、足を怪我したらしい。
「大丈夫ですか」
「ああ、大丈夫だよ。この子が転んじゃてね」
「あっおじさん。もっと私に感謝しなきゃいけないだからね」
「わかってるさ」
「私がおじさんを引っ張らなかったらこの破片で身体が粉微塵だったんだから」
女の子が、隣の大型看板をバンバン叩く。この看板が頭上から落ちてきたということらしい。
「水季また揺れてる」
「そうだね、あの、立てますか」
「僕がこの子をおぶって行くよ」
「じゃあ、行きますよ」
私たち4人は、学校へ向けて走り出した。
学校まではあと少しのところで、一際眩しく閃光が辺りを包み込む。
「ウッ」
あれは、黒い光だ。
「お姉さんたち、瓦礫がたくさん降ってきました」
背負われている女の子が、空を指差して言う。それに私と、同期の子が見上げると、無数の瓦礫が、ミサイルのように迫りくる。
「きゃあああ」
同期の子が、かがんで叫んでいる。もうおしまいか。と思う私をよそに、男性は、なぜか笑顔だった。
そして、少し強いつむじ風とともに彼は現れた。
「フッ、ハッ。セイッ」
瓦礫は、彼の大剣3振りで塵と化し、私たちは、救われた。
「いやあ、ごめんね」
「全くだ。若田敏彦、ここは危険だ。君は早く安全な場所へ退避することをお勧めしよう」
「うん、ありがとう。君も気をつけてね」
大剣を振るう空飛ぶ騎士と、この若田敏彦という男性は知り合いなのだろうか。聞いてみたい気持ちを抑え。学校へと急いだ。
同期の子は、終始泣きっぱなしであったが、なんとか辿り着き、店長とも合流できた。しかしあの男性は、どこかへ行ってしまい、いろいろと聞きそびれてしまった。にもかかわらず、女の子は残って「何かお手伝いできること探しませんか」と明るく、私をボランティアに誘った。
「いいよ。ちょうど配給のお仕事のお手伝いを探しているらしいから、行きましょ」
「わかりました」
私は、アルバイト先の制服のまま、配給の仕事を始めた。女の子もそのままの格好で、汁物を作り始めた。
「あの、さっき一緒にいた方は」
「んっ、ああ、叔父さんですね。あの人は、私の叔父なんです。私は両親を幼い頃に亡くしてしまって、叔父さんが、養子にしてくれたんです」
私は、少し後悔した。事情が事情だけに、なんと話しを繋げたらいいか切り出せない。
「でも今は、叔父さんにも叔父さんだけの大切な人が出来たみたいなので、私はここに残りました。てへっ」
大切な人か。私の大切な人、お父さんやお母さんはもちろんのこと、学校の友達。そして何より、私に戦う勇気をくれた人
「ヒルデ先輩」
「ヒルデさんをご存知なのですか」
女の子が、聞き返してくる。心の声が口から紡がれてしまったようだ。
その後、私と先輩との出会いや先輩の学校生活はどんななのかとかを、彼女は聞いてくるので、私は、包み隠さずに答えた。よくよく考えてみれば、先輩の姓も「若田」であり。あの男性も若田だった。ならあの3人は、家族なのかもしれないな、と私は思った。
「全然似てない。だけど、心はいつも繋がっている、か」
さあ、私も早くお父さんやお母さん、それからお婆ちゃんに、無事生還したことを伝えに行かねば。そうして、私は体育館の中へと入って行った。今日のことは、忘れられない。忘れちゃいけない1日だったのかもしれない。
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