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招待
32.
しおりを挟むいつのまにかパスタまでも食べ切った美香は、ルイボスティーの入ったカップを両手で持ち上げると、顔の前でフゥフゥと湯気を吹きながら私を見つめていた。
「自分じゃ分かってないと思うけど、乙女の顔になってるよ」
「え、ど、どこが!?」
私のどこが乙女!?と耳を疑いたくなる。
ニヤニヤと笑う美香が変なことを言うから、一気に眉間に皺が寄った。
「だって少なからず聡太くんの時はそんな憂いのある表情なんてしたことなかったもの。昔も今も昂良先輩が関わると分かりやすく可愛くなるんだよ、千春は」
「な、ならないよっ」
美香は頬を膨らませた私の反応を見てクスクスと面白がっている。
元気のない私を和ませようと揶揄ってるんだろう。分かってるけど、乙女はないわー。
少し不貞腐れながら、ハンバーグを口に放り込んだ。
「あ、そうだ。聡太と言えばこのあいだ久しぶりに会ったよ」
「え、こっちに帰ってきてるの?」
「うん、異動でまた戻ってくるんだって」
「へぇ~……って、え!?もしかして昂良先輩の告白で悩んでたんじゃなくて、聡太くんとヨリ戻すかどうかで悩んでるの!?アッツ!」
美香は驚きのあまりルイボスティーの入ったカップを勢いよく置いたせいで、お茶を零してしまった。
私は急いでキッチンへ布巾を取りに行き、美香に渡すと気がかりな表情のままテーブルを拭いていた。
「それはないよ。だって聡太こっちに帰ってきたら彼女と結婚するし」
「ええっ!?」
今度は手に持っていた布巾を落として、目を丸くしていた。
聡太と付き合ってる時、美香にも紹介した程度には知っている。
もちろん別れた時も話を聞いてくれたから、その理由も知ってる。だから戻ってきたと聞けば、ヨリを戻すと思われても不思議じゃないかもしれない。
「向こうで知り合った同期の女性と結婚するんだって」
「そうなんだ。……って、もしかしてショック受けてる?その……聡太くんと嫌いで別れたわけじゃないじゃない」
「んー、そりゃ同い年の聡太までも結婚って聞いたらショックだったけど、好きだからのショックじゃないから。むしろ心からお祝いしたい気持ち。結婚式にも呼ばれて参列する予定だよ」
本当に無理してるわけじゃなく、心からそう思ってるのが素直に笑顔に出たからか、美香は安心したように肩の力を抜いた。
「そっか……。まあ、別れてもう3年になるもんね。それも普通か」
「そうそう。美香も結婚して子供が生まれるし、聡太にも先越されちゃったけど、お祝い事が続いて嬉しいんだから。幸せのお裾分けしてもらえるみたいじゃない」
聡太の話をして少し元気が出てきたのもあって、美香が作ってくれたしめじと小エビの入った和風パスタを元気よく頬張り、「んー、これ美味しい!」とさらにフォークにパスタを丸々と絡めて口に含んだ。
「だったら千春もこの波に乗って、結婚しちゃえばいいんじゃない?」
「ほぁ!?ゴホゴホッ!」
パスタを頬張って咀嚼している途中で、美香が変なことを言うので喉に詰まって咳込んでしまった。
「昂良先輩と」
さらにゴホゴホッと喉に支えて勢いよく咳が出たのを、慌てて紅茶を飲んで落ち着かせた。
一体何を言ってんの!?
「ふふっ。まあそれは冗談だとしても、なんだかんだ悩んでてももう答えは出てるでしょ?人生一度きりなんだから、チャンスはモノにしないと!」
美香は胸の前でぐっと拳を握って眉間に皺を寄せながら不敵に笑ったのだった。
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