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プロローグ
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「早速なんだけど、春休みは海外で過ごさないかい」
満面の笑みで若が居間にやって来て、私と真理亜に告げる。
「へぇ」
「いきなりだね。叔父さん」
私たちの投げやりな態度に、若は肩を落として話を続ける。
「実は、ギリシャの企業から仕事の依頼があって、ぜひ我が社にお越しくださいっていう手紙が届いたんだ」
「罠ね」
「罠ですね」
「おいおい、お嬢さんたち話したこともない人を疑う大人になっちゃあいけないぞ」
そう言って若は、机の前にある座布団に座った。真理亜は宿題を、私は本を。それぞれやりたいことをしているのだが、若はそれでもめげない。
「本当に、見に行くだけでいいみたいだしさ」
すると、いつの間に入っていたのか、コイオスとクリオスが私の両隣に正座していた。
「ギリシャ行きですか?」
「ああ、そうだよ」
と、手紙を2人に渡す。
「コイオスは賛成です」
「クリオスも賛成です」
手紙を広げて、まだ読んでもいないというのに、2人は賛成の意を示した。えっと、なになに。私はとりあえずその企業から来た手紙とやらを読んでみることにした。
『初めまして、ドーリアカンパニー社長、セルバン・イオーニアです。今回私どもは、勝手ながら若田敏彦殿に開発協力いただきたくお手紙を送らせていただきました。つきましては、航空券ならびにホテル二週間分の料金は全てこちらで用意させていただきます。なお開発協力は、若田様がいらっしゃた時点で、開発協力するという意志と受け取る次第でございますので、あらかじめご理解とご了承下さい』
「どうだい、悪い話じゃあないだろう」
「んー。やっぱり出来過ぎなんじゃない。この話」
行った時点で開発に参加することが決定だなんて、おかしな話である。それに、行った時点というのは、どこに行った時点なのか。会社に入った時点なのかそれともギリシャに着いた時点かもしれない。「私は、旅費がかからないということなので」と先ほどとは打って変わり真理亜は、すっかり行く気満々である。
私は、どうにもきな臭いので、オケアノスたちの元に訪れた。彼らはずっとエデンの園で過ごしていた。3ヶ月ぶりだが、見た目はどこも変わりなかったが、
「あら、ヒルデいらっしゃい」
テテュスが、柔らかい声で出迎えてくれた。石造り家(城?神殿?)みたいなところに住んでいる。
「その子は?」
テテュスの腕には静かに眠る赤ちゃんが抱かれていた。
「ああ、貴女は知らなかったわね。この子は、私とオケアノスの子よ名前はメティス。あとクリュメとアシアという子が奥で寝てるわ。みんな女の子なの」
「へぇー、テテュスとオケアノスが、
・・・・・えぇぇぇー」
「しぃー」
私は、両手で口を塞ぐが、驚きは止まらない。だが、赤ちゃんを起こすのも忍びないとも思い、深呼吸をして、心を落ち着かせる。
「テテュス、とりあえずおめでとう」
「ええ、ありがとう。でも、とりあえずはよけいですよ。ヒルデ」
「うん。でも今日は、ちょっと急いでいるんだ」
テテュスの子が生まれたことは、本当におめでたいことなのだが、本題に入らせてもう。
「実は、ギリシャに行くことになりそうなんだ」
「まあ、急なことで」
「そうなんだ。若のクライアントが、ギリシャの企業の社長で、家族でとギリシャに私たちを招待したんだけど、不審な点がいくつもあるんだ」
「と言いますと」
「旅費は全て企業持ち、若と真理亜だけでなく、私とコイオス、クリオスの分まで同封された。飛行機の航空券。そして謎の制約」
テテュスは、少し間を空けて言う。
「一概には、なんとも言えませんが、オケアノスには、私から伝えておきましょう。でも、ヒルデにとって、ギリシャへ行くのは、いいことかもしれませんよ。私たちは、もともとギリシャから始まったのですから。またこの話は別の機会に」
テテュスは、ニッコリと笑って、リンゴをいくつか籠に見繕って、私に持たせた。
「貴女が、自在にドアを開閉することができるようになってから、ほんの僅かですが、こうして頼ってくれる事は、とても嬉しいのですよ。またいつでもいらっしゃいな。さあ扉を開けて」
私の目の前には、白い扉。それを開けると、若田邸の私の部屋に繋がっている。そして私が一歩踏み出した時、
「もし困ったことがあったら、血脈をたどりなさい」
「・・・・・。うん、ありがとう」
バタンとドアを閉めると、扉は次第に薄れて消えた。血脈とは何を指すのだろうか。誰もいない部屋に1人たたずんで、思考を巡らすけれどこれといったことが思い浮かばないので、一度茶の間に戻ることにした。
1階に下りると、若と真理亜だけでなく、クリオスもスーツケースに二週間分の衣類を敷き詰めていた。コイオスだけは、ダイニングで、紅茶を啜っていた。
「ねえ、ちょっといい。私も行くわ」
「そうと決まれば、お嬢さんも急いで荷造りしないとだね。その会社には、明後日までに行かないといけないからね。今日の午後には、ここを出発してギリシャの夕方くらいに着くと思うよたぶんね」
「飛行機?わざわざそんなもので行くの。私が扉を出してあげるからそれで行きましょ」
時間がないと言うなら、私が扉を開けるだけでいい。それに、ちょっとした練習にはいい機会なのだ。エデンの園とここを繋ぐことは、容易なのだからきっと、日本とギリシャを繋ぐことも出来るだろうし、まあなんとかなるわ。
「ゲートリンク、オープン」
イメージする。私の目の前には扉があると。イメージする。ギリシャのホテルの目の前には扉が現れるとイメージする。ここの扉とあちらの扉が繋がっていると。
「通った」
目を開けると、石造りの扉が私たちを見下ろすかのように、居間に佇んでいた。
「さあ、いつでも行けるわよ。ギリシャだろうと冥界だろうと何処へでも行ってやるわ」
満面の笑みで若が居間にやって来て、私と真理亜に告げる。
「へぇ」
「いきなりだね。叔父さん」
私たちの投げやりな態度に、若は肩を落として話を続ける。
「実は、ギリシャの企業から仕事の依頼があって、ぜひ我が社にお越しくださいっていう手紙が届いたんだ」
「罠ね」
「罠ですね」
「おいおい、お嬢さんたち話したこともない人を疑う大人になっちゃあいけないぞ」
そう言って若は、机の前にある座布団に座った。真理亜は宿題を、私は本を。それぞれやりたいことをしているのだが、若はそれでもめげない。
「本当に、見に行くだけでいいみたいだしさ」
すると、いつの間に入っていたのか、コイオスとクリオスが私の両隣に正座していた。
「ギリシャ行きですか?」
「ああ、そうだよ」
と、手紙を2人に渡す。
「コイオスは賛成です」
「クリオスも賛成です」
手紙を広げて、まだ読んでもいないというのに、2人は賛成の意を示した。えっと、なになに。私はとりあえずその企業から来た手紙とやらを読んでみることにした。
『初めまして、ドーリアカンパニー社長、セルバン・イオーニアです。今回私どもは、勝手ながら若田敏彦殿に開発協力いただきたくお手紙を送らせていただきました。つきましては、航空券ならびにホテル二週間分の料金は全てこちらで用意させていただきます。なお開発協力は、若田様がいらっしゃた時点で、開発協力するという意志と受け取る次第でございますので、あらかじめご理解とご了承下さい』
「どうだい、悪い話じゃあないだろう」
「んー。やっぱり出来過ぎなんじゃない。この話」
行った時点で開発に参加することが決定だなんて、おかしな話である。それに、行った時点というのは、どこに行った時点なのか。会社に入った時点なのかそれともギリシャに着いた時点かもしれない。「私は、旅費がかからないということなので」と先ほどとは打って変わり真理亜は、すっかり行く気満々である。
私は、どうにもきな臭いので、オケアノスたちの元に訪れた。彼らはずっとエデンの園で過ごしていた。3ヶ月ぶりだが、見た目はどこも変わりなかったが、
「あら、ヒルデいらっしゃい」
テテュスが、柔らかい声で出迎えてくれた。石造り家(城?神殿?)みたいなところに住んでいる。
「その子は?」
テテュスの腕には静かに眠る赤ちゃんが抱かれていた。
「ああ、貴女は知らなかったわね。この子は、私とオケアノスの子よ名前はメティス。あとクリュメとアシアという子が奥で寝てるわ。みんな女の子なの」
「へぇー、テテュスとオケアノスが、
・・・・・えぇぇぇー」
「しぃー」
私は、両手で口を塞ぐが、驚きは止まらない。だが、赤ちゃんを起こすのも忍びないとも思い、深呼吸をして、心を落ち着かせる。
「テテュス、とりあえずおめでとう」
「ええ、ありがとう。でも、とりあえずはよけいですよ。ヒルデ」
「うん。でも今日は、ちょっと急いでいるんだ」
テテュスの子が生まれたことは、本当におめでたいことなのだが、本題に入らせてもう。
「実は、ギリシャに行くことになりそうなんだ」
「まあ、急なことで」
「そうなんだ。若のクライアントが、ギリシャの企業の社長で、家族でとギリシャに私たちを招待したんだけど、不審な点がいくつもあるんだ」
「と言いますと」
「旅費は全て企業持ち、若と真理亜だけでなく、私とコイオス、クリオスの分まで同封された。飛行機の航空券。そして謎の制約」
テテュスは、少し間を空けて言う。
「一概には、なんとも言えませんが、オケアノスには、私から伝えておきましょう。でも、ヒルデにとって、ギリシャへ行くのは、いいことかもしれませんよ。私たちは、もともとギリシャから始まったのですから。またこの話は別の機会に」
テテュスは、ニッコリと笑って、リンゴをいくつか籠に見繕って、私に持たせた。
「貴女が、自在にドアを開閉することができるようになってから、ほんの僅かですが、こうして頼ってくれる事は、とても嬉しいのですよ。またいつでもいらっしゃいな。さあ扉を開けて」
私の目の前には、白い扉。それを開けると、若田邸の私の部屋に繋がっている。そして私が一歩踏み出した時、
「もし困ったことがあったら、血脈をたどりなさい」
「・・・・・。うん、ありがとう」
バタンとドアを閉めると、扉は次第に薄れて消えた。血脈とは何を指すのだろうか。誰もいない部屋に1人たたずんで、思考を巡らすけれどこれといったことが思い浮かばないので、一度茶の間に戻ることにした。
1階に下りると、若と真理亜だけでなく、クリオスもスーツケースに二週間分の衣類を敷き詰めていた。コイオスだけは、ダイニングで、紅茶を啜っていた。
「ねえ、ちょっといい。私も行くわ」
「そうと決まれば、お嬢さんも急いで荷造りしないとだね。その会社には、明後日までに行かないといけないからね。今日の午後には、ここを出発してギリシャの夕方くらいに着くと思うよたぶんね」
「飛行機?わざわざそんなもので行くの。私が扉を出してあげるからそれで行きましょ」
時間がないと言うなら、私が扉を開けるだけでいい。それに、ちょっとした練習にはいい機会なのだ。エデンの園とここを繋ぐことは、容易なのだからきっと、日本とギリシャを繋ぐことも出来るだろうし、まあなんとかなるわ。
「ゲートリンク、オープン」
イメージする。私の目の前には扉があると。イメージする。ギリシャのホテルの目の前には扉が現れるとイメージする。ここの扉とあちらの扉が繋がっていると。
「通った」
目を開けると、石造りの扉が私たちを見下ろすかのように、居間に佇んでいた。
「さあ、いつでも行けるわよ。ギリシャだろうと冥界だろうと何処へでも行ってやるわ」
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