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鳴動の章
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放たれた三本の矢は真っ直ぐに目標を捉える。けれど二人は射抜かれなかった。
「私は学校が嫌いでした。私を傷つける人がいる場所だと思ってました。でも私は学校を好きになったんです。だから私の学校も街も誰にも壊させません。
お願い、全てを守ってエイ・ジス」
「何」
驚きを隠せないガイアは、悔しそうに歯噛みして後退していった。
「先輩方、お怪我は」
けほっけほっ、二人は。
粉塵が晴れ二人がいた学校の前庭が徐々に見え始めると、二人は健在だった。しかし二人の前に佇む人影がある。
大きな盾を持ってこちらに駆け寄って来たのは水季だった。
「水季、その格好」
「えと、えと、ああ恥ずかしい」
水季は持っていた盾で顔を隠してしまった。
「顔を上げて水季、あなたのおかげで二人は助かったわ。ありがとう」
「私、お役に立てて嬉しいです」
「私からもお礼を言わせてください」
槍をしまって美麗はお辞儀する。水季は「そんなそんな」と慌てて美麗の元へ駆け寄っていった。
私は奏花と華蓮の元へ行き肩をつっつくと、
「ヒャウウウ、死んじゃうよー華蓮ちゃーん」
「ウグググ、ソウ・・・カ、お前の馬鹿力で・・・死ぬ」
「華蓮ちゃん、華蓮ちゃーん」
「二人とも大丈夫よ。水季が私の後輩が守ってくれたわ」
ひとまず危機は去った。本当に良かったと一息つきたいけれど、水季があんな信仰力の塊みたいな盾を持っていたなんて、コイオスとクリオスと相談してみるか。
「美麗、一時休戦にしない。こんなところにいたらまた狙われるわよ」
「そう、ですね。わかりました。一時的ですがその申し出を受けさせていただきます」
私たちはみんなが集まっているという体育館へ向かった。
集められた生徒たちは、すでに散り散りになっており、整列は解かれていた。その中にコイオスとクリオスの姿を見つける。
「状況は」
「問題はありません。ただし外へ出ることは避けるようにと先程通達がありました」
「姉様、みんな混乱して動揺が広がっているのです」
不安そうな顔をする者、諦めを口にする者、投げやりな者、俯く者、互いに抱き合う者、この状況は確かめるべくもなく悪いとわかる。
ガイアはまた攻めてくる。一難去ってまた一難。けれど・・・・・。
そういえば。
「制服よく似合ってるね美麗」
「・・・・・複雑な気持ちです。でも純粋な部分だけを言うなら嬉しいですね。こんな日が来るとは思っていませんでしたから」
私と美麗、それから水季は着替え直していた。流石に武装した姿ではいるのはまずい。
「そうだ水季ちゃん。さっきは二人を守ってくれてありがとう。私の大切な人だから本当にありがとう」
「い、いえいえ、私はただ無我夢中で、なんとか守らなくちゃって思っただけですから」
水季も、なんか変わったな色々と。
それにしても水季の力は誰のものなんだろう。
「アテナですよ。姉様」
「アテナって・・・誰」
「まあ、そんなことは後回しにして、
ここは一度トッシーに連絡してみよう。えいっ」
クリオスは持っていたスマホで若に電話し始めた。迷うそぶりが全くない、これが行動力の違いか。
「姉様、アレはただの能天気かと」
「裏を返せばね」
「それでね姉様が来てくれて、それから水季ちゃんがね、ガイアの攻撃をガチーンと防いで・・・・・」
ここで待ってても仕方ないな、美麗ならきっと守ってくれる。水季はまだ少し心配だけど、それこそ美麗がついているし。
「ねえ、私から提案なんだけど二人はここに残ってくれない」
「・・・・・ガイアを倒しに行くんですか」
美麗が少し怪訝そうな顔をする。
「心配しなくても大丈夫よ、周りの敵を掃除してくるだけだから。そうじゃないといつまでも的になる。クラスのみんなや他の生徒にも被害が出る。逃げる場所は確かに少ないかもしれないけど、ここよりマシなところはいくらかある。そこまで行くためにまず、学校周辺の敵を倒さないとね」
「そうですか。ならここの守りは任せてください」
「私も精一杯、先輩の不在を守ってみせます」
「頼んだわよ二人とも」
「「はい」」
「コイオス、クリオス。行くわよ」
私たちは再び結界の外に出た。
結構な数が集まってきている。手短にとはいきそうにない。なら一点突破で切り開くしかないか。
「結界はどれほど保ちそう」
「二十分くらいなら大丈夫だよ姉様」
「オッケー、ならコイオスとクリオスは学校周辺を特に正門前の敵を掃討してちょうだい。私は山に続く道を拓いてくるから」
翼はいつものように羽ばたき、私の体を浮遊させる。
さあ行こうか。
出会い頭に一体目の黒騎士を両断する。みんなを安全なところへ移すには山へと続くこの道が一番近い。けれど切り拓くにしても、まあ、湧くは湧くはでキリがない。
「強行策も視野に入れないといけないかな」
ジュピトリアを変形させ弓にする。そして光で生成されたツルを引き狙いを定める。
「アローフォーム、ホールドアウト」
ジュピトリアに埋め込まれた宝石が強く光を放ち、次第に収束していき、一本の矢を形どる。
ケルベロスは前面に展開し、ゲートを作るその中を通った矢は幾重にも分散し前方の敵を排除した。この手はあまり使いたくない。一掃できるのはできるのだが、文字通り一掃してしまうので前方の景色は変わってしまう。
「誰もいないのはわかってたけど、さすがにやりすぎたわね」
粉塵と火の粉が辺りを漂っている。けれど道ができた今なら、体育館に残っているみんなを避難させられる。
「コイオス、クリオスみんなを避難させて、みんなが山頂付近の神社に辿り着くまで死守するのよ」
「承知」
「ガッテンです」
一人、また一人と体育館から人々が出てくる。走る人、車に乗り込む人など様々だが、ともかく神社付近はどうも被害はない。だからそこまで行けばきっと大丈夫。
「美麗、聞いての通りよみんなが移動する間敵を寄せ付けないで」
「わかりました」
「水季は」
「先頭でもしものためにカバーに入ると先陣を駆けていきましたよ」
「そう・・・なんだ」
なんだろう。いつもの水季より雄々しいような気がするけど、でも前方を守ってくれるならこちらも、側面と後方に注意するだけだしありがたい。
ニンフと黒騎士はまたぞろやってくる。
「増援のお出ましね。敵を撃退すればいいだけだから深追いはしないで、さあ、みんな・・・行くよ」
「「はい」」
アローフォームを解除して、ケルベロスを射出する。すかさず地上の黒騎士を真上から煌刃を逆さにして串刺しにする。
「やあああ」
大出力の刃は、三体を同時に切り裂く。私の背後から来たニンフをケルベロスが貫いていく。そして、ケルベロスはジュピトリアの軸に再び装着される。
周辺はそこそこ片付いた。おそらくまだ機を窺って出てこない敵がいるのだろうが、こちらとしては時間が稼げるならそれでいい。他のみんなも無理してなければいいのだけど。
少し後退し列の最後尾を護衛すること数十分。後ろは落ち着き始めたので上をちらりと見上げると、クリオスが影を自在に操り敵と戦っている。そのさらに奥ではコイオスが結界の維持しつつ。グリフォンを使役し敵を撹乱していた。
「攻勢がやめば援護にいけるけれど」
そうも言っていられない。ゼニルからハーキーを分離し、左手にゼニル、右手にハーキーをしっかりと握り、ゾロゾロとやってくる敵を迎え撃つ。
軽くなった剣はしなやかな軌道を描き敵を刻んで行く。
「光を放てハーキージィアァァァン」
ハーキージィアンの宝石がキラリと煌めき、剣先から圧縮された光が放たれる。
ふぅぅう。
さらに後退する。山の麓まであと少し、ここまでくるとさすがに奴らも執拗に追ってこなくなる。これは推測なのだが、神社の神域がこの山を覆うように在るため下級のニンフや黒騎士は踏み込めないのだろう。
その証拠にここの入り口もそうだが山自体も被害がない。それこそ先程のアローによる放射射撃の爪痕すらない。
「私も敵だと思われてなければいいけど」
最後の人が山道に入り階段を駆け上がって行くのを見送ると、みんなが戻ってきた。
「お疲れ、怪我した人はいるかしら」
「いいえ、全員無事境内へ、姉様これからどうしましょうか」
「私は若の元へ戻りって太平洋に出現したガイアの本拠地を叩きに行くわ。あなた達は」
「我らは姉様とともに参ります」
「攻める時は一人でも多い方がいいのです」
「そう。なら手伝ってもらおうかしら。美麗は・・・どうするの」
美麗は槍を突き立て少し俯く。そして「私も行きます」と一言。
そうなるとここの守りが薄くなるけれど、一か八かここの神様に頼ることにしよう。
若の事務所はすでにもぬけのからだった。きっと若もプルトとどこかに避難したのだろう。ムネモシュネの姿もない。
少しの食料とスマホ用の充電器を小さめの鞄にしまい事務所を後にした。
港までの道中は言うまでもなく敵を退けながら進んできたわけだが、流石に港周辺は敵が多く一度バラバラに別れて行動することにした。
「前にもここに結構な数がいたっけ」
貨物の隙間から敵の様子を窺っている時、不意に私のポケットが振動する。
「ひゃう」
いきなりなんなの。
スマホを取り出すと、若田敏彦の文字が画面に映されていた。
ピッ。
「若、どうしたの」
「よかった。繋がった悪いんだけどさお嬢さん落ち着いて聞いてくれ。僕とプルトさんは捕まっちゃったんだよね」
「はぁあ」
「仕方ないじゃないか。これが一番の得策だったんだ」
「それで、今敵地にいると」
「そうその通りなんだけどさ、どうもここは海の上じゃないみたいだ。潮の香りがしない。僕たちが思っていたように太平洋の島が本拠地じゃない可能性がある。乗り込むなら十分用心してくれ。誰か来た。一旦切るね」
若は言うだけ言うと、ブツッと通話を切った。
困ったことになった。そりゃ誰も事務所にいないわけだ。とりあえず手がかりがない今闇雲に二人を探しても時間がない。なら島に向かって手がかりがないか探るのが妥当なわけだ。
そうと決まったら行くしかない。となると、船の奪取が必要不可欠か。
「おい、お前さんあっちにいい感じの船があるぜ」
「あら、ほんと強そうな艦って、あなたどこにいたの」
ロシアにいた自称地母神のミニマム神が私の肩に座っていた。
「あなたのうなじあたりかな。見つからないようにすんの大変だったんだよ」
「でもどうしてついて来ちゃったの。てっきり逃げたかと思ったのに」
「んー、そうしようと思ってたけどやっぱり見知らぬ土地で逃げるとあとあと大変かなと思って、それにあの高慢ちきなあいつに一発お見舞いしたいしね」
「わかった。振り落とされないでね」
「アホ毛に捕まっとくから大丈夫さ」
「アホ毛言うな。それはただのくせ毛よ」
とりあえず海には出れそう。でもみんなに知らせるには何か良い手はないものか。
おお、アレは花火の使いかけ。昼間だから見えるかわからないけど、いいこと思いついた。
「ねえ、手伝ってもらえないかしら」
「なんだい、なんでも言ってみな」
「この花火を両手に持って適当に振ってほしいの。もちろん上空でね」
「ええ、発煙筒がわりに私を使うの、しょうがない子だな。今回だけだよ」
煌刃で花火を着火し、準備を整えミニマム神はサイレンランプのようにくるくると回る 。
アレなら何事かと見に来るに違いない。まあ来るのは味方だけとは限らないだろうけど。
案の定私の予想は当たってしまう。
「なんかへんな三人組がこっちに来てる気がするのだけど」
「私は隠れているから、頑張ってね」
くそお。人ごとだと思って軽い口調で言ってくれちゃって。
「もう何よあんたたちは。なんなのよ、なんなのよ、なんなのよ」
敵は今までのニンフと少し違うがやっぱり別の尖兵なのだろうか。それとも衛士かしら。
どちらにせよ・・・・・。
「ここで倒す」
煌刃剣ジュピトリアを構える。
「少し私の力を貸してやろう、そら、足に力を溜めろ」
目面しいことに過去の私も力を貸してくれるらしい。私は言われるがままに踵とつま先に力を入れる。
「まだ踏み出すな。・・・・・・まだだ。・・・よし今だ」
踏み出そうと地を蹴ると、コンクリートにはヒビが入り少し抉れた。しかし私の跳躍はまさに豪速で行われ、すでに敵の一人と接敵しそうな間合いにいた。すかさず剣を振ると敵を両断し私は敵の後方に地面を擦りながら停止した。
ズザザザー。
「とっとっとぉ・・・すごい」
仲間がやられたことに、彼女らは歯をギリギリと音を立てこちらを睨みつける。
よく見るとすごい牙と爪。
「悪いけど、まとめてカタをつける」
懐に剣を構えて刃渡りを隠し敵に突貫する。
一撃目・・・・・浅い。
「やああ」
二人はゴロゴロと転がり、紙一重のところを逃れるが、私はその隙を逃さない。
「これでおしまいよ、せいッ、やあっ」
起き上がる二人の隙をついて私は一人目を脇腹から串刺し、二人目は背中からまとめて一気に煌刃に突き刺し、剣を突き上げる。
足で敵を抑えつけて一気に剣を引き抜く。
二人は泥となって消え去る。
ふう、これで敵は最後かな。さて早いとこあの船に乗ろう。みんなは良かった来たみたい。
でもこの艦ってどうやって動かすのかなぁ。
「私は学校が嫌いでした。私を傷つける人がいる場所だと思ってました。でも私は学校を好きになったんです。だから私の学校も街も誰にも壊させません。
お願い、全てを守ってエイ・ジス」
「何」
驚きを隠せないガイアは、悔しそうに歯噛みして後退していった。
「先輩方、お怪我は」
けほっけほっ、二人は。
粉塵が晴れ二人がいた学校の前庭が徐々に見え始めると、二人は健在だった。しかし二人の前に佇む人影がある。
大きな盾を持ってこちらに駆け寄って来たのは水季だった。
「水季、その格好」
「えと、えと、ああ恥ずかしい」
水季は持っていた盾で顔を隠してしまった。
「顔を上げて水季、あなたのおかげで二人は助かったわ。ありがとう」
「私、お役に立てて嬉しいです」
「私からもお礼を言わせてください」
槍をしまって美麗はお辞儀する。水季は「そんなそんな」と慌てて美麗の元へ駆け寄っていった。
私は奏花と華蓮の元へ行き肩をつっつくと、
「ヒャウウウ、死んじゃうよー華蓮ちゃーん」
「ウグググ、ソウ・・・カ、お前の馬鹿力で・・・死ぬ」
「華蓮ちゃん、華蓮ちゃーん」
「二人とも大丈夫よ。水季が私の後輩が守ってくれたわ」
ひとまず危機は去った。本当に良かったと一息つきたいけれど、水季があんな信仰力の塊みたいな盾を持っていたなんて、コイオスとクリオスと相談してみるか。
「美麗、一時休戦にしない。こんなところにいたらまた狙われるわよ」
「そう、ですね。わかりました。一時的ですがその申し出を受けさせていただきます」
私たちはみんなが集まっているという体育館へ向かった。
集められた生徒たちは、すでに散り散りになっており、整列は解かれていた。その中にコイオスとクリオスの姿を見つける。
「状況は」
「問題はありません。ただし外へ出ることは避けるようにと先程通達がありました」
「姉様、みんな混乱して動揺が広がっているのです」
不安そうな顔をする者、諦めを口にする者、投げやりな者、俯く者、互いに抱き合う者、この状況は確かめるべくもなく悪いとわかる。
ガイアはまた攻めてくる。一難去ってまた一難。けれど・・・・・。
そういえば。
「制服よく似合ってるね美麗」
「・・・・・複雑な気持ちです。でも純粋な部分だけを言うなら嬉しいですね。こんな日が来るとは思っていませんでしたから」
私と美麗、それから水季は着替え直していた。流石に武装した姿ではいるのはまずい。
「そうだ水季ちゃん。さっきは二人を守ってくれてありがとう。私の大切な人だから本当にありがとう」
「い、いえいえ、私はただ無我夢中で、なんとか守らなくちゃって思っただけですから」
水季も、なんか変わったな色々と。
それにしても水季の力は誰のものなんだろう。
「アテナですよ。姉様」
「アテナって・・・誰」
「まあ、そんなことは後回しにして、
ここは一度トッシーに連絡してみよう。えいっ」
クリオスは持っていたスマホで若に電話し始めた。迷うそぶりが全くない、これが行動力の違いか。
「姉様、アレはただの能天気かと」
「裏を返せばね」
「それでね姉様が来てくれて、それから水季ちゃんがね、ガイアの攻撃をガチーンと防いで・・・・・」
ここで待ってても仕方ないな、美麗ならきっと守ってくれる。水季はまだ少し心配だけど、それこそ美麗がついているし。
「ねえ、私から提案なんだけど二人はここに残ってくれない」
「・・・・・ガイアを倒しに行くんですか」
美麗が少し怪訝そうな顔をする。
「心配しなくても大丈夫よ、周りの敵を掃除してくるだけだから。そうじゃないといつまでも的になる。クラスのみんなや他の生徒にも被害が出る。逃げる場所は確かに少ないかもしれないけど、ここよりマシなところはいくらかある。そこまで行くためにまず、学校周辺の敵を倒さないとね」
「そうですか。ならここの守りは任せてください」
「私も精一杯、先輩の不在を守ってみせます」
「頼んだわよ二人とも」
「「はい」」
「コイオス、クリオス。行くわよ」
私たちは再び結界の外に出た。
結構な数が集まってきている。手短にとはいきそうにない。なら一点突破で切り開くしかないか。
「結界はどれほど保ちそう」
「二十分くらいなら大丈夫だよ姉様」
「オッケー、ならコイオスとクリオスは学校周辺を特に正門前の敵を掃討してちょうだい。私は山に続く道を拓いてくるから」
翼はいつものように羽ばたき、私の体を浮遊させる。
さあ行こうか。
出会い頭に一体目の黒騎士を両断する。みんなを安全なところへ移すには山へと続くこの道が一番近い。けれど切り拓くにしても、まあ、湧くは湧くはでキリがない。
「強行策も視野に入れないといけないかな」
ジュピトリアを変形させ弓にする。そして光で生成されたツルを引き狙いを定める。
「アローフォーム、ホールドアウト」
ジュピトリアに埋め込まれた宝石が強く光を放ち、次第に収束していき、一本の矢を形どる。
ケルベロスは前面に展開し、ゲートを作るその中を通った矢は幾重にも分散し前方の敵を排除した。この手はあまり使いたくない。一掃できるのはできるのだが、文字通り一掃してしまうので前方の景色は変わってしまう。
「誰もいないのはわかってたけど、さすがにやりすぎたわね」
粉塵と火の粉が辺りを漂っている。けれど道ができた今なら、体育館に残っているみんなを避難させられる。
「コイオス、クリオスみんなを避難させて、みんなが山頂付近の神社に辿り着くまで死守するのよ」
「承知」
「ガッテンです」
一人、また一人と体育館から人々が出てくる。走る人、車に乗り込む人など様々だが、ともかく神社付近はどうも被害はない。だからそこまで行けばきっと大丈夫。
「美麗、聞いての通りよみんなが移動する間敵を寄せ付けないで」
「わかりました」
「水季は」
「先頭でもしものためにカバーに入ると先陣を駆けていきましたよ」
「そう・・・なんだ」
なんだろう。いつもの水季より雄々しいような気がするけど、でも前方を守ってくれるならこちらも、側面と後方に注意するだけだしありがたい。
ニンフと黒騎士はまたぞろやってくる。
「増援のお出ましね。敵を撃退すればいいだけだから深追いはしないで、さあ、みんな・・・行くよ」
「「はい」」
アローフォームを解除して、ケルベロスを射出する。すかさず地上の黒騎士を真上から煌刃を逆さにして串刺しにする。
「やあああ」
大出力の刃は、三体を同時に切り裂く。私の背後から来たニンフをケルベロスが貫いていく。そして、ケルベロスはジュピトリアの軸に再び装着される。
周辺はそこそこ片付いた。おそらくまだ機を窺って出てこない敵がいるのだろうが、こちらとしては時間が稼げるならそれでいい。他のみんなも無理してなければいいのだけど。
少し後退し列の最後尾を護衛すること数十分。後ろは落ち着き始めたので上をちらりと見上げると、クリオスが影を自在に操り敵と戦っている。そのさらに奥ではコイオスが結界の維持しつつ。グリフォンを使役し敵を撹乱していた。
「攻勢がやめば援護にいけるけれど」
そうも言っていられない。ゼニルからハーキーを分離し、左手にゼニル、右手にハーキーをしっかりと握り、ゾロゾロとやってくる敵を迎え撃つ。
軽くなった剣はしなやかな軌道を描き敵を刻んで行く。
「光を放てハーキージィアァァァン」
ハーキージィアンの宝石がキラリと煌めき、剣先から圧縮された光が放たれる。
ふぅぅう。
さらに後退する。山の麓まであと少し、ここまでくるとさすがに奴らも執拗に追ってこなくなる。これは推測なのだが、神社の神域がこの山を覆うように在るため下級のニンフや黒騎士は踏み込めないのだろう。
その証拠にここの入り口もそうだが山自体も被害がない。それこそ先程のアローによる放射射撃の爪痕すらない。
「私も敵だと思われてなければいいけど」
最後の人が山道に入り階段を駆け上がって行くのを見送ると、みんなが戻ってきた。
「お疲れ、怪我した人はいるかしら」
「いいえ、全員無事境内へ、姉様これからどうしましょうか」
「私は若の元へ戻りって太平洋に出現したガイアの本拠地を叩きに行くわ。あなた達は」
「我らは姉様とともに参ります」
「攻める時は一人でも多い方がいいのです」
「そう。なら手伝ってもらおうかしら。美麗は・・・どうするの」
美麗は槍を突き立て少し俯く。そして「私も行きます」と一言。
そうなるとここの守りが薄くなるけれど、一か八かここの神様に頼ることにしよう。
若の事務所はすでにもぬけのからだった。きっと若もプルトとどこかに避難したのだろう。ムネモシュネの姿もない。
少しの食料とスマホ用の充電器を小さめの鞄にしまい事務所を後にした。
港までの道中は言うまでもなく敵を退けながら進んできたわけだが、流石に港周辺は敵が多く一度バラバラに別れて行動することにした。
「前にもここに結構な数がいたっけ」
貨物の隙間から敵の様子を窺っている時、不意に私のポケットが振動する。
「ひゃう」
いきなりなんなの。
スマホを取り出すと、若田敏彦の文字が画面に映されていた。
ピッ。
「若、どうしたの」
「よかった。繋がった悪いんだけどさお嬢さん落ち着いて聞いてくれ。僕とプルトさんは捕まっちゃったんだよね」
「はぁあ」
「仕方ないじゃないか。これが一番の得策だったんだ」
「それで、今敵地にいると」
「そうその通りなんだけどさ、どうもここは海の上じゃないみたいだ。潮の香りがしない。僕たちが思っていたように太平洋の島が本拠地じゃない可能性がある。乗り込むなら十分用心してくれ。誰か来た。一旦切るね」
若は言うだけ言うと、ブツッと通話を切った。
困ったことになった。そりゃ誰も事務所にいないわけだ。とりあえず手がかりがない今闇雲に二人を探しても時間がない。なら島に向かって手がかりがないか探るのが妥当なわけだ。
そうと決まったら行くしかない。となると、船の奪取が必要不可欠か。
「おい、お前さんあっちにいい感じの船があるぜ」
「あら、ほんと強そうな艦って、あなたどこにいたの」
ロシアにいた自称地母神のミニマム神が私の肩に座っていた。
「あなたのうなじあたりかな。見つからないようにすんの大変だったんだよ」
「でもどうしてついて来ちゃったの。てっきり逃げたかと思ったのに」
「んー、そうしようと思ってたけどやっぱり見知らぬ土地で逃げるとあとあと大変かなと思って、それにあの高慢ちきなあいつに一発お見舞いしたいしね」
「わかった。振り落とされないでね」
「アホ毛に捕まっとくから大丈夫さ」
「アホ毛言うな。それはただのくせ毛よ」
とりあえず海には出れそう。でもみんなに知らせるには何か良い手はないものか。
おお、アレは花火の使いかけ。昼間だから見えるかわからないけど、いいこと思いついた。
「ねえ、手伝ってもらえないかしら」
「なんだい、なんでも言ってみな」
「この花火を両手に持って適当に振ってほしいの。もちろん上空でね」
「ええ、発煙筒がわりに私を使うの、しょうがない子だな。今回だけだよ」
煌刃で花火を着火し、準備を整えミニマム神はサイレンランプのようにくるくると回る 。
アレなら何事かと見に来るに違いない。まあ来るのは味方だけとは限らないだろうけど。
案の定私の予想は当たってしまう。
「なんかへんな三人組がこっちに来てる気がするのだけど」
「私は隠れているから、頑張ってね」
くそお。人ごとだと思って軽い口調で言ってくれちゃって。
「もう何よあんたたちは。なんなのよ、なんなのよ、なんなのよ」
敵は今までのニンフと少し違うがやっぱり別の尖兵なのだろうか。それとも衛士かしら。
どちらにせよ・・・・・。
「ここで倒す」
煌刃剣ジュピトリアを構える。
「少し私の力を貸してやろう、そら、足に力を溜めろ」
目面しいことに過去の私も力を貸してくれるらしい。私は言われるがままに踵とつま先に力を入れる。
「まだ踏み出すな。・・・・・・まだだ。・・・よし今だ」
踏み出そうと地を蹴ると、コンクリートにはヒビが入り少し抉れた。しかし私の跳躍はまさに豪速で行われ、すでに敵の一人と接敵しそうな間合いにいた。すかさず剣を振ると敵を両断し私は敵の後方に地面を擦りながら停止した。
ズザザザー。
「とっとっとぉ・・・すごい」
仲間がやられたことに、彼女らは歯をギリギリと音を立てこちらを睨みつける。
よく見るとすごい牙と爪。
「悪いけど、まとめてカタをつける」
懐に剣を構えて刃渡りを隠し敵に突貫する。
一撃目・・・・・浅い。
「やああ」
二人はゴロゴロと転がり、紙一重のところを逃れるが、私はその隙を逃さない。
「これでおしまいよ、せいッ、やあっ」
起き上がる二人の隙をついて私は一人目を脇腹から串刺し、二人目は背中からまとめて一気に煌刃に突き刺し、剣を突き上げる。
足で敵を抑えつけて一気に剣を引き抜く。
二人は泥となって消え去る。
ふう、これで敵は最後かな。さて早いとこあの船に乗ろう。みんなは良かった来たみたい。
でもこの艦ってどうやって動かすのかなぁ。
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