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招待
9.
しおりを挟む「そうなんだ。あ、ご挨拶遅れました千春の友人の池田聡太って言います」
「はじめまして、藤井昂良です。……友達?」
「えっと……大学時代のバイト先で知り合った、友達です」
「あぁ、なるほど」
友達と強調したのは優子さんもいるし詳しくは説明出来ないから。先輩はニコリともせず会話を交わした。
少しくらい愛想良くしてもいいくらいだけど、ただの後輩の知り合いに笑顔を振りまくような人でないことは分かってるから、こんなもんだと思ってしまう。
けれど、まだニヤニヤしている聡太の顔を見てなんとなく早くここから立ち去りたくなってきた。
「あ、じゃあ私たちもう行くね。優子さんお会いできて嬉しかったです」
「こちらこそお引き止めしてすみませんでした」
聡太にはまた連絡してねと言って足早にその場から離れた。別に何もないのに、変なところを見られてしまったという、よく分からない後ろめたさを持ってしまった。
多分あの顔は後で何か言ってくるなという気がしてしまう……。
そこから何気なく百貨店の出入口まで降りてきたけれど、先輩は無言のままずっと隣を歩いている。
気まずくてなにか話しかけなきゃと、食事のお礼を言った。
「あの、先輩、さっきはご馳走様でした。あと、このあいだのうちでの食事のお礼ですけど、今日奢ってもらったしお返しとかいいですよ」
そう言うとチラッと私を見下ろした先輩。
「それとこれとは別」
そうは言っても、最初の食事の時もカフェでも今日でも、実は全部先輩が奢ってくれてるのに、たかだか私の拙い手料理一つでさらにお礼とか気を遣わせ過ぎている。
ハンカチでいいか……なんて思ってたけれど、それさえも甘えるわけにはいかない。
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